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株式会社エグゼクティブ(東京都中央区)

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株式会社エグゼクティブ
(東京都中央区)

株式会社エグゼクティブは2002年(平成14年)設立。営業代行サービスを行っている。
従業員数は約30名(2023年6月現在)。
今回は、セールスサポート部の田中淳子さんからお話を伺った。

テレワークでも、出社しているような横のつながりをもてるように、『おでこ出社』や『1155(いいごご)タイム』、チャットでの気軽なコミュニケーションなど様々な工夫をしている

まず、テレワーク導入までの流れとテレワークにおけるコミュニケーション促進のための工夫についてお話を伺った。

「当社がテレワークの導入に取組みはじめたのはコロナ禍になる前です。社長が場所や時間にとらわれずに働ける環境を設計したいという思いが強くあり、その手段の一つとしてテレワークの導入を検討しはじめました。」

「社会的には、育児をしながらだと周りに迷惑をかけてしまうので仕事探しに躊躇してしまうといったことや、産休育休をとるとキャリアが止まってしまうといったことも、まだまだあるかと思います。そうした状況は本当にもったいない、という考えを社長がもっていて、働く意欲のある人は、何か事情があったとしても安心して自由に働ける環境を作っていくことにしました。2017年に、社長からの“NLPT※宣言”として、『働くのに場所も時間も関係なし!』というメッセージを、社内外にずっと出し続けています。」
※NLPT=Our company has No Limitations on the location of workPlace and working Time.

「テレワークの浸透には、確かに時間がかかりました。はじめのうちは、デザイナーなど家でも仕事しやすい職種のメンバーが、家で集中して作業したいときにたまに使うくらいで、遅々として進まない状況でした。そこで、強制的にトライしてみる必要があると考えて、2018年に“緊急避難訓練”と名付けて、何かあった時に家でも仕事ができるよう、社員全員に必ず1回はテレワークを体験してもらいました。チームで仕事をしていますので、その時は、同じチームの人同士の実施日が重ならないよう、事前に調整しました。その後、台風で出社が少し難しい日があったのですが、家にノートパソコンを用意していた人は出社せず、テレワークで仕事ができてラッキーという体験をした人が多くいたこともあり、そこからテレワークが一気に定着していったと感じています。家でも普通に仕事ができることを社員自身がすごくメリットを感じてくれました。その後、2020年からのコロナ禍があったのですが、スムーズにテレワークに移行することができました。現在は全社的に永続的な100%テレワークとしており、定められた出社日はありません。」

「テレワークでの勤務中は、“おでこ出社”をしています(【写真1】参照)。会社に出社したら隣に同僚がいて、『おはよう』など挨拶しますよね。また、今は忙しそうだから声をかけるのをやめておこうとか、あるじゃないですか。そういうことができる環境を、テレワークでも作りたいという想いがありました。そこで、オンライン会議ツールを常時つなげているのですが、急にお子さんが帰ってきた画面に映り込むなど、急なこともあるので、画面はオンにして“おでこ”だけ常時映して、音声はミュートにして日々仕事をするようにしました。」

「最近の新入社員のメンバーは入社時からフルリモートなので、一度も、実際に会ったことがない社員もいます。そのような中で、私たちがいくら『大丈夫だよ』と言っても、やはりとても不安だと思うんです。でも、社員皆が“おでこ出社”をしていますから、パソコンの画面を見れば、実際に動いている人がいるということがわかります。そこから、『一人じゃないんだ』 、『今この時間に一緒に働いている仲間がいるんだ』ということが、感じられているようです。また、画面をみれば、同僚が忙しそうかどうかもわかるので、落ち着いていそうなときに、チャットで『この後、打ち合わせお願いできますか』など、事前に様子を確認した上での相談もしやすいです。」


【写真1】おでこ出社の様子


【写真2】出社・オンラインのハイブリッドミーティングの様子

「また、1日1回、11時55分から5分間、『1155(いいごご)タイム』という時間を作っています。小さなグループをランダムで作って、そのメンバーと雑談をする時間です。組み合わせはシステムが自動でしていますので、久しぶりという人もいればよく一緒になる人もいます。このようなちょっとした社員同士の接点を増やすように心がけています。5分間はあっという間なのですが、名残惜しいくらいがちょうどいいのかなと感じています。」

「あと、社内で使用しているチャットツールの中に様々なシチュエーションで伝えることができる部屋(ルーム)を用意しています。“おはよう”など挨拶をする部屋や、今日の夕飯などについておしゃべりする部屋、もちろん業務の部屋も様々なレベルで用意しています。そうした場所に発信することももちろん大事なのですが、発信されたものを、皆で見るということもとても大事で、見ていると親近感がわいてくるんですよね。そうすると、発信していた相手に対して、次の相談がしやすくなることにつながります。『あの時、〇〇が好きって言っていましたよね』といった話ができ、コミュニケーションがとりやすくなると思います。また、広報チームが社員にインタビューした動画を作成して定期的に配信しているのですが、そういうものを見ることも同僚相手のことを知る機会になっています。こうした様々な取組は、給湯室に行ってお菓子を食べながらちょっと話をするといった感覚で、自分のタイミングで見てもらいリラックスした上で仕事に戻る、という感じで使ってもらえたらいいなと思っています。」

