概要
年齢・性別:37歳 男性(既婚)
職業:メーカー
職種・職位:プロジェクトマネージャー
主訴:体調不良となり遅刻や欠勤を繰り返す
経過
1年程前にヨーロッパの一拠点に配属されましたが、文化の違いや言葉の問題で思うように結果が出せずにいました。例えば、現地のスタッフはAさんの前では英語で話すものの、仲間どうしで本音や冗談を言うときは母国語で話したり盛り上がっているため壁を感じることが少なくありませんでした。実際の業務においても、文脈の共有やコミュニケーションがスムーズにいかず何回か問題が発生してしまったことがあり、マネジメントの面でも自信を失うことが度重なるようになりました。また、本社とのオンライン会議ではどうしても日本の時間にあわせる必要があり、時差の関係で早朝や夜中まで残業になるような状況が続いていました。さらに、同行した妻も環境に慣れず、近くに日本語が通じる親しい友人もいないため、冬の長い夜が続く間にすっかりふさぎ込んでしまいました。
やがて、業務による蓄積疲労とうつ状態の妻のサポート疲れから、Aさん自身もうつ状態になっていきました。特に休み明けの月曜日の遅刻が増え、仕事が滞る日が増えていきました。直属の上司もヨーロッパ全域を管轄する支社長として別の国に駐在していたため、Aさんの変化にすぐ気付くことができませんでした。
解説
海外駐在社員のサポートは、国内在住の従業員のサポートとはまた別の留意点が必要になります。例えば、異文化適応に伴うストレスへの対応、日本人を含む現地採用スタッフとのコミュニケーションの問題、同行家族のサポートなどがその一例です。
また、国ごとに状況が大きく異なるのも、海外駐在社員のメンタルヘルス問題の特徴と言えます。医療機関へのアクセスそのものが難しい国も存在しますし、気候や言葉の問題もあります。
一般に、海外駐在社員として抜擢される人は心身ともにタフな人が多い傾向があるようですが、タフであるからこそぎりぎりまで無理を重ね、突然ダウンしてしまうことも珍しくありません。組織として早期発見・早期対応のための体制づくりを進めるとともに、海外駐在の経験がある上司や人事担当者の存在など、各国の状況に理解のある身近なサポート役がいるかどうかも重要な鍵になるでしょう。