働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト
  • HOME
  • 労働災害防止計画の概要-第14次労働災害防止計画(2023年度~2027年度)-

労働災害防止計画の概要-第14次労働災害防止計画(2023年度~2027年度)-

  • 働く方
  • ご家族の方
  • 事業者の方
  • 部下を持つ方
  • 支援する方
労働災害防止計画のうちメンタルヘルス対策に関連する情報についてまとめています

「労働災害防止計画」とは、労働災害を減少させるために国が重点的に取り組む事項を定めた中期計画です。労働安全衛生法に基づいて厚生労働大臣が定めることとされており、2023年 4 月~ 2028年 3 月までの 5 年間を計画期間とする「第 14 次労働災害防止計画」が2023年3月8日に策定されました。
この計画におけるメンタルヘルス対策を含めた労働者の健康確保対策の推進に関する主な記述は、以下のとおりです。

厚生労働省「労働災害防止計画について」

1.計画のねらい

(1)計画が目指す社会

誰もが安全で健康に働くためには、労働者の安全衛生対策の責務を負う事業者や注文者のほか、労働者等の関係者が、安全衛生対策について自身の責任を認識し、真摯に取り組むことが重要である。また、消費者・サービス利用者においても、事業者が行う安全衛生対策の必要性や、事業者から提供されるサービスの料金に安全衛生対策に要する経費が含まれることへの理解が求められる。
これらの安全衛生対策は、ウィズ・コロナ、ポスト・コロナ社会も見据え、また、DX(デジタルトランスフォーメーション)の進展も踏まえ、労働者の理解・協力を得ながら、プライバシー等の配慮やその有用性を評価しつつ、ウェアラブル端末、VR(バーチャル・リアリティ)やAI等の活用を図る等、就業形態の変化はもとより、価値観の多様化に対応するものでなければならない。
また、労働者の安全衛生対策は事業者の責務であることが前提であるが、さらに「費用としての人件費から、資産としての人的投資」への変革の促進が掲げられ、事業者の経営戦略の観点からもその重要性が増してきており、労働者の安全衛生対策が人材確保の観点からもプラスになることが知られ始めている。こうした中で、労働者の安全衛生対策に積極的に取り組む事業者が社会的に評価される環境を醸成し、安全と健康の確保の更なる促進を図ることが望まれる。 さらに、とりわけ中小事業者等も含め、事業場の規模、雇用形態や年齢等によらず、どのような働き方においても、労働者の安全と健康が確保されることを前提として、多様な形態で働く一人一人が潜在力を十分に発揮できる社会を実現しなければならない。

(2)計画期間

2023 年度から 2027 年度までの5か年を計画期間とする。

(3)計画の目標

国、事業者、労働者等の関係者が一体となって、一人の被災者も出さないという基本理念の実現に向け、以下の各指標を定め、計画期間内に達成することを目指す。

ア) アウトプット指標

本計画においては、後述する計画の重点事項の取組の成果として、労働者の協力の下、事業者において実施される次の事項をアウトプット指標として定め、国は、その達成を目指し、本計画の進捗状況の把握のための指標として取り扱う。

(オ)労働者の健康確保対策の推進
  • メンタルヘルス対策に取り組む事業場の割合を 2027 年までに 80%以上とする。
  • 使用する労働者数 50 人未満の小規模事業場におけるストレスチェック実施の割合を 2027 年までに50%以上とする。
  • 各事業場において必要な産業保健サービスを提供している事業場の割合を 2027年までに80%以上とする。

イ) アウトカム指標

事業者がアウトプット指標に定める事項を実施した結果として期待される事項をアウトカム指標として定め、本計画に定める実施事項の効果検証を行うための指標として取り扱う。
なお、アウトカム指標に掲げる数値は、本計画策定時において一定の仮定、推定及び期待のもと試算により算出した目安であり、計画期間中は、従来のように単にその数値比較をして、その達成状況のみを評価するのではなく、当該仮定、推定及び期待が正しいかも含めアウトプット指標として掲げる事業者の取組がアウトカムに繋がっているかどうかを検証する。

(オ)労働者の健康確保対策の推進
  • 週労働時間 40 時間以上である雇用者のうち、週労働時間 60 時間以上の雇用者の割合を2025 年までに5%以下とする。
  • 自分の仕事や職業生活に関することで強い不安、悩み、ストレスがあるとする労働者の割合を2027 年までに50%未満とする。

(4)計画の評価と見直し

本計画に基づく取組が着実に実施されるよう、毎年、計画の実施状況の確認及び評価を行い、労働政策審議会安全衛生分科会に報告する。また、必要に応じ、計画を見直す。
計画の評価に当たっては、それぞれのアウトプット指標について、計画に基づく実施事項がどの程度アウトプット指標の達成に寄与しているのか、また、アウトプット指標として定める事業者の取組が、どの程度アウトカム指標の達成に寄与しているか等の評価も行うこととする。

