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第3回 そうだ、衛生委員会があるじゃないか。

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基本は1人で考えない。

 きっとどんなお仕事においても、これに尽きることはないかもしれません。自分よりも会社をよく知っている方、社内のあらゆる業務を深く理解する方は、実は困らないほど多くいらっしゃるわけですから、色々とそういった方々から聞いてしまおう、教えてもらおうと考えました。言いわけではありませんが、決して手抜きではなく、会社としての取り組みをしなければメンタルヘルスの推進は結果をだせないわけで、社内の色々な立場の方々から意見を頂くということは、建設的なアクションではないかと考えました。

 となれば、次に考えることは、企業の中では業務時間中にどんな大義名分をもって社員に集まってもらって議論をするのか、です。う~ん、と悩みそうになりましたが、衛生委員会を活用することが効果的であるということが指針にありました!

いろいろ話そう『衛生委員会』

 厚生労働省の「労働者の心の健康の保持増進のための指針」を見るとメンタルヘルスの推進に当たっては、事業者が労働者等の意見を聴きつつ事業場の実態に即した取組を行うことが必要であり、衛生委員会等を活用することが効果的であると記載されています。労働安全衛生法で衛生委員会を調べると、第18条に企業は、50人以上の労働者を使用する事業場ごとに衛生委員会を設置し、労働者の健康障害防止の基本対策等を調査・審議することが義務付けられており、労働安全衛生規則第22条でも、労働者の精神的健康の保持増進を図るための対策の樹立に関することを審議することが記載されています。

 従業員の意見を聴く機会を設ける必要があるんだとか…。やった方が良いこと、ではなくてやらなくてはいけないことだったんですね。となれば、簡単です。まず、社内で総務、人事、安全衛生関連の組織等が衛生委員会を開催しているはずなので、これまでの経緯を確認してみることにしました。そのうえで、実態として、あまり掘り下げることができていないようであれば、委員会の運営方法を再検討することを提案するなど、メンタルヘルス推進室も積極的に関わっていく姿勢を示すことにしました。衛生委員会は毎月1回以上行うものなので、直近の開催予定を総務部の担当者から聞きつけ、とりあえずオブザーバーとして参加させてもらうこととなりました。

 実際の委員会では、どうしても業務の忙しさが優先され、出席した委員はまばらだったというのが現実でした。中でも、顧客対応を直接的に行っている部門、海外対応が多く時間が不規則になりがちな部門、生産ライン関係部門の委員はほとんど出席できていない状態。委員会自体は開催されてはいるものの、実態を把握できるだけの情報はまだまだ共有できない状況だったというわけです。

忙しい部門だからこそ委員としての参加が大切!

 総務部に在籍する衛生管理者と相談し、多忙な部門からも委員として積極的に参加してもらい、衛生委員会を活性化していこうということになりました。誰が主導するといいんだろう?と考えた結果、やはり事務局である総務部門しかないと思いました。なぜ、総務部に指揮をとってもらうのかというと、会社全体を掌握している部門がそこだからです。

 様々な部門の職場環境など、情報が早くて集まりやすい総務部の特性に着目し、連携させてもらうこととなりました。また、衛生委員会の開催後の議事の概要にもメンタルヘルスに関することを、社内イントラネットや事業場の掲示板に貼り出すなどして周知をしてもらいました。

 そんなこんなで、始めの参加で委員会の構成が課題となり、のぞんだ次の回は10月第1週の「全国労働衛生週間」の時期に開催となりました。心配していた多忙な部門の委員にも参加してもらうことができ、内容の濃い委員会となりました。こちらが心配していた「忙しいからこんな会議に呼ばないでほしい」などといった反応はなく、むしろ担当部門の「従業員を守るためにしっかり取り組んでほしい」、といった要望が出たのです。

 となると、話は深まるばかりです。メンタルヘルスケアの推進に当たって何が問題か?最近はどんなことがあったか?会社の制度と実態はマッチしているのかどうか?出来ていること、出来ていないこと、やってほしいこと、まだ対応されていないこと、色々と意見が出揃って、手応えのある衛生委員会となりました。

次回へ続く・・・

東 ちはる(あずま ちはる)
産業カウンセラー・心理相談員
新たに設置した「メンタルヘルス推進室」の担当者となり、「事業場内メンタルヘルス推進担当者」として活動することに。
社内のメンタルヘルス対策の実現に向けて、そこには孤軍奮闘の日々が待っていました。
何も分からない手さぐりの状態から、『出来ることから一つずつ』をモットーに現在進行形で取り組んでいきます。※創作ストーリーのため、架空の人物です。

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