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心の病や自殺対策、過重労働問題について、よくある質問と答えをまとめました

うつ病などの心の病気や自殺あるいは過労死(脳・心臓疾患)についてのよくあるご質問とお答えを掲載しています。メンタルヘルス対策関係・過労死等予防対策関係・自殺予防対策関係・労災補償関係に区分して掲げています。

メンタルヘルス対策関係

企業の人事担当者です。採用面接の時に、心療内科や精神科の受診歴などを聞いてもいいでしょうか?

厚生労働省では、公正な採用選考の基本として、採用選考にあたっては、「①応募者の基本的人権を尊重すること」、「②応募者の適性・能力のみを基準として行うこと」の2つの考え方を実施することが大切だとしています。応募者の適性・能力とは関係ない事項で採否を決定することは就職差別につながるため、障害者、難病のある方、LGBT等性的マイノリティの方など特定の人を排除しないことが必要だとも指摘されています。

たとえ既往歴について応募者が自ら申し出てきた場合であっても、面接で聴取する範囲は、業務の適性や、採用後の就業上の配慮の要否等を判断するために必要な事項に限定することが望ましいと考えられます。

なお、障害者雇用促進法では、募集または採用時に障害者からの申し出があった場合、募集および採用に当たって支障となっている事情およびその改善のための措置を講じる必要があるとされています(同法の合理的配慮指針等を参照)。既往歴の内容によっては、このような合理的配慮を要する場合があるため、応募者の意向を十分に聴くことが肝要です。

職場のストレスで心身のバランスを崩しそうです。退職したいと職場に伝えたところ、人手不足だからといって辞めさせてくれません。どうしたらいいでしょうか?

民法では、一般的な正社員(期間の定めのない雇用契約で働く労働者)は、原則として2週間前までに退職の意思を告げれば、雇用契約を解約できると規定しています(民法第627条1項)。仮に就業規則に異なる規定がある場合でも、その所定の手続きさえ行えば、労働者には「退職する自由」が認められるといえます。それにもかかわらず退職を認めないことは、いわゆる「在職強要」として違法となる可能性が高いと考えられます。退職の手続きがどう規定されているのかについて、まずは就業規則等の内規を確認してみることが重要です。

なお、メンタルヘルス不調になると、適正な判断ができなくなることもありますので、退職を即断する前に、心身を休める機会を持つことも有益です。有給休暇の利用、病気欠勤・休業、私傷病休職等の諸制度を活用できないか、職場に問い合わせてもよいでしょう。

もし、退職の申し出に対する報復として、有給休暇の消化を認めない、退職金を規程どおり支払わないなどの違法な取扱いがなされる場合は、自らの労働者としての権利を守ることを念頭に、労働基準監督署等への相談を検討することも考えられます。

うつ病はどうしてなるのでしょうか?

うつ病の原因は、医学的にも解明されていないことも多いのが現状です。また、うつ病の種類も、専門的に様々な考え方があります。ただ、働く人々のうつ病の発症の仕方(原因というより要因・誘因)は、3つほどに分類が可能と思います。

まずは「環境要因」です。例えば、非常に重たい責務を任されている、長時間の残業が続いている、ということから脳や身体の疲労が蓄積して、うつ病に至ってしまうものです。この場合は、治療の過程で環境の調整がとても重要になります。

次に「性格的な要因」です。専門的には心因性などと呼ばれています。気になることや心配なことを細かく考えすぎるなど、その人の思考パターンが脳の疲労に強く関係している場合です。治療では、精神療法やカウンセリングなどが重要になってきます。

そして「医学的な要因」。専門的には内因性と呼ばれています。体質と言ってもいいかもしれません。はっきりした強い要因がなくてもうつ病を発症してしまうことがあります。精神科以外の疾患でも、食生活や運動習慣に問題がなくても、高脂血症になってしまう、発がんしてしまう、という人がいるのと似たものです。治療薬により効果が出やすいとも言われています。

うつ病の発症の仕方の分類は、きれいに境目があるのではなく、様々な要因が絡み合っていることがほとんどですので、治療を受ける際は専門家によく相談してください。

そして、とても大切なのは、原因や要因の排除ばかりに注力するのではなく、どのような治療や対処が有効かを、専門家や職場に相談しながら進めていくことだと思います。

精神科に行った方がいいということはわかっているのですが、どのくらいお金がかかるのか分からず不安です。受診にかかる費用はどのくらいでしょうか?

精神科に初めて受診するとき、費用がどれくらいかかるのか見当がつかなくて不安だと思いますが、精神科も内科などと同じように健康保険証が使える保険診療(3割負担)です。

まずは、おかかりになろうと考えている医療機関に、どのくらい費用がかかるのか尋ねてみるのがいいと思います。

一般的には、初診時は、時間をかけての診察があり、心理検査などが加わる場合もあるため、少し高めになりますが、精神科の窓口でのお支払いは3000円程度と考えておくと良いと思います。それに加えて、薬が処方された場合は薬局にて別途3割負担で費用がかかります。薬の内容によって変動しますが、初診時は合計で5000円くらいと考えておくとよいかと思います。2回目以降は、精神科の窓口で約1500円程度、その他に薬局でお薬代が加わります。

継続的な通院が必要という場合には、公費負担の制度(自立支援医療)も利用が可能です。通院費やお薬を含めて1割負担、つまり通常の1/3となります。利用に当たっては所定の手続きが必要です。

費用を高く感じるかどうかは人それぞれだと思いますが、身体疾患と同様、早期対処により病状の長期化を防ぎ、社会生活を送りやすくなることにつながります。

新入社員で入社して3か月ですが、上司からできていないことを指摘されることが続き、出社しようとすると動悸や腹痛が出るようになりました。転職も視野に入れていますが、こんなに短期間で退職して、採用してくれるところがあるのだろうかと、先々が不安です。どのように考えたらいいでしょうか?

仕事の代わりはありますが身体の代わりはありませんので、ご自身の健康を一番大事に、最優先に考えることは大切です。しかし、転職の際に短期間の職歴が不利になる場合があるのも事実でしょう。

もし、上司とのコミュニケーションや仕事の適性等の問題で悩んでいるようであれば、人事担当者や会社の相談窓口に相談してみてはいかがでしょうか。自分では見えなかった解決のヒントが見つかるかもしれません。

退職後の生活のことを深く考えず勢いで辞めてしまうと後悔することにもなりかねません。働き続けるための対処方法が思いつかない場合には、まずは休職という方法を選択するのも1つでしょう。休職中は、条件を満たしていれば社会保険制度から傷病手当金が支給されますので、ゆっくり休みながら今後のことについて考えてみてはいかがでしょうか。(【参考】傷病手当金制度 )

仕事のストレスが大きく、体調にも影響が出てきているので休んだ方がいいと思うのですが、職場の人はメンタルヘルス不調への理解がないので、一度休んだら辞めるしかないと思い、踏み切れません。どのように考えたらいいでしょうか?

身体は一つしかありませんので、まずは心身の健康を守ることを優先しましょう。上司や先輩・同僚など、現場で働く人たちにメンタルヘルスへの理解がない場合でも、人事はサポートの重要性を理解している会社が多いと思います。結論を急がず、人事担当者や産業医、もしくは社内の産業保健スタッフ等に相談してみてはいかがでしょうか。10人以上の会社であれば就業規則があるはずですから、休職制度について調べてみても良いでしょう。

管理職にはその職責の範囲で部下の心身の安全を守る義務がありますので、本来であれば真っ先に相談する相手なのですが、メンタルヘルス不調に対する理解が低いようであれば、「うつ」「ストレス」などの用語を避け、「腹痛」「頭痛」「めまい」など、感じている身体症状を切り口にして、相談してみてはいかがでしょう。

仕事以外では元気なのに、心の病ということはあるのでしょうか?

精神的なエネルギーが消耗し枯渇すると、いわゆる心の病になります。このエネルギー消耗の過程で、最初にできなくなることは苦手なことからと言われています。エネルギー消耗が進むと自分の好きなことや得意なこともできなくなり、病気の悪化と言えます。仕事以外では元気でも、病気が悪化する過程にいる、またはその逆で回復の過程にいるのかもしれません。

特に仕事の環境に変化があった、または大きなストレス要因がある場合などには、職場とそれ以外での元気度の差は顕著かもしれません。仕事以外は元気だから大丈夫、ということではなく、放っておくとエネルギーが枯渇し、悪化する可能性もありますので、今こそ早めの対応が必要なタイミングかも知れません。

上司が理不尽な要求や暴言をする人で、精神的に参っています。小規模な会社なので、社長に相談しましたが、何もしてくれず、社内で他に相談できる人が思いつきません。どうしたらいいでしょうか?

一人で抱えないことがとても大切です。社内に相談できる人がいない場合は社外に目を向けてみましょう。

まず、精神的に参っているとのことですが、ご自身の体調はいかがでしょうか。眠れない、憂うつな気分が続く、好きなことが楽しめないなどの症状が続けば精神科や心療内科の受診をお勧めします。

身近な人、家族や友人に話をしてみるのもいいです。出来事を整理したり、自分の気持ちを吐き出したりすることで気持ちが軽くなることもあります。直接的な解決には結びつかないかもしれませんが、新たな相談先や対策が思いつくかもしれません。

また、こころの耳では様々な相談窓口をご紹介しています(「相談窓口案内」)。働く人の悩みやハラスメントに特化した窓口もありますので、参考にしてみてください。

夫がうつ病で休職中です。小学生の子どもがいるのですが、仕事をしないで家でゴロゴロしている状況や、日によって優しかったりイライラしやすかったりする夫の様子が、子どもに悪い影響を与えているのではないかと心配です。何か気を付けた方がいいことはあるでしょうか?

うつ病は、自分自身の感情をコントロールできず、思うように行動できなかったり、イライラしたりする病気です。症状の改善のためには、自宅でゆっくり過ごすことが必要で、見守ってくれる家族の存在はとても大きな意味があります。「ご家族にできること」を参考に、お子様と共に、病気への理解を深めて温かく見守っていただくのが理想です。

ただし、うつ病の方と一緒にいることで、ご家族自身の負担も大きくなりますので、ご自身やお子様の感情にきちんと向き合うことも必要かもしれません。時にはご主人と距離を置く時間を設けたり、誰かに相談したりすることも検討しましょう。身近に相談相手がいなければ、お住まいの地域の「精神保健福祉センター」にご相談いただくことも一つです。「精神保健福祉センター」では、こころの健康やこころの病気について電話や面談で相談ができ、ご家族からの相談にも対応しています。

企業の人事担当者です。メンタルヘルス不調の従業員がおり、精神科で休職の診断書をもらってきたので、その従業員の上司に休職制度について説明しようとしたら、「人が足りないから休まれたら困る」とつっぱねられてしまい困っています。どのように説明したらいいでしょうか。

メンタルヘルス不調は症状が悪化すると、自分を傷つけてしまうことがあります。会社として、従業員の不調を把握していながら勤務を継続させ、そのような状況になれば、会社として安全配慮義務違反が問われる可能性があります。また、専門家が休業を要するという判断をしているので、会社はそれに従えないという正当な根拠を示す必要もあるでしょう。

実務的な視点としても、休業が必要な程度のメンタルヘルス不調の状態であれば、適切に業務が遂行できない可能性があります。勤務を継続させたとしても、本来期待される労務提供がなされない可能性があり、その従業員をフォローする方の負担が大きくなったり、大きなトラブルを誘発してしまうことがあるので、直ちに休業させた方がよいでしょう。

産業医に相談して、病状に関する情報を収集してもらって意見をもらったり、上司が職責として業務量のコントロールができる立場にない可能性もありますので、さらに上位の上司も巻き込んで対応を検討することも必要かもしれません。

うつ病のため、主治医から仕事をしばらく休むように言われたのですが、どうすればいいでしょうか?

うつ病から回復するためには服薬と休養が重要です。仕事の心配はあるかもしれませんが、仕事をしばらくお休みして休養を図ることによりうつ病の回復が望めます。うつ病が悪化すると、業務遂行力が低下し、仕事に影響が出る可能性もありますので、早期に職場の上司等に相談をして仕事をお休みさせてもらうことが望ましいでしょう。

なお、仕事をお休みする際には、職場の休暇制度や経済的な保障制度などについても確認をしておくとよいでしょう。
(Q-M-26)

心の病で医療機関を受診しようと思います。何科を受診すればいいでしょうか?

心の病を専門とする医師は、精神科医と心療内科医です。心の病を専門とする医療機関の正式な標榜科目名は、心療内科、神経科、精神科ですが、最近ではメンタルヘルス科やストレス外来などという看板を掲げている医療機関もあります。間違いやすい標榜科として神経内科がありますが、神経内科は脳、末梢神経、筋肉などを扱う内科の一分野です。受診する前にホームページ等で診療内容を確認ともに、事前に電話等で連絡をいれておくとよいでしょう。
(Q-M-27)

部下から「最近、うつで通院をはじめた。」と打ち明けられました。上司として何に注意すればいいでしょうか?

まず、部下が安心して定期的な通院を継続できるよう支援しましょう。また、会社に産業医がいれば、本人の同意を得た上で、就業上の措置の要否について意見を求めるのもいいでしょう。保健師や衛生管理者など事業場内メンタルヘルス推進担当者がいる場合は、本人の同意を得た上で連携しましょう。必要に応じて、産業医を介して主治医の意見を尋ねることもあります。一連の対応に当たっては、プライバシーの保護に十分配慮し、連絡する必要がない者には言わないように注意し、同僚などへの情報開示では本人の意思を尊重しましょう。

また、部下の不調の原因が職場や業務にないか検証し、必要に応じて職場環境改善の取組みを行うなど再発防止を図りましょう。
(Q-M-28)

時々、酒臭い状態で出勤する部下がいます。最近遅刻や欠勤も増えてきました。どのように対応したらいいでしょうか?

