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株式会社ジュピテック(兵庫県神戸市)

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株式会社ジュピテック
(兵庫県神戸市)

【写真】西岡さん、粕谷さん、石田さん ジュピテックは1998年(平成10年)設立。ハードウェア及びソフトウェアの設計・開発を行っている。
ジュピテックの従業員数は約35名(2022年11月現在)。
今回は、代表取締役の粕谷直樹さん、健康経営担当の社長室長の石田昭人さんと西岡美智代さんからお話を伺った。

社長から社員に気軽に声をかけることで、社員が社長に話しやすい雰囲気が生まれている

まず、社員とのコミュニケーションについてお話を伺った。

【写真】健康経営に関する認定証や登録証は従業員が目にする場所に置いています 健康経営担当者(石田さん、西岡さん)
「粕谷社長はとても話しやすい方で、日頃から社員は社長に話しかけています。社長室は、なかなか誰も来ない、近寄りがたい場所だと思うのですが、当社は気軽に社員が入ってきています。『自分はずっと平社員でいいんや』とか、そんなことまで話せる関係性ができていることがすごいと感じています。社長も、『あの子悩んどったからちょっと話そうかな』と気にして、実際に行動されています。」

粕谷さん
「特に何か特別なことを意識して、社員と接しているわけではありません。気になる社員には声をかけたり、SNSで連絡をしたりしています。新卒入社の社員は、研修日程などをSNSで連絡してほしいとの依頼でしたので、そうした機会にSNSのアドレスを交換し、その後も何かあったらSNSで連絡しています。『最近どう?』とか『ご飯いこうか?』と声をかけた上で、何か話しはじめたら聞くという感じで、堅苦しいことはしていません。」

粕谷さん
「当社はエンジニアの社員が多いのですが、仕事をしていると1日誰とも話さないこともあるので、“たまにはここ(社長室)に遊びにおいで”と声をかけています。難しい話をするわけではなく、雑談です。とはいえ勤務中ですので、上司が気になって何か言われたら『社長に呼び止められてつかまってました。って言っといて』と言っています。」

健康経営担当者
「皆さん、社長室のアイスやお菓子を食べながら、気楽に話をしています。」

カウンセリングを導入することで、社員が安心して働き続けられる環境を提供し、離職に伴う採用コストを低減している

次に、カウンセリングの導入についてお話を伺った。

【写真】悩みなどはもちろん、和やかな雰囲気もある何でも話せるカウンセリングです粕谷さん
「当社では、労働安全衛生法に基づくストレスチェックを実施しています。また、2018年頃から、福利厚生の一環としてカウンセリングを導入しています。カウンセリングは、1人30分、2か月に1回全員が受けられる環境を整備しています。」

粕谷さん
「カウンセリングを導入したきっかけは、つながりのある知り合いに勧められたことです。社会的に心の病気になる方が増えている中で、第三者であるカウンセラーに早めに悩みを話せるだけでも違う、離職率を下げる効果もある、という話でした。ただ、導入したからといって、すぐに数字的な結果が出るものでもないということでしたので、まずは半年間の体験コースを導入してみました。」

粕谷さん
「カウンセリングのスケジュールを組んだらほとんど皆受けてくれています。予約枠に空きが出たら、さらにカウンセリングを受けたいという者もいます。現在まで継続して行っています。担当のカウンセラーからは、プライベートな話も出てくるようになってきていると聞いており、それなりの効果があるのではないかと考えています。」

粕谷さん
「カウンセラーには守秘義務がありますので、事前に個人情報に関する誓約書を書いた上ではじめました。そのため、誰がどのようなことを話したかの内容は、全体的な傾向などは共有してもらっていますが、命に関わること以外、私には伝わってきません。」

