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多くの企業で抱えていると思われるメンタルヘルス関連の事案に対し、社会保険労務士の2人がリレー方式で答えていきます。
※これらの内容は、あくまでも1つの事例である旨、ご了承ください。
【Q】質問
休業や復職の際に従業員から提出された診断書の取扱いは、どのようなことに注意をしたらいいですか?
ポイント
- 健康情報の取扱いについては、「労働者の心身の状態に関する情報の適正な取扱いのために事業者が講ずべき措置に関する指針」に従って規程を策定すること
- 会社に提出された診断書等も個人の健康情報として取り扱うこと
【A】回答
「個人情報保護法」の施行に伴い、厚生労働省では具体的な労働者の個人情報の取扱いについて「雇用管理に関する個人情報の適正な取扱いを確保するために事業者が講ずべき措置に関する指針」を定め、さらに最も配慮が必要な個人情報である健康情報について「雇用管理に関する個人情報のうち健康情報を取り扱うに当たっての留意事項」を定めています。メンタルヘルスに関する個人情報も保護への配慮をすべき情報としてその取扱いには他の健康情報と同様に慎重に取扱う必要があります。
個人情報の取扱いの注意すべき点は次の通りです。
- 利用目的を明確にし、利用目的以外では使用しない。
- 利用目的以外で利用する場合はあらかじめ本人の同意を得る。本人の同意を得るに当たっては、本人にその個人情報の利用目的を通知し、又は公表した上で、本人が口頭、書面等によりその個人情報の取扱いについて承諾する意思表示を行うことが望ましい。
- 個人情報を取得する場合は、できるだけ本人から取得し、あらかじめその利用目的を公表している場合を除き、利用目的を本人に通知し、又は公表する。書面で個人情報を取得する場合は、利用目的を書面で明示する。
- 個人データを第三者に提供する場合は、あらかじめ本人から同意を得る。
- 会社が、労働者から提出された診断書の内容以外の情報について医療機関から健康情報を収集する必要がある場合、事業者から求められた情報を医療機関が提供することは、第三者提供に該当するため、医療機関は労働者から同意を得る必要がある。この場合において、会社は、あらかじめこれらの情報を取得する目的を労働者に明らかにして承諾を得るとともに、労働者本人から提出を受けることが望ましい。
- 産業保健業務従事者以外の者が健康情報を取り扱う時は、取り扱う健康情報が利用目的の達成に必要な範囲に限定されるよう、必要に応じて健康情報を適切に加工した上で提供する等の措置を講じることが望ましい。
- 労働者の個人情報は、基本的には雇用管理を行う者が労働者の健康の確保を目的として産業医等の専門職に取扱わせるものであるが、一方で、健康診断を委託した他の医療機関や専門職ではない労働者本人の上司等に取扱わせる場合があるため、あらかじめ事業場内の規程等として定め、これを労働者に周知するとともに、関係者に当該規程に従って取り扱わせることが望ましい。
以上のことからご質問にある従業員から提出された診断書については、その利用目的を明確にし、利用目的以外で使用しないようにする必要があります。休業の確認のために提出された診断書であれば、その範囲で利用し、決して人事の処遇などで利用してはなりません。そのためには取り扱う担当者を限定する等のルールを設けるようにします。
従業員から提出された診断書の内容以外の情報について主治医から情報を収集する必要がある場合も、あらかじめこれらの情報を取得する目的を従業員に明らかにして承諾を得るとともに、必要に応じ、従業員本人から情報の提出を受けることが望ましいです。
「労働者の心身の状態に関する情報の適正な取扱いのために事業者が講ずべき措置に関する指針」では、事業場における心身の状態の情報の適正な取扱いのための規程(以下「取扱規程」という。)について、事業者が策定すべき取扱規程の内容、策定の方法、運用等について定めていますので、指針を参考に規程を策定し、運用していくことが大切です。
従業員からの信頼があってはじめて成り立つメンタルヘルス対策であることを常に念頭に置いておくことが重要です。
根岸純子(ねぎし じゅんこ)
根岸人事労務事務所
特定社会保険労務士、シニア産業カウンセラー、キャリア・コンサルタント
大学卒業後、都内金融機関に勤務。平成10年社会保険労務士試験合格。その後、社会保険労務士事務所勤務を経て、平成11年に独立開業する。開業後、産業カウンセリングに出会い、勉強を始め、現在は労使のトラブル防止にカウンセリングやコミュニケーションスキルを活かした相談を心掛けている。
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