もしものときに役立つ情報を紹介します
いつもと違う様子に気づく
こころの不調のサインは、自分ではなかなか気づきにくいものです。中には、気づいても、「職場や家族に心配をかけたくない」という思いから、自分自身で抱え込み、誰にも相談できずにいるケースもあります。そこで、身近にいるご家族の方の「気づき」がたいへん重要な対応の鍵となってきます。
以下が「気づき」のポイントです。「いつも」と違う以下のような面が、10日から2週間以上続く場合は、こころの不調のサインかもしれません。
また、ご家族の疲労度を簡単にチェックできる「働く人の疲労蓄積度セルフチェック(家族支援用)」も活用いただけます。
からだの面
- 睡眠の変化:朝早く目が覚めてしまう、夜中に何度も目が覚めて眠れない、寝つきが悪いなど。
- 食欲・体重の変化:食欲がない、食べてもおいしくない。食欲が急に増えた。体重が減った、または増えた。
- 疲労がとれない:朝からぐったりと疲れきっている。疲労感がぬけない。
- その他の変化:頭が重い、肩・首が重い。下痢や便秘が続く。
こころの面
- 憂うつ感:気分が落ち込んでいる、何事にも悲観的になる。憂うつだ。
- おっくう感:何事にも興味がもてない、何をするにもおっくうだ。
- 焦り、不安感:イライラして落ち着きがない。不安だ。
行動の面
- 遅刻・欠勤:会社に遅刻することが増えた、欠勤することが増えた。
- 出社拒否:会社に行きたがらない。
- 会話:口数が減る、「自分はだめな人間だ」など否定的な発言が増える。
- 日常生活:新聞やテレビを見なくなった。人との接触を避けるようになった。
相談につなげる
話を聴く
いつもと違う様子に気づいたら、ご本人のお話にゆっくり耳を傾けてみましょう。その際に「そんなことはない」など否定せず、まずはご本人が一番言いたいことは何かを理解しようという姿勢が大切です。ただし、ご本人があまり語りたがらない様子が強い時は、無理に聞き出す必要はなく、「話したくなったら」というお気持ちを伝えるとよいでしょう。そっと見守っている、というスタンスがちょうどいいことがあります。
相談する
本人が相談できそうなときは、会社の産業医や相談窓口に相談してみるよう促してみるとよいでしょう。
本人が相談することにハードルを感じているときや、本人があまり語らないときは、まずはご家族が相談してみるのも一つの方法です。ご家族でも相談できる社内相談窓口や外部の相談窓口を設けている会社もありますので、社内報やホームページなどを確認してみてください。小規模の会社など、こうした窓口がないときは、こころの耳の相談窓口や、仕事に関する相談窓口で、ご本人や会社への対応の仕方について相談してもいいでしょう。
長時間労働のおそれがある場合
仕事から帰ってくる時間が遅い日が続いている、休日出勤が多い、などの場合は、過重労働になっている可能性があります。時間外・休日労働時間が1月あたり45時間を超えて長くなるほど健康障害のリスクが高まるといわれています。また、時間外・休日労働時間が月80時間を超え、疲労の蓄積の認められる労働者からの申し出があった場合、事業者は医師による面接指導を行わなければなりません(詳しくはリーフレット「過重労働による健康障害を防ぐために」をご覧ください。)。
長時間労働の状況を把握した場合は、総合労働相談コーナーや労働条件相談ほっとラインへ相談してみてください。ご家族からのご相談も可能です。
※「時間外・休日労働時間」:休憩時間を除き1週間当たり40時間を超えて労働させた場合におけるその超えた時間
職場のハラスメントが疑われる場合
ご本人の話から職場のハラスメントが疑われる場合、そのままの状況が続くと、うつ病などのメンタルヘルス不調のリスクがあるため、早めに対応することが望まれます。
ハラスメント対策の総合情報サイトあかるい職場応援団では、職場のハラスメントに関する幅広い情報が紹介されています。また、総合労働相談コーナーへ相談してみる方法もあります。
療養を支える
安心できる環境をつくる
身体の病気の時と同様に、こころの不調の時も一番大事な基本は「安心して休息する」ということです。こころの不調により「食欲が減った」「元気がなくなった」「口数が減った」「趣味のゴルフに興味を示さなくなった」「ため息が多い」「眠れていないようだ」など、今までの行動と違った様子がみられてきます。これらに対して、言葉だけでなくさりげない気遣いなどが、苦しむご本人に安心感を与え、ご家庭でゆっくり憩いの時間をとることができます。病気への発展を防止するだけでなく、回復力を促すこともつながります。
病院への受診を勧めてみましょう
様子を見ていても、本人が以前と違う状態が続くようでしたら、病院にいくことを勧めてみましょう。これも身体の病気と同様で、早期に対応することにより回復も良好となります。その際に「うつ病」などという言葉を使わずに、「疲れが抜けない状態がずっと続いているのが心配」などとお気持ちを伝え、初めての受診には付き添って行けることが望ましいでしょう。
全国医療機関検索では都道府県別の医療機関検索サイトを紹介していますので、精神科医、心療内科医などの専門医を探すのにご活用ください。ご近所にかかりつけ医がいれば、精神科医、心療内科医などの専門医を紹介していただけるかもしれません。
