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メンタルヘルス関係

ア行

ICD-11
「疾病及び関連保健問題の国際統計分類 (International Statistical Classification of Diseases and Related Health Problems )」のことであり、死因や疾病の国際的な統計基準として世界保健機関(WHO) によって公表された分類です。略称はICDで、現在は2018年に改訂された第11版(ICD-11)となっており、日本語版は今後公表される予定です。
青い鳥症候群
現実の自分や、取り巻く環境、待遇などを受け入れられず、自分にはもっと力があり、もっと能力を発揮できる場所があるはずだ、という考えを捨てられず、理想の職場を求めて転職を繰り返す人のことをメーテルリンクの童話「青い鳥」にちなんで「青い鳥症候群」と呼ぶことがあります。不全感が続くことにより、うつ病に移行することもあります。
アサーション
相手の気持ちや考えを尊重しながらも、自分の気持ちや考えをその場に適した表現で伝えるコミュニケーション方法のことです。
アスペルガー症候群
自閉症の一種で、高機能自閉症と呼ぶこともあります。通常の自閉症と違い知的障害はありませんが、相手の感情や場の雰囲気を察することができず、人や社会とのコミュニケーションに支障をきたしやすいという特徴があります。
アブセンティーズム
WHO(世界保健機関)によって提唱された健康問題に 起因したパフォーマンスの損失を表す指標で、健康問題による仕事 の欠勤(病欠)のことです。
【参考】プレゼンティーズム
一次予防
病気や傷害を未然に防止することです。具体的には、生活習慣や環境の改善、健康教育、予防接種等による疾病予防や健康増進、また、事故防止により傷害の発生を予防したりすることです。時間外労働の短縮や年次有給休暇の取得促進、ストレスチェック等が一次予防にあたります。
【参考】二次予防、三次予防
医療保護入院
精神保健及び精神障害者福祉に関する法律第33条に規定されている入院形態で、1名以上の精神保健指定医の診察により医療及び保護のため入院が必要と判断され、かつ本人の同意が得られない場合(精神症状による判断力の低下や病識がないなど)、家族などの同意または居住地の居住地の市町村長の同意によって成立する入院です。
【参考】措置入院任意入院
EAP
EAPは、「Employee Assistance Program」の略であり、「従業員支援プログラム」と訳されています。事業場外資源によるケアの一つの手段として位置付けられるメンタルヘルス支援サービスで、カウンセリング等を提供しています。
うつ病
様々な心理的負荷などにより精神活動が低下し、抑うつ気分、興味や関心の欠如、不安・焦燥、精神運動の制止あるいは激越、食欲低下、不眠などが生じ、生活上の著しい苦痛や機能障害を引き起こす精神疾患です。治療としては、休養、薬物療法、精神療法を組み合わせます。
【さらに詳しく】ご存知ですか?うつ病
【参考】事例紹介-うつ病-

