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有限会社三崎工業(沖縄県那覇市)

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有限会社三崎工業
(沖縄県那覇市)

【写真】知念さん、城間さん、大城さん、渡嘉敷さん 有限会社三崎工業は1982年(昭和57年)創業。水道工事事業を行っている。
従業員数は9名(2026年1月現在)。なお、ストレスチェックの基本的な取組みや健康で働きやすい職場づくりの取組みに関しては、2022年2月掲載の「職場のメンタルヘルス対策の取組事例」を参照願いたい。
今回は、代表取締役の知念秀明さん、工事部の城間美奈子さん、大城美由利さん、外部専門家として関わっている健康経営エキスパート・アドバイザーで看護師の渡嘉敷忠さんからお話を伺った。

ストレスチェックの運用が定着し、従業員も実施の意義を分かった上で受けている。

まず、前回の取材時以降のストレスチェックの実施状況について知念さんを中心にお話を伺った。

書面でのストレスチェックを引き続き実施しており、従業員の間でもその意義が浸透してきています 知念さん
「ストレスチェックは2020年より導入しており(導入の経緯や実施後の対応についての前回の記事はこちら)、その後も継続して実施しています。導入時から引き続き、職業性ストレス簡易調査票の簡略版23項目を使用しています。当社の場合、この簡略版の内容で十分だと考えており、項目数よりも実施後のフォローアップを丁寧に行うことの方が重要だと考えています。」

「初年度は高ストレス者がおり、医師による面接指導の希望はありませんでしたが、実施者である看護師の渡嘉敷さんによる個別面談を行いました。誰が面談を受けたか、私(知念さん)は知りません。翌年以降は、早めにチェックとケアができているおかげか、高ストレスに該当する方は出ていません。」

城間さん・大城さん
「ストレスチェックは、毎年実施しているので、ストレスチェックを受けることが当たり前のこととなってきており、私たち従業員も実施的意義を分かった上で受けています。」

知念さん
「渡嘉敷さんは、日頃から従業員の個別健康相談にも対応しています。全従業員を対象に健康習慣に関するアンケートなども、毎年実施しています。これらを踏まえて、渡嘉敷さんに当社の全体の状況について、個人が特定されない内容で報告書を作成いただき、私(知念さん)が確認しています。」

従業員の健康を最優先に考慮し、会社の規模に合わせた事業の集約や、従業員同士のコミュニケーションを活性化する取組み、従業員の家庭状況などに配慮した柔軟な働き方への対応などを行っている。

次に、職場環境改善の取組みについて知念さんを中心にお話を伺った。

コロナ禍での経験を経て、会社の規模に応じた事業内容に集約する決断をしました 知念さん
「当社は水道管工事を行っていますので、一人ひとりがそれぞれの現場を持っているため、一人で仕事をすることも多く、従業員同士のコミュニケーションが薄くなりがちな部分があったように思います。このことは、渡嘉敷さんから頂戴した報告書でも、上司や同僚からの支援という点に課題があることが示されていました。そこで、従業員同士のコミュニケーションに焦点をあてて、職場環境の改善の取組みを進めることにしました。」

「大きく変えたこととしては、新築・メンテナンス・公共工事の三本立てで行っていた当社の事業を、メンテナンス業務一本に集約したことがあります。新築案件では工程や納期へのスケジュールの制約が厳しく、見積もりや値下げ交渉を経てもなお受注につながらないことも多く、従業員のストレス負荷やモチベーション維持が難しい面がありました。メンテナンス事業に集約したことで、リスクが少なく利益につながりやすくなり、従業員がやりがいを感じやすくなったと考えています。」

「現在も、当地区では新築の需要は多くあり、その中でメンテナンス事業一本に集約するという判断をするのは、大きな変革であり覚悟のいることでもありました。しかし、コロナ禍で全業務がストップする中で、従業員一人ひとりの健康を見つめ直した経験を経て、当社の規模、体制に合った業務内容に集約することが必要だと考えました。」

