事業者の方へ

部下を持つ方へ

支援する方へ

コンテンツ一覧

株式会社ウエスト神姫(兵庫県相生市)

  • 事業者・上司・同僚の方
  • 部下を持つ方
  • 支援する方

読了時間の目安:

12

株式会社ウエスト神姫
(兵庫県相生市)

 株式会社ウエスト神姫は、1996年に設立。兵庫県南部を対象とする神姫バスのグループ会社として、西播磨地域で乗合バス、貸切バスの運行などを行っている。
 従業員数は、201人(男性190人、女性11人)。多くがバスの運転士である。
 今回は、代表取締役社長の須和憲和さん、取締役支配人の西山隆司さん、総務観光課の長川英美さんの3人からお話を伺った。

社員の健康づくりに関する従来の活動の延長として、メンタルヘルス対策の取り組みを始める

最初に、働きやすい職場づくりのためにこれまで行ってきた活動や、社員の健康面に対する活動、そしてメンタルヘルス対策に取り組むきっかけについて三人からお話を伺った。

「バス業界全体が運転士不足で悩ましい中、人口減少と少子高齢化が著しい地域を活動拠点としている当社において、人財の採用と確保は、切実な経営課題でした。それらに対応すべく、地元の方々にとって働きやすい職場の提供と、今いる社員が健康で長く働ける取り組みを行うことにしました。まずは、定年後も70歳まで継続雇用する“生涯現役雇用制度”を導入しました。2014年度に厚生労働省の“生涯現役社会実現モデル企業”に選ばれたことで、働きやすい職場づくりの制度を整えていきました。例えば、屋内車庫でのバスの整備確認の際、これまで懐中電灯を使っての不自由な姿勢で行っていたのですが、助成金を活用して、屋内車庫照明をLEDへ変更したことで、とても明るくなり、簡易な修理等も楽な姿勢でできるようになりました。」

「また、近年、日中に主に運航される10人乗りのコミュニティバスのニーズが高まっている中で、車体が小型で運転しやすく、昼間のみの運行という点から女性運転士の採用を積極的に行い始めました。ただ、2014年時点では、女性運転士は1名だけでしたので、社員全員の意識改革を狙って、屋内車庫の一角に、女性専用の更衣室・休憩室(写真1)を新たに整備しました。その後、2016年には女性運転士は6名まで増え、2016年度には、“ひょうご仕事と生活のバランス企業表彰”として、ワークライフバランスの取り組みが優れているとの評価を頂きました。」

「社員の健康面においては、2015年6月に、兵庫県の“健康づくりチャレンジ企業”に登録し、社員に対して健康づくりの意識づけを始めました。その一環として、助成金を活用し、3つある営業所の物置や倉庫の一角を改造して、それぞれにトレーニングルームを整備しました(写真2)。待機時間や運行後に、エアロバイクやトレーニングマシンで定期的に身体を動かす運転士もおり、役に立っています。その後、2016年8月には、協会けんぽ兵庫支部が行っている“わが社の健康宣言”に登録しました。兵庫県内で2番目でしたので、中小企業としてはかなり早い段階だったと思います。その中で、『休み明けは、出勤点呼時に体重測定をします』という取り組みを宣言しました。当社の社員は平均年齢が高いこともあり、メタボリックシンドロームなどの生活習慣病のリスク保有率が、一般よりも高い傾向にあります。また、休日明けの加害事故件数は、休日明け1日目が最も多く、その後減っていくといった傾向もあります。そこで、休日明けであることを意識してもらうと共に、自身の体重を知り自発的な自己管理につなげることを目的に、タイムカードの前に体重計を設置しています(写真3)。実際、社員からは体重変化を見て休日の過ごし方を振り返ることにつながったとの声も聞かれました。」

