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苫小牧港開発株式会社
(北海道苫小牧市)

江川さん、錦戸さん
苫小牧港開発株式会社は、1958年(昭和33年)設立。フェリーターミナル運営事業を中心に、不動産事業なども行っている。従業員数は109名(2025年12月現在)。
今回は、総務部副部長兼人事課長の江川昌史さん、人事課係長の錦戸史弥さんにお話を伺った。
ストレスチェックとメンタルヘルス研修を毎年実施することによって、心の健康の大切さについて繰り返し考えてもらい、従業員の意識づけを図っている。
最初に、ストレスチェックとメンタルヘルス対策全般についてお話を伺った。
ストレスチェックの実施方法を、従業員の慣れるペースにあわせてweb方式に徐々に移行しましたが、全員の受検を継続できています 「当社は、安全・安心なフェリーターミナルの運営及び苫小牧地域の産業・居住・都市機能の整備・拡充を通じて地域社会の発展へ寄与し、社員全員が貴重な“人財”であるという認識に立ち、長年、社員の心身の健康を重視した取り組みをしてきています。」
「ストレスチェックは、義務化後の2016年から毎年全従業員に実施しています。実施は、長年、一般定期健康診断の実施を依頼している地元の健診機関に委託しています。当該機関のストレスチェックは、当初は紙方式でしか実施できなかったのですが、その後web方式も使えるようになりました。ただ、いきなりweb方式に全面的に切り替えると、慣れていない者が戸惑うかもしれないと考え、web方式開始当初は紙方式を基本にweb方式も選択できるという形で行いました。すると、紙方式とweb方式で半分ずつの割合と意外とweb方式を選んだ者が多かったため、その後は全員
web方式にて実施しています。受検後すぐに個人結果を見ることができる良さも伝わってきたのではないかと思っています。現在も受検率は100%です。」
社内相談窓口の担当者が医師による面接指導や産業医へつなぐ役割としても機能しています 「ストレスチェックの個人結果は、後日、健診機関から会社に、一人ずつ封筒に入った状態で送られてきます。高ストレス者に該当する者は、医師による面接指導を受けるよう勧めています。面接指導の希望がある場合は、人事課に申し出てもらうなど、人事課から健診機関の医師に依頼する流れとなっています。面接指導実施後は、医師からの報告書を受け取り、必要な就業上の処置があれば対応することになります。当社の従業員で高ストレス者に該当する者は全体的に少ないですが、これまでに面接指導を受けた者は数人おり、その都度この流れに沿って対応してきました。」
「集団分析結果は、経営者に報告したうえで、必要に応じて対応することにしています。」
「社内相談窓口は私(江川さん)が担当しています。相談内容によって、必要に応じて産業医にもつなげています。また、社内では相談しにくい方のために、外部機関による電話相談サービスも利用しており、従業員に案内しています。」
年に一度、時間をとって全従業員が参加するメンタルヘルス研修を行うことで、繰り返し意識づけています
メンタルヘルス研修
「その他、メンタルヘルス研修を毎年実施しています。1回1時間~2時間ほどの時間で行っており、全従業員が参加できるように業務を調整しています。研修講師は外部の専門家の方にお願いしており、セルフケアやラインによるケアなどの基本的な内容についてお話ししてもらっているほか、その時のトレンドにあわせ、ストレス対処法などの内容を加えてもらっています。1回聞いただけではなかなか実践にはつながらないと思いますので、年に一度メンタルヘルスについて振り返る時間を持ってもらうことを大切にしています。」
残業時間の削減の他、病気の治療や介護・看護などに利用できる休暇制度や、新入社員へのサポートの仕組みなど、様々な取組みを推進することによって、離職が少ない働きやすい職場環境づくりにつながっている。
次に、年2回実施の定期健康診断や、各種休暇制度、離職防止策など、コミュニケーション活性化を中心とした健康経営全般についてお話を伺った。
トップダウンで、“健康経営”としての取組みを本格的に始めました 「以前から“健康経営”という言葉自体は知っていましたが、特段意識はせずに社員の健康や職場環境の改善などに取り組んでいました。“健康経営”を意識して本格的に取り組み始めたのは2018年からです。当時の社長が商工会議所の副會頭を務めていたので、より必要性を感じたのだと思われます。その年に健康宣言を行い、2019年には“健康経営優良法人(中小規模法人)”の認定を受けました。2019年より代表取締役社長に就任している関根が、“社員一人一人が貴重な「人財」”との視点に立ち、心身の健康を重視する経営に取り組むことを公表したこともあり、その後も積極的に取り組んできています。2021年は認定を受けることができなかったのですが、それ以外の年は連続して認定を受けています。2025年には、初めて“ブライト500”の認定も受けました。」