アルコール依存症、またはその前段階であることが考えられます。放っておかずに個人面談の場を持ちましょう。産業保健スタッフがいる場合には、彼らと連携するようにしましょう。面談では、本人が問題を自覚できるよう、出勤記録などをもとに、遅刻や欠勤の頻度が客観的にわかるものを用いて話し合いを行うとよいでしょう。問題飲酒がある場合はアルコール症の専門機関を受診していただく必要がありますが、一方、本人が飲酒による問題を否認することもしばしばあります。その場合、しばらく様子をみざるを得ないこともありますが、次回、遅刻や欠勤をするなど問題行動がみられた場合は必ず受診をしてもらうことや、家族と連絡をとるなどの約束を交わしておくことが重要です。問題を先送りにしたり、大目にみてあげたりするのは適切でありません。
(Q-M-30)

精神科は健康保険で診てもらえるのですか?精神科ではどんな診察をするのですか?

精神科は内科などと同じように健康保険で診てもらえます。しかし、精神科の外来医療費は、薬の値段が高いので、通院が長期間にわたる場合は医療費の負担が大変です。その場合は、自立支援医療制度の申請を市区町村の窓口にすれば、主な精神疾患では1割の自己負担ですむようになります。

精神科の最初の診察は、内科などと違って心電図、CTなどの検査はほとんど行われず、その代わりにこれまでの経過を詳しく聞きます。「いつから、どんなきっかけで、このような”うつ”になったのか」といったことです。精神科医が聞く場合もありますが、臨床心理士や精神保健福祉士などがお聞きする場合もあります。精神科医は診察を通して助言をし、必要な場合は抗うつ剤や睡眠導入剤などを処方します。診察と投薬だけでは不十分な場合には、併行して、カウンセリングやデイケア・ショートケアなどの特別なプログラムを行う場合があります。家族関係の調整が必要な場合にはケースワーカーが相談を受けることもあります。カウンセリングなどのプログラムは、スタッフの数が少ない精神科診療所では行いにくいことから、心理カウンセリング機関と連携して行っている場合もあります。
(Q-M-31)

メンタルヘルスの取組みを始めるに当たり、どう進めたらよいでしょうか?

流れとしては「労働者の心の健康の保持増進のための指針」で示されている「4つのケア」が基本になります。
4つのケアとは、(1)労働者が自らの心の健康のために行う「セルフケア」、(2)職場の管理監督者が労働者に対して行う「ラインによるケア」、(3)事業場内の産業保健スタッフ、人事労務管理スタッフ等が行う「事業場内産業保健スタッフ等によるケア」、(4)事業場外の専門家や機関を活用する「事業場外資源によるケア」のことです。

具体的には、各事業所によって様々な取組み方があるので、職場のメンタルヘルス対策の取組事例を参考にして下さい。

(Q-M-32)

メンタルヘルス不調を早期に発見するためには、どんな事柄について注意すればいいでしょうか?

厚生労働省は、平成18年3月31日に「労働者の心の健康の保持増進のための指針」を公表しており、その中で事業場内産業保健スタッフ等や事業場外資源による相談窓口の設置や対応について記述しています。
事業場内に相談窓口を設置する場合、以下の点に注意が必要です。

  1. 早期発見のための体制の構築
    メンタルヘルス不調を早期に発見するためには、日頃より関係者が速やかに連携する体制を築いておくことが重要です。まずは日頃より接している周囲の人がその人の「いつもと違う様子」に気づくことが重要です。その際は、勤怠状況や仕事ぶり、表情・態度などの変化に注目することが大切で、病気かどうかを判断する必要はありません。そして早めに声をかけゆっくりと話を聞き、産業保健スタッフや社外の相談窓口への相談を促します。相談を受けた産業保健スタッフや外部機関では、専門医療機関受診の必要性を判断して、必要な場合には受診を促します。

  2. 日頃のメンタルヘルス対策における留意点
    産業保健スタッフは、周囲の人がいざというときに適切に行動できるように、メンタルヘルス教育やパンフレットの配布を通じて、啓発しておく必要があります。また安心して相談できるように、個人情報保護への配慮を徹底することも大切です。速やかな受診に結びつけるためには、周囲の医療機関とのネットワークを築いておくことも重要です。相談窓口は、産業保健スタッフが務めれば、職場での配慮につながるなどのメリットがあります。一方で、事業場内への相談に抵抗を感じる人もいます。そのような場合は事業場が外部のメンタルヘルスサービス機関などと契約しておけば、相談窓口の選択肢が多くなり、相談の敷居も低くなります。また、外部機関であれば家族からの相談にもつながりやすくなります。

(Q-M-34)

うつ病は再発するのでしょうか?

うつ病は治ることが多いのですが、再発しやすいことも知られています。初めてうつ病にかかって再発を経験する人が6割、一度再発した人のうち二度目の再発をする人が7割、二度再発した人のうち三度目の再発をする人が9割といわれています。しかしながら、日常の思考・行動パターンの見直し(認知行動療法など)や内服により再発防止が出来ることもよく知られています。
(Q-M-36)

うつ病で精神科に通院しています。薬が出るだけですが、カウンセリングを受けたほうがいいのでしょうか?

うつ病の治療というと「カウンセラーに話を聴いてもらうのがよいのではないか」と思う方もおられるかもしれませんが、薬物療法が治療の基本になります。ただ最近は、自然治癒力を重視したり、カウンセリングや漢方薬等による治療を上手に利用する専門医も増える傾向にありますし、逆に病気の程度や状態によっては長時間話すことが負担になることもありますので、カウンセリングの必要性や希望について主治医に相談してみると良いでしょう。
(Q-M-38)

部下がうつ病で休職することになりました。休み中はそっとしておいたほうがいいのでしょうか?

休職の理由がうつ病など精神的な病気の場合、休職中に連絡を取ったほうがいいのかどうか迷われる上司の方は少なくありません。休職している方にしてみると、職場の人から何も連絡がないと、「自分はもう要らないと思われているのではないか」と不安な気持ちになることが多いようですので、連絡をするのは大事なことです。

もっとも、休み始めの頃など、会社や仕事のことを考えるだけで不安になるということもありますので、休まれている方の状況に応じて、連絡の取り方を考える必要はあります。休みに入る時に、休職中の連絡の取り方について決めておかれるとよいでしょう。頻度としては、うつ病の休職の場合は月単位の休みが多いので、1か月に1回とか、診断書の切れる頃などを目安にされるとよいでしょう。

なお、直属の上司の方が窓口になるのが一般的ですが、部下の方との人間関係がこじれているなど、直接やり取りをするのに問題があるような場合は、他の方を窓口にするといった配慮が必要になります。
(Q-M-39)

職場復帰に際して主治医と産業医の間で意見の相違があるときはどうしたらよいですか?

心の健康問題で休業した労働者に対して主治医の判断により復職診断書が発行され、産業医が精査した上で、事業者に職場復帰に関する意見を述べることになります。しかし、必ずしも主治医と産業医の意見がすべて一致するわけではありません。主治医による診断は、日常生活における病状の回復程度から復職の可能性を判断していることが多く、職場復帰後職場で求められる業務遂行能力がまだ回復しているとの判断とは限らない場合があります。

職場復帰は、就業規則等に定められた就業時間内労働を可能とする業務遂行能力が回復していることが前提となります。そのため、適正な睡眠覚醒リズムが確保されており、昼間の眠気がなく、注意力・集中力が持続し、安全に通勤ができ、療養中に業務に類似した行為を遂行したとしても疲労が翌日まで残ることのない程度まで体力が回復していることが必要です。これらの点について産業医は精査を行い(「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」参照)、その結果明らかに職場復帰に必要な準備が整っていないと判断することもあります。このような場合主治医とさらに情報交換を密にして、職場復帰に必要な準備状態の確立に協力してもらえる関係を作っていく必要があります。

より円滑な職場復帰支援を行う上で、職場復帰の時点で求められる業務遂行能力はケースごとに異なることが多いため、あらかじめ主治医に対して職場で必要とされる業務遂行能力の内容や社内勤務制度等に関する情報を提供した上で、就業が可能であるという回復レベルで復職に関する意見書を記入してもらうようなプロセスを踏むのもいいでしょう。

(Q-M-40)

職場復帰の際のリハビリにはどのような点に注意したらいいですか?

精神障害に限らず、病気を治す期間は主に2つに分かれます。前半が療養に専念する期間、後半が復帰に備える期間=リハビリの期間、となります。たとえば重症の捻挫を想像してみましょう。前半は痛くて動けませんので固定・安静、腫れと痛みがひいたら後半は固定して硬くなった関節を動かし可動範囲を広げ、元の生活が可能となります。

つまりリハビリ期間に入るには、日常生活を送る上で症状による支障がほとんどなくなっている状態が必要となります。うつ病を例にしますと、憂うつな気分である、不安や緊張でビクビクする、嫌なことばかり考えて眠れない、など苦痛な症状がほぼ改善している状態ということになります。自覚症状が強く苦痛が大きい時期は、まだ療養に専念する期間と考えましょう。自分がどの期間にあるのか、主治医にも相談するとよいでしょう。

リハビリ期間の過ごし方として重要な点は主に3つあり、ⅰ.睡眠・食事のリズムの確立、ⅱ.就業を想定した日中活動、およびⅲ.これらの継続性、ということになります。

ⅰ.適切な睡眠および食事のリズムですが、久々の就労というストレスの海に飛び込んで泳ぎ続けることになります。そこに必要な体力の維持のための基本中の基本です。

次にⅱ.就業を想定した日中活動ですが、最近はリワークプログラムなどを設置した病院もありますが、ひとりで行うことも可能です。しかし自分の意志が必要になります。たとえば、毎朝図書館に通い、そこでの過ごし方のレベルを段階的に上げていくことも工夫次第でできます。たとえば、新聞のある部分を読むことからはじめ、問題なく出来るようになったら、その部分をノートに書き写す→写すだけでなく要点をまとめる→まとめるだけでなく私見を述べる、といった形で、少しずつステップアップが出来るのです。また特に都市部では独特な緊迫感のある通勤時間帯のラッシュを体験しておくことも役立ちます。通勤訓練などとも呼ばれていますが、この準備なしに復帰して消耗してしまう方も珍しくありません。

最後に、ⅲ.継続性ですが、仕事は1週間後も1か月後も1年後も続きます。がある程度の期間続けて出来ていることも、復帰の準備としてたいへん重要な要素となるでしょう。ただ、長距離走ですので、短距離走のようなスピードは不要です。

会社によっては、「試し出勤制度」などが設けられている場合があります。基本的には上記のようなリハビリの期間を経過し、業務遂行の準備が整っている上で行うものです。その運用は会社によって異なりますので、上司や人事労務、産業保健スタッフなどにお尋ねください。上手に利用することにより円滑な職場復帰が期待できます。

(Q-M-41)

うつ病に対する偏見・誤解とはどのようなものですか?

「うつ病は甘えた病である」、「頼る人がいるからうつ病になれる」、「うつ病になるのは、精神的に弱いから」、「心の弱い奴がうつになる」、「病は気から。強い精神力があれば大丈夫」など、今でもうつ病を性格、根性などに関連させる偏見や誤解があります。しかし、うつ病はセロトニンなど脳の神経伝達物質の異常が関連する身体の病気です。「うつは本当には治らない」、「うつは再発しやすいものだ」という人もいますが、効果の証明された薬があり、休養、精神療法・カウンセリングにより改善し再発防止も可能です。他の病気と同様にうつ病を正しく理解し、早期発見・早期治療に結びつけることが重要です。
(Q-M-43)

生真面目でもなく、几帳面でもない人がうつ病になりますか?

うつ病には本人の性格以外にも多くの病因があり、さらに必ずしも病因が明確でない人も多い疾患です。したがって、生真面目でもなく、几帳面でない人でもうつ病になることはあります。
(Q-M-46)

最近眠れないのですが、このような場合、何科に受診すればいいのでしょうか?

不眠症にはさまざまな原因があり、原因によって受診すべき科が異なります。もし、ほかに通院中の病気があり、お薬を服用している場合には、睡眠を障害する薬もありますので、一度かかりつけの医師に相談されるとよいでしょう。

最近では、睡眠に関する専門外来を開いている病院もあります。原因がよくわからず睡眠がとれずに悩んでいる場合には、このような睡眠に関する総合外来を受診されてもよいでしょう。

なお、夜中に何度も目が覚めたり、家族からいびきや無呼吸を指摘されたことがある場合は、睡眠時無呼吸症候群の可能性があるため、「終夜睡眠ポリグラフ検査」という検査ができる医療機関に受診されるとよいでしょう。
就寝時や夜中に目が覚めた時に足のふくらはぎや足の裏あたりが「むずむず」したような異常感覚があって眠れない場合は、「むずむず脚症候群」という病気の可能性があります。また、睡眠中に足がビクビクと動いて眠りが妨げるような場合は「周期性四肢運動障害」という病気の可能性があります。このような場合も、終夜睡眠ポリグラフ検査ができる医療機関に受診されるとよいでしょう。
最近気分が落ち込んだり、いままで楽しかったことが楽しめなくなってきている場合は、うつ病に伴う不眠症かもしれません。また、原発性不眠といって、原因が特定できない不眠症もありますので、このような場合には一度精神科に受診をされるとよいでしょう。
(Q-M-2)

最近仕事のことで悩んでいるようで、夜も眠れていないようです。家族としてどうすればいいのでしょうか?