こころの病気への基本的な対応を理解する
「治療にはご家族の協力が重要」などといわれますと、大きな責務を感じて、ついつい力が入りがちですが、あまり特別なことを考える必要はありません。一つ一つ言動に気をつけるあまり、ご本人が「まわりに心配ばかりかけてしまっている」と感じさせしまうこともあります。まずは力を抜き、病気の理解からはじめてみましょう。
原因探しをしない
「なぜ、この人は病気になってしまったのだろう」「自分たちに何か問題があったのか」など、原因が何なのか家族として大変気になるかと思います。実際は様々なことが関与して特定できないことがよくあります。「今できること」を中心に考えるようにしてみましょう。家族の生活の中で、本人がストレスを感じることがあれば、今は取り除いておくということも大切です。
励まさない
このキーワードはご存知の方も多いかもしれません。すでに頑張りすぎて、こころの病になってしまった場合には、励まされることで「もうこれ以上頑張れない」とか「こんなにまわりの人が自分のために気をつかってくれるのに、何もできない自分は情けない」と症状を悪化させてしまうためです。ただ、励ますことが効果的な時期もありますので、その対応の時期については主治医の先生によく相談してください。
無理に特別なことはしないでおく
ご本人の元気がないと、「気分転換をさせよう、旅行でも連れ出そう、パーッと飲み明かそう」など家族で考えることもあるかもしれません。しかし、こころのエネルギーが消耗している状態ですと、普段楽しめることは楽しめず、むしろ疲労感を増し、悪化してしまうこともあります。また、こうした気遣いに応えられない自分に嫌悪感を募らせ、自殺のリスクも高まる場合もあります。ご本人が、楽しみたくなる気持ちが湧いてくるのを待ちましょう。
大きな決断は先延ばしに
「職場でみんなに迷惑をかけている」など自責的な思いから、退職や離婚などについて口にする場合があります。こころの病では、心理的な視野狭窄ということが起きていて、悲観的な発想しか頭に浮かばなく、その道しか残されてないようにとらえてしまうことがあります。自責な気持ちを汲みつつも、「今はまず健康に留意することを最優先しましょう。その問題は、もう少し良くなったら一緒に考えましょう」と説明してみましょう。
受診の付き添いがお勧めです
毎回の受診に付き添う必要はありませんが、一緒に主治医のお話を聞くことで、ご本人のどんな点に気をつけてサポートするといいのか分かることがあります。また主治医に面会しておくことで、ご本人が調子を崩してどうしても通院できないときに、代理で受診して相談することもできます。主治医にとっても家庭での様子をご家族からの客観的な情報が治療の役に立つこともあります。注意していただきたいのは、あくまで「付き添い」ということです。ご本人と主治医の貴重な接点の場ですので、ご家族がしゃべりすぎないようにしましょう。
自殺のサインは?
基本は、いつもと違う言動に気がつくこと
自殺から救うために、ご家族など身近にいる人が、自殺のサインに気がついてあげることが大変重要です。自殺を考えている人は、意識的・無意識的にサインを発しています。サインを発している人が必ずしも自殺のリスクが高いわけではありませんが、下記の自殺予防の十箇条を参考にしてください。特に、「自分は不甲斐ない、駄目な奴だ、責任を果たせずつらい、みんなに迷惑をかけている」などの自責感が強いときはリスクが高まっていると考えてよろしいと思います。主治医がいる場合には、ご家族が連絡して対応について相談をしてもよろしいでしょう。まだ受診していない場合は《病院への受診を勧めてみましょう》の項を参考にしてください。
自殺予防の十箇条 |
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次のようなサインを数多く認める場合は、自殺の危険が迫っています。早い段階で専門家に受診させてください
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出典:職場における自殺の予防と対応(中央労働災害防止協会 健康確保推進部 メンタルヘルス推進センター 2008.09) |
※参考 本サイトの用語解説では、「うつ病とは、精神活動が低下し、抑うつ気分、興味や関心の欠如、不安・焦燥、精神運動の制止あるいは激越、食欲低下、不眠などが生じ、生活上の著しい苦痛や機能障害を引き起こす精神疾患です。」と説明しています。また、うつ病は、数週間~数か月かかることがありますが、治療と休息によりなおるものです。
過労死を予防するには?
● 長時間労働など過重な業務による脳・心臓疾患(脳出血などの脳血管疾患及び心筋梗塞などの虚血性心疾患等)を予防するため、ご家庭では、健康状態に見合った食生活、継続的な運動、禁煙などの生活習慣の改善に心掛けましょう。
● 健康状態としては、肥満、高血圧、脂質異常症(高脂血症)、高血糖症などに特に注意が必要で、これらは、脳・心臓疾患の発病の危険を増大させます。
● 働く人が職場の産業医や保健師、あるいはかかりつけ医(主治医)などから健康の維持・改善のための保健指導などを受けているときは、ご家庭でもその情報を共有し、指導された事項の実践に協力することが必要です。