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第4回 安藤 一重さん

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第4回 安藤 一重さん
一般社団法人 日本産業カウンセラー協会 会長
元メンタルヘルス・ポータルサイト委員会委員

働く人びとを支援して50年 ~協会の歴史と活動内容のご紹介~

 社団法人日本産業カウンセラー協会は全国に13の支部と2万2千人を超える会員と共に今年創立50周年を迎えることになります。

 当協会が設立された1960年の頃を概観してみると高度成長期と重なり、我が国は鉄鋼業や重化学工業が驚異的な成長を遂げ、アメリカに次ぐ高度に発達した資本主義国になった時期であります。この産業社会の発展は大量の労働力を必要とし、その貴重な担い手として農村からの出稼ぎといわれる人たちと中学卒業の少年、少女たちが「金の卵」としてもてはやされました。特に若者たちは集団就職列車で各地の工業地帯に送り込まれました。

 この高度成長の中で、技術革新が産業そのものを変え、職場を変えた。そして労働による喜び、生きがいは喪失し、従業員の悩み相談の重要性が認識されだしました。

 当協会の先輩たちは新しく労働力として登場したこれらの人びとの支援に心をくだきました。とりわけ若者たちの職場への定着と、生活の適応を援助するために1950年代後半には人事相談やカウンセリング制度の導入を意図して学習会を重ね、協会の設立に情熱を注ぎました。そして1960年11月に念願の日本産業カウンセラー協会を設立し、その10年後には旧労働省に公益法人として認可され、社団法人日本産業カウンセラー協会が誕生しました。

 この頃、我が国にカウンセラー団体、まして働く人びとを支援するカウンセリングなどが存在しなかった当時、当協会草創期の先達は労を惜しまず、働く人びとの支援に情熱を燃やしました。この先輩たちの崇高な精神は、現在に至るまで、協会の方針に、産業カウンセラーに脈々と引き継がれています

 その活動の一端を報告させていただくと毎年9月10日の世界自殺予防デーに呼応しての無料電話相談、また、通年の無料電話相談「働く人の悩みホットライン」(下記電話番号)や阪神淡路大震災をはじめとする災害へのボランティアなどの社会貢献活動を積極的に推進してきました。加えてJR福知山線の脱線事故に対する電話相談・カウンセリングや生活保護者に対する就労支援の取り組み、さまざまな場で当協会の主要な活動領域であるメンタルヘルス対策・キャリア開発・人間関係開発への援助などの活動を展開しています。

 いま、私たちが50年の歴史を振りかえる時、産業社会の急激な変化が個人に危機的な影響を与え、それに悩み、苦しむ人に「引き戻せない過去ではなく、切り開かれるであろう末来を見据えたカウンセリング」を推進してきたと考えます

 近年の雇用情勢の厳しさや勤労者を取り巻く環境の急激な変化は働く人びとの生活や意識にも影響を及ぼし、職業生活に関しても大きな問題を投げかけています

 当協会は今後も産業社会で悩み苦しむ勤労者の「生きること」「働くこと」の支援を通して、一人ひとりが心豊かに能力を発揮できる援助が行えるよう、私達自身もさらに自己研鑽に努めたいと考えます。

  ※「働く人の悩みホットライン」 月曜~土曜の午後3時~8時
電話番号 03―5772-2183