【写真】【写真3】社内FAQサイト「テレワークを本格的に導入して、チャットツールを活用したコミュニケーションが活発になって面白かったのが、ナレッジ(企業などの組織にとって有益な知識・経験・情報)が溜まっていくということです。チャットで質問をすると社内の様々な人が答えてくれています。そのようにして蓄積された情報をまとめ直して、社内FAQサイトを作成しました(【写真3】参照)。そうすると、これまでは、同僚などに何回も質問していたことが、まずFAQサイトを確認しにいくようになりました。それでもわからないことがあれば、質問するといった流れができましたので、自分がどのように動けばいいのかということを、自分で考え組み立てやすくなりました。テレワークはやはりある程度の能動性が必要で、いつまでも待っていてわからない状態だと何も進まず、余計に不安になってしまいがちですので、自分で調べにいけるようにすることは大事ですね。テキストでやりとりした結果の副産物として、業務の面でも大きな成果になっています。」

「オフィスは、“仕事をする場”ではなくて、“コミュニケーションをとる場”に発想を転換しました。以前は普通に事務机と椅子、デスクトップパソコンがある典型的な事務所だったのですが、コロナ禍となり最初の緊急事態宣言が出た後、少し落ち着いた夏頃に、社員皆でDIYをして全面改装しました。社員自身で設計図面を引いてくれて、材料も自分たちで買ってきて、カーペットも剥がして床を貼って、3か月くらいかけて作りました。プロの業者の方にも驚かれるほどの出来栄えです。(【写真4】参照)」


【写真4】オフィスを“コミュニケーションをとる場”に転換

自分の働き方を選ぶ、業務を可視化する、同時に様々な立場を経験する、といったことを通じて、互いにサポートし合い相手を思いやる風土が醸成されている

次に、多様な働き方の仕組みとそのメリットについてお話を伺った。

「当社では、無期雇用の正社員の働き方として、“週3正社員”、“時短正社員”、“フルタイム”の3種類を用意しています。週3正社員だからリーダーになれないといったことはなく、まったく同じ人事評価基準を使っていますので、どの働き方であっても頑張ったことは、同じように評価に反映される仕組みになっています。」

「このような仕組みづくりはいろいろと大変でしたが、メンバー間で不満やずるいといった感情は出てきていません。一つには、『一人ひとりが自分の働き方を自分で選んでいる』ということがあると思います。フルタイムで働きたい人が、自らフルタイム勤務を選んでいる、ということは大事なポイントだと思います。」

「また、業務を可視化しているということも大事だと思っています。家庭の事情などで急に帰らなければならないときに引継ぎに時間がかかってしまうと困ってしまいますが、日頃から仕組みとして業務を可視化しているので、『帰るね』と同僚に言ったら、『分かった』と言いやすい環境ができています。誰かが代わりに仕事をしてくれたということも見えますし、その人がどこまでどのような状態で行っていたのかもわかるようになっています。」

「仕事を各チームで行っているということもあると思います。一人のメンバーが複数のチームに所属して仕事しているのですが、それぞれのチームに、フルタイム勤務の人もいれば、週3勤務の人もいれば、時短勤務の人もいる、子育て中の人もいれば、ご家族が病気でサポートしなければならない人もいる。チームで動くため他の人の様子や背景が見えやすいというところがあると思います。そのため、『今日は子どもの具合が悪いので早退させてもらうけれど、あなたに何かあったときは全力で手伝うね』と、助け合う風土が醸成されています。それぞれが相手の立場に立って、自分もいつ何があるかわからないし、自分もサポートしてもらっていて感謝している、という気持ちをもちながら仕事しています。」

「チームで仕事をしていることにはもう一つ良い面があると思っています。一つのプロジェクトの中には、プロジェクトリーダー、サブリーダー、メンバーといった役割がありますが、例えばAのプロジェクトではリーダーだった人がBのプロジェクトではメンバーだったりするんです。様々な立場と考え方を並行して進める必要があります。そのため、例えば威張るリーダーだと誰もついてこないとか、こういう風に振舞うリーダーだと質問しやすいなどといったことを、自分自身がメンバーとして体感しているので、自分がリーダーのプロジェクトではそのようにしようと思ったりしているようです。」

「また、当社では社長との1on1ミーティングを実施しています。“自分の人生を通してどういうことを行っていきたいか”をテーマに話します。一般的な1on1は業務の進捗を確認するといったことが多いイメージがありますが、当社では『自分の人生を通してどういうことを行っていきたいか』をテーマに話します。何かに向かって一生懸命やるということは、頑張ってやろうというモチベーションにもつながりますし、それが業務にも反映されてきます。」

社内相談窓口はあるが、誰にでも気軽に相談できる環境が整っている

最後に、メンタルヘルス対策の取組みと想いについてお話を伺った。

「従業員数50人未満なので産業医は選任していませんが、何かあれば地域産業保健センターに電話して相談しています。」

「社内の相談窓口は私(田中さん)となっていますが、社員の多くは日頃からプロジェクトのリーダーや先輩、同僚にもよく相談しています。社員本人から社長に直接相談がいくこともあります。社員にとっては、いろいろな相談先があった方がいいと思っています。」

「すごい取組みをやっているという意識はなく、トップ(社長)のぶれない方針のもと、一つ一つ手弁当で実施してきました。工夫しながらも、課題にぶつかったらまた工夫して、ということを今も頑張っていますし、今後も続けていきたいと思います。」

【ポイント】

  • ①テレワークでも、出社しているような横のつながりをもてるように、『おでこ出社』や『1155(いいごご)タイム』、チャットでの気軽なコミュニケーションなど様々な工夫をしている。
  • ②自分の働き方を選ぶ、業務を可視化する、同時に様々な立場を経験する、といったことを通じて、互いにサポートし合い相手を思いやる風土が醸成されている。
  • ③社内相談窓口はあるが、誰にでも気軽に相談できる環境が整っている。
  • ④産業医はいないが、必要時には地域産業保健センターを利用している。

【取材協力】株式会社エグゼクティブ
https://www.executive.jp/index.php
https://executive.jp/exemedia/index.php
(2023年7月掲載)