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大洋設備有限会社(鹿児島県鹿屋市)

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大洋設備有限会社
(鹿児島県鹿屋市)

【写真】原口さん 大洋設備有限会社は1980年(昭和55年)創業。家庭工事から官庁工事まで上下水道配管・機械設備工事などを行っている。
従業員数は9名(2025年4月現在)。
今回は、代表取締役社長の原口聡さんからお話を伺った。

業務の効率化や他の業者との調整などを行うことで、残業時間が減り、年間休日数を増やすこともでき、有休を取得しやすい環境を整えることにつながっている。

最初に、健康経営に取り組んだきっかけと働き方改革・ワークライフバランスの取組みについてお話を伺った。

社員に長く働き続けてもらいたいという想いと他社との差別化を図りたいという考えから健康経営に取組み始めました 「当社は上下水道本管工事・機械設備工事等配管をする工事を主力にしていますが、パイプをつなぐだけが仕事ではないと考えています。安全第一はもちろん最優先に考えた上で、きれいな仕事をする、長くきれいな状態で使っていただける仕事をする、ということを大事にしています。日本は災害の多い国です。災害の被害によって上下水道が使用できなくなった場合、生活上・衛生上の問題はとてつもなく大きなものになります。そうしたことを少しでも減らしていけるように、私たちの仕事は人と人をつなぎ、人と地域をつなぎ、地域と地域をつなぐ、重要な使命を負っていると捉えています。」

「当社の従業員の年代構成は、先代の世代である60歳代と、私(原口さん)世代の40歳代の2つに大きく分かれています。いずれも心身の健康やプライベートでの変化がある世代です。これからも長く働き続けてもらうために、何かできることはないかと考えていた時に、契約している保険会社から“健康経営”のことを教えてもらいました。従業員の健康を第一に考える魅力的な会社にし、他社との差別化も図りたいという思いで、2021年に私(原口さん)が社長に就任したことを機に本格的に取り組みはじめました。」

年間休日数を増やすと共に、残業時間を減らし、有休を取得しやすい環境を整えました 「まず働き方改革・ワークライフバランスが重要だと考え、年間休日数を増やすと共に、残業時間を減らし、有休を取得しやすい環境を整えました。年間休日数を増やすために、従来の休日は日曜日と祝日のみでしたが、祝日も含めてほぼ週休2日として、月の休日を8~10日に増やしました。年間では、従来よりも休日が30日以上増えました。年間の休日スケジュールは、新しい期が始まる前にすべて決めて、年間カレンダーで周知しています。休日を増やしてからは、月曜日に出社する従業員の顔が明らかに違うことを実感しています。週休2日のうち、1日はゆっくりと休養にあて、もう1日は家族サービスや趣味にあてることができるようになったと、従業員からもご家族からも好評です。地域の他の建設業の会社の中には今も週休1日の会社がありますので、休日の多さについては他社との差別化を図れているのではないかと思います。」

「また、様々な案件を見直して、無駄な業務の削減や効率化を進めたことで、長時間労働の抑制につなげることができました。現在の時間外労働時間は、月平均10時間程度にまで減っています。」

「有休を取得しやすい環境づくりも意識しています。作業現場は複数人で行っているので、その段取りを変えたり、他の現場との調整を行ったりすることで、必要な時に休みがとりやすくしています。また、社長である私自身が率先して休暇を取得し、子どもの学校行事などに積極的に参加するようにしています。社員にも有休取得を促しており、子育てに積極的に関わる従業員も増えてきました。」

「また建物工事は、様々な役割を担う業者の方々と一緒に行うので、私たちの都合だけで仕事を進めることができない、という側面もあります。他の業者の都合で急かさりたり待たされたりすることはストレスに感じやすいですので、そうしたことを少しでも減らすために、日頃から近隣の他の会社との連携を密にとっておき、急な仕事には応援をお願いするなど、できる限り調整しています。どうしても調整が難しい場合は、施主や顧客に対応が難しいことをご説明し、納得いただくことができています。日頃から従業員が仕事に真剣に取り組んでくれており、それを周囲の方々が見てくれているからこそ、いざというときに理解が得られているのだと思います。」