睡眠は人の生態活動として必要不可欠なものです。睡眠がとれておらず、かつ、仕事に悩んでいる様子がご家族から見てとれるということは、元気がなく気落ちしていたり、食事もとれていなかったりといった状況もあるかもしれません。そのような場合、うつ病などの精神疾患にかかっている可能性もありますし、そうではなくても睡眠がとれない状態でメンタルヘルスを改善させることは難しくなります。

ご家族としては、まずご本人の悩んでいることに耳を傾け、睡眠がとれていなかったり、気分が沈んでいたりする場合は、心療内科や精神科への受診を勧めてみるとよいでしょう。また、仕事のことで悩んで睡眠障害という体調不良をきたしているということであれば、勤め先の産業医や保健師に相談するよう勧めてもよいと考えます。
(Q-M-3)

うつ病はどの程度よくなると働けるようになるのでしょうか?

まず、うつ病の症状がよくなっていることに加え、日常生活が問題なく送れるようになることが重要です。朝起きて、食事をとり、身支度を整え、外出したり、身の回りのことをしたりして、夜はきちんと睡眠をとれるなど生活が回るだけでなく、本来の興味や関心も回復している状態です。

そのうえで、勤務時間に仕事に準じた活動(事務職であればPC作業や読書など、体を使う仕事であれば散歩や筋トレなど)ができること、他人とのコミュニケーションを問題なくとれることが必要です。

また、うつ病は再発のすることが多い病気ですので、継続的に仕事を続けていくためには、再発した際に早期に気づき対応し、その影響を最小限に留められるような準備もしておくとよいでしょう。具体的には、病気になった原因や背景を振り返り、どんな時に、どんな変化が自身の心や体に現れるのか、そうなった場合にどんな対処が必要なのかを考え、身につけておくことです。一人で難しい場合は、主治医に相談したり、カウンセリングをうけるほか、リワークプログラムといって職場復帰のためのプログラムを用意している医療機関等があるので利用するのもよいでしょう。
(Q-M-5)

統合失調症と診断された方は就業できるのでしょうか?

この病気を持ちながらたくさんの方が就業しておられます。統合失調症だから就業できないということはありません。他の疾患と同様に、主治医や会社などと連携し、必要に応じて配慮等をしてもらうこともできます。
(Q-M-6)

精神科に通院していますが、診察でも「変わりありませんか」の一言で終わって薬だけがでます。このままで良くなりますか?
長く掛かっている主治医なら、一言ことばを交わすだけで、表情や態度などから、調子の善し悪しが分かる場合もあります。しかし、患者としては主治医のペースに従う必要はありません。困っていることや気になっていることなど、主治医に相談したいことがあれば遠慮せず伝えてみましょう。事前に、相談したいことを紙に書き出しておくのもよいかもしれません。
(Q-M-9)
精神科のお薬は、薬漬けになりやすいと聞き、飲みたくありませんが、薬以外で治る方法はないでしょうか?

精神科で薬を処方するのは、その病気の治療に必要と判断されたためでもあります。一方で、薬を使用せずに治療できる場合は、薬は処方されません。

一般的に、精神疾患の治療は長期間にわたることが多いため、薬の内服期間も長くなることがありますが、適切な治療であれば意味なく薬物治療が続くことはありません。いつまで服用するものなのか、減らすことが出来ないか、副作用について、など疑問があれば遠慮なく尋ねてみましょう。 (Q-M-10)

何種類もの薬を数年のんでいますが、いっこうに治りません。このまま飲み続けるべきでしょうか?

まず、精神科疾患の多くは客観的な評価が難しいものが多く、患者さんの訴えに基づいて治療を行いますので、ご自身の状態を適切に主治医に伝えていただくことが重要です。

ご自身の状態を改めて主治医に伝えてみたり、自分でうまく説明が出来ないときには家族等ご自身の状態をよく知っている人に同席してもらって相談してみるとよいでしょう。特に「どのような症状によって生活しにくいのか」ということが主治医に伝わることが大切です。

なお、精神科で処方される薬は、急にやめることで症状が悪化する場合もありますので、自己判断で中断することは避けましょう。
(Q-M-11)

セカンドオピニオン(他の医師の診断)を希望していますが、今の先生に話すともう診てもらえなくなるのではないか心配です。どうすればいいでしょうか?

セカンドオピニオンを希望されますと主治医としては淋しく思いますが、本人の病気をよくすることが優先です。一般の主治医なら承諾してくれると思います。セカンドオピニオンを引き受けてくださる医療機関では、別の視点からの意見を出されます。この意見をそれまでの主治医に伝えて、その後の治療を続けることも可能です。また心機一転して別な医療機関での治療を受けることも可能でしょう。本人の病状をよくすることが第一です。一方で、ドクターハンティングなどと言われますが、本人が良い治療をされていないと感じて、医師を次々と変えていくことも見られます。その結果、計画的・継続的な治療が尻切れトンボになり、病状がよくなり難いこともあります。精神疾患では、せめて3~6か月程度は同じ医師の治療を継続されるほうが良いでしょう。セカンドオピニオンや転院にはご自分の考えだけでなく、ご家族や担当医の意見も参考にしましょう。
(Q-M-12)

カウンセリングに通っています。いつも話を聞いてはくれますがそれだけです。それなのに何千円もとられて何も変わりません。カウンセリングってなんなんでしょうか?

カウンセリングは、日常の人間関係のしがらみから離れた、いわば非日常的な人間関係の場であり、その中で、安心して率直に気持ちや考えを表現することを通じて、問題解決や症状の緩和をはかります。カウンセリングにはさまざまな理論や手法がありますが、基本的には、カウンセラーは一方的に答えやアドバイスを与えるのではなく、あなたの話をよく聴き、充分に理解し、気持ちに細やかな配慮をしながら、あなた自身がよりよい人生の選択ができるように、問題の整理や気持ちの整理を心理的に支援します。あなたの年齢、性別、症状や過去・現在の状況および目指すゴール/目標と、それらに対するカウンセラーの専門的な見立てによって、選択される手法や期間は異なります。言葉でのやり取りを中心とする場合もあれば、粘土や切り絵、箱庭や植物などの媒体を使う場合、具体的な行動目標を立てて訓練をしていく場合などさまざまです。

カウンセリングでは、あなたの人生の重要な問題を扱うのですから、焦らずに時間をかける必要はあります。しかし、そのプロセスを支えるのはあなたとカウンセラーとの信頼関係ですので、カウンセリングの進め方そのものについて納得しておくことは、とても重要なことです。

今受けているカウンセリングに疑問があるのであれば、そのことも率直にカウンセラーに伝え、どのような解決を目指していくのか、目標や方針を見直していくことをお勧めします。方針や目標について納得のいく話し合いをすることも、カウンセリングの効果を高めることに役立つと考えます。
(Q-M-13)

事業場内に相談窓口を設置する際に具体的にどのようなことに留意したらいいでしょう?

厚生労働省は、平成18年3月31日に「労働者の心の健康の保持増進のための指針」を公表しており、その中で事業場内産業保健スタッフ等や事業場外資源による相談窓口の設置や対応について記述しています。
事業場内に相談窓口を設置する場合は、以下の点に注意が必要です。

  1. 相談内容に関する個人情報への配慮が必要です。産業医等の産業保健スタッフが相談窓口となる場合、健康情報を含む個人情報の取扱いに特に留意する必要があります。産業医等が個人情報を事業者等に提供する際は、本人の同意を得たうえで、提供する情報の範囲と提供先を必要最小限とすることが必要です。また、相談に来た労働者の健康を確保するため、就業上の措置を事業者が行うために必要な情報が的確に伝達されるよう、情報を集約・整理・解釈するなど適切に加工した上で事業者等に提供する必要があります。

  2. 相談窓口の設置を十分に周知することが必要です。労働者にとって普段から相談窓口を意識しているわけではなく、困ったときに初めて相談することが考えられます。そのため、労働者への周知は定期的に、かつ、さまざまな機会を捉えて、繰り返し行ったほうがよいでしょう。また、労働者の不調に気がつくのは家族であることも多く、社内報や健康保険組合の広報誌等を通して相談窓口について家族へ周知しておくことも大切です。

  3. 常時使用する労働者が50人未満の小規模事業場の場合は、産業医等の産業保健スタッフがいないことがあります。その場合は、衛生推進者が中心となるとともに、地域産業保健推進センター等の事業場外の資源を十分に活用して、相談窓口機能を整えておくことが大切です。それぞれの地域の地域産業保健センターの連絡先は、こちらのページをご参照ください。

(Q-M-14)

管理監督者が部下のメンタルヘルスの問題で困った際には誰に相談すればいいのでしょう?

管理監督者は、部下の日常的な変化を最初に気がつくことも多く、メンタルヘルスの問題では対応のキーパーソンになることも多いといえるでしょう。相談先として以下が考えられます。

  1. 事業場内の健康管理室(産業保健組織)等の産業保健スタッフ
    事業場内に健康管理部門がある場合は、まずはそこに相談することがよいでしょう。産業医や保健師等の産業保健スタッフが、メンタルヘルスの問題を含む健康についての最初の窓口となっていることが多いといえます。

  2. 事業場内の衛生管理者等
    健康管理部門が常駐ではない等のため直接相談がしにくい場合は、事業場の衛生管理者を通して相談するのがよいでしょう。事業場によっては衛生管理者が相談窓口を担当していることもありますので、確認してみましょう。

  3. 事業場外の相談窓口等
    事業場により、外部の専門的な相談窓口と契約をしている場合があります。また、常時使用する労働者が50人未満の小規模事業場では地域産業保健推進センター等を活用することが推奨されています。このような情報も事業場の担当者に確認してみましょう。なお、地域産業保健センターの連絡先は、こちらをご参照ください。

  4. 事業場の人事総務担当者等
    上述したような対応が難しい場合は、事業場の人事労務担当者や安全衛生の担当者に相談をしてみましょう。メンタルヘルスの問題では労務管理上の問題(欠勤や遅刻等)が発生していることも少なくありませんので、勤務管理上のルールを確認しながら対応することも大切です。

管理監督者が一人で対応できることには限界があります。一人で背負いこまないことが大切です。また、個人情報についてはプライバシーに配慮しましょう。
(Q-M-16)

会社が契約している相談機関の電話相談やメール相談を利用したいのですが、相談内容などは会社に分かってしまうのでしょうか?

会社が契約している相談機関などでは一般的に、問題解決のために相談・助言・援助を行うための専門的訓練を受けた公認心理師や臨床心理士などの有資格者が対応します。これらの専門家は、相談者の人権や生命を守るために遵守すべき職業倫理についても十分に教育を受けていますが、なかでもこの職業倫理において特に重要な項目の1つに『守秘義務』があります。

『守秘義務』とは、職務上知りえた秘密や相談内容を正当な理由なく他人に漏らしたり利用したりしてはならないというものです。医師などの医療関係者の場合は刑法などに定めがあり、さらに労働安全衛生法にも健康診断や面接指導の実施の事務に従事した者に対して守秘義務が定められています。カウンセラー資格の1つである公認心理師も国家資格ですので、他の医療業務従事者と同様、倫理的義務だけでなく法的責任も負っています。

相談に当たっては、何よりも相談者と専門家との間の信頼関係が基礎となります。これを保障するのが守秘義務です。この義務に違反すれば、信頼関係が壊れ、相談自体が成立しなくなります。
(Q-M-17)

私は派遣労働者ですが、派遣先の産業保健スタッフに相談できるのでしょうか?

派遣労働者の健康管理(健康への支援)は、派遣元事業場と派遣先事業場との間で役割分担をすることが法で定められています。一言で言えば、現場での具体的な仕事に関連する事柄については派遣先、それ以外の健康問題は派遣元が主として担当することになっています。わかりやすい例が健康診断で、年に1度の定期健康診断は、派遣元が費用を出して行い、有機溶剤などの作業現場の有害因子による健康影響をチェックする特殊健康診断は、派遣先に実施義務があります(両者が連携して実施すべき事柄もあります)。ストレスや心の健康問題に関する相談の場合も、それに準じて考えればよく、派遣元の産業保健スタッフに相談するのが一般的といえましょう。派遣先事業場で、相談室が相談の内容にかかわらず派遣労働者にも解放されており、ご本人が希望するのであれば、利用してもよいと考えられます。ただし、その場合、相談内容がどの範囲に知られるのか(一切誰にも知られないのか、上司に当たる人には一部報告されるのか、派遣元事業場にも伝えられるのかなど)をあらかじめ確認しておき、納得した上で利用することをお勧めします。

(Q-M-18)

家族に晩酌の習慣がありますが、最近はよく眠れないからと寝酒として飲むようになり、もう1か月になります。このまま様子を見ていても大丈夫でしょうか?

