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こころの耳Q&A 検索結果

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上司が残業や休日労働を多くしているので、私もやらなければ、という気持ちが強く、休日も気持ちが落ち着きません。どのように考えたらいいでしょうか。

感じ方に個人差はあると思いますが、上司が仕事をしている目の前で先に退社することに若干申し訳なさを感じる人も多いでしょう。また、上司が休日労働をしている事を知りながら、のんびり休む事に後ろめたさを感じる人も少なくないと思います。

もし、どうしても気になるのであれば、何か他に出来ることはないか上司に直接尋ねてみてはいかがでしょうか。たとえ完璧ではなかったとしても普段から与えられた仕事を誠実にこなしていて、上司からの返事も「特にない」という事であれば、それほど気にする必要はないかもしれません。

そもそも管理職には、仕事を割り振ったりメンバーをマネジメントする役割の他に、法律を守りながら部下の

健康に配慮する義務があります。労使協定で定めた範囲内で残業や休日労働を命じなければなりませんし、部下の健康を損ねるリスクも考えなければなりません。部下をきちんと休ませることも仕事のうちなのです。 与えられた時間内で最高のパフォーマンスを発揮するためにも、「休むことも仕事のうち」と割り切って休日は気持ちを切り替えてみてはいかがでしょうか。

面接指導の記録を会社はどのように管理すればよいのでしょうか?

面接指導の記録は、法的にも事業者の責任で管理が必要です。具体的な管理手順については、産業医を選任している事業場(50人以上の労働者がいる場合)と産業医選任していない事業場とでは、おそらく手順に違いが出てきますので、両者に分けて考えてみたいと思います。

産業医が選任されている事業場の場合は、面接指導記録の保管は産業医の主導にて行うのがいいでしょう。面接指導記録は、通常産業医によって作成され、内容には業務上の事項や個人の健康問題、機微な情報等も入る可能性があります。以上から、面接指導記録も定期健康診断記録と同様の管理レベルの扱いをすることとして、産業医の管理下におくことをお勧めします。実際の保管場所ですが、産業医が非常勤の場合なら人事部等のキャビネの一部を借りて、そこに健診や面接指導等を含めた健康情報等を保管します。キャビネの鍵は、人事部の特定の人が管理することにして、キャビネに保管されている情報へのアクセス権については、産業医以外に、産業医の了解の元で、人事部の特定者のみがアクセスできるようにしておくとよいと思います。

産業医を選任していない事業場では、面接指導記録は地域産業保健センター(地さんぽ)の所属医師や事業場との契約医師等によって作成されます。面接指導の記録がどのようなメディア(メール、紙面)で事業場に届くかにもよりますが、到着した記録は人事部情報として特定の指名された人が保管するのがいいでしょう。いざというときには、さっと引き出せて参照できる機能が必要です。

なお記録の保存期間は5年間です。

過労死防止のため、生活習慣の改善はどのようにしたらいいですか?

過労死等は、過労死等防止対策推進法第2条により、以下のとおり定義されています。

・業務における過重な負荷による脳血管疾患・心臓疾患を原因とする死亡
・業務における強い心理的負荷による精神障害を原因とする自殺による死亡
・死亡には至らないが、これらの脳血管疾患・心臓疾患、精神障害

“業務による過重な負荷”としては労働時間が重視されており、過労死等の防止は国の取り組みの中でも重点的な課題です。一方で、過労死と生活習慣病の関係が否定できるものではなく、労働者個人の立場では「過労死は生活習慣病と無関係ではなく、よい生活習慣を保つことは大切だ」と考えるべきです。

それでは、過労死を防止するために生活習慣のどのような点に気をつければいいでしょう。過労死のうち心臓病は、仕事や生活習慣との関係が知られています。具体的には、高血圧や高脂血症、糖尿病などの生活習慣病や喫煙は明確に発症のリスクだということです。さらに注意すべき点は睡眠と抑うつです。睡眠時間が6時間未満の場合はあきらかに発症のリスクが高まります。また、抑うつは自殺だけでなく、心臓病にもよくない影響があるという報告がされています。

上記のことから、過労死防止のためにも、生活習慣病は医師等のもとで適切に管理する、その上で、a.生活習慣病の予防・改善のためバランスのよい食事と適度な身体活動をすること、b.禁煙を心がけること、c.睡眠時間を確保してストレスや抑うつ感をため込まないこと、が大切です。つまり、適度な身体活動と禁煙、さらには充分な睡眠でリフレッシュを心がけることが過労死防止の大切な生活習慣のポイントと言えるでしょう。

事務所における過労死防止のため、作業環境の改善は役立ちますか。具体的にはどうしたらよいでしょうか?