「事業をメンテナンス事業一本に集約しましたが、大手の管理会社や営業所との関係性が構築できていましたので、点検業務から修理までを一貫して受注できる仕事を確保することができており、売り上げも前年度比で約2倍となっています。」

【写真】ランチタイム健康セミナー 従業員同士の会話が増え、事務所内のコミュニケーションが活性化してきました 「業務調整によって仕事量自体が抑えられたことで、従業員が事務所にいる時間が増え、コミュニケーションの機会が増えました。また、健康経営の取組みの一つとして、オフィスに新鮮な野菜や果物、総菜などを配達してくれるサービスを昨年より導入しました。」

城間さん・大城さん
「サービス導入によって会話のきっかけが生まれましたし、特に月1回のメニュー選びが楽しみの一つとなっています。5年前は静かだった事務所内に会話や笑顔が増えたと実感しています。」

家族の介護が必要となった従業員の家庭状況に合わせて、看護師がサポートに入り、両立支援を実施しました 渡嘉敷さん
「また、家族の介護が必要となり、しばらくの間、出社することが難しいという従業員への両立支援も実施しました。知念社長から私(渡嘉敷さん)に相談があり、私は、介護担当のケアマネジャーと従業員本人と三者で話す場を設け、介護をしながら勤務できる体制などについて相談し、知念社長に職場内の業務の調整をお願いしました。この時に初めてリモート勤務を導入しました。リモート勤務導入に当たっては、リモートでできる業務と, 事務所でないとできない業務とに切り分けをして業務分担を見直したり、日頃のやりとりはメッセージアプリや電話を活用しつつ、少ない出社時には、密に情報交換をしたりするなど、従業員同士が工夫をしてくれて、数カ月間を乗り切ることができました。このようなケースが生じた際に、知念社長が看護師である私(渡嘉敷さん)にすぐ相談してくれたこと、そして、日頃から従業員同士の良好なコミュニケーションとチームワークが築かれていたことが、両立支援の成功につながったと考えています。」

「当社には子育て中の従業員もいますし、今後家族の介護が必要となるようなケースも増えてくると思います。子育てや介護を理由に退職してしまうということがないよう、会社として専門家の力も借りながら、しっかりと向き合って取り組んでいきたいと考えています。」

沖縄県内での健康経営の普及も見据えながら、健康経営プロジェクトに積極的に参画している。

最後に、健康経営を積極的に推進する知念社長の想いについて伺った。

沖縄県内での健康経営のプロジェクトなどに中小企業として積極的に参加し、従業員数の少ない事業所でも健康経営の取組みが広がることを願っています 【写真】健康づくり出前講座(浦添市健康づくり課) 知念さん
「健康経営への取組みとしては、食生活の改善や運動機会の増進など幅広い内容に取り組んでいます。2025年度には、5年連続で“健康経営優良法人(ブライト500)”に選出いただきました。その他、様々なプロジェクトや発表の場などへも積極的に参加しており、“おきなわ健康経営プラス1プロジェクト”にも、県内の有名企業と並んで参画させてもらっています。このようなプロジェクトに参画すると、中小企業だけでは実施できない大規模なイベントや活動に参加できたり、社内での課題を企業間同士で情報共有できたり、などメリットが大きいです。大企業と中小企業が連携し、そのネットワークの中でコミュニケーションが生まれるのはとても意義のあることだと実感しています。」

「私は、仕事一筋というよりも、楽しく長く勤めてもらえる会社でありたいという想いで、健康経営を推進しています。従業員数の少ない事業所では、コストや時間の制約から健康経営に取り組むことが難しい場合もあると思いますが、まずは職場内での円滑なコミュニケーションを築くことが重要だと考えています。また、健康経営の取組項目は多岐にわたりますが、自社で改善できそうな項目から、一つずつ無理なくスモールチェンジで取り組むことが、健康経営を始めるきっかけになると感じています。当社の取組みやプロジェクトへの参画を通じて、沖縄県内の中小企業にも健康経営の取組みが広がっていくことを願っています。」

【取材協力】有限会社三崎工業
(2026年2月掲載)