睡眠の問題が起きていると思われます。また、アルコールを不眠やイライラの解消のために薬物として使用するのは、状態の悪化や依存症などを招くためおすすめできません。まずは会社の産業保健スタッフ、あるいは外部の精神科や心療内科などの専門機関を受診し相談されることをおすすめします。また、身体疾患による睡眠障害も起こりうるので、かかりつけ医への相談もおすすめです。

たまに飲酒することで寝入りをよくする効果はありますが、常用したり大量に飲んでしまったりするのはかえって逆効果であり、睡眠の質が悪くなってしまいます。また、アルコールは耐性を生じやすいので、毎日飲んでいるとだんだん量を増やさないと眠れなくなってしまい、アルコール依存症や肝臓などの臓器障害を起こす危険もあります。睡眠薬よりお酒のほうが安全と思われるかもしれませんが、快眠のためには飲酒(寝酒)よりも、医師の指示にしたがって服用する睡眠薬のほうがはるかに効果があり安全です。
(Q-M-19)

仕事が忙しく帰りが遅くなります。妻は出産後間もないため、私が会社にいる時間が多いと、妻にとって大変負担も大きく、また私も帰宅しても気が休まりません。どのように仕事と生活のバランスをとればいいのか困っています。

仕事と家庭生活をきちんと両立させようとすると、時間もエネルギーも足りずに疲れてしまいますね。長い職業人生の中では、その時々で、仕事と家庭生活とにかける時間やエネルギーのバランスが変わっていきます。このバランスの調和を考えていくことをワークライフバランスと呼んでいます。仕事と家庭生活のどちらにも100%なのではなく、子どもの成長やその時々のライフステージに合わせて、柔軟にそのバランスを変えていくことが、あなたと家族の健康のために、とても大切なことです。

家庭での負荷も増える時期は、夫婦間で話し合いお互いの役割分担なども見直してみるのも効果的です。職場の理解や協力が必要であれば、まずは上司に事情を伝えて相談したり、育児を支援する会社の制度がある場合には利用して、ライフステージに合った働き方を考えるのもよい方法です。

また、夫婦2人の時間とエネルギーだけで考えずに、身近な人からのサポートを得て、家庭内の時間やエネルギーを補強することも有効です。
(Q-M-21)

心の病はストレスにより生じるものですか?

心の病気に限らず、心身の病気はストレスで生じるものが少なくありません。特に心の病の発症にはストレスの関与が大きいと考えられます。同じような場面でも、人によって感じるストレスの大きさは異なり、心の病になりやすい人となりにくい人がいます。
(Q-M-22)

うつ病が労災として認められると聞いたのですが、その要件はどういうものでしょうか?

うつ病等の精神障害は、外部からのストレス(仕事によるストレスや私生活でのストレス)とそのストレスへの個人の対応力の強さとの関係で発病に至ると考えられています。発病した精神障害が労災認定されるのは、その発病が仕事による強いストレスによるものと判断できる場合に限ります。

仕事によるストレス(業務による心理的負荷)が強かった場合でも、同時に私生活でのストレス(業務以外の心理的負荷)が強かったり、その人の既往歴やアルコール依存など(個体的要因)が関係していたりする場合には、どれが発病の原因なのかを医学的に慎重に判断されます。詳しくは、厚生労働省パンフレット「精神障害の労災認定」をご参照ください。
(Q-M-23)

心の病気で休業した場合、その間の生活保障はあるのでしょうか?
健康保険組合の被保険者は、所定の申請書に医師の労務不能という意見及び事業主の不就業日数とその賃金についての証明をもらって申請すると、連続3日の休業(待機期間という)後の4日目から1年6か月(退職後も含む)までは標準報酬日額の2/3に相当する傷病手当金が支給されます。企業の手当や他の公的給付が支給されている場合は、その分が減額されます。業務上疾病の場合は、労災保険からの休業給付があります。身体の病気も同様です。

(Q-M-24)

心の病気の診断はどのようにしてつけるのでしょうか?

糖尿病なら血糖値、高血圧なら血圧値、骨折ならレントゲン写真など、多くの病気には診断に結びつきやすい検査があります。しかし、心の病気(精神疾患)では、そのような絶対的な検査手段がありません。精神科の疾患の診断の中心は問診(生活史、現症、環境、家族歴など)や視診です。現在の症状(現症:気分の落込みがある、眠れない、恐怖感が強い、など)の訴えだけではありません。その症状が、どのような基盤に生じたか、どのような経過で生じたか、どのような契機で生じたか、などを整理して解釈します。元来の性格・家族の状況・学歴や職業歴なども大切です。また、本人の困っているいくつかの症状が、どのような組み合わせであるかを考えます。症状の根底に、体の病気やそれに対する処方薬の影響がないかも検討します。さらに、症状がどの位の経過・継続があるのか、その強さ・深さの程度がどれくらいか、キッカケとなるものがあるかなども聞き取ります。本人にかかった負担に対する反応としての症状の現れ方が、普通考えられる程度と比べ、過大か過小かなども考慮します。以前に同様の症状があるかないかも参考になります。これら問診から得られる情報が診断の主体ですが、顔つきや表情、話し方や言葉遣い、身振りや動作、など視診も診断を考えるには大事なものです。体格、体重変化、血圧、脈拍、食欲、便通、月経、なども参考にします。睡眠の具合などは重要です。握力や歩行、腱反射、瞳孔の具合など神経学的な検査も必要に応じて参考にします。また、心理検査・心電図・頭部CTスキャン検査・脳波・血液検査なども診断に役立ち、今後は白血球遺伝子検査や光トポグラフィー検査などの有効性も期待したいところです。
(Q-M-25)

過労死等予防対策関係

異動に伴い通勤時間が長くなり、その分睡眠時間が短くなっています。残業時間はかわらないのですが、過重労働といえるでしょうか?

一日は24時間ですので、通勤時間が長くなったり、残業時間が増えれば、犠牲になってしまうのは休養や睡眠の時間になります。この睡眠時間が十分に確保されないと、”心とからだ”の健康状態に支障をきたし、脳出血などの脳血管疾患や心筋梗塞などの虚血性心疾患等、あるいはうつ病などのメンタルヘルス不調が起こりやすいといわれています。過重労働の範疇に入るかどうかは通勤時間ではなく、時間外労働(残業と休日労働)や責務の重さや就労形態の実態によって判断されるものです。

通勤を含む仕事での睡眠不足を解消するため、残業を少なくするような対策やテレワークの制度を利用するなどが、過重労働による健康障害予防に必要な対策だと考えられます。
(Q-K-18)

同じ長時間労働をしても、健康障害を起こす人と起こさない人がいると思います。どうしてですか?

長時間労働による健康障害として、脳・心臓疾患やメンタルヘルス不調などがあります。脳・心臓疾患に関していえば、高血圧、脂質異常症(高脂血症)、糖尿病、肥満、喫煙などの危険因子があり動脈硬化を起こしやすいような人は、個人差はありますが、長時間労働による身体的負荷により脳や心臓の病気にかかりやすいと言えます。ただ、現在そういった危険因子を持っていない人においても、長時間労働による結果として睡眠不足や生活リズムの不規則性などから高血圧などの生活習慣病を生じ、将来的に脳・心臓疾患になってしまう可能性があります。したがって、危険因子があるか否かに関わらず、日頃からの健康管理が大切です。

メンタルヘルス不調に関しても、長時間労働はもちろん、仕事の質(緊張性の高い業務、責任の重い業務など)、職場環境、人間関係、仕事に対するモチベーション、ストレスを溜めやすい性格、考え方の癖、家族・上司・同僚の支援の有無など、さまざまな因子が関係しており、その過程で結果的にメンタルヘルス不調が起こってくると思われます。つまり、どのような人であっても条件がそろえば心の調子を崩す可能性があり、労働時間やその他の因子にも注意して、未然に健康障害を予防していく必要があります。
(Q-K-20)

労働者200名程度の中小企業の事業主です。過重労働者の面接指導で、対象者の基準を決めたいのですが、どのようにすればよいでしょうか?
長時間労働を行う者に対する産業医等の医師による面接指導は、労働安全衛生法の規定によりすべての事業主(会社)に課せられた義務として行われますが、その対象者は労働時間が「1週間当たり40時間を基準として、これを超えた時間が1か月当たり80時間を超えている」場合で「疲労の蓄積が認められる」者とされています。この場合の時間外労働には休日労働時間も含みます。また、この面接対象の基準に該当しない従業員であっても健康への配慮が必要な者については、会社は面接指導又はそれに準ずる措置を行うように努めなければなりません。この対象として、1 時間外・休日労働が月80時間を超えている者、2 時間外・休日労働時間が月45時間を超える労働者で、健康への配慮が必要と認めた者、が求められています。

また、研究開発業務従事者については、時間外・休日労働が月100時間を超えている者、及び時間外・休日労働が月80時間を超えており疲労の蓄積がある面接を申し出た者、高度プロフェッショナル制度適用者については、1週間当たりの健康管理時間が40時間を超えた時間について月100時間を超えた者について、面接指導の実施が義務付けられています。

面接指導に準ずる措置としては、例えば保健師等による保健指導を行うことや、チェックリストを用いて疲労蓄積度を把握した上で、事業場における健康管理について産業医から助言指導を受けるとともに産業医面接の対象者を絞り込む、などが考えられます。

これらの基準は事業場の衛生委員会等で審議しておくことが望まれます。
(Q-K-21)

同僚の半分も仕事をしていないのに、能率が悪いため、長時間労働になっている部下がいます。どうすればいいでしょう?

健康維持と生産性向上のため、「長時間労働はなくしていかなければならない」という認識のもと、原因を見極め本人の適性を考えながら改善に向けた指導を行うのも管理監督者の役割です。叱りつけるのではなく、本人の言い分にもしっかり耳を傾けながら、改善への意欲を引き出すような対応を心がけましょう。場合によっては配置転換なども考慮しつつ、柔軟に対応するようにしましょう。
(Q-K-22)

疲労の蓄積度というのはどのように測るのでしょうか?

疲労の蓄積度は、現在のところ厚生労働省が公表した「労働者の疲労蓄積度診断チェックリスト」を用いて測定されるのが一般的です。労働者の疲労蓄積度診断チェックリストには、「労働者の疲労蓄積度自己診断チェックリスト」と「家族による労働者の疲労蓄積度チェックリスト」があります。また、インターネット上でできる「働く人の疲労蓄積度セルフチェック」(こころの耳サイト内)もあります。

しかし、自覚症状と勤務の状況評価が乖離する場合もあるので、過重労働に係る面接指導では医師による問診結果も総合して評価されます。
(Q-K-24)

従業員35名の事業所です。過重労働対策は必要でしょうか?

過重労働対策は、事業者が講ずべき措置とされており(「過重労働による健康障害防止のための総合対策について」令和2年4月1日基発0401第11号・雇均発0401第4号)、人数にかかわらず実施する必要があります。

事業場で産業医を選任しておらず、面接指導を実施する医師を確保することが困難な場合には、地域産業保健センター(地さんぽ)を活用することができます。
(Q-K-26)

当社では月80時間以上の時間外労働を行ったものについては、産業医との面接指導を申し込めるような体制作りを行いましたが、面接希望者があまりでません。このままでよいでしょうか?
時間外・休日労働が月100時間を超え、かつ、疲労の蓄積が認められる労働者に対して、産業医は面接指導の申出を行うよう勧奨することができる(労働安全衛生規則第52条の3第4項)とされています。また、申出にかかわらず時間外・休日労働時間が1月当たり100時間を超える労働者又は時間外・休日労働時間が2ないし6月の平均で1月当たり80時間を超える労働者については、医師による面接指導を実施するよう努めるものとされています。さらに、時間外・休日労働時間が1月当たり45時間を超える労働者で、健康への配慮が必要と認めた者については、面接指導等の措置を講ずることが望ましい(過重労働による健康障害防止のための総合対策)とされています。

ご質問の場合では、面接指導を希望していないものに対して申出の勧奨をするなど、面接指導を実施するように努める必要があります。また、面接対象者の選定基準においても、月45時間以上の時間外労働を行ったものについては産業医との面接指導を申し込めるようにするのが望ましいといえます。

(Q-K-28)

医師の面接指導の対象となる労働者には、どのような条件があるのでしょうか?

面接指導の対象者は、労働時間が「1週間当たり40時間を基準として、これを超えた時間が1か月当たり80時間を超えている」場合で「疲労の蓄積が認められる」者とされています。ただし、医師の面接指導は月の労働時間を把握してから行われ、早くても翌月の実施となるため、おおむね2か月分の状況を踏まえた面接となることから、医師が必要ないと認めた場合は2か月連続で受ける必要はありません。また、健康診断結果や疲労蓄積度チェックリストの結果等に基づき、医師が、健康上問題がないと認めた場合も対象としなくてよいこととされています。

なお、いずれの場合も労働者からの書面や電子メール等による申出に応じて面接指導が行われることになっていますが、事業者は、1 労働者が自己の労働時間数を確認できる仕組みの整備と、時間外・休日労働時間が月80時間を超えた労働者本人に対しその超えた時間に関する情報の通知、2 申出様式や申出窓口の設定等の体制整備および申出記録の保存、3 作業者への申出体制の周知、を図る必要があります。さらに申出を行うことによる不利益な取扱いの禁止などが必要になります。ただし面接基準に該当する者の全員を対象として呼び出す場合に限り、面接拒否をもって申出がなかったものとみなしてよいこととされています。これらの基準は事業場の衛生委員会で審議しておくとよいでしょう。

また、家族や職場の者が労働者の不調に気がついて相談や情報を受けた事業者は、プライバシーに配慮しつつ当該労働者に面接指導を受けるよう働きかけることが望まれます。あるいは、産業医が健康診断結果や、家族や職場の者からの相談や情報を受ける等により、面接指導を受けることが適当と判断した場合は、当該労働者に申出を行うよう勧奨することが望まれます。
(Q-K-30)

長時間労働している従業員がいるので、医師による面接指導を受けさせたいのですが、どのようにすればいいでしょうか?

