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株式会社関西テレビライフ
(大阪府大阪市)

合田さん、古市さん 株式会社関西テレビライフは1974年(昭和49年)設立。グループ会社の株式会社ウエルネスライフと共に、大阪府、兵庫県でフィットネスクラブ・スイミングスクールを6店舗展開している。
従業員数は25名(2025年3月現在)。
今回は、代表取締役社長の古市忠嗣さん、総務部長の合田康さんからお話を伺った。
従業員自らが心身の健康を意識することが大切だと考え、“健康宣言”や産業医の選任、eラーニングを活用した教育などを実施し、メンタルヘルスを含む従業員のヘルスリテラシー向上につなげている。
まず、健康経営の取組みを始めたきっかけと産業医の選任について、お話を伺った。
“健康宣言”と健康経営体制を示し、従業員自らが心身の健康を意識する大切さを伝えています 「私(古市さん)は、2021年に親会社(関西テレビ)から当社に異動してきて、2022年に社長に就任しました。当社は、経営理念に『会員の健康増進と子どもの心身の健全な発達に貢献する』を掲げていましたので、それを実現するために、まずは、従業員自らが心身の健康に意識して取組み、働くことに幸せを感じられる職場環境づくりが最も大切だと考えました。その後、健康経営という考え方を知り、そのための体制づくりや環境整備に会社全体で取り組みはじめました。2022年8月には“健康宣言”を行い、 “健康経営最高責任者”を代表取締役社長(古市さん)、健康保険組合や産業医と連携する“健康管理責任者”を総務部長(合田さん)とする“健康経営体制図”を示しました。」
産業医を選任し、定期訪問時には店舗の巡視や産業医面談、衛生講話など様々な支援をお願いしています 「2021年には、初めて産業医を選任しました。2ヶ月に1度の定期訪問の際には、スイミングスクールやフィットネスクラブの店舗の巡視の他、希望者や対象者に対する面談も実施してもらっています。一般定期健康診断の有所見者への面談の他、少し体調が悪いからと自分から産業医への相談を申込む者もいれば、上司からの声がけで相談にくる者もいます。私(古市さん)からも、日頃より、従業員に『産業医面談を受けることは悪いことではないよ』と伝えています。」
「また、産業医には15~20分間の衛生講話の収録もお願いしています。メンタルヘルスやハラスメントに関する話もしてもらっていて、先日は、メンタルヘルスに関する情報を取得する場所として“こころの耳”の案内もされていました。産業医による衛生講話の動画は、従業員がいつでも見られる環境にしています。」
「その他、管理職及び従業員に対する健康セミナーや健康に関する情報の発信を、社内のeラーニングの仕組みを活用して実施しています。業務によって働く時間帯が様々で、集合形式での研修は参加者の負担が大きいと考え、まずは従業員のヘルスリテラシーを少しでも向上させることを優先して、eラーニングでの取組みからはじめています。」
ストレスチェックは外部の業者に委託し、社内の情報管理を徹底し、産業医の衛生講話でもストレスチェックに関する情報を定期的に提供することで、従業員は安心して受検することができている。
次に、ストレスチェックの具体的な取組みについてお話を伺った。
年に1回、自分のストレス状態を客観的に知ってもらうためにストレスチェックを導入しました 「ストレスチェックも2021年から始めました。私(古市さん)が親会社(関西テレビ)にいた時は毎年受検していたのですが、年に1回、自分のストレス状態を客観的に知ることができるのは良い取組みだと感じていました。特にテレビ局は部署異動が多いので、異動後のストレス度合いの変化を知ることにも役立っていました。そこで、当社でも従業員に受けてもらいたいと思い、ストレスチェックの導入を決めました。」
「2021年は、親会社が利用しているストレスチェック業者にお願いして、当社の従業員も受検できるようにしてもらいました。実施者は、ストレスチェック業者の医師等にお願いしました。2022年からは、産業医が関わっているストレスチェック業者に委託先を変更し、実施者も産業医にお願いしています。受検案内や通知などはメールで行っており、受検もWEB上で完結できるようにしています。」
