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(1)法令等の根拠
事業者は、労働者の心の健康の保持増進を図ることが求められています(労働安全衛生法第69条)。
労働安全衛生法
第 69 条 事業者は、労働者に対する健康教育及び健康相談その他労働者の健康の保持増進を図るため必要な措置を継続的かつ計画的に講ずるよう努めなければならない。
厚生労働省は、事業場において事業者が講ずる労働者の心の健康の保持増進のための措置(以下「メンタルヘルスケア」という。)が適切かつ有効に実施されるよう、メンタルヘルスケアの原則的な実施方法について、「労働者の心の健康の保持増進のための指針」(以下「メンタルヘルス指針」という。)を定めています。
指針において、メンタルヘルスケアは、「セルフケア」、「ラインによるケア」、「事業場内産業保健スタッフ等によるケア」、「事業場外資源によるケア」の4つのケアが継続的かつ計画的に行われることが重要とされており、そのうち「事業場内産業保健スタッフ等によるケア」において、事業者は、事業場内産業保健スタッフ等が労働者からの相談を受けることができる制度及び体制を整えることが必要とされています。
(2)メンタルヘルス対策に関する目標と、社内相談窓口の設置状況
「第 13 次労働災害防止計画」(計画期間:2018年4月から 2023年3月までの5年間)では、8つの重点施策を定め、施策ごとの目標を設定して取組みをすすめることとされており、その一つに職場におけるメンタルヘルス対策の推進が挙げられていました。メンタルヘルス対策に関する目標の中には、「仕事上の不安、悩み又はストレスについて、職場に事業場外資源を含めた相談先がある労働者の割合」という目標も設定されていました。
【メンタルヘルス対策に関する目標】
●仕事上の不安、悩み又はストレスについて、職場に事業場外資源を含めた相談先がある労働者の割合を90%以上
●メンタルヘルス対策に取り組んでいる事業場の割合を80%以上
●ストレスチェック結果を集団分析し、その結果を活用した事業場の割合を60%以上
一方で、「平成30年 労働安全衛生調査(実態調査)」によると、労働者数50人以上の事業所について、メンタルヘルス対策に取り組んでいる事業所(90.7%)のうち、メンタルヘルス対策に関する事業所内での相談体制の整備を行っている事業所は50.1%となっています。労働者数50人以上の事業所全体に換算すると約45%(≒90.7%×50.1%)、つまり、労働者数50人以上の事業所の半数以上で社内相談窓口が設置されていないことがわかります。
(3)社内相談窓口設置の意義~安心して働くことのできる職場にするために~
社内相談窓口を設置したからといって、そう簡単に相談してくれるとは限りません。相談の申込みをすることはとても勇気のいることです。悩みを誰かに相談するということ自体に抵抗を感じる人もいるでしょう。実際、相談したところで悩みの問題がすべて解決するわけではありません。ですが、相談した人の多くは「気持ちが楽になった」「少し自信がもてた気がする」「心が軽くなった」といった経験をしています。仕事で困った時も、上司や同僚などに相談ができて適切な支援が得られると、仕事を円滑に進めることができ、安心して働くことができます。助けを求めることができて、お互いが助け合える職場は働きやすく、心の健康に良い影響をもたらすのです。
安心して働くことのできる職場環境を作る土台として、社内相談窓口を設置し適切に運用することは大切です。特に、身近に相談できる人がいない人や、テレワークのように孤立した環境で仕事をしている人にとって、気兼ねなく相談できる場所があるかどうかは非常に重要です。