読了時間の目安:
約5分
(1)社内相談窓口設置までのおおまかな流れ
社内相談窓口設置までのおおまかな流れは、以下のとおりです。
①衛生委員会等にて検討、方針決定
↓
②必要に応じて、相談対応者への研修の実施
↓
③相談窓口の開設
↓
④従業員・家族への周知
↓
⑤相談対応
(2)衛生委員会等にて検討すべき事項の例
相談対応を行う人員体制
相談対応を誰が行うかは、重要なポイントです。指針において相談対応を行うこととされている「事業場内産業保健スタッフ等」の中には、衛生管理者、産業医、保健師、心の健康づくり専門スタッフ、人事労務管理スタッフなどが含まれており、それぞれの役割には特徴があります。事業場のメンタルヘルス対策の課題やニーズに応じて相談体制を整えましょう。
また、相談内容によって、専門的な支援や組織的な対応が必要となる場合も考えられますので、産業医や精神科医等の専門医との連携や、人事労務管理スタッフとの連携などの体制もあらかじめ整えておきましょう。なお、連携に当たっては、個人情報の取扱いに留意が必要です。詳しくは、下記「※1 労働者の個人情報の保護への配慮」をご確認ください。
相談対応を行うにあたっては、専門知識や傾聴スキルが不可欠です。必要に応じて、相談対応者に対し、これらの知識・スキルを身に着けるための研修を実施しましょう。 こころの耳では、傾聴に関するコンテンツ「話を「聴く」~積極的傾聴とは~」をご用意していますので、必要に応じてご活用ください。
相談申込み、相談対応の方法
相談の申込み方法や、実際の相談対応の方法として、どのようなツールの選択肢が用意されているかということは、相談のしやすさを左右する大切なポイントです。対面、電話、メール、イントラネットなど、様々な方法が考えられます。電話やメールなどの方法は、離れた場所で働いている相談者でも利用しやすいといったメリットがありますが、一方で、緊急の対応を要する場合などであってもすぐに直接対応することができないというデメリットもあります。
事業所の対応可能な範囲で、それぞれのメリットデメリットや、緊急時の対応方法などを検討の上、相談申込みと相談対応の方法を決定することが望まれます。
周知する内容
社内相談窓口の体制が決まったら、従業員やその家族に存在や利用方法を知ってもらうことが必要です。周知する内容について、以下の内容を参考に衛生委員会等で検討の上、リーフレットの作成等を進めましょう。その際、従業員が相談したいときに相談しようと思える内容になっているか、文章はわかりやすいか、といった観点で確認することも大切です。
(周知する内容の例)
・主な相談内容
・相談対応を行う者の紹介
・相談の申込方法
・相談対応の方法
・相談受付後の一般的な対応の流れ、解決プロセス
・個人情報の扱い(※1)
・相談することによる不利益はないこと(※2)
※1 メンタルヘルスに関する個人情報の保護への配慮【メンタルヘルス指針7】
メンタルヘルスケアを進めるに当たっては、健康情報を含む労働者の個人情報の保護に配慮することが極めて重要です。事業者は、健康情報を含む労働者の個人情報やストレスチェック制度における健康情報の取扱いについて、個人情報の保護に関する法律及び関連する指針等を遵守し、労働者の健康情報の適切な取扱いを図ることが重要です。
(参考資料)
「事業場における労働者の健康情報等の取扱規程を策定するための手引き」平成31年3月(厚生労働省)
※2 心の健康に関する情報を理由とした不利益な取扱いの防止【メンタルヘルス指針8】
事業者が、メンタルヘルスケア等を通じて把握した労働者の心の健康に関する情報は、その労働者の健康確保に必要な範囲で利用されるべきものです。その範囲を超えて、事業者がその労働者に対して不利益な取扱いを行うことはあってはなりません。労働者の心の健康に関する情報を理由として行う以下の取扱いについては、一般的に合理的なものとはいえず、事業者はこれらを行ってはなりません。①解雇すること。
②期間を定めて雇用される者について契約の更新をしないこと。
③退職勧奨を行うこと。
④不当な動機・目的をもってなされたと判断されるような配置転換又は職位(役職)の変更を命じること。
⑤その他の労働契約法等の労働関係法令に違反する措置を講じること。
また、派遣労働者の変更など、派遣先事業者による派遣労働者に対する不利益な取扱いについても一般的に合理的なものといえないものは、派遣先事業者は行ってはなりません。
従業員やその家族への周知方法
社内相談窓口が社内に浸透するまでには時間がかかるのが一般的です。社内イントラネットなど社員がよく目にする場所に掲載する、定期的にリーフレットを配布するなど、繰り返し告知することを前提に周知方法を検討しましょう。
また、従業員のメンタルヘルス不調の兆しに家族の方がいち早く気づく可能性もありますので、会社の広報誌など、家族の方も目にする機会のあるものに社内相談窓口の案内を記載しておくのも効果的でしょう。
社外相談窓口の設置の有無
社内相談窓口に相談することに抵抗のある従業員もいる可能性がありますので、社外相談窓口の設置についても併せて検討しましょう。相談の入口を複数設けることで、相談者に選択の余地が生まれ、相談に対するハードルが下がる効果が期待できます。
社外相談窓口としては、EAP(Employee Assistance Program:従業員支援プログラム)など相談窓口サービスを提供している会社と契約して、電話相談窓口やカウンセリング窓口を設置する方法や、「こころの耳相談窓口」を案内する方法などが考えられます。EAPなどと契約する場合は、個人情報の取扱いについてあらかじめ確認を行った上で、社外相談窓口の紹介と併せて周知しましょう。
【「こころの耳」内参考コンテンツ】
メンタルヘルス推進室へようこそ~事業場内メンタルヘルス推進担当者の奮闘記~「第6回 相談することへの壁?」
参考文献
- 1)「Relax 職場における心の健康づくり~労働者の心の健康の保持増進のための指針~」(厚生労働省・独立行政法人労働者健康安全機構)
- 2)「職場における自殺の予防と対応」(厚生労働省・中央労働災害防止協会)P.33~42