働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト

アルビス株式会社(富山県射水市)

  • 事業者の方
  • 部下を持つ方
  • 支援する方

読了時間の目安:

9

アルビス株式会社
(富山県射水市)

 アルビス株式会社は、北陸エリアを中心に54店舗の食品スーパーマーケット「albis(アルビス)」を展開している。「広く明るく買い物しやすい」と、地元の方々にも広く支持されている。従業員数は正社員が約733名、パート・アルバイト等短時間勤務者は約2,730名である(2016年12月現在)。

 今回は、総務部部長の横山純子さん、人事部人事課課長の佐藤美雪さん、「富山産業保健総合支援センター」のメンタルヘルス対策促進員であり、外部EAP(従業員支援プログラム)機関のカウンセラーでもある小松紀美子さんの3人にお話を伺いました。

最初に、職場のメンタルヘルス対策の取り組み全体について、横山さんにお話を伺った。

「1店舗当たりの人数は、規模によって異なります。小さな店舗は、正社員が約5名、大型店は20~30名くらいです。基本的に、店長や売り場の責任者は正社員ですが、店舗によってはパート社員さんがチーフという職位についている場合もあります。」

「メンタルヘルス体制を整え始めたのは、2006年頃からです。私が中央労働災害防止協会へ相談に行き、無料の支援サービスを知りました。支援サービスの中で、支援員として小松さんを紹介していただきました。メンタルヘルス対策を基礎から教えていただきながら、一緒に考え、仕組みをつくっていきました。」

「よくあることだと思いますが、急成長すると新たな課題が出てきますよね。2006年頃は、まさにその時期でした。同年、労働安全衛生法の改正で、長時間労働者への医師の面接指導が義務化されたこともあり、社会の流れに沿って、職場のメンタルヘルス対策の必要性を役員会議の中で説明し了承を得ました。」

「その後、メンタルヘルスに関する現状を認識するため、“労働時間改善委員会”を母体としてメンタルヘルスに関する委員会を設置しました。10年前は、メンタルヘルスという言葉は、まだ精神疾患という感覚で捉えられてしまうことが多く、メンタルヘルスに対する理解がありませんでした。また、店舗以外の間接部門の活動としては、新しく組織を増やすことは難しいので、既存の委員会を基にしました。現在は、“メンタルヘルス対策委員会(労働時間改善委員会)”として、メンタルヘルスの名称を使用しています。店長会などでも、メンタルヘルス教育を行い、社内体制の説明をすると共に、何か起きた時には、相談窓口である人事部門に連絡するように伝えました。」

「例えば、店長や周囲の方が気づき、『ちょっと今、調子が悪そうだから人事の人に相談してみない』と声掛けをして、店長等から相談の連絡があることもあれば、本人から直接連絡があることもあります。その後、人事部から一度店舗に出向きます。『連絡が入り、すぐに動く』、『店舗に行き直接話を聴く』という姿勢は大事だと思います。場合によりますが、店長室などの個室を借りて、ゆっくり話を聴いています。相談内容は、職場の人間関係もあれば、業務量が多いなどいろいろあります。話し始めると止まらなくなり、中には涙する方もいます。やはり心が弱くなっている状態ですので、人が来て親身に話を聴くだけでも、自分で解決策を考えられるようになる人もいます。専門的なサポートが必要な場合は、外部EAP機関のカウンセラーである小松さんに引き継ぎます。小松さんとの相談内容については、会社側には開示されないルールです。しかしながら、職場で配慮が必要なことは本人の了解のもと、会社側でも把握し対応しています。外部EAP機関には、“メンタルヘルス産業医”として業務をお願いしている医師がいます。労働基準監督署に届け出している産業医とは別です。」

続いて外部EAP機関としての役割・活動について、小松さんに伺った。

「カウンセリングは、主に当機関の相談室に来ていただいて行っています。私の方でカウンセリングを行い、状況をみて、すぐに受診勧奨することもありますし、その後、受診結果に基づき、本人の了承を得て休業してもらう場合もあります。早めに休業される方が、結果的には、アルビスさんに長く勤めることができると考えているからです。」

「メンタルヘルス不調関連で、休業に入る場合は、私が職場の状況や、本人の要望をまとめたものを事前に“メンタルヘルス産業医”に情報共有した上で面談をしてもらいます。」

