大阪信用金庫(大阪府大阪市)

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大阪信用金庫
(大阪府大阪市)

右側が小澤さん大阪信用金庫は1920年(大正9年)設立。72店舗を抱える大手信用金庫である。
大阪信用金庫の役職員数は1,416名(2021年12月現在)。
今回は、人事部ヘルスサポートチームの小澤珠美さん(保健師)からお話を伺った。

職員が働いている現場を訪問し、全員と話をすることで、職場環境や地域性、職員の人間関係など幅広く把握することができる

まず、健康経営に向けたメンタルヘルスに関する取組みについて、お話を伺った。

「当金庫の理事長が健康経営に力を入れたいという考えから、2019年に私ともう一人の保健師が初めて雇用されました。私は最初、信用金庫がどのような組織なのか、どのような人たちが働いているのか知りたいという思いがありました。また、幹部側からも支店で働く職員の声を吸い上げたいから支店をまわってほしいという要望がありました。そこで、初年度に1年かけて、保健師2人で手分けして全支店をまわって、職員全員と面談を行いました。」

「1日20~25人、長い人で30分ほど面談しました。お聞きした内容としては、体の面、心の面、業務内容や人間関係などです。また、健康診断結果を踏まえて治療の状況や食事のことなどの確認も行いました。実際に支店に行ってみると、その人たちが働いている環境や、駅から近いのか遠いのか、どのようなお客様がいらっしゃるのか、などを直接見ることによって分かりました。また、おおよその年代構成や職員の関係性も分かってきました。実際に足を運ぶことが大事だということがよく分かりました。」

【図2】メンタルヘルスセミナー 「他の活動として、今年はメンタルヘルスセミナーと睡眠セミナーを実施しました。メンタルヘルスセミナーでは、パワハラ防止について精神科の先生に講演していただき、役職者全員に聞いてもらうために3回に分けて実施しました(【図2】参照)。また、睡眠セミナーについても専門の先生にお願いし、睡眠に関する知識や健康との関係などについてお話いただきました。講演終了後には、講演の動画をイントラネット上で、いつでも見られるようにしています。」

「各支店には、“健康推進委員”がいるのですが、健康推進委員と労働組合員に向け、3か月に1回、私から健康に関するテーマについてお話ししています。健康推進員も通常業務がありますので、そのためだけに単独で集まってもらうことはなかなか難しいので、定例会議の中に、15分ほど時間をもらい実施するようにしています。(【図3】参照)。たとえば、ストレスチェックがテーマの時には、ストレスチェックは、皆が働きやすくなるよう職場状況を把握することが主な目的だといったことを説明した上で、職員の方々には正直に回答してほしいと伝えています。」

【図3】健康講話 「全員面談を行った時、ストレスチェックの結果が高ストレスだった方がいたので、確認したところ、『面倒なので全部1をつけました』と言われたことがありました。私も驚きましたが、『自分の健康状態をちゃんとチェックするために正直につけてほしい』と伝えました。このような出来事があってからは、様々な職員に対して、機会のあるたびに同様のことを何度も言っています。言い始めて今年で3年目ですが、正直に回答してくれる人が多くなったように思います。」

「職員の面談は随時行っています。私の方で連絡窓口となる携帯電話を常に持ち歩いているので、応急的な相談も含めて月20件程度あります。支店の人から『この人心配なので』と相談があった方や、重い状況にある方などは、なるべく対面で相談対応するようにしています。」

チェックリストを活用しながら部署全員に面談を行い、それらの結果を踏まえてグループ討議の場を設けることで、効果的に職場環境改善を実施している

次に、ストレスチェック後の職場環境改善活動について、お話を伺った。

「ストレスチェック後の職場環境改善活動は、最初、本当に手探り状態でした。ただ、せっかくストレスチェックを実施したのだから、職場環境改善も行わないともったいないという気持ちがあり、保健師2人で相談しながら進めてきました。」

【図4】いきいき職場づくり調査票 「はじめは、“メンタルヘルスアクションチェックリスト”を活用してみましたが、実施方法や項目などが当金庫では活用しにくいという感じがありました。そこで、 “メンタルヘルスアクションチェックリスト”と“MIRROR(メンタルヘルス改善意識調査票)”を参考にしながら、私たちの職場に役立ちそうなものを選別して、当金庫オリジナルの“いきいき職場づくり調査票”を作成しました(【図4】参照)。“メンタルヘルスアクションチェックリスト”と“MIRROR”のいいとこ取りをしたような項目立てになりました。」

「職場環境改善活動の具体的な流れとしては、対象支店に私たち2人で訪問して、朝から14時頃まで職員全員と個別面談します。事前に“いきいき職場づくり調査票”に回答してもらい、まだの方にはその場で回答してもらった上で、その回答結果に沿って話を聞いていきます。だいたい長い人でも30分くらいです。そして、集計作業とヒアリングまとめをして簡単な報告書にまとめます。15時に窓口が閉まるので、15時30分頃から報告書に沿って傾向を報告した後、グループ討議を15~30分程度行って終わりという流れです。対象とする支店は、総合健康リスクの値が120以上としており、2020年度は7か所、2021年度は4か所実施しました。」

「個別面談では、“いきいき職場づくり調査票”で“ぜひ改善が必要”や“できれば改善が必要”と回答している項目について、そう思う理由などを聞いていくと、みんな同じように思っているところがあることがわかり、職場の課題点が明確になることが多くありました。」

「個別面談が終わったら、集計作業をしてグループ討議で話し合ってもらいます。支店長にも相談しながら進めています。支店は、営業部門、融資部門、窓口で事務を担当する部門、の3つのグループに分かれているのですが、グループ内の課題もあればグループ間の課題もあります。事前に把握した課題に応じて、グループ内の課題はグループ内で、グループ間の課題はグループ間で話し合う形式にしています。私たちも話しやすくなるようにファシリテーションしますが、意外と意見が出るなと感じています。グループ討議を通じて、職員の方々は思ったことが言えているのではないかと思っています。」

「グループ討議を通じて多い課題が、グループ間のコミュニケーションに関する内容です。たとえば、営業部門の職員が提出した融資に関する書類に不備があり、融資部門から修正依頼がきたけれども、そのやりとりがうまくいかなかったり、机の上に置いてあるだけでそっけなかったりすることがあったそうです。そういう時に、一声かけたり、メモを書いた付せんをつけたりするといった気配りが大事だという意見がありました。そういう風に思っている職員がいることは、私たちにとっても勉強になりました。」

「グループ討議の最後には職場環境改善のために取り組む内容を各支店で決めることにしています。月1回、3か月にわたって報告を支店長から私たちに提出する形にしています。しかしながら、最近では日々の忙しい業務に追われ、取組みを進めるゆとりがない様子もわかってきたので、もう少し私たちのフォローが必要なのではないかと感じています。たとえば、これまでは事後のやりとりはメールが中心だったのですが、電話でのやりとりをしたり、もう一回訪問したりすることで、支店の様子を伺い確認しながら支援することも考えています。」

「職場環境改善活動を行ったすべての部署で、次年度には総合健康リスク値は改善していて、驚いています。高ストレス者も減りました。これからも、良い取組みを続けていきたいと考えています。」

【ポイント】

  • ①職員が働いている現場を訪問し、全員と話をすることで、職場環境や地域性、職員の人間関係など幅広く把握することができる。
  • ②チェックリストを活用しながら部署全員に面談を行い、それらの結果を踏まえてグループ討議の場を設けることで、効果的に職場環境改善を実施している。

【取材協力】大阪信用金庫
(2022年1月掲載)