カ行

快適職場づくり
労働者は生活の3分の1を職場で過ごし、職場はいわば労働者の生活の場の一部ともいえます。そこで、事業者は作業環境や施設設備についての現状を的確に把握し、職場の意見・要望等を聞いて計画的に着実に職場の改善をすすめることを示します。労働安全衛生法第71条の2において、事業者は快適な職場環境を形成するように努めなければならないとされており、疲労やストレスの少ない職場づくりを目指すこととされています。
買い物依存症
ひとは自分の収入の範囲内で買い物をしていますが、ストレス発散や快楽などの言い訳のもと、次第に買い物をする回数も増え、必要のないものまで買ってしまうことがあります。高額な買い物を繰り返し借金もかさみ、自分でも生活に支障をきたしていることに気づいても買い物をやめることができない状態のことを買い物依存症といいます。
カウンセリング
相談者の抱える問題や悩みに対して、専門的な技術や知識をベースに、言語的または非言語的コミュニケーションを用いて行われる相談・援助活動一般のことをいいます。ガイダンスの一方法としての相談・助言だけでなく、心理療法としての治療的援助活動まで幅広く含まれることもあります。
過換気症候群
精神的な不安によって過呼吸になり、その結果、手足や唇のしびれやどうき、めまいなどの症状が引き起こされる心身症の一つです。若年者や女性でストレスを受けやすい人によくみられます。必要ならば抗不安薬を内服します。発作を繰り返す場合、安定期に心理療法、行動療法を行うとよい場合があります。
過食症
拒食症とともに摂食障害のひとつです。拒食症に伴うことも、拒食症から移行することも、単独で起こることもあります。自分で制御できないほどのむちゃ食いの後、体重増加の恐怖から、自ら吐いたり、下剤を乱用したりした後、こうした行為を制御できない自己嫌悪から気分が落ち込み、絶望感に苦しむことを繰り返します。治療はカウンセリング、さらに必要に応じて薬も用います。
カスハラ
カスタマーハラスメントを略したもので、顧客等からの暴行、脅迫、ひどい暴言、不当な要求等の著しい迷惑行為をいいます。労働施策総合支援推進法のもと、「事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」(令和2年厚生労働省告示第5号)が策定され、事業者がその対策を行うことが望ましいとされております。また、取組むべき具体策の参考として「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」などが公表されています。
仮面うつ病
うつ病は、精神症状が一般的ですが、なかには身体症状の方が前景に現れるケースも少なくありません。身体疾患の仮面をかぶったうつ病という意味で、仮面うつ病と呼ばれています。主体となる苦痛が身体症状となると、内科、産婦人科、などの心の専門医以外の診療科を受診し身体疾患として治療を受けてしまうこともあります。
空の巣症候群
子どもが成長し巣立って、巣(家)が空っぽになってしまったことが、一種の喪失体験となり、寂しさなどを感じることを「空の巣症候群」ということがあります。精神医学的にはうつ状態、うつ病の一種であることが多いものです。
寛解
一定の期間、対象となる精神疾患の重大な兆候や症状が認められない状態を指します。概ね2ヶ月以上継続している場合に「完全寛解」といいます。アルコールや薬物依存などは障害特性を考慮して、3ヶ月以上12ヶ月未満を「寛解早期」、12ヶ月以上診断の基準を満たさない時「寛解持続」と称しています。
感情鈍磨
統合失調症にみられる陰性症状のひとつで、感情表現が乏しくなり、情緒性や道徳感などが低下する程度から、快・不快、喜怒哀楽の感情反応が消失するものまでさまざまです。
概日リズム睡眠障害
睡眠・覚醒のリズムがうまく調整できなくなった状態を概日リズム睡眠障害といい、海外出張(時差ぼけとなる)や、交替勤務でも起こります。このタイプの治療には、明るい光の照射や、ビタミンB12などが用いられます。
希死念慮
「死にたい」という思いを指しますが、必ずしも直接的に死を希望しているとは限りません。中には「楽になりたい」、「ずっと何もせず眠っていたい」、「消えてなくなりたい」という間接的な思考内容も含まれます。「自殺念慮」という用語も使われますが、希死念慮と類似の思考内容でありますが、その程度は強く、自殺という能動的な行為で人生を終わらせようという考え方を意味することが多いです。
季節性うつ病
季節性の外的環境変化が影響し、ある季節のみうつ病になるものを指します。季節性感情障害、季節性気分障害などとも言われます。日照時間の短縮が関与しているといわれている「冬季うつ病」の治療には、早朝の数時間にわたって5000ルックス以上の光を照射する光療法が有効とされています。冬季のみでなく、夏季や雨季などの季節性うつ病も存在します。
気分障害
感情障害ともいわれ、うつ病、躁うつ病などが含まれる分類を意味します。気分の変調(抑うつあるいは高揚)が持続することにより、生活上の苦痛や機能障害を呈する精神疾患の総称といえます。
気分変調症(気分変調性障害)
典型的なうつ病ではありませんが、うつ病性の障害とされており、それほど重篤でないものの、より慢性的持続的(一般的に2年以上)なものをさします。
記銘力障害
記憶障害の一種で、新たに知覚し、体験した情報を記憶の中に取り入れ留めておくことができなくなる障害をさします。一般に脳障害の症状として現れますが、ストレス反応でも起こることがあります。
急性ストレス反応
主に生死に関わるような強い心理的ストレスを経験した後、これによるフラッシュバック(その出来事が繰り返しはっきりと思い返されたり、悪夢を見たりする)、その出来事に関する事柄を回避したり、神経が高ぶった状態が続き、不眠や不安などが強く現れたりします。ただし、PTSDと異なり、これらの症状は一過性であり、1か月以内におさまるものです。
共感
カウンセリングでいう共感とは、自分の考えや感情は保ちつつ、相手の視点を理解し、感情を汲み取り、相手の気持ちに寄り添うことを言います。
強迫性障害
自分でもそんなことはない、とわかってはいても拭い去れない考え(強迫観念)や、それに基づいた行動(強迫行為)により、日常生活に支障をきたします。
【さらに詳しく】国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所「こころの情報サイト」
拒食症
摂食障害の一つで、強いやせ願望と肥満恐怖、そのために極端なダイエットを敢行します。著しい痩身なのに、やせていると自覚していない(歪んだ認知)のも大きな特徴です。相当やせてもなお活発なことが多いです。過食症に移行することも多い一方で、やせが進むと身体の合併症も伴い、死の危険も生じる、決してあなどれない病気です。
ギャンブル依存症
パチンコ、パチスロ、競輪、競馬、競艇などのギャンブルによって経済的、社会的、精神的に自分の生活に支障をきたしていることに気がついていても、ギャンブルをやめることができないことを言います。
傾聴
相手の話に関心を持ち、感情を受け止め、共感的かつ真摯な態度で聴くことをいいます。“聴く”という字から“十四の心と耳を使う”と例えられることもあります。
健康管理
労働衛生の3管理のうちの一つで、健康診断およびその結果にもとづく事後措置、健康測定およびその結果に基づく健康指導まで含めた幅広い内容を有しています。健康管理は、健康診断や健康測定を通じて労働者の健康状態を把握し、作業環境や作業との関連を検討することにより、労働者の健康障害を未然に防ぐこと、さらに健康の増進につながるような積極的な内容であることが必要です。メンタルヘルス対策も健康管理が中心です。
*労働衛生の3管理 ・作業環境管理・作業管理・健康管理
健康教育
職場における健康教育は、労働衛生教育ともいわれます。健康教育とは、健康に関る諸問題に対して正しい知識を与え、健康増進につながるようなライフスタイルをとるように個人の行動を変化させることです。健康教育により健康状態に影響を及ぼす個人の習慣や個人の行動、組織における変容を引き起こします。メンタルヘルス対策における労働者、管理監督者等への教育も健康教育の一環といえます。
月経前症候群(PMS)
排卵から月経がくるまでの2週間ないし1週間くらいの間に、イライラ、落ち込み、腹痛、乳房緊満感、腰痛、頭痛・頭重感、眠気などの症状が繰り返し出現し、人間関係や日常生活に支障をきたします(症状は月経開始とともに殆どが消失します)。出現頻度は、月経のある人のうち数%とする報告から約80%とする報告まで様々あります。薬物療法や食事療法などによる治療が試みられています。
【参考】事例紹介-月経前症候群(PMS)-
幻覚
実際にはない刺激を実際に存在するかのように知覚することをいい、錯覚とは区別されます。幻覚の種類には幻聴、幻視、幻味、幻臭、体感幻覚などがあります。幻覚は統合失調症、アルコール依存症、薬物依存症、器質性精神病、心因反応、躁うつ病などに見られますが、統合失調症で最も多くみられる症状です。
現代型うつ病(新型うつ病)
正式な医学病名ではなく、従前からの典型的なうつ病と違うものを意味する総称として名前が一人歩きしている傾向があり、専門家の間でも見解は一致していません。「新型うつ病」などとも言われ、あたかも最近新しく生じたうつ病のようですが、実は古くから「ディスチミア親和型」、「逃避型うつ病」、「アパシー」、「退却神経症」、「パーソナリティ障害(境界性、自己愛性など)」、「甘え、怠け、わがまま、自己中心的な性格の問題」など専門家の間では様々な見方をされてきています。本人だけの問題と考えられがちですが、社会が生んでいるという観点も重要と思われます。
行為障害(素行障害)
反抗的で攻撃的な非行行為を繰り返す状態をいいます。この非行行為は年齢相応に必要な社会的規範や規則から著しく逸脱しています。その非行行為を引き起こす原因としては脳の障害、精神的な障害、人格発達のゆがみ、家庭環境や社会的環境の影響などがあります。
抗うつ薬
うつ病やうつ症状の治療に使われる薬物で、主に気分の落ち込みの解消、意欲の亢進、不安興奮鎮静の3つの薬理作用があります。即効性は少なく、効果判定には十分量を十分期間服用して行います。軽症例では服用前に精神療法や心理教育から治療が始まる場合もあります。
高照度光療法
一部のうつ病(冬季うつ病、非季節性うつ病など)や概日リズム睡眠障害などに有効とされる治療です。太陽光やそれと同等の光を整えられた環境の下で浴びることにより、体内時計を調節して生体リズムを整えます。実施できる医療機関は限られています。
向精神薬
精神症状の治療に使われる薬物の総称です。中枢神経に作用し精神機能に影響を及ぼす薬物であり、抗精神病薬(幻覚、妄想など)、抗うつ薬(うつ症状など)、気分安定薬(双極性の症状など)、抗不安薬(不安、緊張症状など)、睡眠薬(不眠症状)、精神刺激薬(多動、不注意など)、抗てんかん薬(痙攣など)、などに分類されます。
行動療法
心理療法の一つで、人間の問題行動は誤った学習から生じたものとみなし、その学習を消去し正しい行動へ導くという考えに基づいた行動変容技法の総称です。個人の内面よりも具体的行動やそれを引き起こす条件を重視します。例えば、弱い不安から段階的に強い不安に近づいて慣れるようにしたり、賞賛や褒美などを与えて新しく適切な反応を習得するよう援助したりします。
抗不安薬
不安や緊張などを改善し、自律神経を安定させる効果があります。身体疾患に基づく不安にも用いられます。程度の差はありますが、眠気を誘う、筋肉のこわばりを緩める作用もあり、車の運転などは避けることが奨められています。連用による依存性が生じることがあり、処方医の指示を守ること、漫然とした長期投与は常用量依存を生じることがあり、避けることが必要です。
交流分析
精神分析を基礎とし、人間行動に関する理論体系およびそれを応用した心理療法の1つで、人間関係を円満にして個人が成長するのを援助します。ありのままの自分を生かす方法について、自分自身で答えを見いだせるように促すことが特徴です。心療内科などの医療分野、学校、企業内研修などで活用されています。
心の健康づくり計画
メンタルヘルスケアは、中長期的視野に立ち継続的・計画的に行うこと、事業者が労働者の意見を聴きつつ事業場の実態に則した取組みを行うことが必要です。このため衛生委員会などで十分調査審議を行い、事業者が同ケアを積極的に推進する旨の表明に関すること、事業場における心の健康づくりの体制の整備に関すること、事業場における問題点の把握及びメンタルヘルスケアの実施に関することなどを計画することが必要です。
心の健康づくり専門スタッフ
事業場内における心の健康の保持増進に関する専門スタッフであり、教育研修の企画や実施、職場環境等の評価と改善、労働者及び管理監督者からの専門的な相談対応等を行います。心理相談担当者(心とからだの健康づくり(THP)専門スタッフ)もその一つです。
コーチング
コーチングとは本人の能力ややる気を引き出し、思考や感情を行動に結びつけて目標達成や自己実現につながるよう援助するコミュニケーション手法の一つです。コーチは答えを与えるのではなく、その人の中にある答えを引き出し、創り出すことを援助します。