定期健康診断後の再検査や脳ドックの受診、更年期障害・生理により著しく就業困難なとき、不妊治療の為に取得できる休暇制度を新たに作りました 「身体の健康についても力を入れています。たとえば、定期健康診断は全従業員に対して毎年2回実施しています。毎年2回実施する義務があるのは、シフト制で働く現場の技術職のみですが、当社では事務職なども含め全従業員を対象にしており、受診率は100%です。また、健診結果が要治療・要受診となった従業員に対しては、個別に受診勧奨をしています。ただ、受診勧奨だけでは受診率はなかなか上がらないため、対象者には、法定の有給休暇とは別に、再検査に行く際に使える休暇として“再検査受診休暇”(2日/年度)を付与しておりました。2024年度からは、この休暇制度を“ウェルネス休暇”(5日/年度)に名称変更し、再検査の他、更年期障害や生理により著しく就業が困難な場合等に取得できる仕組みにリニューアルしました。ウェルネス休暇は一時間単位で取得できるようにしています。」
個人の事情に応じた柔軟な働き方を選択できるよう、残業時間の削減の他、休暇制度も充実してきています
「個人の事情に応じた柔軟な働き方を選択できるよう、職場環境の整備にも努めています。まず、残業時間の削減に、長年力を入れており、昔から多い時間数では無かったのですが、最近は、事務職が月7時間程度、現場の技術職が月13時間程度と少ない時間数で収まっています。また、休日については、事務職は完全土日週休2日制、現場の技術職はシフト制のため土日の出勤や夜勤がありますが、その分しっかり休んでもらえるよう休日を確保しています。その他、法定の有給休暇とは別に、夏期休暇、勤続年数に応じた休暇、看護・介護休暇、先述の“ウェルネス休暇”を導入しています。」
入社後1年間は先輩について教わる仕組みにすることで、新入社員が一人で抱え込むことがなくなり、入社3年以内の離職率は非常に低いです 「採用活動は、団塊世代の定年退職を見越して、15年ほど前から本格的に行っており、新卒採用にも力を入れています。苫小牧市内出身者が大半で、現場の技術職採用は高卒生がほとんどです。入社して最初の1年間は、10歳ほど年上の先輩に付いて、業務などを少しずつ教わりながら、スキルを身につけていってもらうという仕組みにしています。現場の技術職採用の場合は特に、社会人としての生活リズムが整うまでに時間がかかることもありますので、先輩から日頃より声がけを行うことで、一人で抱え込むことが無いようにしています。実際、若手従業員からも分からないことなどの相談がしやすいようです。こうした工夫のおかげで、最近の入社3年以内の離職率は非常に低いです。現在は、現場の技術職のほとんどを20代と30代が占めており、世代交代がうまくいったと実感しています。」
従業員同士のコミュニケーションが良いことが労働災害防止にも役立っています 「若手従業員は、地元の学校の先輩・後輩といったつながりもあるので、プライベートでも一緒に遊ぶなど皆仲が良く、社内コミュニケーションはうまくいっていると感じています。特に、現場の技術職においては、ヒヤリハットの場面などでとっさに注意する必要がありますが、もともとの人間関係が良いため、そうしたアクションも取りやすく、社内コミュニケーションの良さが労働災害防止にもつながっていると感じています。」
「とまこまい港まつり」市民おどりパレード
「その他にも社内コミュニケーション活性化の取組みに力を入れています。まず、多くの従業員が集まる社内バーベキューを毎年2回開催しています。場所は、本社ビルの敷地を活用しており、皆でワイワイ話をする機会になっています。また、2023年度には、4年ぶりの開催となった“とまこまい港まつり”市民おどりパレードに総勢99名で参加し、パレード後は当社にて懇親会も開催しました。コロナ禍でこうしたイベント行事は一時的に自粛せざるを得ませんでしたが、こうして様々な行事が復活していることは、従業員にも活気をもたらしてくれていると感じています。最近では、北海道日本ハムファイターズの年間シーズンシートを会社で購入し、従業員全員が、家族や従業員同士で試合を楽しめるようにするなど、福利厚生の拡充も図っています。」
従業員一人ひとりが長く生き生きと働いていける職場が企業価値の向上につながる、ということを社長が日頃から従業員に伝えています 「企業の価値は損益・財務状態といった財務情報だけではなく、もっと広い視点でみた“非財務情報”にも表れるものと思います。例えば、環境に対する取り組みや災害時等に備えた事業継続計画の策定、健康経営の取り組みなどは、それが直接的に利益に結びつくものではありませんが、自社のみならずステークホルダーにとって、大変意味のある取り組みであり、“企業価値の一つの顕れ”であるとも考えられます。人口減少等に伴い、今後人手不足が一層顕著化することが予測されるなかで、社員の心身の健康の維持増進や働き方の見直しなど“健康経営”に取り組んでいくことは、企業にとって大切となる“人財”を確保し、将来に向けて企業の持続可能性を向上していくことに繋がると思っております。これらの考えを、社長より日頃から従業員に伝えています。これからも、従業員全員が長い職業生活の中で元気にその能力を発揮し続けていけるよう、従業員および家族の健康の維持増進、職場環境の整備・活性化を推進し、従業員の健康を通じて企業の成長を図り、社会の発展に貢献して参ります。」
【取材協力】苫小牧港開発株式会社
(2026年2月掲載)
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