健康経営担当者
「こうした仕組みが社内にあることは、社員にとっても安心感につながると思います。いきなり精神科など専門の医療機関への受診となると非常にハードルが高いですし、カウンセリングを自分で受けるということも、ハードルはもちろん料金もまちまちで、なかなか一歩を踏み出すことは難しいと思います。社内でカウンセリングを受けることができ、しかも自分で申し込むのではなく必ず2か月に1回、社員全員に順番が回ってくるというのも話しやすさにつながっていると思います。ずっと同じカウンセラーが担当なので、いろいろとわかってもらえていることも大きいと思います。」

【写真】カウンセリングの日に施術もあり、疲れた体をほぐしてもらいます 粕谷さん
「会社としてカウンセリングサービスを継続することは、それなりに費用がかかります。しかしながら、新たな人材を1人採用しようとすると、中途採用も含め業務教育の労力も費用の一部となります。こうした投資が利益につながるまでには何年もかかります。せっかく採用した人材が短期間で辞めてしまうとコストばかりが出ていってしまうのです。だから採用した人材を大切にして、途中で退職することなく働き続けてもらえる環境をつくる方が、長期的にみて、コストが低いのではないかと考えています。」

粕谷さん
「もちろん、当社の仕事がやりたいことと違っていたという理由で退職される方や、家庭の事情でどうしても退職せざるをえないという方もいます。そうした方を無理に引き留めるというわけではありません。ただ、仕事は好きだけれども職場の人間関係が良くないとか、そのために強いストレスを感じて心の病になるということは無くした上で、社員皆には、働き続けてもらえたらいいなと思っています。」

性格パターン評価ツールを活用して、社員の性格特性に合った関わり方や配置を推進している

最後に、社員の特性に合わせた関わりについてお話を伺った。

粕谷さん
「当社では、社員の性格パターン評価ツールを活用しています。質問項目に答えると、12の要素に関するレーダーチャートが出てくるものです。積極性や協調性など、社員一人ひとりの個性が結果として出てくるのですが、これが割とよくできていると思います。その結果から、この人はどういうことが向いているのかということを把握して、それに合わせた関わり方をするようにしています。」

粕谷さん
「社員に事前に確認した上で、本人の自己理解と社長や管理職がその本人特性を活かすことを目的としています。そのため、管理職に対しては、自分自身の性格特性を理解してもらうことに加えて、部下の特性についても理解してもらい、関わり方を工夫するように伝えています。たとえば、同じ業務をさせるにしても、指示の仕方によって相手の受け取り方は変わります。細かいことをだらだら言われることが嫌なタイプの部下には、概略をざっくり説明して“お願いね”とだけ伝え、まずやってもらうようにしてみます。また、褒められると頑張れるタイプの部下に対しては、上司が意識的につど褒めるようにしています。上司が意識して部下と関わることで、チームとしてもうまくいっているように見えます。」

粕谷さん
「このツールは、採用活動時にも活用しています。本人の同意を得た上で、業務経歴だけでは分からない、その人の内面的なところを理解する方法のひとつとして活用すると、採用後のミスマッチが少なくなっていると思います。」

粕谷さん
「新卒で入社した社員は、社会に出てから接する人の幅も広がります。仕事を通して考え方も変わりますし、成長していきます。性格パターン評価ツールは数年ごとに1回実施しているのですが、新卒入社の社員は結果も変わっていきます。それを見ると、会社の方向性に合わせて育てていくことが大事だと感じています。一方で、50歳を過ぎると、ほとんど変わらないといった傾向があるようです。そのため、中途入社の社員に対しては、変わってもらうことを期待するよりも、本人の性格特性に合ったポジションに配置することが大切だと考えています。その方が、本人も不要なストレスを感じることなく、やりたいことができてモチベーションが上がるのではないかと考えているからです。」

【ポイント】

  • ①社長など組織のトップから社員に気軽に声をかけることで、社員が社長に話しやすい雰囲気が生まれている。
  • ②社員全員に対する定期カウンセリングを導入することで、社員が安心して働き続けられる環境を提供し、離職による採用コストを低減している。
  • ③種々のツールを活用するなどして、社員の性格特性に合った適正配置や関わり方を推進している。

【取材協力】株式会社ジュピテック
(2022年12月掲載)