サントリープロダクツ株式会社天然水南アルプス白州工場(山梨県北杜市)

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サントリープロダクツ株式会社天然水南アルプス白州工場
(山梨県北杜市)

サントリー天然水南アルプス白州工場は、サントリーグループの中で清涼飲料の製造を中心に行っている。
サントリーグループ全体の従業員数は、40,044人(2020年12月末現在)。その内、天然水南アルプス白州工場の従業員数は百数十名である。
今回は、エンジニアリング部門工務グループ課長の渡邊高太さんからお話を伺った。

ストレスチェックは年1回一斉に実施するだけでなく、いつでもセルフチェックできるようにしており、特に入社1、2年目社員に対しては年4回受けてもらっている

まず、メンタルヘルス対策の取組みについて、お話を伺った。

「サントリーグループでは、健康とは、単に病気ではないということではなく、“心身ともに健康で、毎日元気に働き、やる気に満ちている”状態だと考えています。従業員が大いなるやりがいを持って、活き活きと企業活動を推進し、社会に貢献してもらいたいと考えています。こうした思いのもと、当社では2014年に“健康づくり”を宣言し、看護職のエリア担当制の導入、看護職との健康面談、社内向け健康情報サイトの開設など健康推進体制を強化しました。また、2016年には経営層がGCHO(健康管理最高責任者)に就任し、新たに“健康経営”の取組みをスタートしました。健康診断、メンタルヘルス対策、ストレスチェックなど様々な取組みを推進し、中長期的な目標として健康KPIを設定することで、心身の不調・疾患を未然に防ぐとともに、すでにスタートしている働き方改革とも連動して、“やりがいのある会社生活”と“プライベートの充実”の実現を目指しています。」

「従業員の身体と心の健康に配慮することは、企業の最も重要な責務の1つだと考えています。ストレスチェックは年1回一斉に実施するだけでなく、通年でいつでもセルフチェックできるようにしています。特に入社1、2年目の社員に対しては、年4回受けてもらっています。そして、高ストレス者など対応が必要な社員には、産業保健スタッフによる面談や情報提供を行うなど事後フォロー体制も整備しています。産業医、メンタルヘルス専門医、看護職、臨床心理士といった産業保健スタッフの体制を整えており、いつでも気軽に相談しやすい雰囲気づくりを目指しています。また、社外の相談窓口も設置しており、社員だけでなく同居している家族からの相談も受け付けています。職場のことだけでなく、家庭やプライベートなど社内では相談しにくいようなことも気軽に相談できるよう、電話、メール、オンライン、対面など様々な方法で相談できる体制を整備しています。こうした取組みを通じて、心身の状況を把握し、早期発見・早期対応につなげたいと考えています。」

「集合研修でのセルフケア教育や、新任課長研修でのラインケア教育なども行っています。その他、メンタルヘルスに関する基礎知識や制度等をまとめた当社独自の“メンタルヘルスハンドブック”による情報提供や、メンタルヘルスに関するeラーニングも実施しています。休職者に対しては、スムーズに職場復帰ができるよう復職支援体制を整備しています。」

労災を少しでも減らすため、研修の対象者を拡大するだけでなく、グループ討議や自ら体験、人へ教えるといったアクティブラーニングの要素を取り入れるなど、研修方法も工夫することで、学習の定着率向上を図っている

次に、積極的な学習(アクティブラーニング)を取り入れた教育研修の取組みについて、お話を伺った。

「私は、当工場における安全事務局にて安全活動の推進を担っています。過去の労災事案を人の行動から分析した結果、“①入社3 年目以内の若手社員の情報不足による不安全行動”と、“②入社10 年目以降の中堅社員の慣れによる不安全行動”が課題として顕在化しました。そこで、これまで新入社員(入社1年目)および異動者にしか行っていなかった安全教育を、2019年からは、入社2 年目・3 年目のメンバー、および10年以降の中堅メンバーにも拡大することにしました。また、安全教育プログラムの充実を図ることを、安全活動方針の重点課題に掲げました。」

「入社3 年目以内の若手社員向けの教育プログラムについては、当工場と取引のある包材メーカー様の工場見学をしたことがきっかけで充実させる方向性が見えてきました。その包材メーカー様は、2018年6月6日時点で連続無災害日数3241日を達成していたので、その秘訣や安全活動について質問したところ、『安全事務局は一人です。現場の人たちが安全に作業するための安全活動を各現場が考え実行しています。現場毎に作業や年齢構成、スキルなど違うので、トップダウンの指示ではなく現場にまかせています。安全事務局は情報発信くらいしかしていないです』との回答でした。ここから、現場が主体となって活動する“ボトムアップ活動”のヒントを得ました。」

