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スパークジャパン株式会社
(宮崎県宮崎市)
岡田さん スパークジャパン株式会社は1997年(平成9年)設立。ソリューション事業やインテグレーション事業、クラウド事業を中心とした総合IT業である。
社員数は82名(2024年7月現在)。
今回は、代表取締役社長の岡田憲明さんからお話を伺った。
①産業医に加えて、社内相談窓口と社外相談窓口を設置し、それぞれ情報管理を丁寧に行っており、社員が相談しやすい窓口に相談できる体制が構築されている。
まず、ストレスチェックの実施状況と相談しやすい環境づくりについて、お話を伺った。
ストレスチェックはweb上で実施し、社内外に相談窓口を設け幅広い相談に対応しています 「ストレスチェックは、実施者を含め、外部機関に委託して実施しています。毎年対象者のほぼ全員が受検しています。すべてweb上で実施のため、受検後に個人結果をすぐに確認することができるようになっています。」
「産業医は、近所の医療機関の医師に長年依頼しています。高ストレスという結果が出た者の中で医師による面接指導を希望する者がいた場合は、面接対応をしてもらっています。ただ、社員の多くは、個人結果をもとに、必要に応じて自ら専門医療機関を受診しているようです。」
「社内相談窓口は、総務部門の3人が担っています。なんでも相談のような感じで、ちょっとした相談から、最近つらいといった話まで、幅広い相談に対応しています。内容によって、総務部門の部長が対応することもあります。原則、私(社長)には内容が伝わらない仕組みにしていますが、会社としての対応が必要な場合は、本人の了承を得た上で私(社長)に伝えられることもあります。ただ、最近はそこまで進むことは無くなってきました。また、外部相談窓口も設置しており、電話や対面で相談対応できるようにしています。外部相談窓口ではハラスメントに関する相談窓口も兼務してもらっているので、対人関係や上司との関係の悩みなど幅広く対応いただいています。」
「ストレスチェック結果の集団分析は、当初は部門を細かく分けて出していたのですが、細かく分けるほど費用がかかる一方で、結果を見ておおよその原因はつかめるものの根本的な解決に至るのはなかなか難しいという実情を踏まえて、今は基本料金内に収まる5部門までの分析としています。」
「また、ストレスチェック制度は、法令上、私(社長)が社員それぞれの個人結果を知ることができません。社員のメンタルヘルス不調は、通院を始めたり、休業することになったりしてから知ることが多く、ストレスチェックに加えて、ラインによるケアを中心としたメンタルヘルス不調の未然防止に力を入れはじめました。」
②ラインによるケアを重視しており、管理職向け研修や1on1ミーティング、日報の活用などを通じて、上司が部下の様子にいち早く気づくための意識づくりや仕組みづくりをしている。
続いて、ラインによるケアの視点を中心に、社内コミュニケーション活性化の取組みについてお話を伺った。
管理職を対象に、ハラスメントやメンタルヘルス不調の未然防止などの研修を実施しています 「4年ほど前から、社内コミュニケーション、中でも上司部下のコミュニケーションの活性化に力を入れはじめました。具体的な取組みとして、まず、管理職を対象としたリーダー育成研修の中にラインによるケアの視点を盛り込んでおり、ハラスメントやメンタルヘルス不調を未然に防ぐためには上司が部下に目配りをすることが大切だと伝えています。例えば、部下に要求しても仕事が進まないということがあった場合、部下のスキルの問題だけではなく、職場環境など社内の他の部分に要因があることもありますし、家庭など仕事以外の面に要因があることもあります。また、月に1回は、上司と部下とで1on1ミーティングを行い、なんでも話せる機会をつくっています。」
