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DXホールディングス株式会社
(兵庫県神戸市)

日比さん DXホールディングス株式会社は2022年(令和4年)設立。ダイワ運輸株式会社をはじめとしたグループ会社の本社機能(経営企画、総務、人事、財務関連業務等)を担っている。
従業員数は24名(2025年6月現在)、グループ全体では470名(2025年6月現在)。
今回は、管理部 部長の日比秀明さんからお話を伺った。
実施義務のない事業所を含めたグループ全体でストレスチェックを実施しており、運送業という業態に合わせて、運用方法やストレスチェック実施後の面談体制も整備している。
まず、ストレスチェックを中心とした職場のメンタルヘルス対策の取組みについてお話を伺った。
運送業の業態に合うサービスを選定し、実施義務のない事業所も含め、グループ全体でストレスチェックを実施しています 「グループ全体でのストレスチェックは2024年から始めました。法令上ストレスチェックの実施義務があるのは従業員数50人以上の事業場ですが、グループの中で対象となる事業所は2025年現在で2か所、それ以外はすべて50人未満の事業所です。2023年までは実施義務のある事業所のみで実施していましたが、グループ全体をより良くしていきたいという経営者の強い想いを受けて、50人未満の事業所も含めてグループ全体で実施することになりました。」
「ストレスチェックの導入に当たっては、複数の業者から運用方法の説明を聞きました。その上で、全国に拠点があり乗務員が多くいるという、当グループの業態に合った運用のサービスを選定しました。健康診断の実施依頼をしている法人は、紙ベースでの実施でしたので、当グループの業態では管理負担が大きいと判断しました。その他の業者の説明も聞き、当グループは乗務員全員にスマートフォンを貸与しているので、スマートフォン上で回答ができ、集団分析も電子データで提出してもらえる業者に実施をお願いすることにしました。」
「実際に導入する際には、各グループ会社の経営陣と事前調整を行った上で、全従業員に周知を行いました。乗務員は、時間の無い中で、スマートフォン上でストレスチェックを受けることになるので、5分で簡単に取り組めることが伝わるよう、わかりやすい実施マニュアルも独自に作成しました。また、実施1週間前に、ストレスチェック実施についての案内メールを配信したり、実施期間中はその時点での回答率を入れたリマインドのメールを配信したりして、受検を促す働きかけも行っています。」
対面とリモートの産業医面談の仕組みを並行して運用するなど、グループの業態に合わせた柔軟な面談体制を整備している 「ストレスチェックを実施するのであれば、医師との面談も受けることができる環境を整備しておくことが必要だと考え、ストレスチェックの実施業者が提供している産業医サービスも2024年に契約しました。ストレスチェックの高ストレス者への面談の他、残業時間の多い従業員や、メンタルヘルス不調を訴えて産業医面談を希望する従業員への面談を、リモートで実施してもらっています。」
「リモートでの産業医面談の仕組みは、まず看護職に相談して、産業医に相談した方が良さそうな場合は産業医面談に案内するという流れになっています。職場関係者には言いづらい職場の不満や上司のグチも、外部の看護職の方になら話すことができて、困りごとの整理ができる方も多いようです。導入してまだ1年ちょっとですが、平均して月1名程度の従業員が看護職とのリモート面談を利用しています。」
「2025年には、ダイワ運輸の神戸営業所の従業員数が50人以上になったことを受けて、従業員数50人未満の事業所の従業員も含めて関西圏で就業している従業員が、産業医に対面で相談できる環境を整備しました。産業医は、健康診断を依頼している法人の医師にお願いしました。関西圏に就業していない従業員も多くいますので、そのような方にも対応できるよう、リモートで相談できる産業医の契約も継続しています。」
経営陣と従業員との間の意識の共有を図るため、双方の意見やメッセージが互いに伝わる関わりを工夫したり、必要に応じて経営者と直接コミュニケーションをとる機会を設けたりしている。
次に、経営陣と従業員とのコミュニケーションの工夫についてお話を伺った。
休憩室
会社が急成長する時に生じやすい経営陣と従業員との意識のギャップを埋めるため、両者の相互理解を促進する関わりを工夫しています 「当グループは、現社長が設立し、一代でここまで築き上げた組織です。グループ全体の規模拡大に対応するため、従業員を増員したり、業務の仕組み化やシステム化を推進したりすることが、設立当初からいる従業員にとっては戸惑いや反発につながることも多くありました。会社が急成長するタイミングでは、経営陣と従業員との間に意識のズレや隔たりが生じやすいものだと思いますので、私(日比さん)は従業員の声を経営陣にできるだけ伝えることが役割だと考え取り組んでいます。日々の従業員との面談の中で伝わってくる生の声や、ストレスチェックの最後に設けている自由記述欄に記載された会社への要望などについて、経営陣に伝えるようにしています。そうした声を踏まえて、経営陣は、できる限り実現していこうと取り組んでいくもの、従業員の意見は受け止めつつそれでも経営判断として進めていかなければならないものなど、判断されている様子が伝わってきています。」
「また、社長から従業員へのメッセージも積極的に発信しています。たとえば、初めて決算賞与を出すことになった際は、“従業員の皆さんの取組みによって一定の利益を確保することができた、皆さんの努力に報いるために、決算賞与を支給する”といった内容のメッセージでした。ストレスチェックの実施に際しても、“社員の皆様にとって良い会社でありたい、そのためには皆様に健康であって欲しい、そうすることが会社の成長につながり、永続的な発展ができると考えている”といった内容のメッセージを社長から発信しました。」
社内ジムスペース社内のトラブルなどでは、必要に応じて社長が直接コミュニケーションをとり調整を図ることもあります 「管理職と部下との間でトラブルが生じることもあります。管理職側が抱く“部下にはここまで頑張ってほしい”という想いと、実際の部下の想いとの間にギャップが生じることも少なくなく、それがトラブルの原因の一つになっているように思います。そうした時は、社長自ら管理職と話をすることもあります。管理職一人で仕事ができるわけではなく、チームで仕事を進めていく必要があるという話や、部下とトラブルになるような関わり方では管理職自身の損になってしまうのではないか、といった具体的なアドバイスを通じて社長が直接介入し、調整を図ることもあります。」
グループの急成長を背景に、健康経営の視点も活かしながら、人材の育成・定着を図る取組みを推進している。
最後に、健康経営に対する想いについて伺った。
本社ビル屋上のソーラー発電設備健康で働きがいのある職場環境を目指して、健康経営の取組みを進めています 「当グループでは、設立してから現在のグループ体制に至るまでの成長スピードが非常に速かったため、それに合わせて積極的に人材採用していきたいという経営陣の想いがあり、人材確保の観点から健康経営に取り組みはじめました。2023年には“健康経営優良法人”、2024年には“健康経営優良法人(ネクストブライト1000)”に認定されました。」
「社長には、『人を育てなければいけない』、『人がどんどん辞めるような会社にしてはいけない』という強い想いがあります。特に採用は、時間もコストも労力もかかるので、何度も採用活動を繰り返すような状態は、経営的な観点からいって大きな損失になると見ています。現在、組織の中核として業務を回している従業員もいつかは年を重ねて退職することになるため、後継者を育てなければ会社は成り立っていかないという想いもあります。」
「他社の取組みも参考に、当グループでできることは取り入れつつ、従業員がやりがいや働きがいを感じられる職場にしていきたいと考えています。」
【取材協力】DXホールディングス株式会社(ダイワ運輸株式会社)
(2025年9月掲載)