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公益財団法人熊本県総合保健センター(熊本県熊本市)

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公益財団法人熊本県総合保健センター
(熊本県熊本市)

守田さん、堀口さん、金子さん、三浦さん 公益財団法人熊本県総合保健センターは、1985年に設立。生活習慣病予防やがん予防のために、県民の健康診断・検診・保健指導、公衆衛生の向上を目的とした普及啓発事業を行っている。
 現在、正規職員は約140名。臨時職員まで含めると約300名である。
 尚、ストレスチェック実施後の職場環境改善活動に関しては、「ストレスチェック関連の取り組み事例」を、こちらの事例の後に参照願いたい。
 今回は、副理事長・事務局長の金子徳政さん、総務部総務会計室長の三浦功仁さん、健康管理部総括の守田みどりさん、健康管理部兼総務部の堀口真愛さん(保健師)の4人にお話を伺った。

 職員の心身健康向上の様々なプロジェクトに、管理監督者がそれぞれ責任者として関わることで、健康づくりのリーダーである当事者意識を持ってもらうことにつながる

健康経営の取り組みの一環として行っている、職場のメンタルヘルス対策および相談窓口を通じたメンタルヘルス不調者への適切な対応への取り組みに関して、お話を伺った。。

「職場のメンタルヘルス対策の取り組みは、“健康経営プロジェクト”の一環として行っています。健康経営の取り組みは、2016年にトップが健康宣言をしてから、“SOUHO革命”と称して、まず3か年計画としてはじめました。当センターには様々な職種がいますが、業務体系がほぼ固定化されているので、部署変更も少なく、入職時の上下関係や先輩後輩関係が変えられないままの人間関係が続いていきます。そうすると、狭い人間関係の中で、言いたいことが言えないことでのストレスが溜まっていくことにもなります。そこで、健康づくりを通じて、職員の働きがい、意欲、生産性を上げることをポイントとして進めていくことにしました。」

「昨年は、健康経営の取り組み4年目で、新たに第2期として再スタートしました。健康経営プロジェクトの組織体制は3層になっています。上部に、経営会議を行っている幹部中心の“健康経営委員会”があり、中間部に、各部門の所属長が中心となる“健康経営実行委員”、その下に、各部門から選任された若手職員を主体とした“健康経営推進委員”がいます。第1期の時点では、中間部の“健康経営実行委員”がない2層でした。そのため、所属長たちにとっては、幹部が計画を立て、若手職員が推進委員として行っている単なるレクレーション活動の一環としか捉えられていないようでした。健康経営活動が、組織全体の取り組みとしてうまく機能していないことで、職員の間には、まだまだ浸透していない感じがしていました。」

「そこで、全部門の所属長12~13名による “健康経営実行委員”を中間部に新たに定めました。最初に説明会を行い、健康経営の必要性や取り組み目標を示しました。その中で、リスクマネジメントや法令遵守、安全配慮義務の説明もしました。部下をマネジメントするということが所属長の役割ということをあらためて周知し、管理職にも責任があるということを再認識いただきました。月1回開催する“健康経営実行委員会”では、各所属長が持ち回りで議長を務めることにしました。また、“健康経営プロジェクト”の各プログラムの中で興味関心がある内容を担当してもらい、責任者となっていただくことを始めました。」

(三浦さんのボディメイクチャレンジ) 「“健康経営プロジェクト”の各プログラムとしては、まず、“運動機会の増進に向けた取り組み”として、お金のかからない“SOUHO-GYM”を開設しました。当センターの体育館に、各職員の家庭で不要となったサイクルマシンなどの健康機材を持ち寄ってもらい、それらを自由に使用できるようにしました。職員の間で幅広く利用されています。また、“女性の健康保持・増進に向けた取り組み”として、骨密度診断や料理教室なども行いました。さらに、“食生活の改善に向けた取り組み”として、ボディメイクチャレンジ(減量チャレンジ)を、2か月間限定で取り組みました。事前に参加者に説明会を行い、目標と内容を決め、具体的な行動変容を図り、参加者には結果にコミットしてもらうようにしました。まずは自分たちからということで、先に三浦さんがチャレンジされました。大きな成果が出たこともあり、実際には約30人が参加しました。参加者には社内SNSアプリを使って、週1回、保健師から励ましメッセージを送るなどのフォローを行いました。最終的に、個人差はありましたが、全員が減量成功しました。」

「“健康経営プロジェクト”は、職員一人一人が元気になって、生産性が上がるということが目標ですが、こうしたイベントを通じて、他の部署の方々とも知り合い、気軽に声がかけられるような雰囲気ができてきたように感じています。職員間のコミュニケーション向上にもなりました。また、各所属長が責任者として進行管理を担当していただくことで、健康づくりのリーダーであることの当事者意識を持ってもらうことができ、最近は職場の中での健康づくりが浸透し、効果が出てきているように感じています。」

「最近は、健康相談窓口の周知をあらためて重点的に行っています。健康相談窓口は以前からあったのですが、自身が不調になった時や、周囲に不調者が出た時に、まずどこに相談したらいいのかわからないといった声や、不調者に対してどのような流れで対応を進めたらいいかわからないという所属長からの意見などがありました。そこで、当センターのメンタルヘルス関連の規程や両立支援規程、職場復帰支援の手引きの流れなどを、どの職員が見てもわかるように、全面的な見直しを行いました。また、面談ではプライバシーに配慮し、相談者に合わせて、会議室や休養室など面談場所を柔軟に設定しています。」

(健康相談窓口の案内)「相談窓口の利用のきっかけは、本人からの他、上司による紹介、労働組合からの紹介など様々です。相談は、総務部が申込窓口となり、その後、保健師が面談を実施します。必要に応じて産業医の面談につないだり、他の医療機関につないだりします。また、産業カウンセラー資格をもつ保健師がいますので、継続的なカウンセリングを通じて、フォローアップを行うこともしています。」

「相談内容の中には、個人のセルフケアだけでは難しく、相談者の職場環境についての検討が必要な場合もあります。その際は、本人の同意を得た上で、総務部や所属部門の責任者を集めて会議を開催します。相談者の体調が良くなるためには何が必要で、職場環境に対してどのような支援が必要かを話し合います。相談者および組織的なサポートの進め方や業務の整理を通じて、相談者の回復につなげることが、職場環境の改善にもなると考えています。」

「また、相談窓口では、メンタルヘルス関連だけではなく、さまざまな健康相談や、健康診断後の事後指導、禁煙チャレンジなどの相談についても対応をしています。」

「部下だけでなく所属長も悩んでいます。今後は、全所属長が関わっている“健康経営実行委員会”を、さらなるメンタルヘルス不調の未然防止につながるような取り組みを考える場にしていきたいと考えています。」

【ポイント】

  • ①職員の心身健康向上の様々なプロジェクトに、管理監督者がそれぞれ責任者として関わることで、心身の健康づくりのリーダーであることの当事者意識を持ってもらうことにつながる。
  • ②相談窓口での対応後、相談者の職場環境についての検討が必要な場合は、関係者を集め、相談者および組織的なサポートの進め方について話し合う。

【取材協力】公益財団法人熊本県総合保健センター
(2020年7月掲載)