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多くの企業で抱えていると思われるメンタルヘルス関連の事案に対し、社会保険労務士の2人がリレー方式で答えていきます。
※これらの内容は、あくまでも1つの事例である旨、ご了承ください。
【Q】質問
従業員がうつ病と診断を受けて、しばらく休むことになりました。
まずは残っている有給休暇をすべて使った上で、それでも休む必要があるならば休職手続きに入るという手順を取りたいと考えていますが、このような進め方で問題ないでしょうか。
【A】回答
会社としては、従業員の年次有給休暇がまだ残っているのであればそれをすべて使ったうえで、それでもお休みが続く場合は休職手続きを取ってはどうかと考えておられるのですね。
ただ、使用者側が一方的にそのような手順を取ることを決めることは残念ながらできません。なぜなら、労働基準法において、「使用者は有給休暇を労働者の請求する時季に与えなければならない。ただし、請求された時季に有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合においては、他の時季にこれを与えることができる。」と定められているからです。有給休暇をいつ取得するかは、原則として労働者が決めることができるものであり、使用者が一方的にその取得日を決定することはできません。このため、実務においては、従業員に有給休暇を取得後に休職手続きに入るという流れを提案の上、労働者もまずは有給休暇を取得したいとの意向であれば有休休暇を取得し、復帰後のために有給休暇をとっておきたいなどの意向が示された場合は一部残しておくという対応になるでしょう。
なお、10日以上の有給休暇の付与を受けている従業員について、使用者は付与した日から1年以内に5日について、取得時季を指定して年次有給休暇を取得させなければならないとも定められています。この場合においても、労働者がいつ取得したいか、意見を聴取し尊重することは求められていますが、必ず労働者が希望した日を指定する必要まではないとされていますので、取得済日数が5日に達していない場合には、その日数分については会社が指定するという可能性は残っているといっていいでしょう。
また、社会保険に加入している従業員であれば、一定の要件を満たせば、療養のため労務に服することができなくなった日から起算して3日を経過した日から傷病手当金が支給されます。当該3日間の待期期間分について有給休暇を使用しても傷病手当金の支給に影響はありませんので、この3日間は有給休暇を取得するというのも実務としては考えられる対応です。
なお、病気が治って職場復帰した後にも、何かしらの理由で休業を要することも考慮して、本人と相談してある程度の有給休暇を残しておくことをお勧めする場合もあります。
本山恭子(もとやま きょうこ)
「本山社会保険労務士事務所
特定社会保険労務士 産業カウンセラー 消費生活アドバイザー」
不動産、建設、ホテル、レストラン業のある一般企業の総務・人事部門に約9年間所属し、業種の違う業務を経験。平成19年に独立開業。企業の就業規則作成・変更及び労務相談、手続き全般等を中心に、産業カウンセラーの知識も活かし企業のメンタルヘルス対策支援を積極的に行い企業活性化を図る活動を展開している。
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