サ行

産業医
産業医とは、労働者の健康を保持するため労働者の作業環境や作業管理、健康管理に関して専門的立場から助言・指導を行う医師のことを示します。産業医は労働安全衛生法に基づき常時50人以上の労働者を使用する事業場において選任する事業者の義務があります。
産業保健スタッフ
事業場内の産業保健スタッフとは産業医等、衛生管理者等、保健師等あるいは心の健康づくり専門スタッフなどを指し、人事労務管理スタッフや事業場外資源などと連携して、メンタルヘルスケアに取り組みます。産業医と衛生管理者は労働者数50人以上の事業場で選任が義務付けられています。保健師等は選任義務はありませんが、身近な専門職として重要です。
産褥期うつ病(産後うつ病)
産褥(さんじょく)期とは分娩後、母体が妊娠前の状態に回復するまでの期間をさし、通常6~8週までの期間をいいます。この期間にはうつ病を発症しやすく、「産後うつ病」とも呼ばれます。急激な身体的変化、ホルモンの変化のみならず育児といった心理社会的変化も同時に起こるため、時に自殺や無理心中などのおそれもありますので注意を要します。育児を抱え込ませない社会的サポートが重要です。
三次予防
すでに発病した後に、治療過程において保健指導やリハビリテーションを行うことにより社会復帰を促したり、再発を防止したりする取り組みのことです。メンタルヘルス不調者の職場復帰支援も三次予防にあたります。
【参考】一次予防二次予防
仕事のストレス判定図
仕事のストレス判定図は、ストレスチェックで使用する職業性ストレス簡易調査票の一部の項目(12項目)を利用して集団分析を行うものです。仕事の量的負荷、仕事のコントロール、上司・同僚の支援などの調査結果から、職場ごとの健康リスクを判断することができます。職場環境の改善を通じたストレス対策に役に立ちます。
仕事要求度-コントロールモデル
仕事のストレスを説明する理論の1つです。仕事の要求度(仕事量や責任)が大きく、それに比べて仕事のコントロール(自由度や裁量権)が低い場合にストレスが生じやすいとされています。
嗜癖
ある特定の物質・行動過程・人間関係を、過剰に好む性向をいいます。酒やタバコの物質嗜癖、パチンコやショッピングの過程嗜癖、家族や恋人と生じる関係嗜癖などがあります。
社会的再適応評定尺度
1967年にアメリカのホームズ(Holmes,TH)らが開発したストレス測定法の1つです。ストレス要因の強度を測定するための古い尺度ですが、今でも多方面で引用されています。ライフイベント(生活の出来事)法と呼ばれ、結婚に対するストレス度を50点とし,それを基準に0~100点の範囲で、ストレスに対して再適応に要するエネルギー量を評価します。
社交不安障害(社会不安障害)
不安とは、明確な対象を持たない恐怖の事を差します。「社交不安障害(social anxiety disorder、SAD)」は、社会や人前で嫌な思いをしたり、他人に辱められたりすることに対する不安が強く、日常生活に障害を及ぼすものです。
守秘義務
医師、保健師、看護師等の医療職は職務を通して他人の秘密を聞いてしまうことがあるので、刑法や身分法が正当な理由なくその秘密を漏らしてはならないことを罰則付きで規定しています。医療職以外でも職場で実施される健康診断に関係した者には、労働安全衛生法が同様に規定しています。なお、個人情報保護法は、生命、身体の保護や公衆衛生の向上等に必要な場合で本人の同意取得が困難なときは、目的外利用や第三者提供を認めています。
昇進うつ病
正式な医学病名ではなく、昇進に伴う環境の変化により誘発されたうつ病をいいます。嫌なストレスがうつ病に結びつきやすいというのはイメージしやすいのですが、一般的には喜ばしいと思われることもうつ病のきっかけとなり得ます。昇進は出世と同時に職場での責任や役割の変化を伴います。
職業性ストレス簡易調査票
職業性ストレス簡易調査票は、職場で簡便に使用できる自己記入式の調査票で、ストレスチェックを行う際に使用されます。仕事のストレス要因、ストレス反応、修飾要因の3つで構成されています。仕事のストレス要因では、仕事の量的負担、質的負担、身体的負担、コントロール、対人関係によるストレスなどが、ストレス反応としては、抑うつ、イライラ感、疲労感、活気、身体愁訴などが評価できます。あらゆる業種の職場で使用でき項目数は57と少なく約10分で回答が可能です。
嘱託産業医
産業医の選任形態のひとつで、専属産業医以外で非常勤で勤務する産業医のことをいいます。
職場環境改善
職場環境とは、職場における化学的・物理的な有害要因のみではなく、職場のストレス、労働条件、休憩室などの設備等の働く人を取り巻く全ての事象を指します。この職場環境を改善することは、労働安全衛生法の目的の一つである「快適な職場環境形成促進」につながります。
職場巡視
職場巡視は、作業場等を巡視し、作業方法又は衛生状態が働く人に有害な影響を及ぼすおそれがないかを確認します。労働安全衛生規則では、衛生管理者には週に1回、産業医には月に1回の実施が義務付けられています。有害な影響を及ぼすおそれがある場合、健康障害を防止するために必要な措置を講じる必要があります。
職場復帰支援プログラム
メンタルヘルス不調による長期休業者の職場復帰は簡単ではなく、再発や離職もなく少なくありません。長期休業者のスムースな職場復帰は本人のみならず企業や職場にとっても重要な課題になっています。しかし、人材確保とスムースな職場復帰を可能にするため、多くの企業で職場復帰支援プログラムが用意されています。主治医と産業医の意見をもとにして、管理監督者、人事労務担当者、産業保健スタッフなどが、職場環境や作業の内容、作業時間などの調整をしたり、健康面のケアをしたりして、職場復帰を総合的に支援するためのものです。
心気症
心身の些細な不調にとらわれ、検査などによっても所見が得られず、医学的な保証によっても納得できず、重大な病気の兆候ではないかと恐れ、執拗に訴える状態です。
神経症
正式な医学診断基準には使われなくなった用語ですが、「不安障害」とほぼ同義語です。
神経伝達物質
神経細胞から他の細胞への情報伝達は、そのほとんどが化学物質により行われており、それを神経伝達物質と呼んでいます。脳内の神経伝達物質は多数ありますが、精神疾患との関連では、セロトニン、ドーパミン、ノルアドレナリンなどが注目されています。精神疾患の治療薬は、これらの機能の研究から開発されています。
心身症
体の病気ですが、その発症要因や慢性化にストレスが関与している病気の総称で、病名ではありません。胃・十二指腸潰瘍、過敏性大腸炎、本態性高血圧症、神経性狭心症(狭心症)、過呼吸症候群、気管支喘息、甲状腺機能亢進症、摂食障害、メニエ-ル症候群、更年期障害が代表的なものです。治療は身体疾病の治療、心身相関のメカニズムへの気づき、ストレスへの対応などが中心になります。
身体表現性障害
明らかな身体の病気がないのに、身体の症状が出るのが特徴です。例えば、歯は健康なのに歯が痛む、足腰は問題ないのに立てない、歩けない、声帯には問題ないのに声が出ない、などです。身体の症状を極端に気にして、何か重大な病気に罹ったと思い込む心気症も、このカテゴリーに含まれます。
