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労働災害防止計画の概要-第13次労働災害防止計画(2018年度~2022年度)-

 労働災害防止計画は、労働安全衛生法に基づいて厚生労働大臣が定めることとされており、平成30年4月から進められる計画は、平成30年3月19日に公示された第13次労働災害防止計画→です。

 第13次労働災害防止計画が目指す社会

「一人の被災者も出さないという基本理念の下、働く方々の一人一人がより良い将来の展望を持ち得るような社会」

 働く方々の一人一人がかけがえのない存在であり、それぞれの事業場において、日々の仕事が安全で健康的なものとなるよう、不断の努力が必要です。
 また、一人一人の意思や能力、そして置かれた個々の事情に応じた、多様で柔軟な働き方を選択する社会への移行が進んでいく中で、従来からある単線型のキャリアパスを前提とした働き方だけでなく、正規・非正規といった雇用形態の違いにかかわらず、副業・兼業、個人請負といった働き方においても、安全や健康が確保されなければなりません。
 さらに、就業構造の変化等に対応し、高年齢労働者、非正規雇用労働者、外国人労働者、障害者である労働者の安全と健康の確保を当然のこととして受け入れていく社会を実現しなければなりません。

 この計画におけるメンタルヘルス対策(心の健康確保対策)と過重労働対策(過労死等予防対策)に関連する主な記述は、次のとおりです。
 なお、概要→並びにパンフレット→もご覧ください。

項 目内  容
はじめに 過労死やメンタルヘルス不調が社会問題としてクローズアップされる中で、働き方改革実行計画(平成29年3月28日働き方改革実現会議決定)を踏まえ、過労死研究の推進とその成果を活用しつつ、労働者の健康確保対策やメンタルヘルス対策等に取り組むことが必要になっているほか、治療と仕事の両立への取組を推進することも求められている。
計画の期間 2018年度から2022年度までの5か年を計画期間とする。

1 計画のねらい

(2) 計画の目標

国、事業者、労働者等の関係者が一体となって、一人の被災者も出さないという基本理念の実現に向け、以下の目標を計画期間中に達成することを目指す。

【全体】
①死亡災害については、一たび発生すれば取り返しがつかない災害であることを踏まえ、死亡者数を2017年と比較して、2022年までに15%以上減少させる。
②死傷災害(休業4日以上の労働災害をいう。以下同じ。)については、死傷者数の増加が著しい業種、事故の型に着目した対策を講じることにより、死傷者数を2017年と比較して、2022年までに5%以上減少させる。

【職場のメンタルヘルス対策関連】
①仕事上の不安、悩み又はストレスについて、職場に事業場外資源を含めた相談先がある労働者の割合を90%以上(71.2%:2016年)とする。
②メンタルヘルス対策に取り組んでいる事業場の割合を80%以上(56.6%:2016年)とする。
③ストレスチェック結果を集団分析し、その結果を活用した事業場の割合を60%以上(37.1%:2016年)とする。

(4) 計画の評価と見直し

計画に基づく取組が着実に実施されるよう、毎年、計画の実施状況の確認及び評価を行い、労働政策審議会安全衛生分科会に報告する。また、必要に応じ、計画を見直す。 計画の評価に当たっては、単に死傷者数や目標に掲げた指標の増減のみならず、その背景や影響を及ぼしたと考えられる指標、社会経済情勢の変化も含めて分析を行う。

2 安全衛生を取り巻く現状と施策の方向性

(3)労働者の健康確保を巡る動向と対策の方向性

・現在の仕事や職業生活に関する強い不安、悩み又はストレスを感じる労働者は、依然として全労働者の半数を超えている。

・過労死等で労災認定された件数は、ここ数年は700件台で推移しており、そのうち死亡又は自殺(未遂を含む。)の件数は200件前後となっている。また、過去5年間に過労死等で労災認定された事案を年齢階級別に見ると、「脳・心臓疾患」は50歳代、40歳代の順で多く、「精神障害」は30歳代、40歳代、29歳以下の順で多くなっている。

・過労死等を未然に防止するためには、長時間労働対策に加えて、メンタルヘルス対策の推進が重要である。2015年12月には、メンタルヘルス不調を未然に防止することを主な目的としたストレスチェック制度が創設され、労働者のメンタルヘルス対策は新たな一歩を踏み出している。

・ストレスチェック制度においては、労働者一人一人のストレスを把握して自身の気づきを促すとともに、その結果を集団ごとに分析して職場環境の改善に活用することが重要である。集団分析結果を活用した職場環境改善は努力義務であるが、その実施率は全事業所の約37%(2016年)にとどまっている。

・また、高ストレスやメンタルヘルス不調等の労働者が、産業医等による健康相談等を安心して受けられることが重要であるが、全労働者の約3割が職場において仕事上の不安、悩み又はストレスについて、相談できる相手がいないと感じている現状にある。

こうした状況を踏まえると、ストレスチェックの集団分析結果を活用した職場環境改善の取組や、労働者が安心してメンタルヘルス等の相談を受けられる環境整備を促進するとともに、過労死等の実態把握や調査研究による実態解明を進めつつ、得られた知見に基づき対策を推進していくことが必要である。

