働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト
  • HOME
  • コラム(その他)
  • 職場のメンタルヘルスに関わる人々 ~働く人と共に~:第3回 労働衛生コンサルタントとして

第3回 労働衛生コンサルタントとして

  • 支援する方

読了時間の目安:

6

労働衛生コンサルタントとして

労働衛生コンサルタント
前田 啓一さん

労働衛生コンサルタントの業務

 労働衛生コンサルタントは、労働安全衛生法にその業務が規定されていて、「労働者の衛生の水準の向上を図るため、事業場の衛生についての診断及びこれに基づく指導を行うこと」となっています。労働安全衛生法に関わる労働衛生管理体制、作業環境管理、作業管理、健康管理、健康保持増進等の診断、改善、指導がその主な業務となります。

 労働安全衛生法では、「事業者は、労働者に対する健康教育及び健康相談その他労働者の健康の保持増進を図るため必要な措置を継続的かつ計画的に講ずるよう努めなければならない。」と定められています。労働衛生コンサルタントは、事業場に対してこれらのお手伝いをさせていただくことになります。

昨今のメンタルヘルス不調者の増加に伴い、メンタルヘルス対策に苦慮されている事業者から「メンタル不調者が出ているがどのようにしたら良いか、その取り組み方が分からない」「担当部署を設置したいが、専門スタッフがいないのでどのように運用したらよいかわからない」など事業場の実情に関係した相談も目立ってきています。事業場でのメンタルヘルス対策の実態をみると、メンタルヘルス制度が整備されず個々の事例が主治医や産業医任せであったり、職場の管理者が問題を抱え込んで負担が増大していることも散見されます。また、組織体制、規定を定めていても、各層に周知されず、その報告、連絡、相談等の運用が徹底されていない場合など対応が混乱して措置に結びついていないこともあります。基本的な対応が事業場内で実施されないため、結果的に事業者の安全配慮義務の問題として大きくなることも在ります。

労働衛生コンサルタントには医師の資格を持つ方も多いせいか、事業場で指導しているときに、メンタル不調者に対する医療面での個別の判断を求められ困ることもあります。そのためにも医師又は産業医の役割と混同されないように、事前にその役割を明確にしておくことも必要と感じています。

メンタルヘルス対策におけるコンサルタント業務

 メンタルヘルス対策でのコンサルタント業務としては、労働安全衛生法及び関連する「労働者の心の健康の保持増進のための指針」「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」等を踏まえて、メンタルヘルスに関する事業場の現状と体制及びその問題点を確認し、その問題点を解決するための基本的な改善計画を策定し、それらを実施できるよう診断、改善、指導しています。

 具体的には、まず、事業場の就業規則、メンタルヘルスに関わる社内規定・基準を確認し、労働安全衛生法に規定する事業場での労働衛生管理体制が確立され、健康管理に関する法定遵守事項に遺漏が無く適切に行われているかの基本調査をします。また、メンタル不調者の発生の現状やメンタルヘルス支援体制、これまでの施策を確認します。これらを基に総括安全衛生管理者(事業場長)、産業医、衛生管理者又は衛生推進者等関係者へのヒヤリングを行い、その事業場での問題点を整理していきます。その上で実態を踏まえたメンタルヘルス施策に関する改善計画を作成して、助言・指導を行うことになります。

 改善計画には、「メンタルヘルス規定、職場復帰支援マニュアルの作成」「メンタルヘルス対策の実施体制の整備」「メンタルヘルス対策の実施計画の策定」「心の健康づくり計画の策定」「メンタルヘルスケアの推進」「従業員の健康情報、プライバシーの保護体制の整備」「管理監督者、従業員への教育研修の実施」等を組み入れています。さらに、産業医等の助言、指導等を得ながら事業場のメンタルヘルスケアの推進の実務を担当する「事業場内メンタルヘルス推進担当者」の選任、メンタルヘルス・ポータルサイト「こころの耳」を通じた情報収集、また、メンタルヘルスを実施するための専門家を確保できない事業場では、メンタルヘルス支援に関する地域産業保健センター、都道府県産業保健推進センターなど事業場外資源によるメンタルヘルスケア専門機関を活用することなどもあわせて推奨しています。

 また、快適職場環境へのアプローチとして、職場の照明や温度などの物理環境や作業レイアウトも労働者の心理的なストレスの把握と改善におけるストレスの低減対策も必要となります。情報の流れ方、職場組織の作り方なども労働者のストレスに影響を与えます。職場環境でのストレス対策での改善も計画の要因としています。

労使の協力とメンタルヘルス対策

 最近は、精神障害等の労災認定件数も増加しており、事業場において会社と従業員(労使)が協力してメンタルヘルス対策を推進する重要性が増しています。そのためにも改善計画書策定後に事業場での担当管理者、産業医、衛生管理者、人事労務担当者等への説明とその意見交換を行うとともに、衛生委員会で「精神的健康の保持増進を図る対策」として審議されて、さらにその意見が改善計画の実施に反映されていくこともお願いしています。

 労働衛生コンサルタントは、厚生労働省が実施する労働衛生コンサルタント試験に合格し、厚生労働省に備え付けられた労働衛生コンサルタント名簿に登録され、労働衛生に関する専門知識と、豊富な実務経験に基づいた指導力を持ち、事業者からの依頼によって事業場の診断や指導を行う専門家のことです。労働衛生コンサルタントは試験区分により「保健衛生」と「衛生工学」に資格が分かれていますが、業務の実施に当っては特に制限されるものではなく、保健衛生は健康管理面から、衛生工学は環境管理面からのアプローチを得意分野としています。

 労働衛生コンサルタントは事業場との契約関係にもとづいて外部の専門家として助言をする立場となり、また、労働安全衛生法では、都道府県労働局長は、労働安全衛生法第78条第1項の規定による指示をした場合において、専門的な助言を必要とすると認めるときは、当該事業者に対し、労働衛生コンサルタントによる労働衛生に係る診断を受け、かつ、労働衛生改善計画の作成について、意見を聴くべきことを勧奨することができることになっています。メンタルヘルス対策の構築に当たっては、ぜひ、労働衛生コンサルタントを活用されて、メンタルヘルス対策の推進を図っていただきたくことをお勧めいたします。