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業務要因よりも季節性の要因により再燃するうつ病の事例

1 概要

症例:初診時28歳、女性、システムエンジニア
主訴:会社に行こうとしても寝過ぎて起きあがれない。過食や頭痛もある。
診断: 季節性うつ病

2 現病歴

大学卒業後、システムエンジニアとして就職しました。X年6月に本社から出向して他の会社でシステム構築作業に関わることになり、残業も多くなりましたが、睡眠時間を削ってなんとか仕事をこなし、その年の9月の納品に間に合いました。

次に別のプロジェクトに入って作業が始まりましたが、順調にこなしていました。しかし、11月になると頭痛や吐き気を自覚することが多くになり、会社に行こうとするとめまいがし始めました。また、休日になると15,6時間も寝っぱなしで、ベッドから起き上がれないこともありました。そのまま月曜日まで寝てしまい、出勤できないことも続くようになりました。さらに食事も不規則になり、だらだら食べたり、食べても食べても空腹がおさまらず、コンビニで夜中に食べ物を買ってくることもありました。出勤も困難になり、会社の上司の勧めで翌年1月に精神科クリニックを受診しました。

3 初診時所見

憂うつ感、不安感はあまり認められず、不眠より過眠状態となって意欲低下が著明でした。会社に行けないことに困ってはいますが、切実感はあまり無く、「眠っても疲労感がとれず、寝ても寝てもまだ眠れるのが不思議です」と言います。寝ている時は両親が無理に起こしても、起きられず、食事もとれません。また起きている時は過食になることが多いとのことでした。

4 治療経過

休養をとるため、診断書を書いて3か月会社を休むことにしました。治療として抗うつ薬のSSRIを中心に処方し、生活のリズムを改善するように生活指導もしました。しかし頭痛や吐き気などの身体症状はある程度は改善しましたが、意欲はあまり回復せず、過眠状態は持続していました。治療開始後、2か月くらいから徐々に意欲が改善し、睡眠時間も7時間に短縮されました。会社には休職を3か月した後、4月に復職しました。その後は安定して就労していましたが、その年の秋には、何の誘因もなく再び億劫感が強くなり、過眠状態となって会社を休みがちとなりました。

5 解説

うつ状態が、心理社会的ストレスと関係なく、秋から冬にかけて発症し、春や夏になると症状が軽快する病態があり、季節性うつ病と言われます。発生頻度は女性に多く、病因ははっきりと解明されていませんが、日照時間や遺伝的な光感受性の減弱が関係している可能性も指摘されています。症状の特徴としては過眠、過食、炭水化物への渇望が出現し、結果として体重増加も起こる。治療として、SSRIなどの抗うつ薬がある程度効果がありますが、高照度光照射を人工照明で行うことも効果的であることが判明しています。