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株式会社日本エー・エム・シー
(福井県福井市)
平瀬さん、高橋さん 株式会社日本エー・エム・シーは、1963年(昭和38年)設立。高圧配管用の金属製継ぎ手を製造、販売している。
社員数は183名(2024年11月現在)。福井の本社及び永平寺工場のほか、タイ、フィリピン、中国の4カ国5拠点で生産している。
今回は、取締役専務執行役員総務部長の高橋永さん、総務部課長の平瀬布美代さんからお話を伺った。
「心の健康づくり計画」においてストレスチェックの実施方法を明確にした上で、産業医がストレスチェックの実施者となり積極的に取り組んでいる
まず、ストレスチェックの取組みについてお話を伺った。
産業医が実施者としてストレスチェックの実施に積極的に関与しています 「ストレスチェック制度の義務化が話題になった2013年に、“心の健康づくり計画”を策定しました。策定に当たっては、当社が契約している社会保険労務士や産業医に相談し、意見を聞いた上で内容を取りまとめました。2016年には、ストレスチェックの実施方法を加える改訂を行いました。」
「ストレスチェックの実施者は、産業医が担っています。ストレスチェック自体は、産業医が関わっている外部EAP機関のWEBシステムで行っています。毎年、対象従業員の全員が受検しています。高ストレス者には、産業医による面接指導を受けるように促す旨を通知しています。産業医は本社近くのクリニックの院長であるため、面接指導を実施する場合は、対象者に産業医のクリニックに行ってもらって受けてもらう仕組みにしています。」
経営トップが健康経営に取り組むことを決断したことにより、組織体制の整備や取組みの推進が迅速に進み、短期間で健康経営を実現できている。
次に、健康経営の取組みについてお話を伺った。
経営トップの決断により迅速に健康経営の組織体制を整え取組みを推進しました 「2017年夏頃から、将来的に残業時間の上限規制が法制化されることに伴い、規制への対応や人材確保を見据えた経営改革の必要性を社長自身感じており、そのために必要な施策として健康経営に着目しました。経営トップの決断によって、“健康経営優良法人”の認定を受けることを目指した健康経営の活動を本格的に始めることになりました。」
「組織体制としては、経営トップの下に、2つの事業所それぞれの衛生管理者を“健康づくり担当者”として任命し、職制と安全衛生委員会メンバーとが協働で話し合い実践していく体制をとっています。健康づくり担当者2名は、“健康経営アドバイザー”資格を取得し、さらに、その内1名の私(平瀬さん)は、“健康経営エキスパートアドバイザー”資格を取得し、従業員に健康経営の必要性を伝えるなど、取り組みを積極的に推進しています。また、産業医と協会けんぽ福井支部にもサポートしてもらっています。」
「経営トップの決断からたった4か月間で、体制構築から取組みの推進までなんとか実行することができ、その年(2018年)の“健康経営優良法人(中小規模法人部門)”の認定を受けることができました。以降2024年現在まで7年連続で認定を受け、2021年と2022年には2年連続で“ブライト500”にも認定されました。」
治療と仕事の両立支援について学び、実践しています 「また、治療と仕事の両立支援にも取り組んでいます。取組みを開始した当初はまだ支援が必要な従業員はいませんでしたが、いずれ必要になるかもしれないと考え、私(平瀬さん)が基礎研修を受講し、“両立支援コーディネーター”を取得しました。その後、がんに罹患した従業員が発生したのですが、事前に勉強していたおかげで、主治医や産業医と連携しながら、落ち着いて支援を進めることができました。その際、より安心して病気療養に専念できるようにしたいという想いから、失効年次有給休暇の付与制度を新たに導入しました。こうした迅速な対応は中小企業だからこそできることではないかと感じています。」
“健康経営” “働き方改革” “ダイバーシティ推進”、これらを三位一体で取り組んだことで、生産性向上の効果を実感している。
最後に、働きやすい職場づくりのための取組みについてお話を伺った。
