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株式会社フレスタホールディングス(広島県広島市)

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株式会社フレスタホールディングス
(広島県広島市)

渡辺さん 株式会社フレスタホールディングスは、広島県を中心に62店舗のスーパーマーケット「フレスタ」を運営しているほか、ネットスーパーを展開している。1887年(明治20年)に創業し、130年を超える小売業の老舗である。
 従業員数はグループ全体で約5,200名で、そのうち12%の約600名が正社員。その他約4,500名は短時間労働者(パートタイマー)であり、大半は店舗業務に従事している。中規模店舗においては、1店舗あたり約80名の店員のうち、正社員が約10名、パートタイマーが約70名といった構成である。
 職場復帰支援の取り組みに関しては、2014年9月掲載の「職場復帰支援の取り組み事例(第17回)」を参照願いたい。
 今回は、グループ人事総務部長の渡辺裕治さんにお話を伺った。

人事権を持つ担当者が全社員面談を毎年実施し、現状を把握した上で、人事異動や制度変更を含む必要な対応を行う

最初に、職場のメンタルヘルス対策の取り組み全体について、お話を伺った。

「メンタルヘルス対策をはじめた2007年当時は、長時間労働が当たり前の雰囲気でした。社員の勤続年数も平均10年未満と短く、特に女性は大学卒業と同時に入社し、結婚や出産を機に辞める方がほとんどでした。そうした状況の中、まずは私たち人事部門が社員の状況、悩みや抱えている問題などを把握するところからはじめようと、年に1回、人事部門による正社員全員との“人事面談”をはじめました。1人15分程度ですが、悩みを抱えている場合は、2時間近くかかることもあります。」

「相談内容の大半は人間関係による問題です。パート従業員を入れると5,000人近くいますので、店舗の中で人間関係のもつれがひどくなってしまっていることがあります。全員面談を通じて、全体の状況を踏まえた上で、優先順位をつけて人事異動を行ったりしています。」

「次に多い相談は、キャリア形成に関する課題です。どのようにしたら自分が昇格できるのかという悩みを抱えている方もいるので、昇格に向けての勉強や、必要な資格の取得について個別に説明しています。」

「以前は、“人事面談”を人事担当者3人で分担して実施していました。しかしながら、面談対応をした人事担当者に人事権があるかないかによって、面談を受ける社員の意識や、その後の対応方法に差が出ることがありました。そこで、3年前からは基本的に私1人が人事面談を担当する形にしました。1人で実施することで、毎年の面談を通じて、経年の変化が見えやすくなりました。」

「また、長時間労働対策にも力を入れています。当社の過去の調査では、労働時間とうつ傾向の相関がかなり高いという結果が出ました。そこで、週全体で45時間以上の労働をさせないための取り組みを行っています。具体的には、1か月の半分が経過したタイミングで、時間外労働時間が15時間を超えている社員がいる店のエリアリーダーと店長に、メールでアラートを出し、残りの半月で問題解決に取り組んでもらうようにしています。」

「さらに、年間の残業時間数、上位30人には、私が直接面談をしています。上位30人の中にはパート社員の方が入ることもあります。面談を通して感じることは、残業時間が長くなる要因のほとんどは、“本人の習慣”によるものです。そのような場合、店舗の社員が増えても減っても、その方の残業時間は変わらないことが多いです。」

「そこで、2017年から平均残業時間の短い社員に賞与を追加で支給する“賞与インセンティブ”の制度を始めました。直近3カ月間の平均残業時間が2時間以内だったらプラス20万円、20時間以上だったら0円です。生産性を高めて20万円支給されるのと、残業を20時間以上して残業代をもらうのと、どちらがいいか、社員自身で考えてもらっています。制度導入前は、賞与をもらうために、他の社員に仕事を押しつけて帰る社員が出てくるのではないかといった声もありました。ただ、実際には、店舗の社員全員が賞与をもらうことができるように、チームとなって全体で残業を減らす取組みをするようになり、実際にみんなで賞与をもらっている店舗もあります。人事部門から『チームを作って取り組んでください』や『シナジー効果を出してください』と言うだけではなく、店舗の皆が共通の目標を持って、自分自身の問題と捉え行動していくことが大切だと考えています。なお、習慣ができるまでの行動変容が目的でしたので、現在、制度としては実施していません。」


