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三重太平洋鉱業株式会社(三重県いなべ市)

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三重太平洋鉱業株式会社
(三重県いなべ市)

【写真】森田さん、川瀬さん三重太平洋鉱業株式会社は1948年(昭和23年)設立。良質で豊富な石灰石資源を開発する藤原鉱山を運営しセメントやコンクリートの原料となる石灰石やその他鉱物の採掘、加工、製品出荷を行っている。
従業員数は86名(2024年12月現在)。
今回は、取締役業務部長の森田広さん、業務部課長の川瀬隆臣さんからお話を伺った。

実施者である産業医にストレスチェック結果を確認してもらったり、高ストレス者には面接指導を勧めたり、集団分析結果を安全衛生委員会で解説したり、職場のメンタルヘルス対策に積極的に取り組んでいる。

まず、職場のメンタルヘルス対策とストレスチェックの取組みについて、お話を伺った。

ストレスチェックの集団分析結果を安全衛生委員会の中で産業医が解説しています 「当社は事業場が3つあるので、事業場ごとの従業員規模はそれぞれ50人未満であり産業医の選任義務はありませんが、以前から産業医を選任し、毎月“保安衛生委員会(安全衛生委員会)”を実施しています。またストレスチェックも50人以上の事業場に義務化された年より毎年実施しています。産業医は、健康診断機関の医師にお願いしています。メンタルヘルス不調者の職場復帰などの相談にも対応してもらっています。」

「ストレスチェックは、外部機関のサービスを利用しています。健康診断の実施時期に合わせて毎年4月頃に実施し、マークシートで80項目の質問に回答してもらう形式です。社内の業務部員が実施事務従事者を担い、マークシートを回収し、外部機関にまとめて送っています。その後、個人結果や集団分析結果を産業医が確認し、個人結果を従業員に通知しています。高ストレスと判定された者は、産業医による面接指導を受けられる仕組みにしています。高ストレス者はあまりいないのですが、以前、ある従業員が2年連続で高ストレスと判定されたため、産業医から実施事務従事者を通じて本人に声掛けをしたところ、医師の面接指導につながり、さらに専門医の受診にもつながりました。」

「ストレスチェックの集団分析結果は、各項目の特徴や、部門別の特徴、前年との比較など、産業医が気になった点について、“保安衛生委員会”の中で定期的に解説してもらっています。“職場環境によるストレス”の項目の数値が高く出た年に、従業員の作業現場の様子を確認したところ、夏場高温状態になり負担が大きくなっているということが分かったため、スポットクーラーを新たに配置しました。また、集団分析結果の特徴については、私(川瀬さん)が毎週の部長会で報告をしたり、部門長に個別に結果資料を渡して話をしたり、“保安衛生委員会”以外の場でも積極的に話すようにしています。」

さんぽセンターの促進員に依頼してラインケア研修を実施しました 「4年前には、三重産業保健総合支援センター(さんぽセンター)のメンタルヘルス対策促進員に講師を依頼して、管理監督者に対してラインケア研修を実施しました。また、毎年10月の“全国労働衛生週間”にあわせて全員集会を行っているのですが、その中で、メンタルヘルスの他、健康や運動、食事など、毎年テーマを決めて外部講師による研修を実施しています。」

相談しやすい仕組み作りや、職場環境に関する課題について話す機会を大切にしています 「また、社内外に相談窓口を設けています。社内では、労務管理も担う業務部には、世代の異なる男女6人がいますので、誰に相談をしてもよいと周知しています。業務部員からも日頃から従業員に声をかけるようにしており、実際に相談があった場合は、他に困っていることはないかも確認し、できるだけその場で多く聴き出すようにしています。社外では、外部機関と契約しており、ハラスメントを含む不安や悩みに関して相談できる窓口を提供しています。」