長時間労働している従業員に対して、医師による面接指導等を実施するためには、衛生委員会等でその手続きの流れや対象者の基準などの事項を調査審議した上で整備する必要があります。面接指導をする医師は、事業場に産業医が選任されていればその産業医と連携するとよいでしょう。また、選任されていなければ地域産業保健センターを利用することができます。なお、面接指導をする医師は、上記の他にかかりつけ医、病院・診療所の一般の医師でもよいこととなっています。

面接指導を受けさせるためには、労働者と管理監督者に過重労働による健康障害防止の必要性をしっかりと理解させるよう事業場内での啓発活動を行うことが肝要です。
(Q-K-32)

面接指導後の医師の報告書にどのように対処すればいいでしょうか?

過重労働の面接指導を終えた医師からは、報告書(書式例)が事業者に向けて提出されます。この内容に対して、事業者はその実施の必要性を勘案し適切な対応をする必要があります。

労働安全衛生法第66条の8第5項「事業者は、前項の規定による医師の意見を勘案し、その必要があると認めるときは、当該労働者の実情を考慮して、就業場所の変更、作業の転換、労働時間の短縮、深夜業の回数の減少等の措置を講ずるほか、当該医師の意見の衛生委員会若しくは安全衛生委員会又は労働時間等設定改善委員会への報告その他の適切な措置を講じなければならない」とあることから、当該労働者の作業環境、作業条件、健康管理の観点から、指示事項を参考にして措置を講じる義務があるのです。

医師による指示事項が具体的でなかったり、労働者や職場の実情から実施困難であるような場合には、医師の意図するところを適切に理解したうえで実施可能な内容の措置を講じることになります。実施においては、事業者は本人と面接し、医師からの報告書の内容を伝えるとともに、これから実施する措置内容と措置期間等について説明をし、本人の理解と同意を確認しましょう。また措置期間の終了時には、再度同医師による面接を実施して今後の対応措置について当該医師に相談しておくとよいでしょう。
(Q-K-33)

面接指導の記録を会社はどのように管理すればよいのでしょうか?

面接指導の記録は、法的にも事業者の責任で管理が必要です。具体的な管理手順については、産業医を選任している事業場(50人以上の労働者がいる場合)と産業医選任していない事業場とでは、おそらく手順に違いが出てきますので、両者に分けて考えてみたいと思います。

産業医が選任されている事業場の場合は、面接指導記録の保管は産業医の主導にて行うのがいいでしょう。面接指導記録は、通常産業医によって作成され、内容には業務上の事項や個人の健康問題、機微な情報等も入る可能性があります。以上から、面接指導記録も定期健康診断記録と同様の管理レベルの扱いをすることとして、産業医の管理下におくことをお勧めします。実際の保管場所ですが、産業医が非常勤の場合なら人事部等のキャビネの一部を借りて、そこに健診や面接指導等を含めた健康情報等を保管します。キャビネの鍵は、人事部の特定の人が管理することにして、キャビネに保管されている情報へのアクセス権については、産業医以外に、産業医の了解の元で、人事部の特定者のみがアクセスできるようにしておくとよいと思います。

産業医を選任していない事業場では、面接指導記録は地域産業保健センター(地さんぽ)の所属医師や事業場との契約医師等によって作成されます。面接指導の記録がどのようなメディア(メール、紙面)で事業場に届くかにもよりますが、到着した記録は人事部情報として特定の指名された人が保管するのがいいでしょう。いざというときには、さっと引き出せて参照できる機能が必要です。

なお記録の保存期間は5年間です。
(Q-K-34)

会社の衛生委員会の活動の中に面接指導の結果をどう反映すればいいでしょうか?

事業者は、「医師の意見の衛生委員会若しくは安全衛生委員会又は労働時間等設定改善委員会への報告その他の適切な措置を講じなければならない」(労働安全衛生法第66条の8第5項)とされていることから、医師による面接指導の結果については定期的な衛生委員会への報告が必要です。また、面接指導の内容や結果については個別性が伴うので、委員会への報告の際にはプライバシーに配慮することが必要です。判定区分ごとの該当人数にとどめる、職場単位ごとに集計する、というように、何をどのように表現して報告するかについては事前に衛生委員会事務局と産業医とで打ち合わせをしておきましょう。面接指導対象者に、疲労度調査や問診等を実施している場合、集計し、疲れや体調の傾向についてコメントするのもいいでしょう。

面接指導はあくまでも長時間労働の結果として発生した事後措置に過ぎません。衛生委員会で重要なことは、委員全員がつねに事業場内の長時間労働の実態について把握し、その対策について話し合い、実行することです。
(Q-K-35)

主人の帰りが毎日のように深夜になっています。過労死にならないようにするため家族としては、どのようなことができますか?

1 家族の心配を本人へ伝える
 過重労働になると、自分自身を冷静に見ることができなくなっている場合があります。まず、働きすぎで、からだを壊してしまうのではないか心配しているということを本人へ伝えましょう。また、どうすれば時間外労働を減らすことができるのか、一緒に考える姿勢で相談にのりましょう。

2 持病などで継続的な治療を受けている場合、通院をきちんとさせる
 薬の内服状況を確認してください。また、忙しさで通院が疎かになっている場合があります。持病がある場合は、持病をしっかりとコントロールすることが大切です。

3 体調を尋ねる
 何か心配な症状がないかを本人に尋ね、特に継続的で苦痛な症状があれば早急に病院を受診させましょう。また、体調が悪く病院を受診するのであれば、上司にもその旨を連絡しましょう。

4 残業時間をきちんと記録し、会社の産業医などへの相談を本人へ勧める
 月の残業時間が45時間程度を超えると疲労が蓄積し、80~100時間を超えると明らかな疲労の蓄積が出て、過労死になどにつながる可能性が出てくると言われています。法律では、時間外・休日労働時間が月80時間を超え、疲労が蓄積していると申し出た方に対して、会社は産業医等による面接指導を行い、仕事上の配慮が必要かどうか確認することになっています。また、残業時間が80時間を超えていなくても、本人が希望すれば同じような対応をすることが会社に求められています。このような仕組みを本人に伝え、会社の産業医などに相談するように本人を誘導してみてください。

5 上司に、本人の状況や家族の気持ちを伝える
 職場の管理者には、部下の健康状態に配慮して業務をさせる責任があります。しかし、本人が状況を率直に伝えないと、上司は深刻な状況を明確に把握できず、充分な業務の調整を行うことができないことがあります。体調に問題があったり不安がある場合には、率直に上司に伝えるように家族から誘導してみてください。
(Q-K-36)

脳・心臓疾患(脳血管疾患及び虚血性心疾患等)から職場復帰した従業員には、再発防止を含めどのような配慮が必要ですか?

まず、最初に注意しておくべきことは、脳疾患にも脳梗塞や脳出血、くも膜下出血など多彩な疾病が含まれていること、また、同じ疾病(たとえば脳梗塞)でもその重症度によって後遺症等はさまざまであり、ステレオタイプ配慮では十分ではないということです。診断名即一定の配慮とは限らないので、産業医や主治医のアドバイスを受け、一人ひとりの状況に応じた適切な配慮をすることが望まれます。

なお、一般的には次のような配慮が望まれることが多いようです。

(1)残業禁止などの労働時間に関する配慮
特に、職場復帰直後は直ちに従前のように体調が回復しているとは限らないので、一定の配慮が望まれます。

(2)労務内容に関する配慮
後遺症の程度によっては、高所作業の禁止(平衡能や運動能の障害時)などの就業制限が必要になることがあります。

(3)通院の確保(受診時間や就業場所)のための配慮
リハビリテーションの継続のほかにも、発症の基礎となった高血圧のコントロールなどのために加療継続が必要な場合が多く見られます。

(4)その他の配慮
この中には、薬剤服用中などに必要な特別の配慮が含まれます。たとえば、眠気が強く引き起こされる薬剤服用中の場合には、危険作業は避けたほうが望ましいのですが、これは医師からのアドバイスをもとに行うべきでしょう。
(Q-K-40)

事務所における過労死防止のため、作業環境の改善は役立ちますか。具体的にはどうしたらよいでしょうか?

過労死の認定基準としては労働時間が最も重要ですが、認定基準に満たない労働時間であっても、時間外労働時間が月80時間程度の場合は過労死の可能性を否定できないことから、労働時間以外の負荷要因の有無などを参考に判定されることになっています。このなかに作業環境も含まれていますので、作業環境の改善は過労死防止に役立つといえます。

具体的には、温度環境、騒音環境、時差を伴う移動の頻度などが挙げられています。執務室内の冷暖房も度を超すとストレス源となりますので注意が必要です。また、狭い室内に多くの人がすし詰めになっている執務室や、悪臭、周囲の騒音、机上照度が十分でない執務室など、劣悪な作業環境は心身の疲労を増加させます。逆に、快適な作業環境は心身のストレスを軽減しますので、過労死防止のために快適な職場環境・作業環境の確保はとても大切です。

事業者が快適な作業環境を作ろうとするときは、「事業者が講ずべき快適な職場環境の形成のための措置に関する指針」(平成4年7月1日労働省告示第59号。平成9年9月25日労働省告示第104号により一部改正)を参考にするとよいでしょう。
(Q-K-41)

過労死防止のため、生活習慣の改善はどのようにしたらいいですか?

過労死等は、過労死等防止対策推進法第2条により、以下のとおり定義されています。

・業務における過重な負荷による脳血管疾患・心臓疾患を原因とする死亡
・業務における強い心理的負荷による精神障害を原因とする自殺による死亡
・死亡には至らないが、これらの脳血管疾患・心臓疾患、精神障害

“業務による過重な負荷”としては労働時間が重視されており、過労死等の防止は国の取り組みの中でも重点的な課題です。一方で、過労死と生活習慣病の関係が否定できるものではなく、労働者個人の立場では「過労死は生活習慣病と無関係ではなく、よい生活習慣を保つことは大切だ」と考えるべきです。

それでは、過労死を防止するために生活習慣のどのような点に気をつければいいでしょう。過労死のうち心臓病は、仕事や生活習慣との関係が知られています。具体的には、高血圧や高脂血症、糖尿病などの生活習慣病や喫煙は明確に発症のリスクだということです。さらに注意すべき点は睡眠と抑うつです。睡眠時間が6時間未満の場合はあきらかに発症のリスクが高まります。また、抑うつは自殺だけでなく、心臓病にもよくない影響があるという報告がされています。

上記のことから、過労死防止のためにも、生活習慣病は医師等のもとで適切に管理する、その上で、a.生活習慣病の予防・改善のためバランスのよい食事と適度な身体活動をすること、b.禁煙を心がけること、c.睡眠時間を確保してストレスや抑うつ感をため込まないこと、が大切です。つまり、適度な身体活動と禁煙、さらには充分な睡眠でリフレッシュを心がけることが過労死防止の大切な生活習慣のポイントと言えるでしょう。
(Q-K-42)

働きすぎると健康に障害がでるのでしょうか?

日本人の死因の約1/3を占める脳血管疾患(脳出血、くも膜下出血、脳梗塞等)や虚血性心疾患(心筋梗塞、狭心症等)は、血管病変の形成、進行及び悪化により発症します。

働き過ぎが長期に及ぶことにより、休息や睡眠の不足から疲労が蓄積し、血管病変をその自然経過を超えて著しく増悪させ、脳血管疾患や虚血性心疾患が発症することが知られています。これらの疾患の労災認定基準では、時間外労働(休日労働を含みます。)について、1か月当たりおおむね45時間を超えて時間外労働時間が長くなるほど、業務と発症との関連性が徐々に強まり、発症前1か月間におおむね100時間又は発症前2か月ないし6か月にわたって、1か月当たりおおむね80時間を超える時間外労働が認められる場合は、業務と発症との関連性が強いとされています。

また、長時間労働により疲労やストレスが蓄積すると、仕事などに対するモチベーションの低下やメンタルヘルス不調に陥ることが社会的注目を浴びています。
(Q-K-2)

毎月70時間程度の時間外労働をしています。産業医の面接には呼ばれませんが、かなり疲労を蓄積している気がします。どうしたらよいでしょうか?
複数月にまたがり連続して長時間の時間外労働に従事し、かなりの疲労の蓄積を自覚しているということですから、産業医の面接指導を受けたほうがよいと思われます。

長時間労働を行う者に対する産業医による面接指導の対象者を選定する基準として、労働安全衛生規則で定める基準や事業場で定める基準に該当しない場合であっても、事業者に面接指導の希望の申出を行うことで対象となる可能性があります。この際に、申出を行ったことで不利益な扱いをすることを禁じることが求められています。また、産業医の業務である健康相談として、産業医に直接相談することも可能です。この場合、事業場に保健師等がいる場合は、保健師等に相談して産業医に情報を速やかにつないでもらうのも良い方法です。

(Q-K-11)

毎月90時間程度の時間外労働をしています。昔からこの働き方で自分はそれほど負担とは思っていませんが、毎月のように産業医の面接に呼ばれます。意味があるのでしょうか?

