中小企業は従業員数が少ないからこそ、一人ひとりが持っている力を十分に発揮できることが会社にとっても重要なことだと思います。一方で、メンタルヘルスケアに十分な時間を割く余裕がないという事業主の方も少なくないと思います。
本ページでは、中小企業の事業主の皆様にも手軽に活用いただける、従業員のメンタルヘルスケアに役立つコンテンツや情報などをご紹介します。
第14次労働災害防止計画における中小事業者のメンタルヘルス対策
厚生労働省「労働災害防止計画について」にて記載されている「第14次労働災害防止計画」(計画期間:2023年4月~2028年3月まで)においては、中小事業者のメンタルヘルス対策について以下の記載が盛り込まれています。
1.計画のねらい
(3)計画の目標
ア) アウトプット指標
・使用する労働者数 50 人未満の小規模事業場におけるストレスチェック実施の割合を 2027 年までに50%以上とする。
2 安全衛生を取り巻く現状と施策の方向性
(3)労働者の健康を巡る動向と対策の方向性
ア) メンタルヘルス対策関係
令和3年労働安全衛生調査(実態調査)によれば、メンタルヘルス対策に取り組んでいる割合については、使用する労働者数 50 人以上の事業場では取組率が 94.4%である。一方、使用する労働者数 50 人未満の小規模事業場の取組率は、30~49 人で70.7%、10~29 人で 49.6%となっており、特に使用する労働者数 30 人未満の事業場(小規模事業場)において、メンタルヘルス対策への取組が低調である。
また、精神障害等による労災請求件数及び認定件数は増加傾向にある。
使用する労働者数 50 人未満の事業場においてメンタルヘルス対策に取り組んでいない理由については、令和2年労働安全衛生調査(実態調査)によれば、①該当する労働者がいない(44.0%)、②取組方が分からない(33.8%)、③専門スタッフがいない(26.3%)となっており、小規模事業場を中心にメンタルヘルス対策の取組支援が引き続き必要となっている。
取組方が分からないため、メンタルヘルス対策に取り組むことができていない事業主の方に活用いただけるように、本ページを作成しています。
中小企業で活用できるコンテンツ
中小企業の事業主の方が従業員のメンタルヘルスケアを行う際に活用いただけるコンテンツをご紹介します。
はじめて「こころの耳」をご覧になる方へ
「こころの耳」にはメンタルヘルスケアに関するたくさんの情報が掲載されていますので、必要な情報を見つけていただくポイントについてご案内しています。
従業員のセルフケアに役立つコンテンツ
従業員が自分自身のメンタルヘルスのセルフケアをするために役立つコンテンツをご紹介します。
(1)うさぎ商事の休憩室~みんなで知りたいメンタルヘルス~
職場のメンタルヘルスに関する素朴な疑問について、ぴょん太やぴょん子など、うさぎ商事のみんなが話し合っています。
(2)eラーニングで学ぶ「15分でわかるセルフケア」
「ストレスってなに?」、「ストレスとつき合う方法」など、優しいイラストを交えてわかりやすく解説しています。
(3)こころの耳 5分研修シリーズ「生活習慣と睡眠からはじめるセルフケア」
こころを元気にするために、私たちが何気なく行っている「行動」がポイントになります。
入浴や食事、睡眠など、毎日行う行動に着目して、ストレスケアに役立つポイントを紹介しています。
(4)パンフレット「Selfcare こころの健康 気づきのヒント集」
厚生労働省と独立行政法人労働者健康安全機構が作成している、セルフケアに関する情報がまとめられたパンフレットです。
事業場が行うメンタルヘルス対策やラインによるケアに役立つコンテンツ
(1)メンタルヘルス推進室へようこそ~事業場内メンタルヘルス推進担当者の奮闘記~
職場のメンタルヘルス対策をゼロから始め、実施体制を確立するまでの、一連の流れやその時々の疑問、壁などについて、ストーリー仕立てで分かりやすくお伝えしています。
(2)こころの耳 5分研修シリーズ『職場のメンタルヘルス対策』
「職場のメンタルヘルス対策のための体制づくり」と「職場のメンタルヘルス対策における安全配慮義務のポイント」について解説しています。
(3)eラーニングで学ぶ「15分でわかるラインによるケア」
部下の様子を把握するポイントや、部下からの相談への対応のポイント、職場環境改善などについて、優しいイラストを交えてわかりやすく解説しています。
(4)こころの耳 5分研修シリーズ「日頃からの部下への声かけ」
上司からの声かけは、部下の成長だけでなく、部下のこころの健康にとっても大きな役割を果たしています。
どのような声かけが部下の力になるのか、マズローの欲求5段階説に照らし合わせながら解説しています。
(5)パンフレット「Relax 職場における心の健康づくり~労働者の心の健康の保持増進のための指針~」