深夜業
労働関連法では、午後10時から午前5時までの夜間に行われる労働のことをいいます。満18歳未満の年少者を就業させることは禁止されており、妊産婦や、子の養育と家族の介護をする労働者から請求があった場合も深夜業をさせることができません。また、深夜業の従事者に対する割増賃金の支払いが義務付けられています。深夜業従事者の健康診断は6ヶ月ごとに1回実施することとなっており、一般的な労働者よりも安全衛生管理の要件が厳しくなっています。
心理検査
心身の健康状態や認知・思考(受け止め方や考え方など)、行動・性格傾向など、対面するだけでは分かりにくい様々な心理状態・傾向について標準化された手続きで特定の課題を与え、その反応を量的あるいは質的に分析・解釈する手法のことです。心理検査により適切な治療や支援のための情報を得たり、自己理解を深めるきっかけになることもあります。
心理相談員
働く人の心とからだの健康づくりを推進するため、事業者の努力義務として1988年からTHP(トータル・ヘルスプロモーション・プラン)が展開されています。この中で、メンタルヘルスケアについて担当をするのが心理相談員です。特定の研修(ストレスに対する気づきの援助、リラクゼーションの指導など)を受講し、心理相談員となることができます。
心理療法(サイコセラピー)
心理的な問題を抱える患者やクライエントに対して専門家が問題解決のために行う、心理学モデルをベースとした治療方法の一つです。代表的なものとして、精神分析療法、認知行動療法、来談者中心療法などがあります。
CAGE
アルコール依存症を自己判断する簡易質問紙の一つで、4つの質問のみで構成されています。
1)酒量を減らさなければいけないと感じたことがあるのか(Cut down)
2)周囲の人に自分の飲酒について批判されて困ったことがあるのか(Annoyed by criticism)
3)自分の飲酒についてよくないと感じたり、罪悪感をもったことがあるのか(Guilty feeling)
4)朝酒や迎え酒を飲んだことがあるのか(Eye-opener)
という4項目中2項目以上当てはまった場合、アルコール依存症の可能性が高く、専門家への相談を推奨しています。
事業場外資源によるケア
メンタルヘルスケアを行う上で、事業場が抱える問題や求めるサービスに応じて、メンタルヘルスケアに関し専門的な知識を有する各種の事業場外資源を活用することをいいます。労働者が相談内容等を事業場に知られることを望まないような場合にも、事業場外資源を活用することが効果的です。事業場外資源とは事業場外の医療機関や地域保健機関、従業員支援プログラム(EAP)機関、独立行政法人労働者健康安全機構が運営する産業保健総合支援センター及び地域産業保健センターなどのことを指します。
事業場内産業保健スタッフ等によるケア
事業場内産業保健スタッフ等が、労働者や管理監督者に対する支援を行い、具体的なメンタルヘルスケアの実施に関する企画立案、メンタルヘルスに関する個人の健康情報の取り扱い、事業場外資源とのネットワークの形成やその窓口となること等、心の健康づくり計画の実施にあたり中心的な役割を果たすことです。事業場内産業保健スタッフとは産業医や衛生管理者、保健師、心の健康づくり専門スタッフなどを指します。
事業場内メンタルヘルス推進担当者
産業医等の助言、指導等を得ながら事業場のメンタルヘルスケアの推進の実務を担当する人のことです。
「労働者の心の健康の保持増進のための指針」において、事業場内メンタルヘルス推進担当者を「選任するよう努める」ことが事業者に求められています。衛生管理者や常勤保健師等が望ましく、人事労務管理スタッフからの選任も考えられます。
自助グループ
同じような病気や体験を抱えて悩み苦しんでいる人たち自身やその家族同士が連帯することで、互いに支え合うグループのことです。断酒会やA.A(Alcoholic Anonymousアルコール依存症者匿名協会)などは、その典型例で、アルコール依存症を患う人々の職場復帰・社会復帰の大きな支えとなるものです。家族(遺族)の例としては、犯罪被害者家族の会や、自殺者の家族が支え合う自死遺族のつどいなどがあります。
【参考】断酒会
自律訓練法
注意の集中、自己暗示の練習により、全身の緊張を解き、心身の状態を自分で上手に調整できるようにした段階的手法で、ストレスの緩和や心身症、神経症などに効果があると言われるリラクゼーション技法の一つです。医療領域他、教育・産業・スポーツなどさまざまな領域で活用されています。
自律神経失調症
明らかな身体の病気がないにも関わらず、自律神経のバランスが崩れていると感じることによる不調を指します。全身倦怠感、めまい、頭痛、動悸などがあります。
【参考】事例紹介-自律神経失調症-
事例性と疾病性
職場関係者や家族はメンタルヘルスの専門家ではないので、メンタルヘルスに関する問題に取り組む時は、事例性と疾病性との2つに分けて整理することが推奨されています。事例性とは業務を推進するうえで困る具体的事実で、「就業規則を守らない」「仕事の能率が低下している」「同僚とのトラブルが多い」など関係者はその変化にすぐに気がつくことができます。一方、疾病性とは症状や病名などに関することで、「幻聴がある」「統合失調症が疑われる」など専門家が判断する分野です。職場での問題把握の第一歩は、病気の確定(疾病性)以上に、業務上何が問題になって困っているか(事例性)を優先する視点が求められます。
人事労務管理スタッフ
企業の経営資源には、労働力、生産手段及び資本の3つ要素から成り立っています。このうち労働力を対象とする管理活動を人事労務管理と言い、具体的には、雇用管理(採用、人材配置、人事考課)、雇用条件(労働期間や賃金)の管理、人材教育、福利厚生、組合対策などを行うことで、これらの業務を行う人々を人事労務管理スタッフと呼びます。
睡眠教育/睡眠衛生教育
睡眠について正しい知識を持ち、生活習慣を工夫するための教育のこと。職域ではメンタルヘルス教育の一環として実施されることもあります。
睡眠障害
睡眠に関連した多種多様な病気の総称で、大きく分類すると、不眠症・過眠症・睡眠時随伴症があります。
睡眠薬
不眠症状の治療に用いられる薬物です。寝つけない、途中何度も目が覚める、朝早くに目が覚める、深く眠れない、これらを不眠と呼びますが、症状に合わせて処方されます。服用や減量の仕方については、医師に相談し正しく内服する必要があります。「不眠症」の診断がついて初めて処方される薬のため、人に譲ったり、人からもらったりするのはやめましょう。
ストレス
ストレスには、「ストレス要因」、「ストレス反応」、「ストレス耐性」の3つが含まれます。ストレス要因(ストレスを生じさせる外界からの刺激)を受けて、ストレス反応(身体面、心理面、行動面のいろいろな反応)が生じます。ストレス耐性はストレス要因を押し戻す抵抗力です。