過労死の認定基準としては労働時間が最も重要ですが、認定基準に満たない労働時間であっても、時間外労働時間が月80時間程度の場合は過労死の可能性を否定できないことから、労働時間以外の負荷要因の有無などを参考に判定されることになっています。このなかに作業環境も含まれていますので、作業環境の改善は過労死防止に役立つといえます。

具体的には、温度環境、騒音環境、時差を伴う移動の頻度などが挙げられています。執務室内の冷暖房も度を超すとストレス源となりますので注意が必要です。また、狭い室内に多くの人がすし詰めになっている執務室や、悪臭、周囲の騒音、机上照度が十分でない執務室など、劣悪な作業環境は心身の疲労を増加させます。逆に、快適な作業環境は心身のストレスを軽減しますので、過労死防止のために快適な職場環境・作業環境の確保はとても大切です。

事業者が快適な作業環境を作ろうとするときは、「事業者が講ずべき快適な職場環境の形成のための措置に関する指針」(平成4年7月1日労働省告示第59号。平成9年9月25日労働省告示第104号により一部改正)を参考にするとよいでしょう。

脳・心臓疾患(脳血管疾患及び虚血性心疾患等)から職場復帰した従業員には、再発防止を含めどのような配慮が必要ですか?

まず、最初に注意しておくべきことは、脳疾患にも脳梗塞や脳出血、くも膜下出血など多彩な疾病が含まれていること、また、同じ疾病(たとえば脳梗塞)でもその重症度によって後遺症等はさまざまであり、ステレオタイプ配慮では十分ではないということです。診断名即一定の配慮とは限らないので、産業医や主治医のアドバイスを受け、一人ひとりの状況に応じた適切な配慮をすることが望まれます。

なお、一般的には次のような配慮が望まれることが多いようです。

(1)残業禁止などの労働時間に関する配慮
特に、職場復帰直後は直ちに従前のように体調が回復しているとは限らないので、一定の配慮が望まれます。

(2)労務内容に関する配慮
後遺症の程度によっては、高所作業の禁止(平衡能や運動能の障害時)などの就業制限が必要になることがあります。

(3)通院の確保(受診時間や就業場所)のための配慮
リハビリテーションの継続のほかにも、発症の基礎となった高血圧のコントロールなどのために加療継続が必要な場合が多く見られます。

(4)その他の配慮
この中には、薬剤服用中などに必要な特別の配慮が含まれます。たとえば、眠気が強く引き起こされる薬剤服用中の場合には、危険作業は避けたほうが望ましいのですが、これは医師からのアドバイスをもとに行うべきでしょう。

主人の帰りが毎日のように深夜になっています。過労死にならないようにするため家族としては、どのようなことができますか?

1 家族の心配を本人へ伝える
 過重労働になると、自分自身を冷静に見ることができなくなっている場合があります。まず、働きすぎで、からだを壊してしまうのではないか心配しているということを本人へ伝えましょう。また、どうすれば時間外労働を減らすことができるのか、一緒に考える姿勢で相談にのりましょう。

2 持病などで継続的な治療を受けている場合、通院をきちんとさせる
 薬の内服状況を確認してください。また、忙しさで通院が疎かになっている場合があります。持病がある場合は、持病をしっかりとコントロールすることが大切です。

3 体調を尋ねる
 何か心配な症状がないかを本人に尋ね、特に継続的で苦痛な症状があれば早急に病院を受診させましょう。また、体調が悪く病院を受診するのであれば、上司にもその旨を連絡しましょう。

4 残業時間をきちんと記録し、会社の産業医などへの相談を本人へ勧める
 月の残業時間が45時間程度を超えると疲労が蓄積し、80~100時間を超えると明らかな疲労の蓄積が出て、過労死になどにつながる可能性が出てくると言われています。法律では、時間外・休日労働時間が月80時間を超え、疲労が蓄積していると申し出た方に対して、会社は産業医等による面接指導を行い、仕事上の配慮が必要かどうか確認することになっています。また、残業時間が80時間を超えていなくても、本人が希望すれば同じような対応をすることが会社に求められています。このような仕組みを本人に伝え、会社の産業医などに相談するように本人を誘導してみてください。

5 上司に、本人の状況や家族の気持ちを伝える
 職場の管理者には、部下の健康状態に配慮して業務をさせる責任があります。しかし、本人が状況を率直に伝えないと、上司は深刻な状況を明確に把握できず、充分な業務の調整を行うことができないことがあります。体調に問題があったり不安がある場合には、率直に上司に伝えるように家族から誘導してみてください。

会社の衛生委員会の活動の中に面接指導の結果をどう反映すればいいでしょうか?

