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領域6 休暇・福利厚生

1 「職場の快適さ」と「休暇・福利厚生」の関係

(1)概説

休暇の取得は、心身の健康や快適さを保つことに大きな影響を与えるが、制度面が充実していて、その取得について実際の運用が伴っている組織は、快適さが高い組織と思われる。一方、長時間労働、休日労働が多く、代休や振替休日、有給休暇の取得がしにくい職場は、快適性が大きく損なわれていると思われる。近年は、ワーク・ライフ・バランスへの取り組みに力を入れる企業が多くなっているが、組織における労働と余暇を含む個人生活のバランスある両立が快適性に繋がると思われる。

また、業務の高度化、複雑化、スピード化、企業内競争の激化、多様な人材が協働する組織における人間関係の難しさ等、様々なプレッシャー、ストレスにさらされる組織の中で、メンタル面に不調を来たす従業員が増加している。これに対するサポートやケアの体制も職場の快適さを保つ上で大きな要素となっている。特に職場におけるメンタルヘルス不調が大きくクローズアップされているが、組織の大小を問わず、この問題に対し、事前予防、事後サポートなどの体制を整備することが快適さ、働きやすさの向上に向けて急務といえるだろう。

(2)検討における重要視点

ア 休暇制度の見直し
休暇制度は、企業によって、労働基準法の要件を満たす最低限の設定レベルから、独自の休暇付与まで様々であるが、従業員にとっては、快適性に大きな影響を与える関心の高いテーマである。一方、企業にとっては、有給の休暇増は、コスト増につながることから、容易に新設、増加に踏み切れないテーマでもある。現在、ワーク・ライフ・バランスの重要性に関する認識が浸透してきており、各企業が従業員の心身の健康、家庭生活の充実、自己啓発や社会貢献活動などの推進を目的とした休暇制度の充実を図っているが、各企業の実態に合わせて、従業員が実際に「活用できる」制度、あるいは取得を「義務づける」ような制度の設計が必要と思われる。

イ 運用面における休暇取得の促進
平成22年就労条件総合調査(厚生労働省)によれば、有給休暇取得率は全国で47.1%となっている。休暇取得については、制度面の拡充による対応もあるが、有給休暇の取得も十分に行えない企業が多い状況を前提に考えると、いかにして取得できる体制をつくり、その運用を行うかがより重要なテーマと思われる。取得促進の運用の観点では、人員数と業務量の関係、休暇取得者の業務リカバー体制、取得に対する職場メンバーの受けとめ、上司の意識、会社としての取得促進の方針明示などが影響すると思われる。この中には、各職場での休暇取得に向けての調整、取得プランの計画立案など、現場レベルで実行可能な対応もあることから、各職場で管理者とメンバーが一体となって、取得促進の工夫をしていくことが望まれる。

ウ メンタルヘルスケアに関する知識・スキルの浸透
今の職場は、様々なストレスやプレッシャーにさらされる状況にあるが、それに対し、本人自-208-身の対応、周囲のサポートともに、正しい知識や適正な対応スキルを身につけることが前提となる。このために、全社的にメンタルヘルスに関する講習会、勉強会など学習機会を設ける企業が多くなっているが、特に管理者は部下のメンタルヘルスケアが求められる状況が多くなっていることから、初任昇格時研修などで、メンタルヘルスに関する基本知識や相談手法などを学ぶプログラムを盛り込む企業が増加しつつある。ただし、知識、スキルが大切であることは間違いないが、職場における上下、左右の人間関係の中で、相手に対し、関心を持ち、日常的に援助や支援のかかわりを行なっていることが、快適さ、働きやすさを高める最も重要なポイントと思われる。その点から言えばメンタルヘルスに関するカウンセリングの知識、スキルよりも、カウンセリング・マインド(カウンセリングで重視されている対人態度や傾聴の技術を実生活などで活用しようとする態度・心のもち方)がより重要と思われる。

エ メンタルヘルスケア体制の整備
この体制整備にあたっては、まずは、社内でメンタルヘルス推進の相談窓口となる担当や部署を置くことが望まれる。大企業の中には、人事相談室と言った組織を設ける会社もあるが、中小企業では、人事や総務部門が窓口となってこの対応体制を整えることが一般的であろう。なお、この担当は、メンタル相談に関する一定の知識とスキルが求められるので、社外セミナーや講習を通じて、その取得が必要である。また、カウンセリングに関する資格を取得していることが望ましいことから、企業としては、これを重要な職務と位置づけて、その習得のための研修や講習を受講させ、資格取得援助などを行うことが望まれる。さらに、社内窓口と連携する社外の専門機関と契約を結び、専門のカウンセラーが従業員の様々な相談を受ける体制を整備することも有効であろう。現在は、EAP(EmployeeAssistanceService:従業員支援プログラム)サービスを提供する専門会社も多くなっているので、自社の求める対応に合致した会社を選択して、相談体制を充実させることも可能である。

2施策、対応策事例

妊娠時に取得できるマタニティ休暇、つわり休暇、子供看護休暇などを実施している事例。

様々な記念日(誕生日、結婚、出産など)を休暇とする事例。どの記念日を休暇とするかを完全に個々の 従業員に任せている事例もあり。

平成22年4月改正労基法により、労使協定締結に基づき、有給休暇を1時間単位で取得することが可能 となり、この活用により、有給休暇取得の幅が広がる。

長期勤続者に対し、使途に制限なく、1ヶ月以上の長期休暇が与えられるサバティカル休暇制度を導入し ている事例。リフレッシュ休暇の名称が多い。

休暇の名称をユニークな名称に変えて取得しやすい雰囲気を作っている事例。言い出しやすい、従業員に 受けるネーミングで取得促進を図る。

全社での有給休暇の計画的取得、一斉取得日の設定、消化率目標設定などの事例。

メンタルヘルスケアに関するセルフケア研修、管理職向け研修の実施、カウンセリング・マインドの全社 的展開への取り組み。

産業医との連携によるストレス調査、社内相談体制の構築事例

リスクマネジメントの観点から経営主導によるメンタルヘルスケア体制の強化事例。 例えば、衛生委員会での取り組み検討、社内でのセルフケア・ラインケア研修、EAP専門会社との契約等。

メンタルヘルス不調からの復職時の手続き、復職判定基準、ケアプログラムなどの見直し、再構築への取 り組み事例。


[出典元]
平成22年度職場の心理的・制度的側面の改善方法に関する調査研究委員会報告書(厚生労働省・中央労働災害防止協会)