「心身が健康であることが、“働きやすい”ことのカギになると考えています。定期健康診断は、年に2回全社員に対して人間ドック並みの項目を、さらに、運転士に対しては睡眠時無呼吸症候群検査や脳ドッグ検査など法定項目以上の検査を実施しています。産業医には、健康診断の結果について意見をもらい、該当者には再検査を促しています。お客様を運ぶ仕事ですので、安心の担保のためにも、必ず再検査してもらうようにしていますし、社員も当然だという感覚になってきています。そもそも再検査にならないようにするために、日ごろからの健康づくりを社員に意識させることが予防につながると考えています。」

「このような取り組みを経て、2018年2月には経済産業省の“健康経営優良法人2018(中小規模法人部門)”の認定を受けました。申請に際して、制度や施策実行に関するチェック項目が15個あるのですが、これまで身体の健康対策はいろいろと行ってきましたが、心の健康づくりの分野が弱いことに気がつきました。そこで、インターネットで情報収集し、2018年の夏に、独立行政法人労働者健康安全機構の“心の健康づくり計画助成金”を知り、兵庫産業保健総合支援センターに、支援を依頼しました。このことが積極的にメンタルヘルス対策へ取り組むきっかけであります。社員の健康づくりに関する従来の活動の延長として、メンタルヘルス対策を始めました。安全衛生委員会の議題でも、これまでは事故防止が多かったのですが、最近では、メンタルヘルスに関しても踏み込んだ話し合いを行っています。」

「健康経営優良法人」の申請時のチェックでメンタルヘルス対策の必要性を知り、社員の健康づくりに関する従来の活動の延長として、メンタルヘルス対策の取り組みを始めた。

「心の健康づくり計画」を策定することで、メンタルヘルスを推進するための体制や役割を明確にすることができる

続いて、職場のメンタルヘルス対策、ストレスチェック制度への取り組みについてお話を伺った。

「ストレスチェックは、2016年から実施しています。結果をもとに、面接を希望する高ストレス者には産業医に面接指導をお願いしています。産業医による面接から、専門医への受診を促すこともあります。」

「また、ストレスチェックの集団分析を通じて、業務内容による特色やストレスの程度をより的確に把握したいのと、実施後の対策の効果があったのかどうかを検証したいと考え、3年間、同じストレスチェックの調査表を使用しています。ストレスチェックの結果については、やりっぱなしにするのではなく、次の一手として会社として何ができるのか、何に取り組むべきかを考えることが大切です。継続した取り組みでないと意味がありません。」

「ただ、これまで会社全体としてのメンタルヘルスの体制が明確ではなかったので、兵庫産業保健総合支援センターのメンタルヘルス対策促進員に支援をお願いしました。“心の健康づくり計画助成金”制度の流れに沿って、促進員に3回来社していただきながら、半年かけて計画書を作成したり、社員への研修会を実施したりして体制を整えてきました。」

「“心の健康づくり計画”には、まず、基本方針、具体的な目標、そして基本的実施事項をまとめます。実施事項の中で、これまでメンタルヘルスに特化した教育を行ったことが無かったので、研修を実施することや、“こころの健康づくり”という社内リーフレットを作成することを掲げました。また、メンタルヘルスを推進するための体制や役割を明確にし、相談窓口担当者として総務観光課の長川さんが担い、相談内容について守秘義務を遵守し、関連部署と適切に連携することを掲げました。」

「そして、計画に基づき、2018年11月に、各事業所の管理監督者や健康管理担当者および総務部門の16名を対象に、職場のストレスチェックの集団分析結果(事業所別の各質問項目の平均値および仕事のストレス判定図、並びに経年変化)を参考にしながら、メンタルヘルス不調の早期発見に焦点を当てたラインケア研修を行いました。」

