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身体症状が前面にでていたうつ病の事例

概要

26歳女性、従業員500人規模のソフトウェア会社に勤務されている方です。

ある年、私事で悩みがあり、数人のグループで開発していたソフトの担当分に遅れが出始めました。毎晩11時近くまで残業し、睡眠時間を3~4時間に切詰めて仕事をしていました。納期が迫っていることから焦りもあり、ベッドに入ってもなかなか寝つけない日々が続きました。そんな中、同じグループ内の年上の男性社員から仕事の遅れの件で強い口調で叱責されました。

これがきっかけとなって、めまい・吐き気・頭痛・眼の奥が痛い・腰痛・疲れがとれない・息苦しいなどの症状があらわれました。特に、息苦しいという症状は出勤途上に強くなり、通勤電車に乗ると息が詰まりそうで怖いと感じるほどになりました。どうにか出社して仕事をしていましたが、能率が上がらず落ち込んでいるのを上司が気づき産業医に相談しました。本人と面談した産業医からは、医療機関を受診すること、一時的に負荷を減らす配慮を要する旨の意見が出ました。

職場では、納期を気にせず仕事ができるよう配慮し、本人は近隣の内科および耳鼻科を受診しましたが、明らかな異常は認めませんでした。その後も、症状が軽快しないため、あらためて面談した産業医から精神科医の受診を勧められ受診したところ、精神科医の診断は「うつ病」で抗うつ剤を処方され、1か月間休養するよう指示されました。1か月後にあらためて面談した時には前回に比べて明らかに落ち着いていました。症状の中で最も本人が辛く感じていた”息苦しい”という症状は解消し、その後も定期的に受診され、3か月後には日常生活が問題なく送れる状態にまで回復しました。

ポイント

精神症状だけではないうつ病もある

本事例の症状は、1)全身倦怠感、2)めまい、3)腹部・消化器症状(吐き気)、4)頭痛(眼の奥が痛い)、5)他の部分の疼痛(腰痛)、6)呼吸困難感、及び、後に自覚されてきた7)咽頭部違和感 などの身体症状が中心です。一般に「うつ病」は、抑うつ気分、焦燥感、気力の減退、自信喪失・自責感、興味や関心の低下、集中力減退、自殺念慮などの精神症状が中心ですが、身体症状が前面に出ることもあります。

身体症状がある場合は、まずは身体疾患を専門とする診療科を受診し、精査を受けることを勧めますが、身体的な原因がはっきりしない場合は、うつ病等の精神疾患の可能性も考慮して、精神科等も受診することが重要です。

職場の課題

本事例では長時間残業で睡眠時間3~4時間になっていました。睡眠不足とそれに伴う心身の疲労が発症に拍車をかけた可能性があります。

職場のメンタルヘルス対策としての「4つのケア」の中でも「ラインによるケア」が重要であるとされていますが、本事例ではまさに「ラインによるケア」が奏功してメンタルヘルス不調者の早期発見につながったといえます。また、会社が比較的規模が小さく、社長自ら社員とのコミュニケーションを欠かさなかったことも好結果をもたらしました。