「その他、当社には労働組合があるので、労働組合との会合の中で、職場環境に関する課題について検討することもあります。より良い職場環境を作っていくために、率直な意見交換を行い、労使が一体となって、できるところから改善することに取り組んでいます。」

職場風土が良くなってきたことで、従業員が知人に当社を紹介する動きなども生まれ、新規採用の拡充につながっている。

最後に、社内のコミュニケーション活性化のための取組みや、健康経営の取組みなどについてお話を伺った。

チーム制での作業がスムーズになるように、話し合いや情報共有を大切にしています 「現場業務はチーム制で行うため、日頃から、メンバーとの話し合いや情報共有を大切にしています。さまざまな年齢やキャリアのメンバーと協力しながら作業を行うことが多いので、仕事のスキルアップはもちろん人間性も豊かになると思っています。」

資格取得のためのサポートや、女性従業員が安心して働ける環境作りにも力を入れています 「従業員の資格取得に対して力強いサポート体制をとっているのも当社の特長です。試験や研修の費用はほぼ全面的に会社が負担し、従業員のスキルアップとやる気を強力にバックアップしています。」

「また、4年前に、採掘部門で初めて女性従業員を雇用しました。採掘などの作業現場はこれまで男性従業員のみでしたが、女性従業員を雇用するに当たって外部の専門家にアドバイスをいただき、対応すべき配慮を行いました。具体的には、新たに女性専用の更衣室とトイレを別棟に設置しました。現在、採掘部門には3名の女性従業員がいます。」

新入社員との交換日記を通じて部門長が早めに変化に気づき対応できるようにしています 「新入社員に対する教育にも力を入れており、メンター制度を取り入れています。入社後3か月間は、日々の業務で行ったことや、そこから学んだことや思ったことなどを、毎日ノートに書いてもらっています。そして、それを部門長が毎日確認してコメントして返します。いわば交換日記のようなものです。部門長は、新入社員の日々の様子を見て把握するだけでなく、本人が感じていることや不安などをテキストで知ることができるので、早めの対応をとることができ、新入社員のメンタルヘルスケアにつながっていると思います。」

健康経営にも積極的に取り組んでいます 「健康経営にも積極的に取り組んでいます。健康診断後に特定保健指導が必要となった従業員には必ず受けてもらい、必要に応じて就業措置などを行っています。また、各事業場で、毎朝ラジオ体操を行っています。その他、傷病時に安心して休暇を取得できるよう、失効した年次有給休暇を付与する“特別年次有給休暇制度”や、入社して間もなく有給休暇の付与日数が少ない従業員には、一定程度の給与を会社が保証する“病気休暇制度”も新たに創設しました。これらの取組みによって、三重県による“三重とこわか健康経営カンパニー(ホワイトみえ)2024”の認定を受けました。」

従業員が知人に当社を紹介したくなる風土が広がっています 「メンタルヘルス対策、長時間労働対策、健康経営などに取り組んだことで、安心して長く働ける環境が整ってきたと自負しています。有給休暇等各種休暇の消化率も高くなり、長時間労働も改善してきています。最近は、従業員からの改善提案も積極的に出されるようになっており、業務の向上を皆で目指すポジティブさも高まっていると感じています。」

「離職者が多い時期もありましたが、近年は定着率が上がっています。また、新規採用にも力を入れています。入社のきっかけは様々で、当社の従業員から『あなたに合う職場だと思うよ』と声をかけられて背中を押された者もいれば、故郷にUターンで就職しようとしたところ、近所の知人から当社を紹介されたという者もいます。従業員から『入社してあらためて良い会社だと実感した』という声を耳にすることが増え、嬉しく思っています。」

「部署や上下の垣根がなく、風通しの良い社風が当社の魅力のひとつです。従業員が感じた当社の社風を、周囲の知人などに話すことで、新たな採用につながるといった良い循環が生まれ始めていると実感しています。」

【取材協力】三重太平洋鉱業株式会社
(2025年3月掲載)