毎月定常的に相当程度の時間外労働をしていて負担とは感じないということですから、気力・体力ともに充実した素晴らしい労働生活を送っていることと思われます。ただし、注意していただきたいのは、このようなときは仕事に集中しているばかりではなく、もしかすると疲労や身体症状への自覚がないだけかもしれない、ということです。

長時間労働による心身の疲労は自覚できない場合も多く、従業員の健康状態と職場の状況をよく知る産業医による、客観的な視点での問診が決め手となって見つかることも少なくありません。また、若い時はがむしゃらにできたことも、年を経るに従い体力の衰えや、背負った責任の重さなどの周辺事情が変化して、知らず知らずに重圧となっていることもあります。血圧変動や睡眠リズムの乱れはもとより、食生活の乱れや体重変動なども身体バランスを崩すきっかけとなる可能性があります。また、長時間労働が恒常化していると、何かのきっかけで急速に抑うつ状態に陥る危険性もあります。毎月産業医面接に呼ばれるということは、会社も産業医もあなたの健康を心配してのことと思われます。ぜひ産業医の面接を受けていただき、心身の状態をご自分でも把握できるよう、いろいろと相談してみてください。
(Q-K-12)

心身の不調により、産業医に相談の上、1か月の残業を10時間までとしてもらっていますが、上司はあまりそのことを認識しておらず、実際は大幅に超えた労働をしています。どうしたらいいでしょうか?

傷病等による就業制限に関して、産業医は事業者(会社)に対して意見を出す立場で、実行するのは、事業者(会社)やその権限が移譲されている上司です。産業医の意見が適切に事業者(会社)に伝わっていない可能性がありますので、再度、産業医に相談してみるとよいでしょう。
(Q-K-17)

自殺予防対策関係

夫がうつ病で通院中ですが、うつ病の人は自殺しやすいと聞きとても心配です。何に気をつければいいでしょうか?

自殺をほのめかす言葉を口にする、遺書を書く、自殺の道具を準備するなどの具体的な自殺への準備は当然ですが、自分の身の回りを整理する場合も危険なサインといわれています。うつ病で治療を受けている場合には、気分が沈む、涙もろくなる、仕事の能率が悪くなるなどの症状の悪化がみられ、「生きていても仕方がない」という自殺をほのめかす言葉のほかに、「皆さんに申し訳ないことをした」などと自分を責める言葉が聞かれた時も注意が必要です。また、酒量が増えたり、糖尿病を患っていてもそれまでは自己管理がきちんとできていたのに、食事療法や運動も止めてしまうなどという変化も危険なサインです。

これらのサインを感知したときの対処としては、相手に対して心配していることを伝え、死にたいと考えているかと尋ねてください。そして相手の話によく耳を傾け、絶望的な気持ちをまず受け止めるために聞き役に徹してください。そして、主治医によく相談し、場合によっては入院治療を考慮したほうが良い場合もあります。

うつ病の経過の中で自殺の可能性は常にあるといえますが、特に注意が必要な時期としては、病状が非常に悪くなった時、病状が少し改善してきた時が危険であるといわれています。病状が悪い時は自殺を考えていたとしても実行できないですが、少し良くなってくると行動力が少し戻ってくるため、そのような状態のときに自殺を考えると実際の行動に至りやすいといわれています。また、病状がかなり回復して環境が変わる時期、例えば仕事を休んでいた人が再び職場に戻るような時期、も危険であるといえます。このときは、環境の変化とともに、いったん回復した病状が不安定になり自殺が起こりやすいといわれています。
(Q-S-1)

主人が最近「死にたい」と言い出しましたが、家族としてどのように対応すればいいのでしょうか。

まずは「なぜ死にたいのか」、また「なぜ死ななくてはならないのか」、本人の話にじっくりと耳を傾けることが大切です。おそらく「死にたく」なるくらい悩んでいることがあるはずですから、その悩みを聞いてあげましょう。

そして、一人で悩まず、その解決方法を一緒に考えて、家族としてできること、あるいは他に相談して解決する可能性を、押しつけにならないように寄り添いながら考えていく姿勢を示すことです。悩みを解決する方法として死ぬ以外の他の選択肢を強調し、本人にどのような理由であっても家族として「あなたには死んで欲しくない」、「悩みがあるなら、一緒に考えていきたい」、「早まったことはするな。自殺して死んでしまうようなことがあったら、我々も生きていけない」となるべく具体的に、死にたい気持ちに目を背けず自殺をしないことを固く約束するべきです。

また、本人がうつ病などの精神疾患にかかっている可能性が高いので、なるべく目を離さないようにしてできるだけ早く精神科に受診することをおすすめします。本人が受診に拒否的な場合は、会社の健康管理室があればその産業保健スタッフや地域の保健所で相談することが可能な場合もあります。≪ご家族にできること≫も参考にしてください。
(Q-S-6)

同僚の手首に引っかき傷が多数ありました。この人が近い将来本当に自殺してしまう可能性はあるのでしょうか?

手首にひっかき傷があっても古傷であれば、どのようにしてできた傷かわからないので、あまり詮索しない方がいいでしょう。ですが、手首に新しいひっかき傷が頻回にできるようであれば、精神的に不安定なのかもしれません。その同僚が自殺する可能性については、そのひっかき傷の程度にもよりますし、その時の状況によりますので一概に判断できませんが、その同僚の方がいつもと違う様子で、悩んでいるようであれば、同僚として話を聞いてあげることで悩みが解決する糸口になるかもしれません。そこまでプライバシーに立ち入れないのであれば、上司や産業医に現時点での同僚の様子を報告し、同僚としてどのように接した方がいいか、相談してはいかがでしょうか。
(Q-S-7)

自殺未遂をした部下がいます。それ以来、腫れ物を触るような対応になり、周りの方が疲れています。どうすればいいでしょうか?

自殺企図者の多くは何らかの精神疾患、特にうつ病である場合が多いため、現時点で精神科に通院加療中の有無を確認する必要があります。通院していなければ、精神科の医療にうまくつなげる必要があります。通院中であれば、現時点で主治医からどのような助言をされているのか、本人に聞いてみてください。

主治医の下で治療を受け、体調が落ち着いているのようであれば、日常の勤務についてはあまり神経質にならず、他の部下と同様に接することが大切です。まわりの部下の方が神経質になっているようであれば、「現在は安定しており、他の社員と同じように接して欲しい。もしいつもと違う、何か変わったことがあれば、上司の私に教えて欲しい」と伝えてもいいと思います。
(Q-S-8)

家族が自殺未遂しました。どのように接すればいいのでしょうか。また、治療が必要なのでしょうか。

まずは本人に寄り添ってください。そして、そこまで追い詰められた気持ちになった時は、これからは相談し欲しいことを伝えましょう。次に、自殺未遂に至るまでに本人が、うつ病などの精神疾患にかかっていた可能性が高いので、早まった行動をしないように目を離さず、早めに精神科の受診をさせることを考えましょう。本人が受診に拒否的な場合はうつ病になる正常な判断力が低下して、正しい選択肢が見えなくなり、誤った判断をして自殺してしまうことがあることも本人に伝え、家族としては心配なのでぜひとも受診して欲しいと説得すべきです。どうしても受診に拒否的な場合は家族が地域の保健センター、または保健所の精神保健の保健師等に相談してどのように対応して受診に結びつけていけばよいか、助言を受けることもできます。少なくとも本人が安定するまでは目をはなさないことが大切です。
(Q-S-9)

うつ病から職場復帰するときは自殺のリスクも高くなると聞きました。どうすれば予防できますか?

睡眠障害や食欲が改善してきた段階で、仕事の締め切りや家族や周囲の目を気にして、焦燥感がある状態で復帰の準備を始めてしまうケースがありますが、職場復帰時の自殺を予防するためには、うつ病の症状がきちんと改善されていることを確認して復帰の準備を進めることが必要です。主治医等と連携し、病状を確認するとともに、一定期間、休業中に復帰後を想定した生活を送ってみるなど、段階的に職場復帰につなげていくとよいでしょう。地域によってはリワークプログラムを提供してくれる機関もありますので、それらを利用していくのも有効です。
(Q-S-11)

夫が職場で大きなミスをおかしてひどく落ち込んでおり、自殺を考えるのではないかと不安です。どうすればいいですか?

仕事上での大きなミスなら、気持ちが落ち込むのも無理はありません。どんな人でも、嫌なことがあると憂うつな気分になります。これは誰にでもあることで、このような状態は「抑うつ反応」と呼ばれ、「うつ病」とは区別されています。一般的には、他のことで気が紛れているうちに元気になり、憂うつな気分は数日ほどで徐々に消えていきますが、中には、うつ病の精神科疾患を発症し、最悪の場合に自殺につながってしまうケースもあります。

ご本人の様子をよく見ていただき、可能なら「心配しているよ」「困ったことがあったら話をきくよ」等の声をかけてみてください。相談者自身がどうしたらいいか悩んだ時も、けして一人で抱え込まず、かかりつけ医あるいは専門医に相談しましょう。
(Q-S-12)

最近気分がふさぎ込んで、消えてしまいたい気分におそわれます。誰かに相談したいのですが、どこにいけばいいですか?

気分や体調の変調に気づかれた際には、通常、まず、かかりつけ医の受診をお勧めします。しかしながら、ご質問では、「消えてしまいたい気分(希死念慮)」が認められることから、心療内科や精神科への受診が適当かもしれません。憂うつな気分が続く、とか、今まで楽しめていたことが楽しめない、といった症状などがあればうつ病の可能性もあります。
(Q-S-13)

知人が自殺しました。ご家族の悲しみを思うと何かしてあげたい気持ちですが、どのように声をかけたらいいでしょうか?

ご家族や友人、同僚など身近な方を自殺で亡くされたときの悲しみは、言葉では言い表せないものがあります。家族を亡くされたご遺族は、しばらくの間、ショックでぼーっとして何も考えられなくなったり、何も手につかなくなっていることも珍しくありません。「事故だったのではないか」となかなか自殺の事実を認めることができなかったり、「あの人のせいで自殺したんだ」と誰かを責める気持ちになることもあります。あるいは、自殺を防ぐことが出来なかった自分を強く責めたり、「いっそのこと自分も後を追って死んでしまいたい」という気持ちになることも少なくありません。「人に知られたくない、そっとしておいて欲しい」、という気持ちになることもあるでしょう。身体の面でも、食欲がなくなる、夜眠れない、体力・体重が落ちる、体調が思わしくない、気力がわかない、いつものように外出できない、身体が動かないなど、日常生活上に支障がでてくることもあります。そのようなご遺族(最近は「自死遺族」と呼ぶことが多くなっています)に「何か声をかけてあげたい」という気持ちになることは、ごく自然なことです。

大切なことは、まず、ご遺族が上記のような自死遺族特有の心理状態になっている点を理解することです。その上で、ご遺族の気持ちに寄り添い、話に耳を傾け、その時にご遺族が必要としていることに対して手をさしのべることが大切です。ご遺族が何も望まないなら、ただ黙ってそばにいてあげるだけでも良いのです。

反対に、無理に気持ちを聞き出そうとしたり、「なぜ止められなかったのか」と原因を追及するような問いかけをしたり、安易に慰めたり、元気づけようとして励ましたり、「こういう時はこうすべきだ」と一方的に考え方を押しつけたりすることは、むしろご遺族の気持ちを深く傷つけることになりかねず、厳禁です。

ご遺族は、しばしば深い悲しみや衝撃、自責感などのために、周囲の人々から孤立してしまうことがあります。しかし孤立は、悲しみや自責の気持ちを一層強め、立ち直りを遅らせてしまうことがあるため、ご遺族がこのような状態に陥らないよう、配慮することもとても重要です。

最近は、全国に“自死遺族の集まる会”が増えてきています。ご遺族が望むようであれば、お近くの都道府県精神保健福祉センターや保健所などで情報を得ることができますので、そのような会を紹介してあげても良いでしょう。また、平成21年1月には、国が「自死遺族を支えるために ~相談担当者のための指針~」を出していますので、参考にされるとよいでしょう。
(Q-S-19)

息子さんを自殺でなくした部下がいます。それ以来仕事に集中できないようです。上司としてどう対応すればいいでしょうか?

子どもが自死してしまった親御さんの場合、病死や事故死以上に大きなショックを受け、事実を受け止めきれなかったり、我が子を死なせた自分を責めたり、「なぜ自分を遺して死んでしまったのか」といった怒りを感じたりする場合が多くあります。その結果、突然死別から受容・回復へと至る悲嘆の反応がうまくいかずにPTSD(心的外傷後ストレス障害)やうつ病などの心の病を発症する危険性や、遺族自身が自殺を選ぶ危険性もあります。

この部下の方も、仕事に集中できなくなっているようですので、うつ状態になっている可能性が考えられます。「いつまでもクヨクヨしていたら息子さんが可哀そうだ。しっかりしろ!」などと強く叱ったり、励ますような言動は控えましょう。それまでの部下との信頼関係など、関係性によっても声のかけかたは変わってきますが、やさしく声をかけて休養を勧めてあげることが大切です。その際、うつ状態が強くなっていると、「自分が会社で必要とされていないから休むように言われたのではないか」と誤解してしまうことがあるので、「息子さんの亡くなったショックからの回復には時間がかかる場合があるので」と伝え、仕事のことは心配せずにゆっくり休めるよう配慮しましょう。

さらに、上司が一人でこの問題を背負うのではなく、産業医等の産業保健スタッフに対応方法について相談したり、部下の同意を得たうえで人事労務担当の責任者に話しておくと良いでしょう。また、念のため、精神科、心療内科受診を勧めておくと安心だと思います。部下と個人的にも親しく十分な信頼関係が構築されている場合は、「自分でよかったらいつでも相談にのる」と伝えたり、息子さんを亡くした親としての辛さを十分に受け止め、必要以上に自分自身を責めないよう働きかけてはいかがでしょうか。また自死遺族同志で集まれる「分かち合いの場」や、民間組織、最近では各都道府県単位でも行われている「自死遺族支援事業」などについて、情報を提供してあげても良いと思います。
(Q-S-20)

友人から死にたいという電話があった場合、どうすればいいのでしょうか?