厚生労働省と独立行政法人労働者健康安全機構が作成している、「労働者の心の健康の保持増進のための指針」に関する情報がまとめられたパンフレットです。
(6)パンフレット「中小企業事業者の為に産業医ができること」
独立行政法人労働者健康安全機構が作成している、産業医を活用した従業員の健康管理に関する情報がまとめられたパンフレットです。
(7)ストレスチェック制度について
ストレスチェック制度に関するQ&Aや相談窓口、実施マニュアル·ツール·パンフレットなど、ストレスチェック制度の実施に役立つ情報を紹介してします。
(8)小さな会社のためのこころの健康づくりお役立ちツール
小さな会社で働く人たちのこころの健康づくりに役立つ5つのツールが掲載されています。
1 小規模事業所での職場と健康に関する自己評価チェック
2 経営者のための健康と生産性向上のトレーニング
3 こころのセルフメンテLINEで届く言葉のサプリ『うぇるびの森』
4 職場環境改善のためのアクションチェック
5 小規模事業所で働く人のためのメンタルヘルス対応マニュアル
【令和2-4年度労災疾病臨床研究事業費補助金事業研究「小規模零細事業場の構成員に必要な支援を効率的に提供するツールと仕組みを通してメンタルヘルス対策を浸透させることを目指す実装研究(200401-01)】(研究代表者:堤明純)により作成。
相談窓口
労働者の方向けの相談窓口
(1)働く人の「こころの耳相談」
「こころの耳」では、全国の働く方やその家族、企業の人事労務担当者の方々からのご相談をお受けするため、電話相談、SNS相談、メール相談を実施しています。
(2)相談窓口案内
専門の相談機関·相談窓口をご紹介しています。
メンタルヘルス対策の取組みに関する相談窓口
(1)産業保健総合支援センター(さんぽセンター)
事業主の方や人事労務担当者の方、産業保健関係者を支援する機関です。
全国47都道府県に設置されています。
(2)地域産業保健センター(地さんぽ)
労働者数50人未満の小規模事業者やそこで働く方を対象として産業保健サービスを無料で提供する機関です。おおむね労働基準監督署管轄区域に設置されています。
中小企業におけるメンタルヘルス対策の取組事例
製造業·建設業系
異島電設株式会社(福岡県北九州市)
社内総務課に「健康づくり担当窓口」を設置し、相談内容に応じて、配置や出勤時間の配慮といった社内での調整や病院との連携などの対応を行っている。また、メンタルヘルス教育が下地となり、社員間で新規採用した社員を大切にする意識や接し方が自然と現れるようになる。
(社員数:約25名 2023年1月現在)
協栄金属工業株式会社 (島根県雲南市)
ストレスチェックの結果を踏まえて、遮熱塗装を行うなど設備投資を行ったことで職場環境が改善され、高ストレス者も減少している。健康経営や障害者雇用に積極的に取り組んだところ、それが社員の変化をもたらし、好業績の継続と離職率の低減につながっている。
(社員数:約82名 2021年11月現在)
徳和工業株式会社(宮城県仙台市)
会議の開催の仕方を工夫したり、社員の意見を吸い上げる機会を設けたり、社員間のコミュニケーションがとりやすいように職場環境や人員配置に配慮したりと、小さな取組みを1つ1つ積み重ねることによって、コミュニケーションがとりやすい環境を整えている。
(社員数:約39名 2020年12月現在)
IT業·オフィス業務系
オリンポス債権回収株式会社(北海道札幌市)
新入社員を大事に育てる方針のもと、メンター制度や人事面談といった仕組みに加えて、日々の業務の中で他の社員が自然とフォローする体制が整っている。また、管理職に対するメンタルヘルス研修の後、雑談形式で意見交換する時間を設けることで、管理職が日頃抱えている悩みをお互いに共有し、話し合うことができている。
(社員数:約90名 2022年11月現在)
株式会社ジュピテック(兵庫県神戸市)
社長など組織のトップから社員に気軽に声をかけることで、社員が社長や上司·同僚に話しやすい雰囲気が生まれている。社員全員に対する定期カウンセリングを導入することで、社員が安心して働き続けられる環境を提供し、離職による採用コストを低減している。
(社員数:約35名 2022年11月現在)
西日本ビジネス印刷株式会社(福岡県福岡市)
産業保健総合支援センターのメンタルヘルス対策促進員の支援の下、以前から取り組んでいた様々な活動もメンタルヘルス対策として関連があるか検討した上で実施事項に盛り込み、「心の健康づくり計画」を策定。経営者自ら出勤時などに社員の顔を見ながら声掛けすることで、日頃の社員の様子を知ることにつながっている。
(社員数:約25名 2019年7月現在)
※その他、労働者数100人未満の事業場の「職場のメンタルヘルス対策の取組事例」は、こちらをご参照ください。