日報を活用して、社員の様子の変化をいち早く把握できるようにしています 「2年ほど前からは、上司と部下との関係を強めるために、“日報”の活用をはじめました。社員の日報を見ることができるのは直属のラインにあたる上司のみとしており、具体的には、グループ長、部長、そして私(社長)が見ることができます。日報には、その日の業務内容や進捗状況と共に、上司に相談したいことがあれば書いてもらうようにしています。相談したいことが書かれていた場合は、その日のうちに対応するようにしています。書き方や内容などから、“いつもと違う”といった変化に上司がいち早く気づくことができるツールとしても役立っています。」
新入社員に対しては、メンター制度で年次の近い社員に相談できる体制を整備しています 「その他、メンター制度を設けています。入社1年目の社員に、入社3~7年目の社員が原則1年間メンターとなって対応しています。メンターとなる社員は、メンティーとなる社員とは別の部署の先輩になるようにしています。『最近、どう?』といった声掛けを通じて、新入社員の状況把握と相談対応を行ってもらっています。休日のことなど仕事とは少し離れた内容の会話も意識的にしてくれており、そうしたやりとりを通じて新入社員の気持ちがほぐれ、本音で話せる関係が少しずつ作れているようです。」
③目安箱を設置して一つひとつの要望にしっかり向き合い対応したり、病気などで出社の難しい社員にテレワーク勤務を認めたりと、働きやすい職場づくりを進めている。
最後に、働きやすい職場づくりについてお話を伺った。
社長に直接意見を伝えられるような仕組みをつくり、対策が必要な意見にはすぐ対応しています 「6年前に、私(社長)に直接意見を届けることができる目安箱システムを自社開発し、設置しました。業務改善に関する要望を受け付けることを主な目的にしていました。受け付けた要望は、3か月に1回、個人名等を伏せた上で全社員に共有し、実施するか否かとその理由をフィードバックしています。」
「以前目安箱に入っていた要望の中に、『毎朝、全員参加の全体朝礼を行っているがムダではないか。部門ごとの調整に時間をかけた方がいいのではないか。』といったものがありました。全員参加の朝礼は、創業以来毎朝実施していましたし、意味のあるものだと思って大事にしてきました。しかし、社員からの要望を受け、企業規模が大きくなっている今の当社の状況を踏まえれば、たしかに全員で朝礼を行うよりも、部門ごとの状況確認や情報共有に重きを置いた方がいいという考えに至りました。そこで、毎日の朝礼を部門ごとの実施に変更し、全員での朝礼は月1回にしました。『要望を踏まえて、全体朝礼をやめます』と説明した時は、自分たちが意見を言ってもいいんだ、可能なものはすぐに実行してくれるんだ、といった感じで衝撃的だったようです。目安箱は4年行ったあたりで形骸化してきたので、廃止しました。その後は、総務部門や私(社長)に言ってもらえれば、実行できるものは3か月も待たせることなくすぐに実行するようにしています。」
病気やワークライフバランスに配慮した働き方を推進しています 「また、長く安心して働いてもらえるための施策も行っています。病気などで出社することが難しい社員に対しては、在宅でのテレワーク勤務を可能にしています。持病が長引いている社員などは、勤務時間を減らすなど無理なく働ける業務調整も行っています。私も昨年、膝の治療で出社が難しい時期がありました。その間、パソコンと携帯電話で業務はできていたものの、現場の社員の場合はさらにいろいろな対応が必要だろうと感じたため、今後さらに取組みを進めていきたいと考えています。」
「社員には日頃から仕事もプライベートも充実させるために、ワークライフバランスを大事にするように伝えています。有給休暇を取得しやすい環境づくりも行ってきましたので、最近では、男性社員で育児休暇制度や介護休暇制度を活用する者も増えてきています。メンバーが抜けても皆で支え合って業務をまわせる体制ができつつあり、その成果があらわれているのだと思っています。当社は人が資本ですので、これからも働きがいがあり、皆が長く働きたいと思ってもらえる会社にしていきたいと考えています。」
【取材協力】スパークジャパン株式会社
(2024年9月掲載)