【さらに詳しく】「eラーニングで学ぶ「15分でわかるセルフケア」
【参考】ストレス要因(ストレッサー)ストレス反応ストレス耐性
ストレス関連疾患
心理的・社会的ストレスから生じる病気や、ストレスによって経過が悪くなると考えられる病気をストレス関連疾患と呼びます。胃・十二指腸潰瘍、本態性高血圧症、過換気症候群、片頭痛、心臓神経症、神経症、自律神経失調症その他多くの疾患があります。
ストレスコーピング
「コーピング」は「対処する」「切り抜ける」という意味を持ちます。ストレスコーピングとは、特定のストレスフルな問題や状況に対するストレス対処方法のことで、問題解決型(状況を変化させる、問題を明確にする、別の解決方法を見つけてそれをあわせて評価する)と情動焦点型(問題に対する情動的な反応をコントロールしたり変化させたりする、逃避したり最小化したりする、情動的な苦痛の軽減を目指す)があります。
ストレス脆弱性
その人の生まれ持った素質(先天的な要素)と学習・訓練などによる生まれてからの能力やストレスへの対応力(後天的な要素)などに関連してその人が持っている病気のなりやすさを意味します。
ストレス耐性
ストレスに対する抵抗力のことで、次のような要素があります。 ストレスに気づくか気づかないかという「感知能力」、ストレスを作りやすい性格かどうかという「回避能力」、ストレッサーをなくしたり、弱めたりする「根本の処理能力」、ストレス状態に陥ったとき、そのストレスの意味を良い方向に捉え直すことができる「転換能力」、ストレスそのものの「経験」、ストレスをどのくらいためていられるかという「容量」です。
【参考】ストレスストレス要因(ストレッサー)ストレス反応
ストレスチェック
ストレスに関する質問票(選択回答)を用いて、自分のストレス がどのような状態にあるのかを調べる簡単な検査で、労働安全衛生法に基づき50人以上の事業場には実施が義務づけられています(50人未満の事業場については、当分の間、努力義務)。労働者が自分のストレスの状態を知り、「うつ」などのメンタルヘルス不調を未然に防止するために実施されます。また、ストレスチェック結果を一定の集団毎に分析し、その結果に基づいて、職場の環境を改善する集団分析・職場環境改善は、職場におけるストレス要因の低減に資するものであり、実施することが望まれます(ストレスチェックを実施した場合、集団分析・職場環境改善の実施は努力義務になっています)。
ストレス反応
外からの刺激を受けて引き起こされる様々な反応で、抑うつ、不安、職務不満足感などの心理的反応、血圧上昇や心拍数増加などの生理的反応、過食や過飲、喫煙や薬物使用、事故などの行動面での反応があります。
【参考】ストレスストレス要因(ストレッサー)ストレス耐性
ストレスマネジメント
ストレッサーを取り除いたり、ストレスを大きくしないための工夫や、ストレスによって生じている緊張状態やストレス反応の緩和など、ストレス生成のあらゆるプロセスに包括的に働きかけることを言います。
ストレス要因(ストレッサー)
ストレス反応を起こす外部環境からの刺激をストレス要因(ストレッサー)と呼びます。ストレス要因は、物理的ストレス要因(寒冷、騒音等)、化学的ストレス要因(酸素、薬物等)、生物的ストレス要因(炎症、感染等)、心理的社会的ストレス要因(人間関係の葛藤や社会的行動に伴う責任、将来に対する不安等)に分類されます。
【参考】ストレスストレス反応ストレス耐性
精神科専門医
精神科専門医とは、公益社団法人日本精神神経学会の精神科専門医制度によって精神科医療に関する学識および経験を有するとして認定された医師です。
精神分析
フロイトによって創始された体系的な理論および技法の一つです。人の心は意識的な部分と無意識的な部分の両方から成り立っていると考え、無意識的なものも含めたとらわれに対する気づきを促し、そこから自由になることを目指します。専門的な訓練は必須ですが、主に不安障害や解離性障害、強迫性障害、パーソナリティ障害などの治療の際に用いられる技法の1つとされています。
精神保健指定医
精神保健指定医は、厚生労働大臣が指定する特別の国家資格に準ずる法的資格制度(精神保健福祉法第18条)であり、医学の各分野に学会等が設けている専門医制度とは異なります。その職務は、措置入院や医療保護入院、隔離や身体拘束など行動制限の判定等があります。
精神療法
薬物を用いた薬物療法や身体に物理的に働きかける身体療法などに対し、精神療法は治療者が心理的な手段を用いて患者の心身に働きかける療法です。来談者中心療法、行動をよりよい方向に改善していく行動療法、クライエントの偏ったものの見方を変える認知療法、こころの奥底を分析していく精神分析療法、集団精神療法、自律訓練法、箱庭療法、遊戯療法、森田療法他さまざまな療法があります。
セカンドオピニオン
主治医とは別の医師に意見を聴くこと(第2の意見)をセカンドオピニオンと言います。治療は主治医(かかりつけ医)と患者さんの間でなされます。しかし主治医の判断や方針が必ずしも絶対ではありませんし、治療による生活への影響が大きい場合は、大きな不安が生じるでしょう。セカンドオピニオンによって主治医以外の専門家による情報を得ることが出来ます。結果として、患者さんと医師が協力して医療に関する意思を決定するプロセスの一助になることがあります。
セクハラ
セクシュアルハラスメントを略したもので、法令上、職場のセクシュアルハラスメントは、労働者の意に反する性的な言動が行われ、それを拒否するなどの対応により解雇、降格、減給などの不利益を受けること(対価型セクシュアルハラスメント)、または性的な言動が行われることで就業環境が不快なものとなったため、労働者の能力の発揮に悪影響が生じること(「環境型セクシュアルハラスメント」)をいいます。男女雇用機会均等法により事業者にその対策が義務付けられています。
積極的傾聴法(アクティブ・リスニング)
心理相談の技法の一つです。聴き手が必要に応じて質問したり言葉を添えるなど、話し手をより深く理解するためのコミュニケーションスキルの1つで、メンタルヘルス対策のなかでも相談しやすい体制づくりとともに、重要視されています。来談者の話を受容し共感しながら聴き、本人の表現する言葉の本当の意味をとらえ、真の問題を理解しようとすることが重要とされます。
摂食障害
強い肥満恐怖からダイエットに走る「拒食症」と、むちゃ食いで特徴づけられる「過食症」。摂食障害にはこの2種類が挙げられ、両方とも女性が圧倒的多数です。拒食症から過食症への移行もよく見られます。
セルフエスティーム
自己肯定感あるいは自尊感情ともいい、自分自身を価値あるものとして尊重する感覚をいいます。基本的な価値を実感することにより、自分自身を信頼し、様々な事柄に前向きに取り組む意欲や満足感につながります。このような自己の尊重は、自分自身だけでなく、周囲の人々のありのままを受け入れる上でも重要となります。
セルフエフィカシー
自己効力感ともいわれ自分が周囲の期待や要請に対して、“十分に対応できている”という確信や自信のことをいいます。自らの意志で、主体的に行動しているという確信のもとに得られる感覚であり、その後の目標設定や自身の行為の結果の見通しに影響を与えます。自己効力感は、目標を達成するための努力を促し、結果的に成功の可能性を高め、自分自身の生き方を肯定的にとらえるためにも重要な要素として位置づけられます。
専属産業医
専属産業医とは本務としての仕事が産業医であり、一つの当該事業場のみに属している者をいいます。労働安全衛生規則により、常時1000人以上の労働者を使用する事業場および一定の有害業務(安衛則第13条第1項第2号に定める業務)に常時500人以上の労働者を従事させる事業場においては、専属産業医の選任が義務付けられています。
双極性障害(躁うつ病)
躁状態とうつ状態を繰り返す精神疾患です。躁状態の程度により大まかに双極Ⅰ型(顕著な躁状態が出現)、双極Ⅱ型(軽躁状態が出現)に分類されます。いずれも気分が高揚し開放的で、頭の回転が良くなった感覚を覚え、思い立つと行動に移すのも早いなどの特徴があります。睡眠欲求が減少(寝てる時間が惜しい、寝なくても疲れない)するのも特徴的です。職場では、軽躁状態では仕事の生産性が高まることがありますが、顕著な躁状態では、自尊心も肥大し、周囲と激しい口論をするなどトラブルを起こし、かえって仕事の生産性が落ちます。この時期は乱費、性的逸脱行為も増えやすいです。躁状態のあとのうつ状態では自殺のリスクが高いため、積極的に専門家の治療を受けるべきです。
【さらに詳しく】国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所「こころの情報サイト」
早朝覚醒
睡眠障害の一つの症状で、朝早く目覚め、再度眠ることができない状態をいいます。週の半分以上でそのような現象があり、不快を伴う時に症状としてとらえます。特にうつ病では比較的早期からみられる症状でもあります。朝の気分が憂鬱であれば、その可能性があるので注意が必要です。
【参考】入眠困難中途覚醒
措置入院
精神保健及び精神障害者福祉に関する法律第29条に規定されている入院形態で、入院しなければ自傷他害(自殺や他者に危害を加えるなど)の恐れのある事例に対し、2名以上の精神保健指定医の診察結果が一致し、かつ本人の同意が得られない(精神症状による判断力の低下や病識がないなど)、成立する入院です。一番強制力のある入院形態で、警察官通報によるもの(同法第24条)もあります。
【参考】医療保護入院任意入院
ソーシャルサポート
個人を取り巻く有形、無形の社会的支援のことをいいます。特に、家族、友人、上司、同僚、部下など人的支援を意味することが多く、ソーシャルサポートが多くあることがストレス軽減につながると言われています。
ソーシャル・スキル・トレーニング(SST)
社会適応能力を改善することを目的に行う技法訓練です。社会適応や職場への復帰を円滑に進めるために、必要とする技術を訓練によって段階的に得ていきます。医療機関や福祉機関などで、専門のスタッフの下で受けるケースが一般的です。

