株式会社タック(岡山県備前市)

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株式会社タック
(岡山県備前市)

タックは、1957年(昭和32年)設立。シールド工事をはじめとした地下空間の整備を主に行っている。
タックの従業員数約60名(2021年現在。グループ会社含む)。本社などの岡山地区では従業員数40名。
今回は、代表取締役社長の瀧川信二さんと、総務部の高橋千亜紀さんからお話を伺った。

これから会社を担っていく若手メンバーを中心にクレドを作成してもらい、ベテラン勢の気持ちにも配慮しながら実施を進めたことで、今ではクレドが会社の基盤となっている

まず、クレドを作った経緯や想いと委員会活動について、お話を伺った。

瀧川さん
「“クレド”とは、“信条”、“志”、“約束”などを意味し、企業活動の拠り所となる価値観や行動規範を簡潔に表現したものです。このクレド活動を10年前からはじめました。きっかけは、経営の勉強会に参加したときに、“会社を伸ばしていくためには社員の成長が一番大切”、“トップダウンからボトムアップに変えていかないと会社の成長はない”と言われたことでした。仕事が多かった時代はトップダウンでも良かったのかもしれませんが、今は数少ない仕事をとってくる必要があります。仕事を通じて、経験の幅が広がり、人間的な成長につながると考えていますので、いかに仕事をとってくるかがとても重要です。そのためには、営業部門が頑張るだけではなく、当社を利用したお客様にまた利用したいと思ってもらうことが大切であり、それは社員一人一人の対応次第です。そうした対応を、社員が“やらされている”と感じるのではなく、“自然とお客様のために一所懸命やっていく”、“それが自分のためにもなる”という感覚をもってもらいたいと考えています。そのために、社員が主体性をもってもらうことが大切だと考え、クレド活動をはじめました。」

【写真1】研修の様子 「クレドは、これから会社の中心となっていく若手メンバー約10人に、半年かけて作ってもらいました。毎月数回、会社から離れた研修センターにこもって、集中して意見交換が行われました。私からは、こういう会社になっていってほしいという想いを伝えて、それを達成するための具体的な目標や、ミッション、ビジョン、バリューを考えてもらいました。あとは黙って見守るようにしていました。しゃべらないことはとてもつらかったです(笑)。」

「実際には、クレドを作るよりも、全社員に共有してスタートしていく方が大変でした。当社には60~70歳の腕の立つ職人がいて、普段は温厚な人たちなのですが、クレド活動を始めることを伝えると、突然怒り出したんですね。『なんでこんなことをやらなきゃいけないのか!朝8時から夕方5時まで死に物狂いで働いているのに、これ以上何をしろというんだ!』と。彼らの言い分もよくわかりましたし、研ぎ澄まされた技術者たちがそういう意識で仕事に取り組んでいることがわかって、その時はむしろ嬉しかったですね。とはいえ、『若手社員が一生懸命やろうとしているのだから』と私から事情を伝えて、『それならまずやろうか』という感じで始まりました。」

「数カ月後には『いい活動じゃないか』という雰囲気に変わってきました。当社のクレド活動の中心にあるのは、“挨拶”と“掃除”です。『クレド活動をはじめて、若手社員もちゃんと挨拶と掃除ができるようになった』と年長者も認めてくれるようになったのです。こうして、今まで続いています。」

「クレド活動の他に、社内には“資質向上委員会”、“行動規範委員会”、“ホウレンソウ委員会”、“品質向上委員会”という4つの委員会があり、役員以外の全員がいずれかの委員会に割り振られています。委員会活動は業務と同等の価値があるものと位置付けており、業務時間内に話し合いの場を設けています。その中では、“会社をいかによくするか”、そして、“そのために社員同士がいかに成長できるか”ということについて、一人一人が考えて話し合っており、それが“お客様の話を聞いてちゃんと説明する”ということにつながっていると感じています。通常業務ではなかなか身につかないところだと思います。」

社員を大切にする気持ちが自然と健康経営の取組みにつながり、それが評価され、採用などの結果にもつながっている

次に、健康経営の取組みについて、お話を伺った。

【写真2】ボウリング大会
【写真3】バーベキュー大会
高橋さん
「健康経営優良法人への申請は、2年目(2017年度)から行っています。きっかけは、生活習慣病予防の取組みを支援してもらっている協会けんぽの方に、健康経営優良法人の申請案内をもらったことです。項目を見てみたら、すでに当社で実施していることが多かったので、申し込んでみようと思いました。認定をもらいたくて健康経営の取組みをはじめたわけではなく、通常業務の中で行っていた取組みが評価されたという感覚です。」

瀧川さん
「健康経営はとても大事だと考えています。“社員には経験を積み成長し、幸せになってもらいたい”という気持ちが強くあります。この気持ちがなければ、会社を経営する意味がないとすら思っています。自身の喜びをここに一点集中しているので、仕事が厳しくなっても、働き方改革などの取組みが必要になっても、優先順位がぶれることはありません。」

高橋さん
「具体的な取組みとしては、イベントを含め様々実施しています。たとえば、年に1回会社負担で社員旅行に行ったり、コミュニケーションの機会として、バレーボールや卓球などのスポーツ大会を定期的に開いたりしています。中でもボウリング大会は毎年開催しています。当社は20歳~79歳まで幅広い年齢の社員がいますが、年齢に関係なく、運動を通じてコミュニケーションがとることができています。」(【写真2】参照)