小規模企業だからこそ、ストレスチェックの個人結果は重要な個人情報だということを意識し、丁寧に管理しています 「ストレスチェックの個人結果は重要な個人情報だと意識しています。社内では実施事務従事者を担う総務の担当者しか知ることはできないようにしています。私たち(古市さん、合田さん)は従業員の個人結果を知りません。小規模の会社ですので、情報管理はより繊細に行う必要があると考えています。」
「高ストレス者から申出があった場合は、産業医に面接指導をお願いできる体制にしていますが、これまで対象者は出ていません。産業医が衛生講話でストレスチェックについて定期的に話をしてくれているので、従業員にも安心感があるようです。直近2年間のストレスチェックの受検率は100%でした。」
年1回社長面談を実施し社員の近況をじっくり聴く、年1回全体研修を実施しカスタマーハラスメントへの対応などその時々のテーマについて全員で共有するなど、様々なアプローチを通じて従業員の健康の維持増進を図っている。
最後に、職場のメンタルヘルス対策に関するその他の取組みと、健康経営に対する想いについてお話を伺った。
年1回の社長面談を通じて従業員の近況をじっくり聴くことで、いざという時にスムーズに対応できています 「毎年1回、全従業員に対して社長面談を実施しています。1人につき1時間ほど時間をとっています。まず健康に関して毎年テーマを決めて話し、その後、従業員の話を聴いています。健康に関する話は、昨年(2024年)は、当社が加入している企業健康保険組合のサービスなどの説明をしました。無料で人間ドックを受けられることや、家族も健康診断を受けられることなど、健康に関するお得なサービスの存在を知ってもらうことで、安心感につながればと思っています。」
「従業員の話を聴くに当たっては、私が“世界一話しやすい社長”になることを意識して、聴くようにしています。評価のための面談ではないということを強調し、従業員一人ひとりの近況などを話してもらっています。面談の中で従業員の最近の様子を把握できるので、いざという時の対応がスムーズにできるのも面談を実施するメリットだと感じています。」
「また、年1回従業員全員が集まって、研修会と懇親会を行っています。昨年の研修会では、カスタマーハラスメントに関する研修を行いました。当社はフィットネスクラブやスイミングスクールの店舗を運営しておりお客様と接する機会が多いので、カスタマーハラスメントを受けた場合に相談できる窓口があることを知ってもらい、1人で対応するのではなくチームで対応していくことを伝えることが大事だと考えました。各従業員には、店舗に戻ってからパート・アルバイトにも説明してもらいました。」
「健康経営優良法人」の認定で社会的信用度が高まると共に、従業員自身の心身の健康に関する意識向上につながっています 「従業員が自らの健康に関心を持ち、前向きな取組みを進めていくことが、地域や当社のサービス利用者のロールモデルとなり、やがて地域全体の健康増進へつながっていくことを願っています。また、当社は高齢の従業員も多くいますので、全従業員が長く健康に働いてもらうことが当社の持続可能性を高めるためにも重要です。その思いを、“健康経営戦略マップ”という形でもまとめています。」
健康経営戦略マップ
「こうした取組みを積み重ねてきた結果、2024年、2025年と、続けて健康経営優良法人の認定を受けることができました。名刺に認定マークを入れていますので、名刺交換の際に『このマークは何ですか?』と聞かれることもあり、従業員が健康経営の説明をする力がつき、一人ひとりの健康経営に対する意識も高まっていると感じています。また、健康経営優良法人の認定を受けていることが、自治体の入札参加時にプラス評価にもつながり、社会的信用の高さも感じています。」
「従業員の離職率も非常に低いです。今後も事業を継続していくために、これからやってくる現役世代の減少による人材不足の影響を受けないよう、従業員が健康であり続け貴重な人材が長く現役で働けると共に、就職活動者や顧客からも選ばれる会社にしていきたいと考えています。」
【取材協力】株式会社関西テレビライフ
(2025年7月掲載)