タ行

退却神経症
副業には専念できるが、個人に期待される社会的役割である役割(仕事や学業)からは、あえて退却するように、無気力・無関心・抑うつなどを呈するもので、日本独自の概念です。
タイプA
アメリカの医師フリードマンが提唱した性格傾向を表す概念とされています。タイプAは「タイプA行動パターン」ともいわれ、負けず嫌いで競争心が強く、仕事に熱中しやすく、せっかちでイライラし易く、常に時間に追われている、などの傾向があるとされています。タイプAの人は、狭心症や心筋梗塞などの虚血性心疾患に罹る率が高く、頭痛,消化器症状、睡眠障害などの訴えも多いといわれます。
試し出勤
病気のため長期にわたって休業した労働者が職場復帰をする際に、正式な職場復帰に先がけて、出勤あるいはそれに近い取組みを行ってみる制度をさします。「リハビリ出勤」などと称されることもあります。
断酒会
断酒会とは、アルコール依存症にかかった人たちが集まり、お互いに励まし合い、アルコール関連問題からの回復と人としての成長を目指す集団です。また、同じ当事者としての立場からアルコール関連問題に悩んでいる人への援助活動も行っています。体験談を語る場である「例会」への出席と組織活動である様々なプログラムに参加することで断酒を続けます。
【参考】自助グループ
注意欠陥性多動障害(ADHD)
発達水準からみて不相応に注意を持続させることが困難であったり、順序立てて行動することが苦手であったり、落ち着きがない、待てない、行動の抑制が困難であるなどといった特徴が持続的に認められ、そのために日常生活に困難が起こっている状態です。12歳以前からこれらの行動特徴があり、学校、家庭、職場などの複数の場面で困難がみられる場合に診断されます。
中途覚醒
睡眠障害の一つの症状で、夜中に何回も目覚め、再入眠が困難な状態をいいます。週の半分以上でそのような現象があり、不快を伴う時に症状としてとらえます。実際の就床時間に対し睡眠時間が質的(浅い)にも量的(短い)にも不足するため、睡眠による休養感が得られなくなります。うつ病の早期症状である可能性もあります。
【参考】入眠困難早朝覚醒
通勤訓練
通勤訓練は、メンタルヘルス不調により休業した労働者が職場復帰に向けて一般的に行う訓練の一つです。自宅から職場の近くまで通常の出勤時間、出勤経路で出勤をシミュレーションします。通勤に必要な体力の確認や生活リズムを整えるといった効果が期待できます。
適応障害
環境変化によるストレスが個人の順応力を越えた時に生じる情緒面および行動面の不調です。うつ病など他の精神疾患の診断がつくには至っていない状態です。薬物療法も行われますが、環境調整、環境に慣れること、個人の順応力が増えることなどが状態の回復に重要です。
【参考】事例紹介-適応障害-
適正配置
職場(作業環境や作業内容)と労働者(技能や健康状態)の最適な組み合わせを図ることをいいます。事業者は、健康障害防止の観点から、健康診断や長時間労働者に行う面接指導の結果に基づいて、医師(産業医等)から意見を聴き、就業場所の変更、作業の転換等の必要な措置を講じることが求められています。
てんかん
脳が反復的に電気的に異常興奮するためにてんかん発作が出現する疾患です。発作中は、意識を失ったり、けいれんがみられたり、症状は様々です。「てんかん発作」は、基本的に一過性で、てんかん発作終了後は元通りの状態に回復することが特徴です。原因は様々で、脳腫瘍や頭部外傷後遺症などの明らかな原因がある場合は「症候性てんかん」、原因不明の場合は「特発性てんかん」と呼ばれます。さまざまな抗てんかん薬の定期的な服用によって、てんかん発作はコントロールされることが多くなり、日常生活や社会生活に支障が出ることは多くはありません。
【さらに詳しく】国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所「こころの情報サイト」
DSM-5
「精神障害の診断と統計の手引きDiagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders (DSM)」として、米国精神医学会American Psychiatric Association(APA)により定められた診断指針です。米国だけではなく、世界的に精神科医療で幅広く使用されています。現在は2013年に公表された第五版 (DSM-5) が使用されています。
デイケア
施設への通所によって行う治療訓練です。精神障害などで治療により病状が改善し安定状態となると、日常生活を行いながら社会復帰や職場復帰を目標に行う、計画的段階的な訓練です。再発を防ぎ、必要とする対人関係能力や社会適応能力、職業能力などの改善を目指します。
統合失調症
こころや考えがまとまりづらくなってしまう病気で、そのため気分や行動、人間関係などに影響が出てきます。統合失調症には、健康なときにはなかった状態が表れる陽性症状(幻覚・妄想)と、健康なときにあったものが失われる陰性症状(意欲の低下、感情表現の減少)があります。治療は、薬をつかった治療(薬物療法)と、専門家からのアドバイスを受けたりリハビリテーションを行ったりする治療(心理社会療法)を組み合わせて行います。かつて 「精神分裂病」と言われていたもので、2002年8月に「統合失調症」という病名に変更されました。
【さらに詳しく】国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所「こころの情報サイト」
【参考】事例紹介-統合失調症-
逃避型抑うつ
うつ病により、職場不適応が生じると、些細な失敗を恐れて「ひきこもり」が生じることがあります。しかし旅行に行く、仕事以外の社会活動には活発、というような現実問題から逃避しているかのような状態をさします。いわゆる「現代型うつ病」のひとつの類型と考えられています。
トラウマ(心的外傷)体験
個人が一般の生活では経験しないような死に直面するような心理的に強い負荷となる出来事を体験することを指します。実際に自分が体験する、あるいは目撃する、また近親者または親しい友人に起きた出来事を耳にすることも、トラウマ体験といいます。出来事を繰り返し再体験し、悪夢を見たり、それを思い出させるものをすべて避けることにより、社会生活機能に大きな支障がある場合、急性ストレス障害やPTSD(心的外傷後ストレス障害)に至っている可能性もあります。
トータル・ヘルスプロモーション・プラン (THP)
「事業場における労働者の健康保持増進のための指針」に基づくすべての働く人を対象とした心とからだの健康づくり運動のことをいいます。健康測定を行い、その結果に基づいた運動指導、保健指導、栄養指導、メンタルヘルスケアを行うことが基本です。
ドメスティック・バイオレンス(DV)
配偶者や恋人など親密な関係にある、又はあった者から振るわれる暴力のこと。暴力の形態は様々で、身体的、精神的、性的、経済的なものが含まれます。
被害者やその事実を知った第三者が、相談窓口や警察に通報し保護、支援を受けることが可能です。
努力-報酬不均衡モデル
職業生活における「努力」と「報酬」の二つの軸をもとに慢性的なストレス状況を把握する理論的モデルのことをいいます。「職業生活において費やす努力と、そこから得られるべき、もしくは得られることが期待される報酬がつりあわない」(高努力/低報酬)の状態をストレスフルと定義しています。