「当機関の相談窓口利用に関しては、電話や手紙での窓口があります。各店舗には、お手紙を書いて送れる仕組みがあります。直接人事部門を通さないで相談できるルートも必要であろうとアルビスさんと相談して、手紙という形を導入しました。メールができる方ばかりではないし、少し手間がかかるけれど、本人が不安や悩み事を文字に書くことで、何となく落ち着いてくることもあるかと考えたからです。電話や対面での相談の前に、もう一度自分で考える場面を作るという考えもあります。お手紙でのやりとりには時間がかかりますが、それでも利用される方はおられます。」

続いてストレスチェック制度への取り組みについて、佐藤さんに伺った。

「ストレスチェック制度の実施は、今年が初めてです。当社では、メンタルヘルス不調になられた方に対しては、外部EAP機関を通じて、面談およびフォローをする体制がもともとありましたので、今回、実施にあたっては、既存の体制とストレスチェック制度の体制が連携するよう、“2階建て方式”で考えました。メンタルヘルス不調に陥られた方のフォローはこれまで通り“1階”で対応し、その上に新たに、ストレスチェック制度の体制を“2階”につくりました。“2階”は、メンタルヘルス不調に陥る前に本人に気づきをあたえる一次予防を目的としています。」

「当社は高齢者の方もいるので質問紙で実施しました。これまで10年かけてメンタルヘルス体制を築いてきたので、ストレスチェックの導入はスムーズに進みました。ストレスチェックおよび実施後は、医師面接の前に事前面談としてカウンセラーとの相談を設置しています。相談するということのハードルを下げる狙いもありますし、セルフケアの促進も期待しています。外部EAP機関は、健康診断機関であり、日頃から健康診断の事後処置としての面談も行っていますので、従業員も違和感なく相談できると思います。ストレスチェック実施における社内調整は、我々メンタルヘルスケアのチームとは別に、人事部門の社員が“実施事務従事者”を担っています。メンタルヘルス不調の相談窓口と、ストレスチェック制度の医師による面接指導の申出窓口があり、どちらに申し出るかによって、相談内容を知ることができる者の範囲も異なります。」

社内窓口で相談を受けた上で、直接店舗に出向き本人と対面相談を行うなど迅速に対応し、必要に応じて、医師のいる外部EAP機関につなげることが重要である。また、ストレスチェック制度の体制が加わることで、既存の職場のメンタルヘルス体制がより充実する。

休業中も相談対応を行うことで状況を把握し、復帰後の職場や働き方の調整を行うことができる

次に、職場復帰支援の取り組みについて、横山さんと佐藤さんにお話を伺った。

「職場復帰支援の流れは、メンタルヘルス不調に対するフォロー体制と合わせて、簡単なチャート図にまとめています。まず、休業期間は、診断書に沿って休んでもらいます。休業中は、病状の回復に専念してもらいたいので、会社側からはあまり声をかけず、カウンセラーから連絡をとってもらうようにしています。外部EAP機関が窓口となり、実際に相談室に行ってもらい、カウンセリングを受けてもらいます。中には、1週間に1回のペースでカウンセリングが必要な方もいました。」

「職場復帰の状態が近づいてくると、『“メンタルヘルス産業医”と面談してみる?』と医師との面談を促しながら、復帰後の職場のことも考えて、『売り場や店舗を変える検討もありうるがどんなふうに思いますか?』など具体的な話もしていきます。職場復帰の際、店舗の開店に合わせて朝が早かったり、マネージャーとして管理責任があったりと、本人は頑張りたいと思っていても、本人の思いと実際の体調とが合っていない場合もあるからです。カウンセラーから休業中の日常生活の報告を受け、会社では、復帰する職場の検討と調整をお願いしてます。この際、店長や各部署と連絡を取り合いながら、受け入れ先の合意を得た上で、復帰することとしています。」

「当社では“メンタルヘルス産業医”の職場復帰可能の判定を重視しています。主治医が復帰可と判定しても、“メンタルヘルス産業医”が復帰可と判定しないと、職場復帰できないことは、休業した時点から伝えています。場合によっては、主治医に対し、本人を介して状況を共有してもらい、連携を図っています。」

休業中も外部EAP機関がカウンセリング窓口を担当することで、本人が復帰準備に入りやすく、また受け入れる職場も準備が円滑に行えている。

【ポイント】

  • ①電話や手紙などを通じて社内窓口で受けた相談に対して迅速に対応し、状況に応じて外部EAP機関につなぎ、カウンセラーや医師と連携する。
  • ②ストレスチェック制度の体制が加わることで、既存の職場のメンタルヘルス体制がより充実する。
  • ③休業中も相談対応を行うことで状況を把握し、復帰後の職場や働き方の調整を柔軟に行うことができる。

【取材協力】アルビス株式会社
(2017年1月掲載)