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東急ジオックス株式会社(東京都渋谷区)

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東急ジオックス株式会社
(東京都渋谷区)

 東急ジオックスは、鉄道バラスト(砂利、砕石)の調達を行う東京急行電鉄の子会社として1956年に設立。その後は、鉄筋などの鉄鋼類や、セメント・生コンなどの建材類など、建設資材を幅広く提供する建材商社として事業を営み、2011年からは、建設業の需要増加や請負業へのニーズを受けて請負事業にも参入している。
 社員数は52名(2020年10月現在)。
 今回は、代表取締役社長の諏訪嘉彦さん、常務取締役執行役員で経営管理部長の豊島一浩さん、経営管理部働き方改革担当課長の蜂須賀和子さん、施行管理課担当課長の古木裕明さんからお話を伺った。

「働き方改革の推進」を中期経営計画の中に位置づけ、その一環としてメンタルヘルス対策を据え、様々な知識・経験をもったメンバーでチームとして取り組みを推進する

最初に、職場のメンタルヘルス対策の取り組み全体について、お話を伺った。

諏訪さん
「当社は社員52名の中小企業ですので、人がすべてです。このため、2017年の中期経営計画の中に“働き方改革の推進”という柱を位置づけ、社員がより働きやすい環境を作りたいと考えました。メンタルヘルス対策を推進するというよりは、当社の人事制度が今の時代に合っていないことなどに課題を感じていました。」

蜂須賀さん
「中期経営計画の“働き方改革の推進”の中には、3本の柱を立てています。具体的には、『①スライド勤務や時間休暇導入といった“柔軟な働き方ができる環境”』、『②過重労働管理体制の強化をはじめとする“生産性の向上”』、『③キャリア形成支援や福利厚生の充実といった“働きがい”』です。この3本柱を進めるためには、“メンタルヘルス対策”が欠かせないと考えています。」


(【図1】中期経営計画における「働き方改革の推進」の全体像)

「本社の事業所単体では社員50人未満ですので産業医の選任義務はありませんが、東急病院の産業医・保健師と契約し、産業医には面談や職場巡視、保健師には健康診断実施後の健康相談を実施してもらっています。」

「過重労働についても管理体制を強化してきました。建設現場の施工管理はどうしても長時間労働になりやすく、過去には時間外労働が月100時間を超えていたこともありました。これを改善するため、施工管理者の交替制を導入したほか、各自が毎月20日までに翌月の時間外労働時間の見通しを上長に申請し、上長は45時間超となる部下がいる場合には、経営管理部へ報告するという仕組みを導入しました。この仕組みを導入した後は、時間外労働が月80時間を超えた社員はいません。もし月80時間を超える社員が出た場合は、“保健指導チェックリスト”の提出を義務づけており、その後、産業医による過重労働面談につなげる体制を整えています。」

働き方改革を推進する土台としてメンタルヘルス対策を捉え、産業医契約や長時間労働対策などの取り組みを推進している。

ストレスチェックの項目を工夫することによって、本当に支援の必要な人を見極め、支援を届きやすくする

次に、ストレスチェック制度の取り組み状況について、お話を伺った。

豊島さん
「ストレスチェック制度については、当社は事業所単位では社員50名未満ですので実施義務はありませんが、制度が開始された2015年から実施しています。ストレスチェックの項目は、一般的に使われている“職業性ストレス簡易調査票”ではなく、当社産業医が開発した“TKKストレスチェックリスト”というものを使用しています。TKKストレスチェックリストは全40項目で、ストレスの有無に加えて、ストレスの捉え方についても分かる質問項目になっています。具体的には、ストレスの内容を、頑張った結果であり満足しているストレス“にこにこストレス”と、本当のSOSのサインであるストレス“くたくたストレス”に分けて把握できるよう工夫されています。そのため、悪いストレス状態が疑われる人にアプローチできているのではないかと思います。」


(【図2】「にこにこストレス」と「くたくたストレス」の分類)

豊島さん
「ストレスチェックの集団分析結果は、厚生労働省のマニュアルに則って、業務上のストレスの程度、職場の上司・同僚の支援の程度から算出しています。産業医は、グループ内の他社の状況も把握していますが、その中でも当社の状況は良好だと言ってくれています。仕事上のストレスはありますが、上司や同僚のサポートが得られているようです。」