ナ行

NIOSH職業性ストレスモデル
米国国立労働安全衛生研究所(NIOSH)が作成したもので、仕事上の要因(仕事量や質、人間関係、裁量度、温度や騒音等)をうけて急性ストレス反応(心理面、生理面、行動面への変化)がおき、やがてストレスに関連した病気や作業能率低下などの問題が生じる、という一連の流れを示します。その流れに影響を及ぼすものとして、仕事以外の要因や年齢・性別・性格といった個人要因、上司・同僚・家族からの支援などの緩衝要因が挙げられます。
難治性うつ病
うつ病のタイプや重症度を意味するものではなく、様々な治療(薬物療養、精神療法など)を一定期間以上行っても改善しない状態を総称したものです。専門家に相談する必要がありますが、抗うつ剤と違う薬物療法、薬物以外として、通電療法(電気けいれん療法)、磁気刺激療法(経頭蓋磁気刺激法)、光療法、断眠療法などがあります。
二次予防
すでに健康異常が出現している段階で、早期発見、早期治療を行うことで、疾病や障害の重症化を予防することです。
例えば、健康診断による早期発見、有所見者への保健指導、疾病がわかった場合の早期治療も二次予防にあたります。
メンタルヘルスについては、不調者を早期に発見し適切な措置を行う二次予防として、管理監督者の気づき、相談窓口の設置などが挙げられます。
【参考】一次予防三次予防
入眠困難
睡眠障害の一つの症状で、就床してから寝つくのが困難な状態をいいます。一般的には入眠は30分以内といわれますが、個人差もあり年齢によっても異なりますので、個人の「いつも」との違いが生じます。週の半分以上でそのような現象があり、不快を伴う時に症状としてとらえます。実際の就床時間に対し睡眠時間が質的(浅い)にも量的(短い)にも不足するため、睡眠による休養感が得られなくなります。うつ病の早期症状である可能性もあります。
【参考】中途覚醒早朝覚醒
任意入院
精神保健及び精神障害者福祉に関する法律第22条の3に規定されている入院形態です。精神障害者本人の同意のうえで入院するもので、原則的には開放的な環境での処遇が求められています。
【参考】医療保護入院措置入院
認知行動療法
認知に働きかけて気分や行動を変化させることを目的とした短期の精神療法のことで、認知療法あるいはCBTと呼ばれることもあります。認知行動療法はもともと、うつ病に対する治療法として開発されましたが、現在ではうつ病以外にも不安障害、ストレス関連障害、双極性障害、統合失調症、不眠症、ストレス対処など、さまざまな疾患や症状の改善に取り入れられています。
認知症(痴呆症)
認知症は、脳の病気や障害など様々な原因により、認知機能が低下し、日常生活全般に支障が出てくる状態をいいます。認知症の中で最も多いのは、アルツハイマー型認知症で、脳神経が変性して脳の一部が萎縮していく過程でおきる認知症です。次いで多い血管性認知症は、脳梗塞や脳出血などの脳血管障害によっておきる認知症です。65歳未満で発症した場合は、「若年性認知症」と呼んでいます。
【さらに詳しく】国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所「こころの情報サイト」

ハ行

発達障害
発達障害は、生まれつきみられる脳の働き方の違いにより、幼児のうちから行動面や情緒面に特徴がある状態です。そのため、養育者が育児の悩みを抱えたり、子どもが生きづらさを感じたりすることもあります。発達障害があっても、本人や家族・周囲の人が特性に応じた日常生活や学校・職場での過ごし方を工夫することで、持っている力を活かしやすくなったり、日常生活の困難を軽減させたりすることができます。
【さらに詳しく】国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所「こころの情報サイト」
ハラスメント
ひとを悩ますこと、地位や立場を利用した嫌がらせを指す言葉であり、海外ではworkplace bullyingなどの用語を使うことがあります。職場において事業者が対策を講じるべきだとされるハラスメントは、主に3種類規定されており、セクシュアルハラスメント(セクハラ)、マタニティハラスメント(マタハラ)、パワーハラスメント(パワハラ)がその対象となります。
パニック障害
強い不安感を主な症状とする精神疾患のひとつで、従来、不安神経症と呼ばれていた疾患の一部です。特定の場面や状況に限らず、パニック発作が繰り返されます。
【参考】事例紹介-パニック障害-
パニック発作
突然激しい恐怖または強烈な不快感の高まりが数分以内でピークに達するものです。動悸、発汗、息苦しさ、どうにかなってしまいそうな感じなど複数の症状が同時に現れます。パニック障害に限らず、あらゆる不安障害で生じる可能性があります。
パワハラ
パワーハラスメントを略したもので、法令上、職場のパワーハラスメントは、「職場において行われる①優越的な関係を背景とした言動であって、②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、③労働者の就業環境が害されるもの」をいいます。職場秩序や業務への悪影響、生産性の低下やメンタルヘルス不調の原因となり得る重大な問題と考えられており、「労働施策総合支援推進法」により、事業者にその対策が義務付けられています。
非定型うつ病
典型的なうつ病とは異なる症状を呈するうつ病をさします。非定型とは言え“うつ病”ではあるため、米国精神医学会DSM-5のうつ病の診断基準は満たしています。加えて、非定型うつ病の特徴として、1)気分の反応性(楽しい出来事に反応して気分が明るくなる)、2)体重増加または食欲増加、3)過眠、4)鉛様の麻痺(手足が重い、鉛のような感覚)、5)長期にわたる対人関係の拒絶に敏感、があげられます。
病識
自分自身の症状に対して、その異常性に気づいていることを意味します。異常性を自覚できていない場合を「病識欠如」といいます。幻覚や妄想を“事実”であり異常ではないと捉える状態の統合失調症や、アルコール問題飲酒を自覚できていないアルコール依存症などがよく知られていますが、うつ病でも心気妄想・罪業妄想・貧困妄想という病識欠如が生じる場合があります。病識欠如治療があると治療がうまく進まないことがあります。
PTSD(心的外傷後ストレス障害)
強烈な精神的衝撃を受けた後に、長期にわたり恐怖感、無気力、睡眠障害、悪夢など様々な症状を示す障害です。ときに、数週~数か月の潜伏期間がある場合があります。地震、洪水、火事のような災害、または事故、戦争といった人災、監禁、虐待、強姦など犯罪など、多様な原因によって生じます。
【さらに詳しく】国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所「こころの情報サイト」
不安症(不安障害)
不安とは、明確な対象を持たない恐怖のことを指します。不安により発汗、動悸、頻脈、胸痛、頭痛、下痢などといった身体症状も現われますが、不安そのものや不安による身体症状が強く生活に支障がある病的な状態を不安障害と呼びます。治療には、薬物療法・認知行動療法などがあります。
【さらに詳しく】 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所「こころの情報サイト」
【参考】事例紹介-不安障害-
不安神経症
正式な医学診断基準には使われなくなった用語ですが、「不安障害」とほぼ同義語です
不定愁訴
原因は特定できないが、なんとなく体調が悪いと感じる状態を指します。医療機関を受診し検査を受けても、体調不良を説明できる所見が見つからないこともあります。「頭が重い」、「目の奥が痛い」、「とにかくだるい」、「よく眠れない」などの訴えがあります。
ブリーフサイコセラピー
短期療法、短期精神療法などの呼称がある心理療法の1つで、短期間あるいは少ない面接回数で問題改善を目指す解決志向の心理療法です。ブリーフサイコセラピーにはいくつかの流派があり、面接の進め方は様々ですが必ずしも短期終結を強調するのではなく、主にクライエントの経済的負担の軽減を目標に、効率的、効果的な方法を目指すアプローチとされています。
プレゼンティーズム
WHO(世界保健機関)によって提唱された健康問題に起因したパフォーマンスの損失を表す指標です。欠勤にはいたっておらず勤怠管理上は表に出てこないが、健康問題が理由で生産性が低下 している状態のことです。
メンタルヘルス不調の他、アレルギーや偏頭痛、生活習慣病等により、プレゼンティーズムが発生することが明らかになっています。
【参考】アブセンティーズム
保健指導
健康診断の判定結果に基づいて精密検査の受診、医療機関での治療、生活習慣の改善などの指導を実施することを指します。
「労働安全衛生法」により、健康診断の結果が有所見である労働者に対して、事業者が医師または保健師により実施させるよう努めなければならないこととされており、実際は「健康診断結果に基づき事業者が講ずべき措置に関する指針」を参考に行われています。