このような電話を受けた場合、自分が何とか思いとどまらせなければ・・・と力が入ってしまい、頭が真っ白になってしまうこともあるかもしれません。冷静に対応をするためにも、まずは自分自身を落ち着かせることが大切です。

やみくもに「死んではダメだ」と言っても、あまり響かないでしょう。自殺が良くないことは、本人が一番よく理解していると思われるからです。それでも、「死にたい」と考えてしまうのです。そこまで追い込まれてしまっている背景や、それに伴って生じているさまざまな感情を受けとめ、理解することが大切です。「何かよい一言を伝えなければ」と力むのではなく、ただ語ってもらうこと、本人の話に丁寧に耳を傾けることがとても重要なのです。

「死にたい」という気持ちの背後には、「もっとうまく生きたい」という強い気持ちが存在しているなど、“生への執着と死への願望との間で揺れている状態”というのが、希死念慮を抱える人に多くみられる心理状態と言われています。そんな苦しい思いをかかえながら、あなたに相談してきた意味を考えてみましょう。きっと「誰でもいい」と考えて電話をかけてきたのではないと思います。心理的に追い込まれているからこそ、意識的あるいは無意識的に特定の人を選び、「この人ならきっと自分の気持ちを聴いてくれる・・・」という思いから打ち明けてきているのではないでしょうか。こうした観点からも、まずはじっくり傾聴することに大きな意味があるのです。

じっくり耳を傾け、心を受け止めていると、本人の気持ちにも少し余裕が生じてくるでしょう。落ち着いてきたように見えたら、「どうしても死ぬことが頭から離れないようだったら、専門家にも助けを求めてはどうか」などいくつか選択肢をアドバイスしてみましょう。ただし、「あなたなら聴いてくれる」と思って電話をかけてきたのですから、「専門家へ丸投げされた」などネガティブに受け取られないよう、相談方法などについても一緒に考えていくと良いでしょう。

また、このような相談を受けた場合、ひとりで抱え込まないことも大切です。もちろん相談してきた人の信頼を裏切らないためにも秘密は守る必要がありますが、職場の産業医や保健師、臨床心理士、公認心理師などであれば職業上、守秘義務が課せられていますから、対応方法のアドバイスや、医療機関等の情報などについて安心して相談できるでしょう。
(Q-S-21)

息子の部屋を片付けていたら自殺に関する本が数冊ありました。親としてとても心配です。どうしたらいいですか?

最近は「いじめ自殺」が報道される機会も多くなり、親としてはとても心配になると思います。小・中・高の生徒や学生が自殺するのは異常事態ですが、青少年の自殺は必ずしもいじめだけが原因ではありません。思春期特有の生きることへの疑問や、心や体の悩み、家庭内の問題など、複合的なものも多いと言われています。

親としてわが子が自殺に興味を持っている事実に直面するのは辛いことですが、「寝た子を起こす」ことを恐れて自殺について触れない「臭いものにフタ」という姿勢や、「どうしてこんな本を読むのか」と叱るのは不適切な対応と考えます。「部屋を片付けていたらこういう本があったので、本当に心配している、悩んでいるのならきちんと話して欲しい」とまず伝えてみてください。

中学生の4人に1人が何らかのうつ状態になっているという報告もあります。その中の何割かが自殺願望をもっているといわれています。子どもが「親から守られている」、「親は頼れる存在である」という感覚をもてることは、心の安定の助けになります。今までのわが子へのかかわり方をふり返り、何に悩み、何に苦しんでいるのか、あらためて子どもと真剣に向き合ってみてはいかがでしょうか。その結果、学校の問題が主であれば担任や学校側と連絡を取り、病的なうつ状態と考えられる場合は、心療内科や精神科へお子さんと一緒に同行して専門医に相談されることをお勧めします。
(Q-S-22)

部下が自宅で自殺しました。職場のメンバーに自殺であると伝えたほうがいいのか、迷っています。どうしたらよいでしょうか?

どれほど自殺を隠そうとしても、噂や憶測が短期間のうちに広まってしまいます。むしろ事実を伝えたうえで、動揺している人を適切にケアすべきです。精神保健の専門家の助力も求めることも検討してください。

  1. 「動揺を最小限にするような方法で、正確な情報を、時機を逸することなく伝える」:自殺を隠そうとしても、瞬く間に知れ渡ってしまいます。事実を伝えたうえで、動揺している同僚をケアすることに力点を置くべきです。故人のプライバシーに配慮しながら、淡々と伝えてください。故人を極端に誉め讃えたり、逆に自殺を非難したりすることは、遺された人々に深刻な打撃を及ぼす危険があるので、控えてください。
  2. 「自殺という衝撃的な体験をした後に、起こり得る反応を説明しておく」:よく知っていた人が自ら命を絶つと、嵐のような複雑な感情が遺された人を襲います。うつ病、不安障害、ASD(急性ストレス障害)、PTSD(外傷後ストレス障害)、薬物やアルコールの乱用といった心の問題が生じることがあります。また、持病の悪化など、身体の病気になってしまうこともあります。そこで、心身に現れる可能性のある症状について説明しておきます。
  3. 「知人の自殺を経験した後の感情を他の同僚と分かち合う」:同僚の自殺の後に、遺された人々が自分に現れている複雑な感情を仲間と率直に話し合う機会を設けます。なお、話をするのを強制する雰囲気をけっして作ってはなりません。話したい人は話し、黙って他の人の話を聞いているだけでもよいことを保証します。
  4. 「自殺が起きたために動揺しているハイリスクの人をケアする」:ハイリスクの人とは、若い人、故人と強い絆があった人、自分も精神疾患にかかっていたり、これまでにも自殺未遂に及んだりしたことのある人、遺体の第一発見者や搬送者、故人と境遇が似ている人、自殺が起きたことに責任を感じている人、葬儀でとくに打ちひしがれていた人、知人の自殺が生じた後に職場での態度が変化した人、さまざまな問題を抱えているのだが十分なサポートが得られない人などです。
  5. 「自殺の背後にある問題点に対して長期的な対策を立てる」:自殺が個人的な問題だけから起きたのではなく、たとえば過剰な長時間労働や達成不能な目標の設定といった職場が抱える問題があるのならば、その対策を立てることも必要になります。
  6. 「職場の士気が低下するのを防ぐ」:同僚の死をこのような形で、職場全体で取り上げることは、職場の士気が極端に低下するのを予防するという側面もあります。
  7. 「遺族に対するケアを忘れない」:自殺にもっとも深刻な衝撃を受けているのは遺族です。上述したケアは当然、遺族に対しても行ってください。なお、遺族が自殺に関連して職場に不信感を抱いている場合には、「この人の言葉ならば耳を傾ける」というキーパーソンを通じて、遺族に働きかけていくといった工夫も必要となります。

(Q-S-25)

「死ぬと言う人は自殺しない」と聞いたことがありますが、実際はどうなのでしょうか?

自殺に対して多くの偏見や誤解がありますが、「死ぬと言う人は自殺しない」というのはかなり広く信じられている誤解です。しかし、自殺した人の大多数は実際に最後の行動に及ぶ前に何らかのサインを他人に送ったり、自殺するという意志をはっきりと言葉に出して誰かに伝えたりしています。その「救いを求める叫び」がきちんと受け止められていなかったことが大きな問題なのです。

「自殺の危険の高い人は死ぬ覚悟が確固としている」というのもよくある誤解です。実際は、自殺の危険の高い人であっても、100パーセント覚悟が固まっていて、まったく平静な人はほとんどいません。むしろ、自殺の危険の高い人は、生と死の間で心が激しく動揺しているのです。絶望しきっていて死んでしまいたいという気持ちばかりでなく、生きていたいという気持ちも同時に強いということです。まさに、この点に自殺予防の余地があります。

「自殺について話をすることは危険だ。自殺を話題にすると、その危険のない人まで自殺に追い込んでしまいかねない」というのも誤解です。自殺を話題にすると「寝ている子を起こす」ことになりはしないかという心配をしばしば耳にします。しかし、自殺を話題にしたからといって、自殺の考えを植えつけることにはなりません。自殺したいという絶望的な気持ちを打ち明ける人と打ち明けられる人の間に信頼関係が成り立っていて、救いを求める叫びを真剣に取り上げられるならば、自殺について率直に語り合うほうがむしろ自殺の危険を減らすことになります。自殺について言葉で表現する機会を与えられることで、絶望感に圧倒された気持ちに対してある程度距離を置いて冷静に見ることが可能になるのです。
(Q-S-26)

40歳代で失業中です。ハローワークに行っても展望がなく、死ぬしかないと考えてしまいます。どのように対処すればいいでしょうか?

不採用が続くと、まるで自分を全否定されたような気持ちになるかもしれませんが、あくまで縁がなかっただけです。今後の就職活動の進め方について、信頼できる身近な人や、ハローワークのキャリアカウンセラー等に相談してみてはいかがでしょうか。経済的な不安があるようでしたら、お近くの役所などに問い合わせをして、保険料の免除や社会福祉制度など、何か利用できる制度はないか確認してみましょう。

もし、それでも死にたい気持ちが強く、食欲不振や不眠が続くようでしたら、うつ病になっている可能性もありますので、精神科や心療内科などの専門医に一度相談してみてください。
(Q-S-28)

中学校の教諭をしていますが、生徒間のいじめや父兄のクレームなどで死にたい気持ちです。どのように対処したらいいでしょうか?

死にたい気持ちになるほど追いつめられているとのこと、できるだけ早く信頼できる人に相談し助けてもらう必要があると思いますが、精神科への受診もぜひ検討してみてください。うつ病の症状の1つに希死念慮(自殺願望)がありますが、そのような過酷な状況下では、誰でも精神的に疲弊してうつ病になる可能性があるからです。

うつ病になると事態を冷静に理解し、的確に対処していく能力が低下します。物事を悲観的にとらえがちになり、希望がもてなくなります。焦れば焦るほど事態が悪化し、自身の体調も崩れていくという悪循環に陥りがちです。もし、うつ病と診断された場合は適切な診断と治療を受け、ご自身の心身の状態を安定させることを最優先にしてください。しばらくの病気療養が必要なのか、それとも勤務しながら治療を受けることになるのか、いずれにせよ医師と良く相談し、指示に従ってください。

問題解決に向けた方法の1つに、いろいろな出来事の記録をつける方法があります。“生徒間のいじめ”であれば、いつ、誰が、どのようないじめにあったとされるのか、そしてそれに対してどのような対応をしたのか、など記録をつけておくのです。“クレーム”についても同様で、いつ、誰から、どのようなクレームがあり、どのように対応したのか記録しておくと良いでしょう。少々時間がかかる作業ですが、こうした作業は業務上必要であるだけでなく、自分の思考や感情を整理する上でも役に立つでしょう。

そして、この記録をもとに同僚や上司に相談してみてはいかがでしょうか。職場の中にはきっと誰か理解してくれる人がいるはずです。うつ病になると、ともすれば自分を責め、自分一人で解決しようとしがちですが、誰かに話すことで気持ちと考えが落ち着き、整理されることもあるでしょう。

最後に、最近はさまざまな問題で悩む教師のためのサポートシステム(支援体制)がつくられています。こうした外部の相談機関を利用されるのも一案だと思われます。
(Q-S-29)

自殺をするとその後始末で家族に迷惑を掛けると聞きましたが、本当でしょうか?
一人の自殺は、強い絆のあった人に対し深刻な影響を与えます。ある大規模調査によると、現在わが国では自殺者の配偶者・兄弟姉妹・両親・子供(自死遺族)は約300万人以上とされていますが、これら自死遺族の思いは「沈黙の悲しみ」とも言われ、普段はその胸の内が語られることはほとんどありませんでした。しかし、最近になり、いわゆる「後始末で掛ける迷惑」の実情が官民の活動と調査を通じて数多く報告されています。

まず、深い悲しみの中、遺体確認・死後の手続き・法事等を行いますが、周囲の対応に深く傷つくことや、偏見と誤解にさらされることがあります。さらに、長期に渡り心理面・生活面・経済面・教育面・法律面で、次のような多様な問題を複合的に抱えがちです。

ア 心理面では、気づけなかった自分自身を責めたり、深い悲しみに苛まされたり、人に話せず悲しみを分かち合えないがために苦しむことがあります。当初気丈に振舞っていても、後にメンタルヘルス不調が遷延化して、専門的治療が必要になる、またはアルコール乱用や薬物への依存等の問題も生じる可能性があります(悲しみのあまり後を追ってしまう可能性もあります)。

イ 生活面では、家族内・親戚・地域社会との関係が変化して、孤立することがあります。

ウ 経済面では、葬儀・残された借金の処理・年金や一家の大黒柱を失った後の生計の建て直し・亡くなられた場所によってはその場所の所有者や交通機関からの損害賠償請求等が課題になります。

エ 教育面では、子供の学業を中断せざるを得ないことがあります。

オ 法律面では、遺言・相続・事業の継承や不動産・所有権等の登記関係の諸問題があります。過労自死の場合は、労災請求を考えるべきで、また、使用者に対する損害賠償請求も検討する必要があります。

人間はそれぞれの物語を生きていて、個別性があります。自死遺族は、不条理な現実を受容しながら、人生や主体性を取り戻すさまざまな課題に直面することになります。

自殺を選択した場合、「迷惑」と称するかどうか別にしても家族への影響は心理的・社会的に非常に大きなものです。自殺を考える辛い時もあるでしょうが、他の解決策を見つける手立てとして、まずは周囲に相談してみてください。

(Q-S-30)

自殺の原因は精神障害だというのは本当ですか?