4 重点事項ごとの具体的取組

(2) 過労死等の防止等の労働者の健康確保対策の推進


ア 労働者の健康確保対策の強化

(ア)企業における健康確保措置の推進
・ 過重労働・メンタルヘルス対策等の労働者の心身の健康確保対策がこれまでになく強く求められている。そのため、法定の健康診断やその結果を踏まえた就業上の措置のみならず、労働者の健康管理に関して、経営トップの取組方針の設定・表明等、企業の積極的な取組を推進する。また、労働者は、自らも健康の保持増進に努める。

(イ)産業医・産業保健機能の強化
・事業場において、過重な長時間労働やメンタルヘルス不調等により過労死等のリスクが高い状況にある労働者を見逃さないため、医師による面接指導や産業医・産業保健スタッフによる健康相談等が確実に実施されるようにし、労働者の健康管理を推進する。
・「産業医制度の在り方に関する検討会報告書」(平成28年12月26日産業医制度の在り方に関する検討会とりまとめ)で示された内容等も踏まえ、産業医の在り方を見直し、産業医等が医学専門的な立場から労働者の健康確保のためにより一層効果的な活動を行いやすい環境を整備する。
・さらに、
① 産業医の質・量の確保、地域偏在等の問題の改善
② 産業医の選任義務がない小規模事業場における産業保健機能強化のための支援
③ 産業医や看護職等の産業保健スタッフから構成されるチームによる産業保健活動の推進
④ 産業医科大学による産業保健分野の人材育成の推進のために必要な方策について検討し、対策を講じる。
・ 衛生委員会等の活動の活性化を図るため、産業医に衛生委員会等の参加を促すなどの取組を進めるとともに、必要に応じて、衛生委員会等の審議事項等について見直しを検討する。

イ 過重労働による健康障害防止対策の推進

・時間外労働の上限規制により過重労働の防止を図るとともに、過重な労働により脳・心臓疾患等の発症のリスクが高い状況にある労働者を見逃さないため、長時間労働者に対する健康確保措置として、医師による面接指導の対象者の見直しや労働時間の客観的な把握等の労働者の健康管理を強化する。

ウ 職場におけるメンタルヘルス対策等の推進

(ア)メンタルヘルス不調の予防
・ストレスチェック制度について、高ストレスで、かつ医師による面接指導が必要とされた者を適切に医師の面接指導につなげるなど、メンタルヘルス不調を未然に防止するための取組を推進するとともに、ストレスチェックの集団分析結果を活用した職場環境改善について、好事例の収集・情報提供等の支援を行い、その取組を推進することで、事業場における総合的なメンタルヘルス対策の取組を推進する。
・産業保健総合支援センターによる支援等により、小規模事業場におけるストレスチェック制度の普及を含めたメンタルヘルス対策の取組を推進する。
・事業場におけるメンタルヘルス対策について、労働者の心の健康の保持増進のための指針(平成18年健康保持増進のための指針公示第3号)に基づく取組を引き続き推進するとともに、特に、事業場外資源を含めた相談窓口の設置を推進することにより、労働者が安心してメンタルヘルス等の相談を受けられる環境を整備する。

(イ)パワーハラスメント対策の推進
・労働者が健康で意欲を持って働けるようにするためには、労働時間の管理やメンタルヘルス対策だけでなく、職場のパワーハラスメントを防止する必要があることから、働き方改革実行計画を受けて開催された有識者と労使関係者からなる検討会の結果を踏まえて、パワーハラスメント対策を推進する。

エ 雇用形態の違いにかかわらない安全衛生の推進

・雇用形態の違いにかかわらず、安全衛生教育や健康診断、安全衛生委員会への参画等について適正に実施されるようにする。

オ 副業・兼業、テレワークへの対応

・副業・兼業を行う労働者の健康確保のため、事業者が法令に基づく健康診断等の措置が必要な場合は適切に実施するよう周知していく。 また、これらの労働者の健康管理が、一体的かつ継続的に管理されるような方策を検討する。
・テレワークについては、労働者の健康確保措置のために必要な労働時間の管理を適切に行うとともに、事業者が法令に基づく安全衛生教育、健康診断等を適切に実施するよう周知していく。

カ 過労死等の実態解明と防止対策に関する研究の実施

・ 独立行政法人労働者健康安全機構労働安全衛生総合研究所の過労死等調査研究センターにおける過労死等の労災保険給付請求事案に係るデータの収集や調査分析等を継続するとともに、引き続き疫学的な研究等を通じて過重労働と過労死等の相関等に関する客観的なデータの把握と分析を行い、その結果を踏まえ対策を検討する。

8 国民全体の安全・健康意識の高揚等

ア 高校、大学等と連携した安全衛生教育の実施

・職場における安全確保や健康管理の仕組み、メンタルヘルス等に係る基礎知識等について、文部科学省と連携しつつ、学校保健安全法に基づく「学校安全の推進に関する計画」等を活用した学校教育への取込み等を働きかける。

ウ 2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会を活用した健康促進

・身体活動は、抑うつや不安の発生の予防、これらの症状の改善に有用であることが明らかになってきている。2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会の開催により、広く国民のスポーツへの関心が高まることを踏まえ、スポーツ庁と連携して、スポーツ基本計画と連動した事業場における労働者の健康保持増進のための指針(昭和63年健康保持増進のための指針公示第1号)の見直しを検討するなど、運動実践を通じた労働者の健康増進を推進する。