タクヤ 33歳 男性 派遣社員 未婚
自律神経失調症―ふつうと思って
子どもの頃から親の言うことにはさからったことがありません。反抗期ということもなかったと思います。一人っ子ということもあり、大事に育てられていると子どもながらにも感じていました。友達もすぐにできましたが、気がつくと一人でいることも多かったように思います。いじめられたわけでもないので、自分にとってはさほど大きな問題のようには感じませんでした。卒業もでき就職もすぐ決まりました。IT系の会社です。パソコンが好きでしたし、人付き合いも自分では普通にできていると思っていました。
しかし、入社して半年後くらいから、どうも仕事がうまくいきません。ひとつ問題があるとそこから先に進めないのです。納期のある場合は当然仕事にも支障を来します。この問題を解決できたら先へ進めると自分では思っているのですが、先へ進めないのです。上司からは再三注意され、先輩社員からは責められます。自分ではちゃんとやっていると思うのですが、一生懸命やろうとすればするほど、空回りしてしまうのです。同僚もはじめのうちは相談にのってくれていましたが、ふさぎこんだかと思うと、言葉が乱暴になってしまう自分をだんだん避けるようになっていきました。そのうち誰も相手にしてくれなくなり、会社に行こうとするとめまいや腹痛が起こってしまい出社するのも辛くなっていったのです。この時、やっと病院に行って診断され、聞いた病名が「自律神経失調症」でした。
自律神経失調症―つらい症状
「自律神経失調症」と分かったとしても、会社には言えません。なんとか隠し通しながら頑張って仕事に行っていました。資格が必要だと言われれば、仕事と両立をしながら資格も取得しました。勉強をすることは苦にもならなかったのですが、その半面、仕事を頑張ろうと思えば思うほどつらくなっていくのです。仕事の納期が近づいてくると、出勤の途中でもめまいが起き、心臓がドキドキしたかと思うと汗が出てきて気分が悪くなってしまいます。駅のホームで座り込んでしまったり、駅まで行かないで帰ってしまった日もあります。またある日は、会社にやっと着いたかと思うと、頭痛が激しくなってしまい仕事どころではなくなります。席をはずしてしまうので、当然仕事も進まない日が続きました。
そんな日が続くと、いつ会社を辞めさせられるのだろうかとビクビクするようになり、だんだん食欲もなくなり、夜もあまり眠れなくなりました。夜寝られないのですが朝方になると眠くなり寝てしまうのです。そうすると朝起きられなくなり、会社へは遅刻し、出社できなくなることもあります。遅刻、欠勤と繰り返していたある日、上司に呼ばれ詰問されました。このままでは辞めてもらわざるをえないと言われた時、動悸と不安におそわれ倒れてしまいました。病院のベッドで目が覚めましたが、会社は辞めざるをえないだろうなあと漠然と思っていました。その後、会社からは、しばらく自宅療養をするように告げられ休職することになりました。
自律神経失調症―時間はかかるものの
休職せざるを得ない状態になっても、いつ辞めさせられるのか、辞めなければいけないのか最初の1か月の間は不安が募るばかりでした。自宅で療養しているといっても、この時はまだ昼夜逆転しているままで、夜は眠れず朝になってようやく眠れるという日々が続きました。また食欲も戻らず、外出もままならない状態でした。心療内科での薬も少しずつ効いている感じはあったものの、まだ時折不安がおそってきたり、めまいもありました。やっと2、3か月過ぎた頃から徐々に落ち着いてきたような感じがします。会社からは定期的に連絡があったので、辞めなければという不安も少しずつ解消されていきました。この連絡が支えにもなったと思います。
その頃から、休職をしたことによっての気持ちにゆとりもでき、体への負担も少なかったことが幸いし、夜眠れなかったのが眠れるようになり、食欲も少しずつ戻ってきました。もちろん心療内科でいただいた薬が効いてきたのだとも思います。この後も一進一退ではありましたが、どんな時に不安になってしまうのか、めまいや頭痛が起こるのかなど、気持ちの持ちようも自分なりに分かるようになり、リラックスできるようになっていきました。仕事への復帰を考え始めたころ、会社からも連絡があり、少しずつ仕事へ復帰するようにとの話がありました。本当の意味での完治は時間がかかるとは思いますが、あせらないようにしたいと思います。