ストレスの内容を、前向きなストレスとSOSとしてのストレスに区別して把握することによって、会社も社員も現状をより適切に把握できるようになる。

一人の社員の職場復帰を真剣に考え取り組むことが、他の社員にとっても働きやすい環境づくりにつながる

最後に、職場環境改善活動について、お話を伺った。

(【写真1】オフィスのレイアウト変更前) 蜂須賀さん
「社員が働きやすい職場環境にしていくため、社員の声を幅広く吸い上げることに力を入れてきました。具体的には、2018年秋に全社員を対象とした社長面談を実施したほか、人事制度に関するアンケートも行いました。また、当社の今後を担っていく中堅社員に集まってもらい、人事制度に対する意見交換会も実施しました。」

諏訪さん
「社長面談は1人30分で設定し、社長と一対一では不安もあるかと思いましたので、蜂須賀さんにも同席してもらい、実施しました。蜂須賀さんから『できる、できないは別だが、言いたいことは言っておいた方がいいよ』といったアシストもあり、面談時間が半分過ぎた頃から、徐々に社員から本音に近い言葉が出てきたように感じられました。」

(【写真2】オフィスのレイアウト変更後)

蜂須賀さん
「また、現在は、社内のペーパーレス化に力を入れています。以前は、オフィス内にキャビネットが多く配置され、机には書類が山積みされている状態でした。その背景には、文書保存ルールが不明確だったことや、キャビネットがあるのでそこに可能な限り書類を入れてしまう、といった状況があるようでした。そこで、『キャビネットの数を3分の1に減らす』という目標を掲げ、まずは社長のトップダウンで進めました。その後、紙で保存するもの、別の場所にある書庫で保管するものといったルールを明確化しました。2020年8月にはオフィスのレイアウト変更を行いました。キャビネットの数を減らし、その空間を利用してリフレッシュスペースを作るなどしました。」

「さらに、新型コロナウイルス感染症対策の一環として、2020年4月の緊急事態宣言以降、テレワークを推進し、緊急事態宣言の期間中は、在宅勤務率約80%を達成しました。6月以降も40~50%が続いています。また、出勤時のソーシャルディスタンスの確保にも務めています。」

(【写真3】ソーシャルディスタンスの確保)

諏訪さん
「ペーパーレス化とレイアウト変更を進めてきた背景の一つに、ある一人の社員の存在があります。当社で、長年資材部長を務めていた浅井部長が2015年に病気になり、一度は職場復帰したのですが、2018年に歩行困難となり、車いす生活となってしまいました。現在は治療とリハビリのため休職中です。ただ、浅井部長自身が復帰に対してとても前向きであり、当社にとっても浅井部長は欠くことのできない人材です。就業可能となれば、車いすで働くことができよう、事務所内のレイアウトを変更しました。50人の会社ですから、社員一人一人が大切です。レイアウト変更には、お金はかかりますが、それだけの価値があると考えています。病気や治療と向き合う不安やストレスは大変なものだと思いますが、それを支えるのが我々の仕事だと考えています。」

(【写真4】車いすに対応したレイアウト変更) 古木さん
「事務所のレイアウト変更は浅井部長の職場復帰がきっかけではありますが、私たち現場の社員にとっても働きやすい職場環境につながるのではないかと期待しています。」

蜂須賀さん
「当社は、2020年3月に“健康経営優良法人(中小規模法人部門)”の認定を受けました。建設業界は、いわゆる3K、“きつい”、“汚い”、“危険”というイメージがあると思いますが、“くたくたストレス”から“にこにこストレス”中心の職場となるよう、メンタルヘルス対策を含めた健康経営活動を今後も推進していきたいと考えています。」

目標を数字で示し、トップダウンに加え、必要な制度見直しを行ったことで、取り組みが推進される。社員一人一人が働きやすい環境をつくるために、レイアウト変更への投資も大切である。

【ポイント】

  • ①中期経営計画に「働き方改革の推進」を位置付け、その一環としてメンタルヘルス対策への取り組みを入れ込むことで、力強く進めることができる。
  • ②社員50人未満でも産業医契約を行うことで、メンタルヘルス関連の必要な支援を受けることができる体制を整えている。
  • ③小規模であることを活かし、経営層が従業員の声を取り入れる仕組みを整えている。
  • ④ストレスチェック項目の工夫により、心配な状態の高ストレス者の選定に役立てている。
  • ⑤社員一人一人の力が発揮できるよう、病気と仕事が両立できる支援を惜しまない。

【取材協力】東急ジオックス株式会社
(2020年11月掲載)