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第3回 地域産業保健センター(鹿児島県)

  • 支援する方

地域産業保健センター
(鹿児島県)

統括コーディネーター 森 ゆかり さん

こころの支援に関わっている現場担当者からの生の声をお伝えいたします。

『こころ』を軽くしてみませんか?

鹿児島県地域産業保健センター 統括コーディネーター森 ゆかり さん

 地域産業保健センターは、労働者数50人未満の小規模事業所の産業保健サービスを充実させることを目的として各都道府県に設置されています。

 「こころの耳」のウェブサイト左側に地域産業保健センターのアイコンがありますが、クリックされたことはありますか? 本県の場合は県医師会内に本部機能をおき、所属する786人の産業医のバックアップの下、県内7ケ所の医師会内に地域センターを設置し活動しています。つまり専門職種からなるこの上ないマンパワーに支えられ、利用料が無料という理想的な産業保健サービスを提供している機関だと思っています。

 鹿児島県医師会は九州新幹線の発着する鹿児島中央駅前にあり、会館からは手が届くほどの近さに桜島を仰ぎ見ることができます。その雄大さにはいつも心が癒されますが、この地で暮らす女性達には夏場の傘は欠かせません。風に乗った火山灰が鹿児島市内に向かって来るので、雨傘、日傘を兼ねた降灰よけの傘が必要になるからです。そして働く人たちの心身の傘になろうと汗をかくのが地域産業保健センターです。

 主な地域産業保健センターの使命は、小規模事業所の労働者の健康管理をサポートすることです。各センターの現場では健康診断結果に基づく医師の意見聴取、脳心臓疾患のリスクが高い労働者に対する保健指導、メンタルヘルス不調の労働者に対する相談・指導、長時間労働者に対する面接指導などのサービスを提供していますが、産業医が重視すべき課題として最も力を注いでいるのが「こころ」です。

現場からの事例

 長時間労働相談においての事例を紹介します。

●Aさん 55歳 女性
過去3ヶ月平均時間外労働100時間超
【産業医からのコメント】
①精神的に追い込まれている。
②肉体的疲労度が強い。
③この状態が続けばうつ病になるだろう。
産業医の意見:就業制限を必要とする
労働時間の短縮:時間外労働の制限30時間/月

 時間外労働が続けばこのような結果になることは予測できますが、面談がスタートしてAさんの話を聞く産業医(内科)との会話はまさにメンタルヘルス相談でした。疲労蓄積・不眠・精神的不安をはき出すことで「こころ」が楽になられたようです。産業医は事業主に対して上記のコメントを意見し、事業所からは労働者を増やし過重労働は改善されたと報告がありました。

繋がる連携

 メンタルヘルス対策支援センター促進員との連携で改善された事例もあります。メンタルヘルス対策支援センター促進員の活動については前号のコラムで紹介がありました。地域産業保健センターで各サービス提供の業務調整を行う私たちのことをコーディネーターと呼んでいます。

 呼び方に違いはありますが、現場で活動するスタッフ同志定期的な意見交換の場を持つことが大事であると思っています。そこで、鹿児島県では平成24年10月に問題点や好事例などの意見交換会を実施して、今後の連携を確認し合いました。その後、促進員の方々との情報交換を通じて良い方向に向かった事例の報告もさっそく届いています。お互いの顔が見える連携こそ「繋がる連携」と言えるのではないでしょうか。

 また、行政関係者との連携も欠かせません。私は平成20年に厚生労働省の研究事業「NOCOMIT-J」(複合的自殺対策プログラムの自殺企図予防効果に関する地域介入研究)※で、地域産業保健センターを紹介するために参加させて頂きました。しかし、当センターの認知度は低く、各サービス提供時に心の相談も積極的に実施できるよう調整していた担当者としてはとてもショックでした。

 そこで、平成21年から地域振興局との共催で「こころの健康づくりシンポジウム」の開催を試みました。”まずは地元から”と各方面の自殺対策担当者や地域の様々な相談機関へ「繋がる連携」をアピールして、たくさんの方々に地域産業保健センターを知って頂き活用して頂く事が目的です。自殺対策基金も活用して、講演会などを積極的に実施することで年々参加者も増えてきました。このように、「繋がる連携」の成果は小規模事業所で働く人々の健康維持を目的として設置された地域産業保健センター事業に生かされています。

 全国に設置されている地域産業保健センターでは、地域の産業医やコーディネーターが働く人の健康をサポートしています。お気軽に近くの地域産業保健センターを利用してあなたの「こころ」を軽くしてみませんか?

※「NOCOMIT-J」の成果はこちらから詳細が確認できます。
その中で、当センターの詳細はPDF88頁 に掲載されています。

(平成25年3月時点)

※平成26年4月に「地域産業保健センター」事業は、「地域窓口(産業保健総合支援センター)」に一元化されました。