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相談者が気になることは…
―以前、職場の人に相談したことがあって、その時は親身に聞いてもらったと思っていました。でもその後、相談した話を、他の社員も交えた雑談の中で話されてしまったことがあるんです。それ以降、今まで以上に職場や仕事関係の相談を職場の人にすることが怖くなってしまったんです。―
このような話を、とある従業員から聞かせてもらったことがありました。確かに、職場の人間関係や自分自身の悩み、問題など、誰かに相談したいと思った時には、話を理解してくれそうな人、的確なアドバイスをしてくれそうな人、ただ黙って聞いてくれそうな人など、内容によって私たちは相手を選んでいるのだと思います。ことに従業員の立場に立って、会社が用意している社内、または社外相談窓口に相談することを考えてみると、色々なことが気がかりとなってしまいます。どんな人が対応してくれるのだろう?相談した後、どうなるのだろう?本当にどんな話をしても、誰にも言わないでいてくれるのだろうか?実際は、複数の人たちに知らせたりするのではないだろうか?自分が変な人だと誰かに噂されたら、職場に居づらくなってしまうかもしれない。そう考えてみると、これはある意味、相談することへの壁なのかもしれません。
顔と仕組みが見えない!?
そのような心配は、どこからくるのだろうと考えた結果、そもそも、メンタルヘルスに関連した悩みを含めて、相談ごとは、職場の人には知られたくないのが常なのかもしれないと思います。私も、これまでの経験の中で仕事での行き詰まりを感じ、誰かに相談する際には、とても慎重になったことを忘れていません。また、会社が用意している社内、または社外相談窓口に相談したとしても、相談内容が職場の人に伝わってしまうと考えてしまうのかもしれません。皆さんは、悩んでいること、不調を感じていること、仕事に行き詰りを感じていること等を相談したいけれど、職場の人には知られたくない、と思ったことはありませんか?実際、従業員にそれとなく聞いてみたところ、相談した内容がどのように扱われるのかも含め、相談窓口について分からないことが多く心配だという意見が多々あることが分かりました。
「誰が、どのように対応してくれて、相談した後はどんな流れがあるのか?というものが見えないと、利用してみようという気にはまずならない。」なんて率直な意見をもらったこともあります。でも、これって本当にそうだな、と納得感が深まるばかりでした。そういえば、メンタルヘルス推進室という窓口の周知をするにあたり、よく聞かれたことは「誰がやっているのか」、「関係者は誰か」、「何をしてくれるのか」、「どのように利用するのか」、そのようなことを口ぐちに質問されたことを思い出しました。考えてみると、とても大切なヒントを頂いていたのですね!!
安心して相談に来てもらうために
仕組み、対応関係者、そして相談内容などの取扱いについての考え方をどのようにするのか、上司に相談をしてみました。個人情報の取扱いについては、恐らく企業内の人事部門である程度のガイドラインがもたれているのだと思いますが、例にもれずメンタルヘルス推進室でも上司曰く、「相談内容なども含めて、ガイドラインに沿って活動することが基本である」ということを確認しました。基本的には本人の同意をとった相手に、同意を得た内容について知らせるなど、対応者の自己判断だけでは情報伝達を簡単に行わないというのが基本的な考え方となっています。
実際は、相談の内容によっては、介入や対応、早急な解決が必要になる事柄があることも十分に考えられるでしょう。知り得てから対応が何ら為されなかった場合、「安全配慮義務」の違反につながるリスクも考えられます。そのような場合は産業医と相談しています。しかし、メンタルヘルス推進室の相談を従業員が安心して使ってもらうためにも、まずは、従業員の相談を受けた際に、対応者が、本人に対して、相談の内容によっては誰にどの程度の内容を伝え、どんな展開を目指すのか、そのあたりをよく話し合って、理解、同意を一つ一つ得ることを怠らないことが重要だと思います。
私は、従業員への対応において、相談内容の情報を取り扱う範囲やその後の展開についてよく本人と相談するようにしています。いきなり「場合によっては、相談があったことを職場の上司に提供するが、良いですか」などを聞いてしまい、驚かせてしまった失敗も何度かありましたが、問題解決を望んでいる方がやはり多い中で、しっかりとルールを作成し、それを相談にきた従業員に伝えるなど、個人情報の保護に配慮しつつ、職場との連携、調整を図っていくことは必要だと思います。
なお、個人情報の取扱については、厚生労働省から「労働者の心身の状態に関する情報の適正な取扱いのために事業者が講ずべき措置に関する指針」(平成31年4日1日適用)や、パンフレット「事業場における労働者の健康情報等の取扱規程を策定するための手引き」が示されています。
次回へ続く・・・
東 ちはる(あずま ちはる)
産業カウンセラー・心理相談員
新たに設置した「メンタルヘルス推進室」の担当者となり、「事業場内メンタルヘルス推進担当者」として活動することに。
社内のメンタルヘルス対策の実現に向けて、そこには孤軍奮闘の日々が待っていました。
何も分からない手さぐりの状態から、『出来ることから一つずつ』をモットーに現在進行形で取り組んでいきます。※創作ストーリーのため、架空の人物です。
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