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うつ病の主な症状
まず、うつ病の主要な症状である「憂うつ感」の特徴を確認しておきましょう。
① 楽しみや喜びを感じない
通常なら楽しかったようなことでも、楽しみや喜びを感じなくなります。何をしていても憂うつな気分を感じてしまいます。健康な状態であれば、嫌な気分のときに大好きな趣味のテニスで思いっきり汗を流したりすることで、気分が晴れたりするものです。ですが、うつ病になっていると、楽しめないどころか疲労感ばかりが増してしまいます。
② 何か良いことが起きても気分が晴れない
きっかけとなった出来事や要因が解決したり、自分にとって良いことが起こっても、気分が晴れない状態が続いてしまいます。
うつ病は、こうした症状が2週間以上継続することにより、従来の社会生活が困難になる状態をいいます。早い時点で自覚できれば、発症や重症化を未然に防げる可能性も高くなります。ただ、こうしたうつ病を代表とするメンタルヘルス疾患は、生活習慣病にもたいへん類似しており、日々生活をしている中でなかなか自覚しにくいという難しい点があるのも確かです。
そんな中で、自覚しやすい症状に注目するという考え方があります。そもそも生命体にとって、たいへん大切なものがふたつあります。ひとつは食べること。エネルギー補給です。そしてもうひとつが、エネルギー充電である睡眠です。「疲れているのに眠れない」となると、充電は底をつき自然治癒力が減少し不健康な方向へ進んでしまいます。最近では、現在不眠がある人は不眠のない人に比べ、うつ病を発症するリスクが高いなど、不眠とうつ病の関連性を示す研究報告が多く、注目されています。
睡眠に注目する利点は、自覚しやすい点です。寝つきに30分以上かかる、途中で何度も目が覚める、朝いつもより早く目が覚めてネガティブな考えごとをする、熟睡感がなくなる、などに気がついたら、まずは生活習慣を見直してエネルギーが底をつくのを防ぎましょう。具体的には、仕事の仕方を再検討する、就床前4時間のカフェイン摂取を避ける、ぬるめのお湯での入浴や音楽などでリラックスする、目覚めたら日光を取り入れる、趣味など自分のための時間を確保する、休日の過ごし方を工夫する、などがあります。
うつ病の原因
さまざまな研究によって分かっていることは、「うつ病を引き起こす原因はひとつではない」ということです。非常につらい出来事が発症のきっかけになることが多いのですが、それ以前にいくつかのことが重なっていることも珍しくありません。そのため、原因というより要因というほうが考え方としてなじみやすいでしょう。生活の中で起こるさまざまな要因が複雑に結びついて発症してしまうのです。
まず、最もきっかけとなりやすいのが「環境要因」です。大切な人(家族や親しい人)の死や離別、大切なものを失う(仕事や財産、健康なども含む)、人間関係のトラブル、家庭内のトラブル、職場や家庭での役割の変化(昇格、降格、結婚、妊娠など)などが要因となります。こうして見るだけでもさまざまな出来事が要因となりうることが分かります。
「性格傾向」も発症要因のひとつです。「うつ病とは」で説明したように、脳のエネルギーが欠乏した状態をうつ病と考えると、義務感が強く、仕事熱心、完璧主義、几帳面、凝り性、常に他人への配慮を重視し関係を保とうとする性格の持ち主は、エネルギーの放出も多いということになります。努力の成果が伴っているうちはエネルギーの回復もみられますが、成果が出せない状況が生じたり、エネルギーの枯渇が起これば発症の危険が高まります。
その他、「遺伝的要因」、がんや糖尿病といった「慢性的な身体疾患」、妊娠出産や更年期障害などの内分泌変化も発症要因のひとつです。
これらの要因によってうつ病を発症している時、脳の中はどうなっているでしょうか。最近の研究では、脳内の神経細胞の情報伝達にトラブルが生じているという考え方で一致してきています。脳の中では神経細胞から神経細胞へさまざまな情報が伝達されます。その伝達を担うのが「神経伝達物質」というものです。なかでも「セロトニン」や「ノルアドレナリン」といわれるものは、人の感情に関する情報を伝達する物質であることが分かってきました。前述のさまざまな要因によって、これらの物質の機能が低下し、情報の伝達がうまくいかなくなり、うつ病の状態が起きていると考えられています。