ダイハツ工業株式会社(大阪府池田市)

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ダイハツ工業株式会社
(大阪府池田市)

メンタルサポートチームメンバー(前方中央 山田さん) ダイハツ工業は1907年(明治40年)創立。自動車の製造及び販売を中心に行っている。
ダイハツ工業の従業員数は13,033名(2021年4月現在)。
今回は、安全健康推進室健康グループメンタルサポートチームの臨床心理士・公認心理師の山田実子さんからお話を伺った。

自社に合わせたストレスチェックの運用を常に意識し、集団分析も着目する項目を変えながら職場環境改善に資する結果を算出するための工夫をしている

まず、ストレスチェックの実施状況について、お話を伺った。

「当社では、2016年に、私も含めて臨床心理士の常勤職が3名入社しました。それまでは、メンタルヘルス不調の方に個別に対応するといった二次・三次予防の活動が中心でしたが、ストレスチェックの開始をきっかけに、組織に対する0次・一次予防に力を入れる方向へシフトすることになったようです。同じトヨタグループの会社で臨床心理士を雇用してうまく活用している会社があり、その会社の取組みを参考にして臨床心理士の採用を決めたようでした。」

「ストレスチェックの取組みを開始するに当たっては、“ダイハツならでは”のやり方を構築することを意識してきました。健康施策は、どうしても下支えをする役割が中心で、なかなか光が当たらない分野ですが、ストレスチェックをきっかけに、社員の皆さんにもメンタルヘルスに興味を持ってもらおうと取り組んできました。特に、開始当初は、各事業場で計27回ストレスチェックの事前説明会を実施しました。また、ストレスチェックの集団分析結果をトップ、役員、部長へと順番に報告していくのですが、特に初年度は、臨床心理士が入社したことをまず知ってもらい、顔見知りになるための機会としても活用しました。」

「1年のおおまかな流れとしては、4月にストレスチェックの実施に関する事前説明会を行い、5月にストレスチェックの実施、9~10月に管理職を対象とした結果報告会、それと並行して7~11月に各部署へ個別フィードバックを、実施しています。」

「ストレスチェックの項目は、新職業性ストレス簡易調査票80項目を使用しています。集計などの作業は外部委託しているので、集団分析結果としては一般的なものは示されるのですが、当社内でもさらに分析を実施して、各部署にはその結果を加味して報告しています。当社内での集団分析に関しては、毎年試行錯誤しながら行っています。当初は、結果の芳しくない項目“役割葛藤”の結果を改善するためにどうしたらいいのかと、管理職から質問されて、それについて分析したこともありました。その上で現在は、“役割葛藤”自体を改善することは難しいのですが、職場環境改善活動につなげるということが大きな目的の一つにありますので、“イキイキ度”や“ワーク・エンゲージメント”などに注目し、職場環境改善に役立つ分析をするようにしています。まだまだ十分な分析ができているとは言えませんが、イキイキした職場づくりに役立つ分析をこれからも工夫していきたいと考えています。」

集団分析結果の数値に引っ張られすぎず、あくまで考えるきっかけとして活用することで、話し合う風土が少しずつ定着し始めている

次に、報告会と各部署へのフィードバックの具体的な内容について、お話を伺った。

「結果報告会では、全社の傾向やメンタルヘルス不調の事例紹介などの他、たとえば、管理職のパワハラを予防するための教育的な事例紹介や、保健センターと一緒に実施した職場環境改善活動の好事例の紹介、労働組合の方から年代別研修の紹介、セルフケア研修を継続的に実施している部署からの発表、健康体操の実施など、様々なことを行ってきました。時間的な制限もある中で、報告会を少しでも効果的なものにするために、試行錯誤しています。(【写真1】参照)」


【写真1】ストレスチェック結果報告会(2016年度)

「各部署へのフィードバックでは、会社全体では部長クラス以上、工場では課長クラス以上に、実施しています。個人的には集団分析結果はあくまで話を聞くきっかけとして捉えています。その上で、部署のどういうところがこの結果につながっているかをヒアリングしながら、そこからさらにどのような活動を行っていけばいいかという話ができるように意識しています。ストレスチェックの良いところは数値化できるところではあると思うのですが、開発部門や工場にいるとどうしても数字に目が向きがちなので、悪い数字を良い数字にすることがストレスチェックの目指すところにならないよう、私たち自身も留意して丁寧に説明していきたいと考えています。」

「また、私たちは日頃メンタルヘルス不調者の面談も実施しているので、フィードバックの前にはその部署の不調者の状況について、メンタルヘルスサポートチーム内で情報共有するようにしています。そして、 “この部署では不調者が増えている”といった状況と、“ストレスチェックの結果は一見良好だけど、働きがいを感じている人が少ない”といった、両方の状況を照らし合わせ、何が起きているのか確認しながら職場と話し合いを進めるよう意識しています。」

「集団分析結果を踏まえた職場環境改善活動の進め方は管理職によって様々です。ただ、管理職から希望があれば、一緒に連携して実施することもあります。たとえば、アンガーコントロール研修やセルフケア研修、ラインケア研修などを実施したり、パワハラが起こっている可能性のある部署に対しては全員への個別ヒアリングをして結果をまとめ、部長へフィードバックしてさらにその後の対策を考えることもありました。また、“褒め合う文化がない”という意見が出てきた部署に対しては、褒め合うワークをしてもらうなど、職場と一緒に考えながら実施するようにしています。」

「はじめの頃は、ストレスチェックの集団分析結果が管理職の成績表のように思われてしまうこともありました。しかしながら、6年間継続してきたおかげで、自らが主体的に取り組んで改善したいという職場も少しずつ増え、一緒に対策を考えるという“話し合いの風土”ができてきたのではないかと感じています。」

【ポイント】

  • ①職場環境改善により資する分析を行うため、自社の状況を踏まえた集団分析結果も併せて算出する。
  • ②ストレスチェックの報告会で実施する内容を、その時々のニーズも踏まえて工夫する。
  • ③集団分析結果の数値にこだわるのではなく、あくまで考えるきっかけとして活用し、話し合う風土が少しずつ定着してきている。

【取材協力】ダイハツ工業株式会社
(2021年12月掲載)