「集団分析結果の各項目平均においては、全国平均と比較して3つの特徴が挙げられました。1つ目は、『心身のストレス反応における“活気”項目が低い』です。高齢者が多い職場ですので、活気をあまり意識していないものと思われます。2つ目は、『ストレス要因として“コントロール度”項目が低い』です。バス運転手は定時定路線を運行することが義務づけられていることから、自身の自由裁量がはたらきません。そのため、路線バス特有のタイムプレッシャーを受けていることも推測されます。そして、3つ目は『周囲のサポートの中の“同僚の支援”項目が低い』です。バス運転手は、職業特性として独立並行集団であることから、そもそも同僚との協力関係が弱いと考えらます。仕事のストレス判定図においては、仕事の量的負担が低く、仕事のコントロール度が低い職場は、受動的な働き方となっている職場であると言われていますので、社員がより自主性を高めていくためにも、職場でのコミュニケーションの充実への対策がその第一歩であると考えました。」

「これら集団分析結果の内容を踏まえて、研修の中で最初に、『今、職場でストレスになっていること』を個人で考えた上で、グループワークの中で話し合うことにしました。その中から課題点として、『職場の同僚をサポートできていない』など職場の人間関係・相互支援の不足が明確になってきました。また、『人手不足の中での新たな人材採用が難しい』、『厳しく指導することとハラスメントの線引きが難しい』、『自分の目標やゴールが見つからない』なども課題として挙げられ、安心できる職場の仕組みを整えていく必要性が見えてきました。」

「その後、『働きやすい職場環境に改善するためには』といったテーマで、さらにグループワークを行いました。職場の人間関係を良くするためのコミュニケーションを充実させる方法としては、管理監督者から、『社内で孤立している人に話しかける』、『グループへの参加を促す』などの積極的なアプローチが挙げられました。また、安心できる職場づくりといった点では、『人それぞれ思いや考えがあり、個人を尊重するという視点を重視し、あいさつや礼儀、典型的なハラスメントとならないよう注意しながら人間関係を構築した方が良い』といった対人関係をより重視しようとする意見もありました。」

「私たち運輸業界では、運転に伴う緊張と運転者の心身の健康状態が重なり合い、運転操作に影響が及ぶと言われています。運行管理における運転者のストレス対策が事故防止にとって重要であることから、ストレスチェック実施後に、集団分析結果の説明とそれらに基づく教育を通じて、ストレス状況を分類し、職場で話し合い、職場の中でコミュニケーションの充実を図ることで、ストレスを軽減させ、結果的に効率的な運行管理につながると考えています。」

「近年は、女性や高齢者の社員が増えたこともあり、単に“長く働ける”だけではなく、目に見えない心の健康状態もメンタルヘルスへの取り組みを通じて把握し、“心身共に健康で長く働ける”ことが必要だと考えています(写真4)。そして、若い社員にも長く勤めてもらえるような会社であること、社員もその家族も大切にする会社であること、そして、地元を元気にする会社であることも大切だと思い、今年から兵庫県の“西播磨結婚応援企業”に登録しました。地元のパンフレットで紹介していただくことで、結婚や子育てに配慮した働きやすい職場であることを示しつつ、地元での出会いや結婚を応援する活動も始めています。メンタルヘルス、健康経営という軸をもって、幅広く地元を応援する企業としてこれからも頑張っていきます。」

労働者健康安全機構の“心の健康づくり計画助成金”制度にて、都道府県の産業保健総合支援センターのメンタルヘルス対策促進員の助言・支援に基づき心の健康づくり計画を作成し、計画を踏まえメンタルヘルス対策を実施することができた。また、ラインケア研修では、ストレスチェックの集団分析結果の内容を踏まえて、職場のストレス状況や職場環境について、グループワークを行った。こうしたことを繰り返していくことは、管理監督者の気づきを促し、職場環境改善にもつながると思われる。

【ポイント】

  • ①心の健康づくり計画」を策定することで、メンタルヘルスを推進するための体制や役割を明確にすることができる。
  • ②ラインケア研修において、ストレスチェックの集団分析結果の内容を踏まえて、職場のストレス状況や職場環境についてのグループワークを行うことにより、管理監督者の気づきを促し、職場環境改善にもつながると思われる。
  • ③運輸業において、運転者の心身のストレス対策は、事故防止の観点からも重要である。

【取材協力】株式会社ウエスト神姫
(2019年7月掲載)