働き方を見直して、残業時間の抑制を行いました 「10年ほど前までは、一部の部署や従業員に業務が集中し、その部署や従業員が残業に追われるだけでなく、年次有給休暇などを十分に取得できないという状況があり、当社の課題でした。こうした状況を改善すべく、できるところから少しずつ対策を進めてきました。まず、毎週水曜日をノー残業デーとして設定しました。また、時差出勤勤務を可能とすることで、残業時間の抑制を実施しました。多能工化やジョブローテーションによって業務負荷の平準化も図りました。ハード面においては、ロボット機械の導入や、RPA・AI・DXなどのデジタル投資を行いました。治具・工具の改善も行い、不良率の低減につながりました。ソフト面においては、物探し・手直しなどのムダ作業の削減、レイアウト見直しによる製造・物流効率の最適化などを行い、全体的な生産性向上に取り組みました。」
「現在は、一か月の時間外労働が45時間以上になる従業員は全くいません。また、1人当たりの平均月残業時間も、10年ほど前(2014年度頃)は約20時間でしたが、現在(2024年度上期)は約6時間まで減少しています。年次有給休暇の取得率も、2014年度と比較して2023年度は20%以上上昇しました。男性の育児休暇の取得率も、2015年度までは0%でしたが、2019年度以降は100%を達成しています。」
働きやすい職場を作るために、従業員からの新しい提案を取り入れています 「また、2016年7月には、女性活躍推進プロジェクトチーム“ツギテラス”を設立しました。当社は男性の方が多いのですが、だからこそ、女性目線での新しい提案を積極的に行える機会を作ったり、女性従業員がよりモチベーションをもって仕事に取り組めるような活動を行ったりすることを目的としており、本来業務とは別のプロジェクトとして動いています。きれいな作業環境を作るための社内の整理収納や5S推進活動、取引先から一般のお客様まで幅広い客層に分かりやすい工場案内のための企画提案や案内の実施、女性従業員のモチベーションアップとネットワーク強化のための研修会やランチ交流会の企画・運営、年2回の社内報の発行など、多岐にわたる活動をしています。『自分たちが楽しむことを忘れずに、働きやすい職場づくりや社員のやる気向上につなげたい』という思いをもって活動しています。」
キャリコンルームを設置し、多くの従業員が利用しています 「また、心の健康づくり計画にもとづく社内相談窓口とは別にキャリア形成支援のための社内相談窓口として“キャリコンルーム”を設置しました。外部のキャリアコンサルタントが月に1回来社し、5人まで無料で相談することができます。キャリアパスや、ワーク・ライフ・バランス、職場の人間関係など、幅広い内容に対応しています。従業員が相談を希望するケースの他に、上司から促されて相談に来る方、育児やキャリアなどに悩みを抱えている様子の従業員に総務部が声を掛けて相談に来る方など、相談者が相談するきっかけはさまざまのようです。上司と一緒に相談するケースもあるようです。“キャリコンルーム”は総務部とは別組織で運用しているため、私たちは直接関与しておらず、相談内容も当然把握していません。ただし、相談者本人の希望がある場合は、キャリアコンサルタントからの報告を受けて、職場環境改善等の配慮を行うといった例外的な対応を行うこともあります。約3年間で延べ158名(2024年6月時点)が“キャリコンルーム”を利用しました。」
ダイバーシティ推進を広い視野でとらえ取組みの横展開をしています 「国の施策では、若者、女性、仕事と子育ての両立、仕事と介護の両立、仕事と治療の両立、高齢者、外国人、障がい者など、それぞれ別軸で示されていますが、それぞれを独立した支援として行うのではなく、共通して必要な支援をこの10年間かけて地道に作り上げてきました。例えば、女性を対象とした支援の中から働きやすい職場や相談しやすい環境が生まれ、それが、高齢者や外国人、障がい者の働きやすさにもつながっています。今後も、新たに支援を必要とする対象者が生じたら、その方に合わせた新たな制度を作り、その制度を他に必要な方にも使えるようにしていきたいと考えています。こうした取組みは、健康経営や職場のメンタルヘルス対策の一部になっていると考えています。」
「 “健康経営”、 “働き方改革”、“ダイバーシティ推進”、これらを三位一体で取り組んできたことによって、従業員の生産性が向上していることを実感しています。同時に、こうした取組みを社外にも広くPRすることで、企業価値の向上にも役立っていると感じています。今後も、従業員が安心して働くことができ、一人ひとりにあったワーク・ライフ・バランスを実現できる、働きやすい環境づくりを目指していきます。」
【取材協力】株式会社日本エー・エム・シー
(2024年12月掲載)