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株式会社サッポロドラッグストアー
(北海道札幌市)
株式会社サッポロドラッグストアーは、1972年創業、北海道を中心にドラッグストアを186店舗、調剤薬局を10店舗も抱える小売業グループである。医薬品や化粧品に加えて日用品、食品などを販売している。北は利尻島から東は根室、南は函館と全道に店舗を展開しているほか、インバウンド対応として沖縄、福岡、東京に4店舗展開している。従業員数は、パート・アルバイトを含めると約3000人です。また、2016年8月にはサツドラホールディングス株式会社を設立し、4つのグループ会社の1つとなった。
今回は人事部人事企画担当マネジャーの稲垣英樹さんと、人事部ダイバーシティ・健康戦略推進担当マネジャーの竹内弘さんのお二人にお話を伺った。
全従業員が携帯しているハンドブックや社内ポスター、研修などで相談窓口を周知する
最初に、組織形態、および相談窓口の設置や研修など職場のメンタルヘルス対策の取り組み全体について、稲垣さんにお話を伺った。
「当社は、大きく分けると本部と店舗の2つの業務体系があります。本部に勤務しているのが、パートも含めて、現在約200名です。それ以外の店舗に約2800名がいます。標準規模の店舗ですと、店長がおり、その下に正社員が数名、その他にパート・アルバイトが20数名です。」
「店舗運営の組織体系としては、 “店長”の上に、平均10店舗ぐらいの店長をまとめる“ブロックマネジャー(BM)”がいます。その上に“エリアマネジャー(AM)”がいて、さらにその上に、“ゼネラルマネジャー(GM)”がいます。」
「この10年で、業務拡大と共に店舗も社員数も急増している中、いろいろな問題が出てきました。メンタルヘルスに関する個別相談も増えてきており、会社としてメンタルヘルス対策の仕組みをつくらなければならないと考えました。」
「2009年頃、中央労働災害防止協会のメンタルヘルス対策に関するモデル事業の支援を受けて、社内体制整備をし始めました。その中で、体制ができても、実際に誰がどのように動くのか、どの程度のことを行わなければならないのかということなどを、専門的に勉強する必要があると考え、産業カウンセラーの資格を取得しました。」
「以前から、社内の相談窓口として、ハラスメント窓口と、内部通報窓口とがありました。そこに、メンタルヘルス関連の相談窓口として、人事部内に専用電話を設けました。産業カウンセラーの私と、人事部マネジャー(産業カウンセラー)の谷口さんとで対応をしています。またメール相談にも対応しており、相談窓口専用のメールアドレスもあります。」
「相談を受けた後、情報の取り扱いに留意して、エリアマネジャーやブロックマネジャーに、まずは、職場や本人の状況を確認してもらいます。職場環境に問題があれば改善するように促します。本人に直接かかわる内容の場合は、本人に了解を得た上で周囲と連携をしながら対応していきます。本人の悩み相談だけで終わるケースも多いです。電話やメールで相談を受けた後、実際に本人と会い、対面相談をする場合もあります。」
「当初、窓口を設けていても従業員によく周知がされておらず、知らない、分からないという状態でしたので、パート・アルバイトを含め従業員全員がいつも携帯している“接遇ハンドブック”に、相談窓口と連絡先を記載して、『何かあったら連絡してください』と伝えています。毎月発行している社内報やポスターで周知しています。相談窓口に電話をかけることにより、救われることもあると思います」
「社員の職能資格等級基準に沿って、等級別に“マネジメント研修”を実施しています。この研修では、労務管理に関するものや、売場作業に特化したものなどがあり、それらの単元の中に外部講師によるハラスメント・メンタルヘルスの教育も入れています。等級別ですので、新入社員向けや管理監督者向けなどそれぞれの等級に即した内容にしています。また、1回研修を受けた人でも、次の等級に上がると、その等級に応じた研修を受けることになります。等級が変わらない方も、本人の希望に応じて、同じ内容ですが、何度も研修を受けることができます。研修を通じて、セクハラやパワハラなどのハラスメントはいけないこと、その対策に取り組んでいることを会社のメッセージとして伝えています。」