事業者は、「医師の意見の衛生委員会若しくは安全衛生委員会又は労働時間等設定改善委員会への報告その他の適切な措置を講じなければならない」(労働安全衛生法第66条の8第5項)とされていることから、医師による面接指導の結果については定期的な衛生委員会への報告が必要です。また、面接指導の内容や結果については個別性が伴うので、委員会への報告の際にはプライバシーに配慮することが必要です。判定区分ごとの該当人数にとどめる、職場単位ごとに集計する、というように、何をどのように表現して報告するかについては事前に衛生委員会事務局と産業医とで打ち合わせをしておきましょう。面接指導対象者に、疲労度調査や問診等を実施している場合、集計し、疲れや体調の傾向についてコメントするのもいいでしょう。

面接指導はあくまでも長時間労働の結果として発生した事後措置に過ぎません。衛生委員会で重要なことは、委員全員がつねに事業場内の長時間労働の実態について把握し、その対策について話し合い、実行することです。

異動に伴い通勤時間が長くなり、その分睡眠時間が短くなっています。残業時間はかわらないのですが、過重労働といえるでしょうか?

一日は24時間ですので、通勤時間が長くなったり、残業時間が増えれば、犠牲になってしまうのは休養や睡眠の時間になります。この睡眠時間が十分に確保されないと、”心とからだ”の健康状態に支障をきたし、脳出血などの脳血管疾患や心筋梗塞などの虚血性心疾患等、あるいはうつ病などのメンタルヘルス不調が起こりやすいといわれています。過重労働の範疇に入るかどうかは通勤時間ではなく、時間外労働(残業と休日労働)や責務の重さや就労形態の実態によって判断されるものです。

通勤を含む仕事での睡眠不足を解消するため、残業を少なくするような対策やテレワークの制度を利用するなどが、過重労働による健康障害予防に必要な対策だと考えられます。

面接指導後の医師の報告書にどのように対処すればいいでしょうか?

過重労働の面接指導を終えた医師からは、報告書(書式例)が事業者に向けて提出されます。この内容に対して、事業者はその実施の必要性を勘案し適切な対応をする必要があります。

労働安全衛生法第66条の8第5項「事業者は、前項の規定による医師の意見を勘案し、その必要があると認めるときは、当該労働者の実情を考慮して、就業場所の変更、作業の転換、労働時間の短縮、深夜業の回数の減少等の措置を講ずるほか、当該医師の意見の衛生委員会若しくは安全衛生委員会又は労働時間等設定改善委員会への報告その他の適切な措置を講じなければならない」とあることから、当該労働者の作業環境、作業条件、健康管理の観点から、指示事項を参考にして措置を講じる義務があるのです。

医師による指示事項が具体的でなかったり、労働者や職場の実情から実施困難であるような場合には、医師の意図するところを適切に理解したうえで実施可能な内容の措置を講じることになります。実施においては、事業者は本人と面接し、医師からの報告書の内容を伝えるとともに、これから実施する措置内容と措置期間等について説明をし、本人の理解と同意を確認しましょう。また措置期間の終了時には、再度同医師による面接を実施して今後の対応措置について当該医師に相談しておくとよいでしょう。

長時間労働している従業員がいるので、医師による面接指導を受けさせたいのですが、どのようにすればいいでしょうか?

長時間労働している従業員に対して、医師による面接指導等を実施するためには、衛生委員会等でその手続きの流れや対象者の基準などの事項を調査審議した上で整備する必要があります。面接指導をする医師は、事業場に産業医が選任されていればその産業医と連携するとよいでしょう。また、選任されていなければ地域産業保健センター(地さんぽ)を利用することができます。なお、面接指導をする医師は、上記の他にかかりつけ医、病院・診療所の一般の医師でもよいこととなっています。

面接指導を受けさせるためには、労働者と管理監督者に過重労働による健康障害防止の必要性をしっかりと理解させるよう事業場内での啓発活動を行うことが肝要です。

医師の面接指導の対象となる労働者には、どのような条件があるのでしょうか?

