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(1)ストレスの現状
少子高齢化、団塊世代の大量退職、成果主義の導入、国際競争の激化、人員削減による負担の増大、経済状況の悪化など、近年、働く人びとを取り巻く環境は大きく変化しています。こうした変化に伴い、仕事でストレスを感じている労働者の割合や、ストレスの内容も変化してきました。
厚生労働省が5年に1回行っている労働者健康状況調査によれば、「仕事や職業生活に関する強い不安、悩み、ストレスを感じている」労働者の割合は50.6%(1982年)、55.0%(1987年)、57.3%(1992年)、62.8%(1997年)、61.5%(2002年)、58.0%(2007年)と推移しており、今や働く人の約6割は強いストレスを感じながら仕事をしていると言えます。この割合を年代別に見てみると(2007年の調査結果)、55.4%(20歳代)、62.2%(30歳代)、63.1%(40歳代)、55.2%(50歳代)、37.1%(60歳以上)と推移しており、30歳代・40歳代のいわゆる働き盛り世代のストレスが高く、この傾向は男女ともに共通しています。
ストレスの内容を具体的に見ると、人間関係(38.4%)が最も多く、仕事の質(34.8%)、仕事の量(30.6%)と続きます。これを男女別に見ると、男性では仕事の質(36.3%)が最も多く、人間関係(30.4%)、仕事の量(30.3%)と続くほか、会社の将来性(29.1%)や定年後の仕事・老後の問題(24.1%)についても男性の3人から4人に1人の割合で訴えていることが分かります。一方、女性では人間関係(50.5%)でストレスを自覚している人が約半数を占め、続いて仕事の質(32.5%)、仕事の量(31.1%)と続いています。これらの結果は、仕事で経験するストレスの内容が性別によって異なることを示しています。
次に、教員のメンタルヘルスの状況について見ていきましょう。文部科学省の調査データによると、公立学校の在職者のうち病気休職している者の割合は、平成11年度では0.48%でしたが、平成20年度には0.94%へと約2倍に増加しています。同じ調査データによると、「病気休職者数に占める精神性疾患による休職者数の割合」が、平成11年度の43.0%から平成20年度の63.0%へと大きく増加していることから、ここ10年間における病気休職者の増加は、精神疾患による休職者の増加と関係が強いと言えるでしょう。つまり、教員のメンタルヘルスの状態は、ここ10年間で大きく悪化していると言えます。
(2)ストレスとは
ストレスという言葉は、もともと物理学の分野で使われていたもので、物体の外側からかけられた圧力によって歪みが生じた状態を示しています。ストレスを風船にたとえてみると、風船を指で押さえる力をストレッサーと言い、ストレッサーによって風船が歪んだ状態をストレス反応と言います。医学や心理学の領域では、こころや体にかかる外部からの刺激をストレッサーと言い、ストレッサーに適応しようとして、こころや体に生じたさまざまな反応をストレス反応と言います。
私たちのこころや体に影響を及ぼすストレッサーには、「物理的ストレッサー」(暑さや寒さ、騒音や温度(暑さや寒さと重複していますが)など)、「化学的ストレッサー」(公害物質、薬物、酸素欠乏・過剰、一酸化炭素など)、「心理・社会的ストレッサー」(人間関係や仕事上の問題、家庭の問題など)があります。普段私たちが「ストレス」と言っているものの多くは、この「心理・社会的ストレッサー」のことを指しています。職場には仕事の量や質、対人関係をはじめ、さまざまな要因がストレッサーとなりうることが分かっています。
ストレッサーによって引き起こされるストレス反応は、心理面、身体面、行動面の3つに分けることができます。心理面でのストレス反応には、活気の低下、イライラ、不安、抑うつ(気分の落ち込み,興味・関心の低下)などがあります。身体面でのストレス反応には、体のふしぶしの痛み、頭痛、肩こり、腰痛、目の疲れ、動悸や息切れ、胃痛、食欲低下、便秘や下痢、不眠などさまざまな症状があります。また、行動面でのストレス反応には、飲酒量や喫煙量の増加、仕事でのミスや事故、ヒヤリハットの増加などがあります。
これらのストレス反応が長く続く場合には、過剰なストレス状態に陥っているサインかもしれません。これらの症状に気づいたら、普段の生活を振り返り、ストレスと上手に付き合うための方法(コーピング)を工夫してみることをおすすめします。また、これらの症状の程度が重かったり、長期間続くような場合には、専門家(精神科、心療内科)に相談することをおすすめします。
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