2 安全衛生を取り巻く現状と施策の方向性

(3)労働者の健康を巡る動向と対策の方向性

ア) メンタルヘルス対策関係

令和3年労働安全衛生調査(実態調査)によれば、メンタルヘルス対策に取り組んでいる割合については、使用する労働者数 50 人以上の事業場では取組率が 94.4%である。一方、使用する労働者数 50 人未満の小規模事業場の取組率は、30~49 人で70.7%、10~29 人で 49.6%となっており、特に使用する労働者数 30 人未満の事業場(小規模事業場)において、メンタルヘルス対策への取組が低調である。
また、精神障害等による労災請求件数及び認定件数は増加傾向にある。
使用する労働者数 50 人未満の事業場においてメンタルヘルス対策に取り組んでいない理由については、令和2年労働安全衛生調査(実態調査)によれば、①該当する労働者がいない(44.0%)、②取組方が分からない(33.8%)、③専門スタッフがいない(26.3%)となっており、小規模事業場を中心にメンタルヘルス対策の取組支援が引き続き必要となっている。

4 重点事項ごとの具体的取組

(7)労働者の健康確保対策の推進

ア) メンタルヘルス対策

(ア)労働者の協力を得て、事業者が取り組むこと
  • ストレスチェックの実施のみにとどまらず、ストレスチェック結果を基に集団分析を行い、その集団分析を活用した職場環境の改善まで行うことで、メンタルヘルス不調の予防を強化する。
  • 「事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」(令和2年厚生労働省告示第5号)に基づく取組をはじめ職場におけるハラスメント防止対策に取り組む。
(イ)(ア)の達成に向けて国等が取り組むこと
  • 産業保健総合支援センター及び地域産業保健センターを通じて、小規模事業場におけるメンタルヘルス対策の取組を引き続き支援する。
  • 事業協同組合、商工会、商工会議所等が、会員等にメンタルヘルス対策を含む産業保健に係るサービスを提供した場合における国による支援の仕組みを整備する。
  • ストレスチェックの実施や集団分析を促進するため、ストレスチェックの受検、集団分析等ができるプログラムを事業者に提供するとともに、その活用に向けて周知を図る。
  • 集団分析、職場環境改善の実施及び小規模事業場におけるストレスチェックの実施を促進するための方策を検討し、取り組む。
  • 健康経営の視点を含めたメンタルヘルス対策に取り組む意義やメリット(欠勤、プレゼンティーズム、経営損失の防止等)を見える化し、経営層に対する意識啓発の強化を図る。
  • 小規模事業場を中心とした好事例の周知啓発を図る。
  • 職場におけるハラスメント防止対策の取組の周知及び対策の徹底を図る。

(参考)アウトプット指標及びアウトカム指標の考え方

(オ)労働者の健康確保対策の推進

【アウトプット指標】
労働者の健康確保対策については、特にメンタル不調や過重労働による健康障害が課題となっていることから、これらの対策を推進することが本重点項目の目的となる。 メンタル不調については、メンタルヘルス対策として職場におけるハラスメント防止対策やストレスチェックの実施も含めたメンタルヘルス対策を進めることが有効であると考えらえられる。このような考えから、事業者が取り組む具体的対策を4(7)ア(ア)に取りまとめ、4(7)ア(ア)の推進状況を1(3)に掲げるメンタルヘルス対策及びストレスチェックの実施状況をアウトプット指標として把握することとする。
また、過重労働による健康障害防止については、時間外・休日労働時間を削減することに加え、年次有給休暇の取得や勤務間インターバル制度の導入といった長時間労働の抑制策による働き方の見直しの促進や、長時間労働者の面接指導を含めた産業保健サービスの充実が有効であると考えられる。このような考えから、事業者が取り組む具体的対策を4(7)イ(ア)に取りまとめ、4(7)イ(ア)の推進状況を上記に掲げる年次有給休暇の取得率やインターバル制度の導入率をアウトプット指標として把握することとする。
さらに、これらの対策を含めて全ての事業場において産業保健サービスが提供されることが労働者の健康確保対策として重要であることから、事業者が取り組む具体的対策を4(7)ウ(ア)に取りまとめ、4(7)ウ(ア)の推進状況を1(3)に掲げる必要な産業保健サービスを提供している事業場の割合をアウトプット指標として把握することとする。

【アウトカム指標】
メンタルヘルス対策及びストレスチェックの実施状況がそれぞれ 80%、50%に進捗すれば(アウトプット指標達成)、メンタルヘルス不調につながる「自分の仕事や職業生活に関することで強い不安、悩み、ストレスがあるとする労働者の割合」を 2027 年までに 50%未満となることが期待できる。
また、年次有給休暇の取得率が 70%以上、勤務間インターバル制度の導入率が 15%以上に進捗すれば(アウトプット指標達成)、長時間労働の抑制に繋がる働き方の見直しが図られるほか、「過労死等の防止のための対策に関する大綱」に基づく労働時間削減に向けた取組を着実に進めることで、週労働時間40 時間以上である雇用者のうち、週労働時間 60 時間以上の雇用者の割合を 2025 年までに5%以下となることが期待できる。
なお、必要な産業保健サービス(※)の提供割合が 80%以上に進捗すれば(アウトプット指標達成)、労働者の健康障害全般の予防につながり、健康診断有所見率等が改善することが想定されるが、労働災害防止の成果を直接反映する適切な指標を設定することが困難であるため、このアウトプット指標に直接関係するアウトカム指標は設定していない。