面接指導の対象者は、労働時間が「1週間当たり40時間を基準として、これを超えた時間が1か月当たり80時間を超えている」場合で「疲労の蓄積が認められる」者とされています。ただし、医師の面接指導は月の労働時間を把握してから行われ、早くても翌月の実施となるため、おおむね2か月分の状況を踏まえた面接となることから、医師が必要ないと認めた場合は2か月連続で受ける必要はありません。また、健康診断結果や疲労蓄積度チェックリストの結果等に基づき、医師が、健康上問題がないと認めた場合も対象としなくてよいこととされています。

なお、いずれの場合も労働者からの書面や電子メール等による申出に応じて面接指導が行われることになっていますが、事業者は、1 労働者が自己の労働時間数を確認できる仕組みの整備と、時間外・休日労働時間が月80時間を超えた労働者本人に対しその超えた時間に関する情報の通知、2 申出様式や申出窓口の設定等の体制整備および申出記録の保存、3 作業者への申出体制の周知、を図る必要があります。さらに申出を行うことによる不利益な取扱いの禁止などが必要になります。ただし面接基準に該当する者の全員を対象として呼び出す場合に限り、面接拒否をもって申出がなかったものとみなしてよいこととされています。これらの基準は事業場の衛生委員会で審議しておくとよいでしょう。

また、家族や職場の者が労働者の不調に気がついて相談や情報を受けた事業者は、プライバシーに配慮しつつ当該労働者に面接指導を受けるよう働きかけることが望まれます。あるいは、産業医が健康診断結果や、家族や職場の者からの相談や情報を受ける等により、面接指導を受けることが適当と判断した場合は、当該労働者に申出を行うよう勧奨することが望まれます。

従業員35名の事業所です。過重労働対策は必要でしょうか?

過重労働対策は、事業者が講ずべき措置とされており(「過重労働による健康障害防止のための総合対策について」令和2年4月1日基発0401第11号・雇均発0401第4号)、人数にかかわらず実施する必要があります。

事業場で産業医を選任しておらず、面接指導を実施する医師を確保することが困難な場合には、地域産業保健センター(地さんぽ)を活用することができます。

疲労の蓄積度というのはどのように測るのでしょうか?

疲労の蓄積度は、現在のところ厚生労働省が公表した「労働者の疲労蓄積度診断チェックリスト」を用いて測定されるのが一般的です。労働者の疲労蓄積度診断チェックリストには、「労働者の疲労蓄積度自己診断チェックリスト」と「家族による労働者の疲労蓄積度チェックリスト」があります。また、インターネット上でできる「働く人の疲労蓄積度セルフチェック」(こころの耳サイト内)もあります。

しかし、自覚症状と勤務の状況評価が乖離する場合もあるので、過重労働に係る面接指導では医師による問診結果も総合して評価されます。

同僚の半分も仕事をしていないのに、能率が悪いため、長時間労働になっている部下がいます。どうすればいいでしょう?

健康維持と生産性向上のため、「長時間労働はなくしていかなければならない」という認識のもと、原因を見極め本人の適性を考えながら改善に向けた指導を行うのも管理監督者の役割です。叱りつけるのではなく、本人の言い分にもしっかり耳を傾けながら、改善への意欲を引き出すような対応を心がけましょう。場合によっては配置転換なども考慮しつつ、柔軟に対応するようにしましょう。

労働者200名程度の中小企業の事業主です。過重労働者の面接指導で、対象者の基準を決めたいのですが、どのようにすればよいでしょうか?

長時間労働を行う者に対する産業医等の医師による面接指導は、労働安全衛生法の規定によりすべての事業主(会社)に課せられた義務として行われますが、その対象者は労働時間が「1週間当たり40時間を基準として、これを超えた時間が1か月当たり80時間を超えている」場合で「疲労の蓄積が認められる」者とされています。この場合の時間外労働には休日労働時間も含みます。また、この面接対象の基準に該当しない従業員であっても健康への配慮が必要な者については、会社は面接指導又はそれに準ずる措置を行うように努めなければなりません。この対象として、1 時間外・休日労働が月80時間を超えている者、2 時間外・休日労働時間が月45時間を超える労働者で、健康への配慮が必要と認めた者、が求められています。

また、研究開発業務従事者については、時間外・休日労働が月100時間を超えている者、及び時間外・休日労働が月80時間を超えており疲労の蓄積がある面接を申し出た者、高度プロフェッショナル制度適用者については、1週間当たりの健康管理時間が40時間を超えた時間について月100時間を超えた者について、面接指導の実施が義務付けられています。

面接指導に準ずる措置としては、例えば保健師等による保健指導を行うことや、チェックリストを用いて疲労蓄積度を把握した上で、事業場における健康管理について産業医から助言指導を受けるとともに産業医面接の対象者を絞り込む、などが考えられます。

これらの基準は事業場の衛生委員会等で審議しておくことが望まれます。

同じ長時間労働をしても、健康障害を起こす人と起こさない人がいると思います。どうしてですか?