「また、私自身、子どもの学校のPTA活動に関わっているのですが、担任の先生から、アクティブラーニングという教育指導方法を教えてもらう機会がありました。アクティブラーニングとは、グループ討議や自ら体験、人へ教えるといった能動的・積極的な学習を通じて、学習の定着率の向上を図る方法です(【図1】参照)。教育終了後の“ありたい姿”を設定し、そこに向けて自ら体験し、人に教えるといった、効果的で質の高い教育プログラムがあることを知って、自社でも実施してみたいと思いました。その後、様々な情報収集を行い、当工場ならではの活動に進化させました。」

「まず、入社時の“1年目のプログラム”では、ありたい姿のキーワードを“知っている”と設定しました(【図2】参照)。新入社員の安全教育プログラムの内容はもともと充実していて、新入社員雇い入れ時の安全衛生教育に加え、専属コーチャーがついて、当工場安全衛生規則を一通り分かった上で、一人でも作業できる安全スキルレベルに達するまで教育しています。また、入社3 カ月後には、安全事務局が当工場安全衛生規則を再教育した上でテストを行い、理解度を確認しています。さらに危険体感教育や指差し呼称訓練など自らの体験を元にした教育も行っています。こうした教育成果として、入社1 年未満メンバーの労災はゼロを継続しています。」

「次に、今回新設した“2年目のプログラム”では、ありたい姿のキーワードを“理解している”と設定しました。『なぜそのような職場の安全ルールになっているか理解している(know-why=理由・動機を知っている)』ことを獲得目標としました。自工程の安全衛生規則全ページのknow-why を、2ヶ月かけて、受講者自ら“人に教える”レベルになるまで、関係法令などを本やインターネットで調べて理解を深めてもらいました(【図3】参照)。また、相談できる自身の職場の先輩を一人ひとり明確にしたことで、質問することを通じて学ぶ経験になり、職場のコミュニケーションの活性化にもつながりました。最後に、“know-why調査結果報告会”にて、調査結果を工場長、安全事務局らに説明してもらい、質疑応答を通じ理解度の向上を図りました(【図4】参照)。受講者の事後アンケートでは、『設備や作業に慣れた2 年目のタイミングで調査したことで理解が深まった』、『現場の安全規則と法令のつながりを理解できた』といった声があり、全員が“大変理解できた”、“大変有効であった”との回答でした。」

【図3】受講者の調査結果(一例)

【図4】know-why調査結果報告会

「“3年目のプログラム”では、ありたい姿のキーワードを“実践している”と設定しました。『新入社員の模範となるべくルールを当たり前に守れ、先輩にも注意できる』ことを獲得目標としました。研修では、最初に、ルールを守らなかったことで発生した労災事例と労働安全衛生法令の解説、そして、労働者の責務、過失相殺などについて、交通事故事例など身近な事例を盛り込んだ当社独自のテキストによる座学教育を行いました。その上で、自ら体験すべくVR(バーチャルリアリティ)を用いた危険体感教育を行いました(【図5】参照)。そして、座学教育や危険体感教育での気づきをもとに、今後の自らの“考動”についてグループ討議を行い、発表することで学習の定着率向上を図りました。最後に、『職場でルールを守らなかった人を見かけたときにどのように行動し注意するか』について、行動を可視化し、一人ひとり宣言しました(【図6】参照)。先輩たちに対して、理由を説明しながら、いかに気持ちよく、あなたのためを思って言っているということを伝えればいいか、グループ討議を通じてじっくり考えてもらいました。注意の伝え方を考えることも、職場のコミュニケーションの円滑化には大切なことだと思います。受講者の事後アンケートでは、『VR は現場に近い状況で危険体験することができた』、『先輩への注意はつらくちゅうちょしたが、宣言通り注意することができた』といった声があり、獲得目標を達成するこができたと思います。」

【図5】VRでの危険教育体験

【図6】安全考動宣言

「このように階層別に教育を行ったことで、各階層の役割や安全活動に対する理解が深まり一人ひとりの安全意識が向上したと考えています。これまで継続してきた日々の愚直な安全活動に加え、新たな安全教育が成果を発揮し、無災害連続日数を現在も記録更新中です。」

【ポイント】

  • ①ストレスチェックは年1回一斉に実施するだけでなく、いつでもセルフチェックできる環境を整えることで、心の健康に対する意識を高めている。
  • ②グループ討議や自ら体験、人へ教えるといったアクティブラーニングの要素を研修に取り入れるなど、研修方法を工夫することで、学習の定着率向上を図る。
  • ③グループ討議を通じて、いかに気持ちよく相手のためを思って注意する伝え方を考えることが、職場のコミュニケーションの円滑化につながる。

【取材協力】サントリーグループ
(2021年10月掲載)