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メンタルヘルス 取り組みの背景と企業内担当者の目線
日本国内における自殺者数は、10年以上も『3万人越え』との報告が毎年のように続いている状況で、関心があろうがなかろうが『自殺大国にっぽん』というメディアでの報道が広く伝わっています。自殺を社会問題と考える国の動きとしては、平成18年に「労働者の心の健康の保持増進のための指針」が示され、企業内での取り組みについてもその役割と責任が問われるようになりました。メンタルヘルスに関して何らかの取り組みをしている事業場は、従業員規模が5000人以上の大企業では、100%だそうですが、全事業場としては33.6%と低い実態が、調査結果でも明らかにされています。(平成19年厚生労働省「労働者健康状況調査」)
そのような背景のもと、企業内での「メンタルヘルスに関する何らかの取り組み」とは、一体どのようなことをイメージすればよいのでしょうか。既にいろいろと取り組んでいる企業は多いはずですが、これから取り組もうとしている企業、また、取り組んではみたものの、何をもってゴールとすべきなのか、どこまでやればいいのか分からないと感じている企業内担当者の方は多いのではないでしょうか。
筆者は、現在とある企業の中で、メンタルヘルスの取り組みを推進していく一担当者として業務を行っております。「メンタルヘルスの取り組み」として、何からまたは何を、どこまでやればいいのだろうか?と日々試行錯誤しつつ、勤めています。
このコラムを通して、失敗も成功も、一人の担当者として、今現在、企業内で同じ立場にいらっしゃる方々へ、情報共有させて頂ければと願っている次第です。
一体何から始める?企業としての取り組み
ある日、私は上司から、
「メンタルヘルス推進室を新たに設置したから、推進者として頑張ってやってくれ!」
と言われて、行ってみると、担当者は私1人だけ・・・。
本社、工場、ましてや日本各所にある営業所、支店の方々はその存在、機能も知るわけがない、ということに気がつき、早くも呆然!上司のお膳立てで、工場内をうろうろと歩いてはみましたが、さすがは工場。生産ラインの管理はスキが全くありません。とてもじゃないですが、ちょこっと「いつでも気軽に相談窓口として利用してくださいね」なんて口が裂けても言えない現場を見てしまいました。完全に「お客様」状態の私は「こんにちは」と従業員に優しく声をかけられてしまう始末です。それでも機会あらば、「メンタルヘルス推進室の・・・」と自己紹介をするのですが…
「自分は病気じゃないから、担当者さんとはご縁がなさそうですね」
「お世話にならないように頑張ります」
「病気の人は社内にたくさんいるってことですか?」
「何をするんですか?あ、でも自分は全く問題なく元気なのでただ質問してみただけです」
などの言われよう。みんな、ピューっと逃げるようにその場を去ってしまい、挨拶がてらの雑談もなし。どうも、メンタルヘルス推進室の担当者と話をしているだけで、心の病の相談をしている人と思われてしまうのでは?という懸念が、多くの従業員の方々の中にはあるのでしょうか。こんなわけで、「気軽に利用してくださいね!」などと、にこやかに言ってみたところで、全く伝わらない、広まらないことはいうまでもありません。この先どうなることやら・・・困り果ててしまいました。
そこで、取りかかりとしては、ひたすら社内外の情報収集を行う必要性を痛感することとなりました。メンタルヘルスに取り組むという目的は明らかなのですが、どのような状態を目指すのか、そもそも従業員の方、個人個人が本音のところではどのように思っているのか、どのようなことが必要とされているのだろうか、それらを把握した上でなければ、現状からの目指す方向性も見えてこない状況に、かくして気がついたのです。
次回へ続く・・・
東 ちはる(あずま ちはる)
産業カウンセラー・心理相談員
新たに設置した「メンタルヘルス推進室」の担当者となり、「事業場内メンタルヘルス推進担当者」として活動することに。
社内のメンタルヘルス対策の実現に向けて、そこには孤軍奮闘の日々が待っていました。
何も分からない手さぐりの状態から、『出来ることから一つずつ』をモットーに現在進行形で取り組んでいきます。※創作ストーリーのため、架空の人物です。
このページに関連のある情報
メンタルヘルス指針(労働者の心の健康の保持増進のための指針) |
平成19年労働者健康状況調査結果の概況(厚生労働省) |
こころの耳Q&A(メンタルヘルスの取組みを始めるに当たり、どう進めたらよいでしょうか?) |
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