長時間労働による健康障害として、脳・心臓疾患やメンタルヘルス不調などがあります。脳・心臓疾患に関していえば、高血圧、脂質異常症(高脂血症)、糖尿病、肥満、喫煙などの危険因子があり動脈硬化を起こしやすいような人は、個人差はありますが、長時間労働による身体的負荷により脳や心臓の病気にかかりやすいと言えます。ただ、現在そういった危険因子を持っていない人においても、長時間労働による結果として睡眠不足や生活リズムの不規則性などから高血圧などの生活習慣病を生じ、将来的に脳・心臓疾患になってしまう可能性があります。したがって、危険因子があるか否かに関わらず、日頃からの健康管理が大切です。

メンタルヘルス不調に関しても、長時間労働はもちろん、仕事の質(緊張性の高い業務、責任の重い業務など)、職場環境、人間関係、仕事に対するモチベーション、ストレスを溜めやすい性格、考え方の癖、家族・上司・同僚の支援の有無など、さまざまな因子が関係しており、その過程で結果的にメンタルヘルス不調が起こってくると思われます。つまり、どのような人であっても条件がそろえば心の調子を崩す可能性があり、労働時間やその他の因子にも注意して、未然に健康障害を予防していく必要があります。

働きすぎると健康に障害がでるのでしょうか?

日本人の死因の約1/3を占める脳血管疾患(脳出血、くも膜下出血、脳梗塞等)や虚血性心疾患(心筋梗塞、狭心症等)は、血管病変の形成、進行及び悪化により発症します。

働き過ぎが長期に及ぶことにより、休息や睡眠の不足から疲労が蓄積し、血管病変をその自然経過を超えて著しく増悪させ、脳血管疾患や虚血性心疾患が発症することが知られています。これらの疾患の労災認定基準では、時間外労働(休日労働を含みます。)について、1か月当たりおおむね45時間を超えて時間外労働時間が長くなるほど、業務と発症との関連性が徐々に強まり、発症前1か月間におおむね100時間又は発症前2か月ないし6か月にわたって、1か月当たりおおむね80時間を超える時間外労働が認められる場合は、業務と発症との関連性が強いとされています。

また、長時間労働により疲労やストレスが蓄積すると、仕事などに対するモチベーションの低下やメンタルヘルス不調に陥ることが社会的注目を浴びています。

時間外労働の多い働き方をしています。自分はそれほど負担とは思っていませんが、毎月のように産業医の面接に呼ばれます。意味があるのでしょうか?

時間外労働の多い生活をしていて負担とは感じないということですから、気力・体力ともに充実した素晴らしい労働生活を送っていることと思われます。ただし、注意していただきたいのは、このようなときは仕事に集中しているばかりではなく、もしかすると疲労や身体症状への自覚がないだけかもしれない、ということです。

長時間労働による心身の疲労は自覚できない場合も多く、従業員の健康状態と職場の状況をよく知る産業医による、客観的な視点での問診が決め手となって見つかることも少なくありません。また、若い時はがむしゃらにできたことも、年を経るに従い体力の衰えや、背負った責任の重さなどの周辺事情が変化して、知らず知らずに重圧となっていることもあります。血圧変動や睡眠リズムの乱れはもとより、食生活の乱れや体重変動なども身体バランスを崩すきっかけとなる可能性があります。また、長時間労働が恒常化していると、何かのきっかけで急速に抑うつ状態に陥る危険性もあります。毎月産業医面接に呼ばれるということは、会社も産業医もあなたの健康を心配してのことと思われます。ぜひ産業医の面接を受けていただき、心身の状態をご自分でも把握できるよう、いろいろと相談してみてください。

過労死といわれる脳・心臓疾患はどのような病気ですか。

過労死とは、過重な業務に従事することにより脳血管疾患又は虚血性心疾患等を発症し、あるいはこれによって死亡に至ることをいいます。具体的な疾患名は次のとおりです。これらの疾患を便宜的に「脳・心臓疾患」と呼んだり、これらの疾患の罹患と死亡の双方を含める趣旨で「過労死等」と呼んだりすることがあります。

脳血管疾患
脳内出血(脳出血)
くも膜下出血
脳梗塞
高血圧性脳症

虚血性心疾患等
心筋梗塞
狭心症
心停止(心臓性突然死を含む。)
解離性大動脈瘤