第8回 北條 稔さん
北條医院
わが国の経済の停滞は続いていて、国内総生産(GDP)は世界3位(2000年)から23位(2008年)に後退し、さらに沈下が続いています。デフレは進行中で所得や雇用の減少は止まりません。とりわけ、雇用の不安は若者の希望と意欲を打ち砕いています。
警察庁が発表した昨年(2009年)一年間の自殺者数は32,845人で前年を596人上回り、12年連続で3万人を超えたと報じています。自殺の動機の分析では健康問題(うつ病)が最多で従来と変わりませんが二番目に多いのが「失業」で前年よりも65.3%増、「就職失敗」が39.9%増とあり雇用や失業への不安が深刻であることが推察されました。
不安定な雇用の代表的なものとして派遣労働者の問題があります。筆者は平成20年12月に大田区の製造業を中心とした小規模事業所における派遣労働者のメンタル調査を行いました。「派遣切り」と言う言葉が頻繁に報道され、第一回目の「派遣村」が日比谷公園にできた時期で、派遣社員からアンケートを取ることを派遣元の会社が同意しない事例や派遣社員の意識が正社員の意識と異なって、アンケート調査への協力が困難であることも経験しました。契約されている業務以外の仕事ですから微妙な問題を感じました。
以下、調査の概略を書かせてもらいますと調査対象は10事業所、配布数740回収数109回収率は14.7%でした。この調査の属性ですが、男女比では男性が62%、年齢層は30代43%(図1)で最多でした。年収は200万未満が44%、200~300万が53%でした(図2)。派遣社員の経験年数は(表1)の通りです。正社員を希望するか?という質問では強く希望が30%、少し希望が28%で合計58%は正社員を希望しています(図3)。派遣社員を選択した理由(表2)職場のストレッサー(表3)仕事上のストレス(表4)あったらいい相談口(図4)は経済的問題がトップでした。アンケート調査の結果から職場のストレスの上位は報酬、派遣先の人間関係、契約の打ち切りに対する不安、社会保険等の無保障、特に経済的問題の相談先が無いための孤立感等が推察されました。
※図表はクリックすると見ることができます。
東京都大田区の製造業を中心とした小規模事業所における派遣労働衛者の調査の結果(平成20年12月)