警察庁の統計では、令和元年中の自殺者総数は20,169人であり、自殺の原因・動機の内訳は、「健康問題」が9,861人、「経済・生活問題」が3,395人、以下、「家庭問題」3,039人、「勤務問題」1,949人、「男女問題」726人、「学校問題」355人、「その他」1,056人でした(複数回答)。

これらの原因の結果として、精神障害を発症し、自殺にいたった例も多いものと考えられます。自殺の動機そのものは、必ずしも一つの要因だけで説明できるものではありませんが、精神的に追い込まれた状態で自殺行為がなされることを考えると、うつ病をはじめとする精神障害が自殺の原因となっているとする報告が多数なされています。

また、失業や配偶者の死亡などの人生におけるストレスを伴う重大な出来事(ライフイベント)の際に、精神障害を引き起こし、自殺にいたることがあるので、周囲からの十分な注意や配慮が必要となります。
(Q-S-31)

労災補償関係

労災補償の請求は誰がするのですか。会社の協力が必要でしょうか?

労災補償の請求は、被災労働者または遺族が行います。自分で労働基準監督署に行き、労災保険給付請求書の様式をもらい、必要事項を記入して労働基準監督署に提出するのが基本です。

労災保険給付請求書には、就労の事実等についての事業主証明欄があり、会社に証明してもらう必要があります。会社が協力的でない場合は、事業主証明がないまま労働基準監督署に労災保険給付請求書を提出し、事情を説明することになります。これにより労働基準監督署は労災保険給付請求書を受理します。
(Q-R-44)

うつ病になったのですが、産業医から労災補償の対象にはならないと言われました。労災請求を諦めるべきでしょうか?

産業医が精神科医や心療内科医で、精神障害の労災認定について詳しく承知されているのであれば参考にしてもよいと思われます。しかし、このような産業医は一般に少ないので、産業医に専門領域や、労災補償の対象にならない訳を尋ねたり、あるいは、ご自身で労働基準監督署に相談をしてもよいと思われます。また、ご自身の判断で労災請求をされてもよいと考えられます。

大事なことは、労災請求をするかどうかを決めるのはご自身であること、労災補償の対象になるかどうかを決めるのは労働基準監督署長であるということです。
(Q-R-50)

労災保険はどのような保険なのでしょうか?

労働者災害補償保険法第1条に「業務上の事由又は通勤による労働者の負傷、疾病、障害又は死亡等に対して迅速かつ公正な保護をするため、必要な保険給付を行うほか、被災労働者の社会復帰の促進、当該労働者及びその遺族の援護、適正な安全及び衛生の確保等を図り、もって、労働者の福祉の増進に寄与すること」と目的が規定されています。

労災保険は政府(厚生労働省)が管掌し、事業主から納付される保険料によって運営されています。労災保険の事務を実際に取り扱う機関は、中央では厚生労働省、地方では各都道府県労働局及び労働基準監督署となります。

(Q-R-1)

労災保険は、アルバイトやパートタイマーにも適用されますか?

労災保険における適用労働者とは、「職業の種類を問わず、事業に使用される者で、賃金を支払われる者」をいいます。
したがって、アルバイトやパートタイマー等の雇用形態は関係ありません。業務災害又は通勤災害が発生したときに適用事業に使用されていれば、受給権が生じることになります。

なお、一定期間以上継続して使用されていたかどうかは、保険給付を受けるための要件ではありませんので、雇入れ当日の災害であっても保険給付を受けることができます。
(Q-R-5)

労災で長く療養している従業員を解雇することはできるのでしょうか?

労働基準法第19条の規定により、労働者が業務上負傷するか疾病にかかり療養のために休業する期間及びその後30日間については、解雇してはならないと定められています。ただし、通勤災害については、この規定は適用されません。

なお、療養の開始後3年を経過した日に傷病補償年金を受けている場合は3年を経過した日、また3年経過した日以後において傷病補償年金を受けることとなった場合は、受けることとなった日に解雇制限が解除されます。
(Q-R-10)

労災保険の給付にはどのようなものがあるのでしょうか?

労災保険の給付には次のようなものがあります。請求書は、各都道府県労働局又は労働基準監督署に備えてあります。

療養(補償)給付:業務災害または通勤災害による傷病により療養するとき、必要な療養の給付または費用の支給

休業(補償)給付:業務災害または通勤災害による傷病の療養のため労働することができず、賃金を受けられないとき、休業4日目から、休業1日につき給付基礎日額60%相当額の給付

障害(補償)給付:業務災害または通勤災害による傷病が治ゆ(症状固定)した後に障害が残ったとき、障害の程度に応じ、年金または一時金の給付

遺族(補償)給付:業務災害または通勤災害により死亡したとき、遺族に対し年金または一時金の給付

葬祭料(葬祭給付):業務災害または通勤災害により死亡した人の葬祭を行うときに給付

(Q-R-14)

休業(補償)給付の支給要件と支給手続とはどのようなものでしょうか?

休業(補償)給付は、労災保険法第14条において「業務上の負傷又は疾病による療養のため労働することができないために賃金を受けない日」の第4日目から支給されることとされています。ここでいう「労働することができない」とは、一般的に労働することができない場合をいい、必ずしも負傷前の労働に従事することができないことをいうものではありません。

また、「賃金を受けていない」とは、まったく賃金を受けていない場合はもちろんのこと、賃金の一部を受けている場合であっても、それが平均賃金の60%未満であるとき(所定の労働時間の一部についてのみ休業した場合には、平均賃金と実際に労働した時間に対して支払われた賃金との差額の60%以上の賃金を受けていないとき)も含まれます。

休業(補償)給付を受けるには、「休業(補償)給付支給請求書」に所要事項を記入し、事業主及び診療担当医師の証明を受けて、被災労働者の所属する事業場の所轄労働基準監督署長に提出することとなります。
(Q-R-16)

仕事中にケガをしたため、労災の請求をしようと思うのですが、事業主が証明を拒否しています。このような場合、どうすればよいのでしょうか?

労災保険給付の請求に当たっては、「負傷年月日」、「災害発生状況」等について事業主の証明を受けなければなりません。

しかしながら、事業主が証明を拒むなどやむを得ない事情がある場合には、請求書を提出する所轄の労働基準監督署に、証明を得られない事情を述べることで、請求書は受理されます。
(Q-R-17)

労災で会社を休んで療養中ですが、会社から「働けるようだったら職場に出てほしい」と言われました。職場に復帰した後でも、労災での療養は受けられるのでしょうか?

療養(補償)給付は、労働者が業務災害または通勤災害による傷病により、療養を必要とする場合に支給されるものであり、傷病が「治ゆ」(症状固定)するまで支給されます。したがって、治ゆしていない限り、働いていても労災による療養を受けることができます。

なお、労災保険法上の治ゆとは、身体の諸器官・組織が健康時の状態に完全に回復した状態をいうものではなく、「医学上一般に認められた医療を行っても、その医療効果が期待できなくなった状態」をいいます。したがって、「傷病の症状が、投薬・理学療法等の治療により一時的な回復がみられるにすぎない場合」など症状が残存している場合であっても、医療効果が期待できないと判断される場合には、労災保険では治ゆと判断されます。

治ゆと判断された以降は、療養(補償)給付は支給されず、必要に応じて、障害(補償)給付やアフターケアの支給が行われます。
(Q-R-20)

系列子会社の研究機関へ研究員が出向しました。出向先で被災した場合、保険給付の手続はどちらで行うのでしょうか?

労災保険の適用については、出向の目的、出向契約、出向先事業での出向労働者の実態などを総合的に判断して、決定されることになっています。

原則として、給与が出向元から支払われていても、出向先事業の組織に組み入れられ、出向労働者の指揮命令権が出向先にあれば出向先の労災保険が適用になります。
したがって、保険給付の手続は、原則として出向先で行います。
(Q-R-26)

当社が元請けとして労働保険の届出をしていた建設現場で、当社の下請け企業で災害が発生しました。元請けが行う手続はどうなりますか?

労働者が業務上災害にあった場合、労災保険の各種給付の請求は、基本的には被災労働者本人が行うことになります。ただし、各種請求手続において、被災労働者の求めに応じて、事業主が災害の発生日時や場所、発生状況などについて証明することになります。

一般に建設業では、一つの工事を一つの事業として労災保険の適用の対象としていますので、建設業における数次の請負いによる事業の場合は、元請負人が事業主となり、元請負人自身が労働者を使用して行う工事の部分だけでなく、下請けに請負わせた工事の部分を含めて、一括して保険に加入することになります。

したがって、ご質問のケースでも、元請負人である貴社が事業主として、労災保険の各種給付にかかる証明を行うことになります。
(Q-R-27)

業務中の災害はすべて労災保険から補償されるのでしょうか?

労災保険の対象となる業務上の災害とは、業務と災害の間に相当因果関係がある災害、すなわち、業務起因性が認められる災害をいいます。

したがって、業務中に発生した災害であっても、業務起因性が認められない場合には、労災保険の対象とはなりません。
(Q-R-29)

業務上の疾病とはどんな病気ですか?

業務上の疾病とは、仕事との因果関係のある病気をいいます。
具体的には、労働基準法に基づいて、労働基準法施行規則別表第1の2及びそれに基づく告示に列挙されており、その概要は、次のとおりです。仕事との相当因果関係が認められた個々の疾病はすべて労災補償の対象となります。

労働基準法施行規則別表第1の2

第一号 業務上の負傷に起因する疾病(災害性腰痛、脊髄損傷など)

第二号 物理的因子による疾病(紫外線による眼疾患・皮膚障害、電離放射線障害、熱中症、騒音性難聴など)

第三号 作業態様に起因する疾病(非災害性腰痛、振動障害、上肢障害など)

第四号 化学物質等による疾病(一酸化炭素中毒、鉛中毒、有機溶剤中毒など別途告示で151種類の化学物質・化学物質群とそれらによる症状・障害が示されています。)

第五号 じん肺症とその合併症

第六号 感染症

第七号 職業がん(石綿による肺がん・中皮腫、電離放射線による白血病など、クロム酸塩製造工程による肺がんなど)

第八号 厚生労働大臣が指定する疾病(別途告示で3種類の業務上の疾病が示されています。)

第九号 その他業務に起因することの明らかな疾病(過重業務による脳・心臓疾患、心理的負荷による精神障害など)

(Q-R-31)

派遣先で業務上災害が発生しました。この場合、労災の適用は派遣元・派遣先のどちらになるのでしょうか?

行政通達では、労働者派遣事業に対する労災保険の適用については、派遣元事業主の事業が適用事業となるものとされています。

その根拠として、第1に、派遣元事業主は労働者の派遣先事業場を任意に選択できる立場にあり、労災事故が起こった派遣先事業主との派遣契約を締結したことに責任があること。第2に、派遣元事業主は派遣労働者を雇用し、自己の業務命令によって派遣先で就労させている者として、派遣労働者の安全衛生に十分配慮する責任があること。第3に、労働基準法上の規定(例えば、業務上の傷病に係る解雇制限、補償を受ける権利の退職による不変更等。)の趣旨から見て、労働契約の当事者である派遣元事業主に災害補償責任があることを前提としていると考えられること、が挙げられます。
このため、実際に被災した労働者が労災保険給付の請求を行う際には、保険給付請求書の事業主の証明は、派遣元事業主が行います。

ただし、派遣先で業務上災害が発生した場合は、事故の状況を把握出来るのは派遣先事業主ですので、死傷病報告書の写し等、災害発生状況等に関して派遣先事業主が作成した文書を療養(補償)給付以外の保険給付の最初の請求を行う際に添付することとされています。また、派遣労働者に係る労働者派遣契約の内容等が記載された「派遣元管理台帳」の写しも添付する必要があります。

(Q-R-32)

過労死といわれる脳・心臓疾患はどのような病気ですか。

過労死とは、過重な業務に従事することにより脳血管疾患又は虚血性心疾患等を発症し、あるいはこれによって死亡に至ることをいいます。具体的な疾患名は次のとおりです。これらの疾患を便宜的に「脳・心臓疾患」と呼んだり、これらの疾患の罹患と死亡の双方を含める趣旨で「過労死等」と呼んだりすることがあります。

脳血管疾患
脳内出血(脳出血)
くも膜下出血
脳梗塞
高血圧性脳症

虚血性心疾患等
心筋梗塞
狭心症
心停止(心臓性突然死を含む。)
解離性大動脈瘤

(Q-R-33)

業務上と思われる精神障害を労働者が発病した場合、会社として何をすればよいのでしょうか?

労災保険の請求は、被災労働者(死亡事故の場合はその遺族)自身の手続が原則ですが、現実には会社が代行するのが一般的です。労災保険の請求には事業主の証明が義務付けられているため、災害発生の年月日や、療養のため休業した期間などを証明しなければならないからです(労災保険法施行規則第23条第2項)。
また、休業補償給付などの請求に際しては、平均賃金や休業期間なども計算しなければなりませんが、これも会社の協力があってのことになります。
こうした事務作業は、事業主の義務とされているのです。特に、被災労働者自身が入院などしていて、自分では手続ができない場合には、会社が助力しなければならないことになっています(労災保険法施行規則第23条第1項)。

また、万が一、被災労働者が死亡したり、4日以上休業したときには、労働者死傷病報告(労働安全衛生規則様式第23号)を、遅滞なく労働基準監督署に提出しなければなりません。

なお、労災保険の請求窓口は、事業場の所在地を管轄する労働基準監督署です。労働基準監督署では、請求書の様式を渡してもらえますし、手続についての相談も受け付けています。
(Q-R-36)