経営者自らが日頃から従業員の様子を気にかけると共に、新たなコミュニケーションの場をつくることで従業員同士のコミュニケーションもとりやすくなっている。

次に、ストレスに関する調査や、コミュニケーション活性化などについてお話を伺った。

ストレスに関する調査を毎年実施し、社外相談窓口を設置しています 「ストレスに関する調査は、2023年から開始し、以降毎年実施しています。当社が加入している保険会社が提供する健康習慣に関するアンケートの中に、従業員が抱えている仕事のストレス要因やストレス反応などを尋ねる項目が含まれていましたので、それを使用する形です。従業員に高いパフォーマンスを発揮してもらうためには、ある程度のストレスは必要だと考えていますが、過度なストレスになっていないか、ストレスを上手に解消できているか、が気になっていたので、そのアンケートを紹介いただいたときにちょうどよい機会だと感じました。結果は従業員全体の現状として把握することができる形となっているのですが、ストレスが過剰な状態では無かったので安心しました。この結果を通じて、私自身もそれまでは『がんばれ』と発破をかけることが多かったのですが、『ゆっくりしようか』と言える余裕も生まれてきました。また、心身面で気になることがあれば、電話や対面で気軽に相談できるよう、社外相談窓口も設置し、従業員に案内しています。」

自ら進んでコミュニケーションを促進しています 「従業員の出社時と帰宅時には一人一人を観察し、元気があるかどうか何か変わった様子はないかを見ています。毎朝、ラジオ体操を行っており、そこでの従業員の挨拶の声でその日の体調・調子を把握しています。どんよりしている時には、そっと声がけをし、状況確認をしています。また、従業員同士が話している時には、私からもそっと中に入っていき、コミュニケーションをとるよう心掛けています。」

【写真】新しい休憩室 社員同士のコミュニケーションの場となるよう新しい休憩所を新築しました 「今年(2025年)、休憩所を新たに新築しました。これまでは機材や部品材料が置いてある倉庫の中がちょっとした休み場だったのですが、暗かったので気持ちもどんよりしがちでした。新たな休憩所は、明るくて冷暖房が効いています。仕事の合間にしっかりと休むことができますし、食事もとることができますので、社員同士のコミュニケーションの場にもなると考えています。」

協会けんぽに依頼し特定保健指導も行っています 「また、健康診断結果を踏まえて会社として対応することも重視しています。毎年協会けんぽに依頼をして、健康診断結果をもとにした特定保健指導を保健師に実施していただいています。また、数年前に病気になった社員が、今も仕事と治療を両立しながら働いています。作業現場では他社の方もいるので、疲れる前に本人が自主的に休みをとるといった調整はなかなか容易ではありませんが、当社の従業員が必ず複数名いる体制にすることでフォローができるようにしています。」

従業員の総労働時間は減っても売上はそれほど変わっていません 「健康経営の取組みをきっかけに従業員のことを考える機会が増えました。働きやすい環境作り・ワークライフバランス・コミュニケーション促進・ストレス負荷の軽減など様々なことに目が届くようになりました。2024年からは2年連続で“健康経営優良法人(中小規模法人部門)”の認定を受けています。」

「年間休日数を増やすなどして従業員の総労働時間は減りましたが、売上はそれほど変わっていません。地域の同様の建設業者には廃業するところもあり、年々減少しています。新規採用の募集をしても応募はほとんどありません。今後、地域のインフラを保っていけるのか、という心配はあります。そのためにも、当社は健康経営の実践により、長く働くことのできる環境を整え、元気で誇りを持つ従業員を育てていく決意です。高齢になっても安心して働くことができるということを地元の方に知っていただき、働き手として加わってもらいたいですね。長く地域に貢献できる会社でありたいと心掛けています。」

【取材協力】大洋設備有限会社
(2025年9月掲載)