(賞与インセンティブの仕組み)

「その他、本社などの管理部門では、18時5分になると、パソコンが自動で電源シャットダウンされる仕組みも取り入れています。シャットダウンの1時間前からアナウンスが表示されて、残り時間がカウントダウンされ、18時5分になったらデータの保存もされず、強制的にシャットダウンされます。これが日々の習慣になると、せっかく行った仕事が保存もされず急にシャットダウンされると困るので、大事な業務は午前中にするようになり、18時前には明日に回してもかまわない仕事を行うようになります。現在は8~9割が18時30分までには退社するようになりました。この仕組みを導入したことで、早く家に帰ることができ、家庭での時間を楽しんでいる社員も増えています。また、新店オープン時や、盆・正月などの繁忙期は、事前に残業申請することで、シャットダウンの後に再度パソコンを立ち上げて仕事することも可能にしています。これらの活動を通じて、平均残業時間平均は、5年前は月18時間超でしたが、現在は月12時間ほどに減ってきています。」


(社長名で、御礼の言葉とともにシャットダウンのアナウンスが表示される)

「また、有給休暇取得向上のために、現在は管理職から最初に取得するように促しています。以前は、パート社員の方から順次、取得するようにしていたのですが、正社員や管理職が有給休暇をとろうとするタイミングに限って繁忙期がきてしまい、取得できないままという方が多くいました。そこで、管理職がまず休暇取得することで、管理職が不在でも店舗まわることが分かり、正社員やパートも休暇取得しやすい雰囲気ができてきました。有給休暇取得のサイクルを変えただけで、全体で有休取得率が上がりました。」

「私の役割としては、ガチガチの人事制度をつくろうとは考えていません。制度を一つ作るとなんとかそれを維持しようとしてしまいがちです。期間限定の制度や仕組みでもかまわないので、今働いている人たちに柔軟に合わせて進めていき、必要に応じて変えていくことが大切だと考えています。」

心理相談室を設置し、パート社員の方を含む社員全員が安心して相談できる仕組みづくりをしている

次に、相談しやすい環境づくりについて、お話を伺った。

「社員との相談対応としては、年に1回の正社員を対象とした“人事面談”の他に、“心理相談室”を設置しています。“心理相談室”専用の外線電話番号を用意し、私を含め人事部門で相談を受けつけています。心理相談室の利用の大半はパート社員の方です。また、利用者の8割が女性ということもあり、女性に相談したいという場合は、女性の担当者から電話をかけ直すようにしています。」

「相談内容への対応として、会社の方針や店舗の取り組みに関して不満がある場合、改善した方が良いと思えるものであれば、会社全体のルールを作りなおすこともあります。また、個別事案の場合、私が第三者として介入し、問題解決を行うこともあります。例えば、店舗の中で相談者本人と相手との間で問題が発生している場合、私が直接店舗に出向いて、店長も含めた四者で話をし、何がどのように問題になっているかを確認していきます。確認作業をしていく中で、からまっていた糸を一つずつほどいていく作業を通じて、『〇〇さんはこういうことが言いたかった。でも、△△さんはこういう風に受け取っていた。言い方と受け方の差があったんだ』といったことを当事者同士に理解してもらう方向に持っていくように心がけています。お互い目指している方向は一緒だけれども、目指すためのプロセスが違うだけのことだということに納得できることが大事だと思っています。」

「これらの相談対応を通じて現状を把握し、人間関係に対応したり、労働時間を減らしたりすることによって、最終的にはメンタルヘルス不調を予防できればと考えています。それでもメンタルヘルス不調になった方に対しては、当社の職場復帰プログラムを踏まえて、産業医と連携して対応していますが、そうならないように、事前にできる限りの対応が必要だと考えています。」

【ポイント】

  • ①人事担当者が、毎年全社員面談を実施することで、職場の人間関係の実態やキャリアや人事制度の課題が把握でき、必要な人事異動や制度変更を適切に行える。
  • ②労働時間を減らすための様々な仕組みは、社員が自主的に生産性を高めつつ労働時間を減らそうとする動機づけになる。
  • ③心理相談室を設置し、パート社員の方を含む社員全員が安心して相談できる仕組みをつくる。

【取材協力】株式会社フレスタホールディングス
(2020年6月掲載)