マ行

マタハラ
マタニティハラスメントを略したもので、妊娠・出産・育児に関して、労働者が職場で受ける不当な取扱い(降格、解雇、雇い止め等)や嫌がらせを受け、就業環境を害されることをいいます。対象となるのは、妊娠・出産した女性労働者と、育児休業等を申出・取得した男女労働者です。育児介護に関してマタハラに該当する行為には、出産や育児に関する制度の利用を阻害する「制度等の利用への嫌がらせ型」と、妊娠・出産したこと自体を揶揄するような言動全般による「状態への嫌がらせ型」があります。男女雇用機会均等法と育児・介護休業法により事業者にその対策が義務付けられています。
慢性疲労症候群
原因不明の強い疲労が長期間(一般的に6か月以上)続く病気です。検査所見による診断基準がないため、自覚症状を中心に診断されるのが現状です。治療による完治は5~10%ですが、症状はある程度改善すると言われています。中には、うつ病、更年期障害などの疾患が含まれているとも考えられています。
メンタルヘルス教育
メンタルヘルス教育とは,メンタルヘルスケアが適切に実施されるために,労働者等にメンタルヘルスに関する知識等を付与することです。「労働者の心の健康の保持増進のための指針」では,労働者には「セルフケア」を促進するための教育を,管理監督者には「ラインによるケア」を促進するための教育を行うものとされています。また,「事業場内産業保健スタッフ等によるケア」を促進するため,それらスタッフにも教育を行うものとされています。
メンタルヘルス指針
厚生労働省が公表している「労働者の心の健康の保持増進のための指針」のことをいい、事業場で推進されるべきメンタルヘルス対策のあり方が包括的に記載されています。実施においては、心の健康づくり計画を策定し、セルフケア、ラインによるケア、事業場内産業保健スタッフ等によるケア、事業場外資源によるケアから構成される“4つのケア”を推進していくことになります。労働安全衛生法第70条の2第1項に基づく指針と位置づけられており、指針に沿った取組みは事業者の努力義務となっています。
メンター
メンターとは日本語で「指導者」あるいは「助言者」と訳される人のことで、自分自身がキャリアの手本となり、メンティ(=若手あるいは経験の少ない人)に対して助言や指導を行い、彼らの成長の支援や精神的な支えとなる役割を担います。メンター制度とは、メンターがメンティに対して、キャリア(成功体験)の実現のために、心理・社会的な側面から一定期間継続して個別に行う支援行動のことをいいます。
燃え尽き症候群
それまで人一倍活発に仕事をしていた人が、なんらかのきっかけで、あたかも燃え尽きるように活力を失ったときに示す心身の疲労症状をいいます。主要症状として、心身の疲労消耗感のほか、人と距離をとり感情的接触を避ける、達成感の低下などが認められています。精神医学的にはうつ病と診断されることもあります。
森田療法
1920年ごろ森田正馬が創始した精神療法で、不安、葛藤、恐怖という症状を取り除くことに主眼をおかず、人間本来が持っている心理との共存を目指す。不安などを心の異物として除去する多くの心理療法とは異なります。症状を完全になくしてから行動するのでなく、「あるがまま」に感じていることを受け入れながら、現実的な「本来の欲望」に向かって建設的な行動に移せるようになることを目指します。見方によっては認知療法、行動療法的側面を持ち合わせますが、森田療法の方が歴史的には古いことになります。

ヤ行

抑うつ状態(うつ状態)
気分が落ち込み、憂うつになる状態をいいます。うつ状態と抑うつ状態の違いは明確なものはなくほぼ同義語です。抑うつ状態を呈する代表的な疾患としては、うつ病が知られていますが、不安障害、統合失調症、適応障害、パーソナリティ障害、などあらゆる精神疾患でみられる症状です。
4つのケア
4つのケアとは、「労働者の心の保持増進のための指針」において示されたメンタルヘルスケアのことで、労働者が自らのストレスに気付き予防対処する「セルフケア」、管理監督者が心の健康に関して職場環境等の改善や労働者に対する相談対応を行う「ラインによるケア」、事業場内の産業医等の産業保健スタッフ等が心の健康づくり対策を提言・推進し、労働者、管理監督者等を支援する「事業場内産業保健スタッフ等によるケア」、事業場外の機関及び専門家を活用し、その支援を受ける「事業場外資源によるケア」のことを指します。

ラ行

来談者中心療法
カール・ロジャーズが提唱した心理療法で、クライエント中心療法とも呼ばれています。無条件の肯定的配慮、共感的理解、自己一致を治療者の基本的な3つの態度としています。相談者の考え方や感じ方をカウンセラーが共感的に理解していくことで、相談者自身の気付きや成長を促し、問題解決を目指していくカウンセリングの方法です。
ラポール
相談などの際に相手との間に築かれる信頼関係、心の繋がりのことをいいます。受診や相談などの場では安心して話せる環境が重要ですが、特にラポ-ルは問題解決に向けた相談を継続して進めるためのベースとなります。
リストカット症候群
自分の手首をカッターナイフや剃刀などで傷つける自傷行為をさす、手首(wrist)と切る(cut)を合わせて作られた和製英語です。手首の他には、腕、足、顔、腹部などを切ることもあります。自傷行為に伴う痛みや出血によって自分が生きている実感を取り戻す行為であるという見方もあります。
リワーク
うつ病などの精神疾患を理由に休業している労働者を対象に職場復帰を目的としたリハビリテーションです。スムーズな職場復帰につなげるほか、復帰後も再休業のリスクをさげ安定した就労継続にもつながると考えられています。主に、医療機関が精神科リハビリテーションとして実施している他、障害福祉制度を利用したものや、地域障害者職業センターが実施するもの、事業場が独自に実施するものがあります。
労災補償
業務上の怪我や病気、通勤中の怪我などに対し、労働者災害補償保険(労災保険)から、必要な保険給付を行う制度です。原則として、アルバイトやパートタイマーを含めたすべての労働者が補償の対象になります。主な給付には、療養補償給付、休業補償給付、障害補償給付、遺族補償給付などがあります。給付を受けるには労災と認定される必要があり、厚生労働省が示す認定基準をもとに、労働基準監督署長によって判断されます。
労働衛生教育/安全衛生教育
労働者が働くに当たり必要な安全衛生に関する知識を与えるための教育をいいます。安全衛生規則等の法的な教育として、雇い入れ時教育、作業内容変更時の教育、一定の有害業務への配置時の特別教育、職長等教育を規定しています。安全衛生業務従事者や有害業務従事者に対する能力向上教育(努力義務)、安全配慮やリスクアセスメントのための教育など、その領域は拡大しています。

ワ行

1on1
ビジネス領域における1on1とは、上司と部下が1対1で対話する1on1ミーティングを意味します。優秀な部下の流出に悩んだシリコンバレーが発祥の地と言われていますが、いまでは人材育成施策の1つとして日本でも多くの企業が取り入れています。年に1~2回実施する評価面談と異なり、業務の悩みや課題感について部下の話を聴くことを目的に、15分~30分程度のミーティングを週に1回、もしくは少なくとも月に1回のペースで定期的に実施するのが特徴です。
ワークエンゲイジメント
ポジティブで充実した、仕事に対する感情的で持続的な動機付けの状態をいいます。活力(仕事に対して積極的に努力する高いエネルギー)、献身(熱意、プライド)、没頭(集中し夢中になっている)で特徴づけられ、「仕事にやりがいを感じ、熱心に取り組み、仕事から活力を得て活き活きしている状態」をさす概念とされています。