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若年労働者へのメンタルヘルス対策 ~セルフケア・ラインケア・家族との連携など~

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若年労働者の特性を踏まえた
職場のメンタルヘルス対策についてご紹介します

働き方の変化と若年労働者の傾向

産業構造が大きく変化し、仕事内容の中心が、「ものづくり」から「サービス(対人関係)」へと変化してきました。これにより、以前にくらべてコミュニケーションを重視する業務が増え、対人関係にともなうストレスが増加しやすくなっています。若年労働者の中には、目上の人との対応に不慣れな方も少なくなく、こうした方が不適応に陥るケースも多くなっています。

また、近年は、個々の労働者の自由裁量部分を増やす企業や、新型コロナウイルス感染症の影響などにより、フレックス制や、裁量労働制、在宅勤務制度などを導入する企業が増えてきました。こうした働き方は、労働者一人ひとりの生活やペースに合わせて仕事ができる一方で、自己管理がうまくできないと長時間労働になる危険性があります。

加えて、社会全体として、対人関係が希薄化してきているといわれています。その背景には、IT社会となり、対面でのコミュニケーションが減少していることがあります。特に、若年労働者は、携帯端末(スマートフォンなど)の発展によるネット交流重視の環境の中で育ってきており、対人関係の経験が少ないまま社会に出るという方が今後ますます増加していくことが予想されます。

若年者に見られる精神疾患の特徴

20~25歳の若年期はうつ病の好発年齢の一つといわれていましたが、近年では、30歳代のうつ病者も急増しており、若年者全般によくみられる精神疾患として注意した方がよいでしょう。
職場でよくみられる特徴的なうつ病としては、以下のものがあげられます。

“昇進うつ病”

昇進・昇格による責任範囲の増加、仕事の質が高まることへの不安や自信のなさから生じる。昇進など、まわりからみると喜ばしいと思われることでも、うつ病の誘因になる可能性がある。

“荷下ろしうつ病”

本当に大変な時期はなんとか頑張っていられるが、それが解決・解消したりすると気がゆるみ、調子が悪くなる。大きなプロジェクトが終了した後などは、うつ状態に陥る1つの危ない時期と考えられる。

“燃え尽き症候群”

元来は人一倍活発に仕事をしていた人が、何らかのきっかけで、無気力、抑うつ、落ち着きのなさといった抑うつ状態に陥る。看護師や介護者が、自己の無力感にさいなまれる現象として注目されていたが、最近は、深刻な経済情勢を前に、個人の限界を感じ無気力に陥る労働者も出てきている。


また、若年者のうつ病の中には、休業している間に遊びにいっているのを見て、「それなら仕事もできるだろう」とまかせてみると「全然できない」といったことがあります。職場からすれば、単なる若者のわがままや未熟さのようにみえるかもしれませんが、結局は、遊べる程度にしか回復していないという状態なのです。
年長者とは価値観も表現方法も異なるため、こうしたうつ病の状態もあるということを知っておくことが適切な対応につながります。

事業場の基本的な対応

周囲が抑うつ状態を適切に感知し、かつ適切な対応をとることができれば、メンタルヘルス不調の予防効果を期待することができます。

労働者への教育研修・情報提供~セルフケア~

労働者の心の健康の保持増進のための指針」(平成18年3月策定、平成 27 年 11 月 30 日改正)(以下「メンタルヘルス指針」という。)において、事業者は、セルフケアを促進するため、全ての労働者に対して、教育研修や情報提供を行うこととされています(メンタルヘルス指針6(1)ア)。
若年労働者に対しては、入社時や異動のタイミングなど、ストレスを感じやすいタイミングにおいて、セルフケア研修をするとよいでしょう。その際、若年労働者の多くが感じるストレスの内容などを例示したり、若年労働者一人ひとりがセルフケアに関心を持ち、自らのストレス対処法を具体的に考えたり、ストレス対処力を向上できるような内容に工夫することが望ましいでしょう。また、相談窓口を紹介し、よくある相談内容や、相談することで不利益は生じないことをアナウンスするなど、若年労働者が安心して相談できる工夫しましょう。

管理監督者への教育研修・情報提供~ラインケア~

メンタルヘルス指針において、事業者は、ラインによるケアを促進するため、管理監督者に対して、教育研修や情報提供を行うこととされています(メンタルヘルス指針6(1)イ)。
若年労働者が部下にいる管理監督者に対しては、本ページで紹介しているような若年労働者の特性や支援ポイントなどを、事業場の状況も踏まえて、情報提供することが望ましいでしょう。また、管理監督者が部下である若年労働者の不調に気づいたときや、対応に悩んだときなどに相談できる体制を整え、管理監督者にアナウンスしておくとよいでしょう。

相談対応

メンタルヘルス指針において、事業者は、労働者が相談を行うことのできる相談体制を整備することとされています(メンタルヘルス指針6(3)ア)。若年労働者に限らず、すべての労働者に適切に対応できる体制を整え、周知を行いましょう。また、当該事業場の若年労働者の離職理由や相談内容の傾向などを分析し、相談対応者にあらかじめ共有しておくことも、より効果的な相談対応につながるでしょう。
社内相談窓口の設置に当たっては、「メンタルヘルスに関する社内相談窓口設置のポイント」もご覧ください。

家族との連携

若年労働者のメンタルヘルスケアに当たっては、家族のサポートも得ながら進めることが大切です。メンタルヘルス指針では、労働者の家族に対して、メンタルヘルス相談窓口等の情報を提供することが望ましいとされています(メンタルヘルス指針6(3)エ)。若年労働者の場合はとくに、家族と同居している場合はもちろん、単身生活をしている場合でもご家族が小さな変化をキャッチしていることがあります。ご家族から早めに相談してもらえる体制を構築しておくことは、早期発見・早期対応につながるだけでなく、メンタルヘルス不調に陥った際の治療、休業、職場復帰の場面でもご家族にサポートいただきやすくなります。ご家族も利用できる相談体制を整備し、社内報や健康保険組合の広報誌等を通じて情報提供しましょう。

事業場が家族と連携して支援した取組事例

ジヤトコ株式会社(静岡県富士市)
休業・休職する社員向けに、“休業・休職~復職に関する手引き”を保健師が中心となって作成。手引きの中に“ご家族の方へ”という項目を設け、 休業中の会社とのコンタクトや“安心してゆっくり休養させてほしい”といった内容をご家族の方々にも伝えている。

宇部興産株式会社(山口県宇部市)
健康管理センターを中心に、外部EAP機関も活用しながらメンタルヘルスケアを実施。休業者が元の所属地ではなく、実家など療養しやすい場所を選んだ場合は、その地域で外部EAP機関の支援を受けられるようにしている。

株式会社レンタルのニッケン(東京都千代田区)
休業中は、誰かと話したり、面倒をみてもらったり、何かしら他者と触れ合う機会があることが大切だと考え、一人暮らしや寮暮らしの方は原則として実家や家族のもとに戻るように促している。

株式会社松下産業(東京都文京区)
定期的にファミリーデーを開催し、ご家族に仕事現場を見てもらうようにしている。ファミリーデーには、ヒューマンリソースセンターのメンバーが必ず参加して、家族も含めて気軽に相談できる会社にするための働きかけを意識して行っている。