メンタルヘルスについて学習した産業カウンセラーが電話やメールの社内相談窓口対応を行っている。相談窓口の周知のために、全従業員が携帯しているハンドブックや、ポスター、社内報などに記載したり、定期的に行うハラスメント・メンタルヘルス研修で紹介したりするなどさまざまな機会を活かしている。
本人とのコミュニケーションを重視し、寄り添いながら職場復帰を進めていく
次に、職場復帰支援の取り組みについてお話を伺った。
「休業期間中は、休んで回復してもらうことに専念してもらいます。ただ、その期間も、会社の人事部が窓口となり、定期的に連絡をとりながら、健康状態の確認をしています。」
「職場復帰に関しては、本人が、復帰予定の職場における職務と業務にて、ある程度勤務できるかどうか。例えば店長が休業をし、復帰後すぐに店長業務を行えるかというと、そうではありません。本人もまだ自信がなく、管理業務が難しいなどがあります。その場合は、負担の少ない業務で肩慣らしをした後で、店長への復帰を目指してもらうことになります。また、復帰する部署を変更する場合もあります。変更した部署でどういう仕事ができるかは、人事部およびその部門の管理監督者と本人がお互いに話し合いをしながら決めていきます。最終的には本人も受け入れる職場も納得した上で復帰をし、きちんと働いて頂きたいという思いがあります。」
「メンタルヘルス不調による職場復帰者は、それぞれ状態が違うので、個別対応を行いながらも、本人としっかりコミュニケーションを取り、気持ちに寄り添いながら話し合いを進めています。職場復帰後の本人と職場との調整役は、ほぼ人事部が行います。人事部が本人と話をすることが多いです。ただし、店舗内の職場環境の調整が必要な場合は、店長やブロックマネジャーとも話をして一緒に考えていきます。」
「職場復帰後、管理監督者には本人の状況をしっかり見てもらい、何かあればすぐに人事部門に報告するように伝えています。管理監督者は、社内のマネジメント研修でメンタルヘルスの教育を受けていますが、1回研修しただけでは、メンタルヘルス不調者や職場復帰者への対応が十分にできるとは思いません。そのため、等級別研修で何度も繰り返し学ぶことで、徐々に身についていくものかと思います。メンタルヘルスの教育は会社の責任として継続的に行っていくことが大切です。」
「復帰時の時短勤務は原則行っていません。基本的には所定の労働時間に耐えうる良好な状態まで回復してもらうことが、復帰条件の一つです。本人も通常通りの勤務を希望するのがほとんどです。我慢すれば働けるというような状態で復帰させても、すぐに再休業してしまう可能性があり、そうすると本人も職場もお互いに良いことはないと思います。」
「今後は、不調者が現れる前に予防の段階で、本人や管理監督者など周囲の者が気づくような取り組みをしていくことが、会社として重要だと考えています。」
人事部が中心となり、本人とのコミュニケーションを重視し、気持ちに寄り添いながら話し合いをして職場復帰を進めている。職場環境の調整が必要な場合は、人事部が店長など管理監督者と話し合いをして行っている。メンタルヘルス教育は、管理監督者に基本的な対応スキルを身につけてもらうために、継続的に行うことが重要である。
【ポイント】
- ①全従業員が携帯しているハンドブックや社内ポスター、研修などで周知する。
- ②メンタルヘルス教育は、管理監督者に基本的な対応スキルを身につけてもらうために、継続的に行う
- ③本人とのコミュニケーションを重視し、気持ちに寄り添いながら話し合いをして職場復帰を進めていく。
【取材協力】株式会社サッポロドラッグストアー
(2016年12月掲載)
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