【写真4】感謝カード

【写真5】感謝カード(8月度MVP)
「入社式や昇進式、忘年会などの懇親会も会社負担で実施しています。福利厚生は充実している会社だと自負しています。コロナ禍になるまでは、ほぼ全員が参加しており、コミュニケーションの場となっていました。会社負担といっても、これは社員全員で獲得した利益を還元しているだけのことです。」(【写真3】参照)

瀧川さん
「“感謝カード”の取組みも実施しています。たとえば『一緒に残業してくれてありがとう』など感謝の言葉を送りたい社員に対して、書きたい人は何枚でも書いてもらっています。まわりとの関係を文章で示すことは、“目配り、気配り、心配り”であり、安全にもつながると考えています。書いてもらった感謝カードは社内に貼りだして、社員に“いいね!シール”をつけてもらうことで、毎月のMVPを決め、その中から年間のMVPが決まる仕組みになっています。」(【写真4】、【写真5】参照)

「以前は、採用が難しい状況が続いていました。片田舎で50人規模の会社のため、周囲に知られていないのではないか、健康経営優良法人の認定をとったら周知されて状況が変わるのではないかという気持ちもあり、申請してみようと思いました。他にも、2020年にはものづくり日本大賞の“経済産業大臣賞”を、2021年には国土技術開発賞の“創意開発技術賞”を受賞しました。こうしたものが錦の御旗になり、2021年の採用活動では、内定者を県内外から5名もとることができました。会社の特徴として“健康経営優良法人 ブライト500”と書けることは大きいと感じています。」

相談体制を整えたり、報告をルールにしたり、社員が一人で抱えないですむ環境をつくることで、社員のメンタルヘルスを下支えしている

最後に、メンタルヘルスに関する取組みについて、高橋さんを中心にお話を伺った。

高橋さん
「当社はストレスチェックの実施義務の対象事業場ではありませんが、健康経営の評価項目にもストレスチェックの実施に関するものがあるので、必要性を感じ、2020年に初めて実施しました。メンタルヘルス対策という点では、小さな会社で目が行き届くところに皆いるので、日頃からコミュニケーションがとれているとは思っていますが、社員がどのくらい不安や不満などを抱えているかは、会社として把握しておく必要があるのではないかと考えました。」

「ストレスチェックと併せて、食事や睡眠など健康面に関するアンケートも実施しました。その結果、当社の社員は食事や睡眠に対する意識が低いということがわかりました。食事は体の資本ですから、備前市の保健師さんと相談しながら、特に、働き盛りの人に食事や健康管理について伝えていこうと、食事に関するセミナーなどの取組みにつながりました。経費面も大切ですので、お金をいかに使わずに取り組むかということもアンテナを張っており、このセミナーは無料で実施することができました。」

【図1】タック健康人間宣言 「睡眠については、今年の年間計画 に“良い睡眠を”とることを目標に入れました。また、総務部で毎月配信している“タック健康人間宣言”(【図1】参照)という健康に関する周知広報でも、睡眠に対する考え方を伝えています。一方的に配信するだけでなく、意見を求めたり、安全衛生協議会で共有したり工夫しており、最近では、社員から返事がもらえるようになったり、“感謝カード”に意見を書いてもらえるようになってきました。」

「相談窓口はもともと設置していたのですが、ストレスチェックの結果を踏まえて、相談担当者の性別や年代も様々の方がいいのではないかと考え、40、50歳代の男女3名を相談担当者とする体制に変更しました。相談担当者からも社員に対してできるだけ声掛けをし、一人で抱え過ぎないように、本人が話したくなったらいつでも話せるような体制を作っています。」

「当社は産業医の選任義務対象外ですので産業医はいませんが、高ストレス者の面接指導の申し出があった場合は、岡山県の地域産業保健センターに対応してもらえる体制にしています。」

瀧川さん
「うつ病は誰にでも起こりうると思っています。そのきっかけには、“自分だけがこんな思いをしている”とか“なぜ自分だけが”といった気持ちがあるのではと考えています。ですので、日頃から社員同士、会社であったことは何でも共有するようにお願いしています。特に、社内のことは目が届いても、社外で起きたことはわかりません。そうした場でつらい経験をすることもあると思います。“ホウレンソウ委員会”では、出張に行ったときは全員にメールで報告するというルールを作っていて、メールを見た他の社員が“いつもと違うな”ということに気づいたら、声をかけるようにしています。私自身も、営業でつらいことがあったら、こんなことあったということを報告しています。」

「みんなと共有することで、自分だけではないんだ、仲間がいる、ということを感じてもらえるようにしたいですし、そのための場をいかにつくるかが大事だと思っています。それから、声をかけることは大変なことだということを自覚することも大事だと考えています。仕事をしながら、誰かに一声かけるって、本当に大変なことだと思います。そのハードルを意識した上で、それでも一声かけてみることが大切だと考えています。」

【ポイント】

  • ①ベテラン勢の気持ちにも配慮しながらクレド活動の実施を進めたことが、定着につながっている。
  • ②社員を大切にする気持ちが自然と健康経営の取組みにつながり、それが評価され、採用などにも良い影響につながっている。
  • ③相談窓口の担当者の性別、年齢を多様にし、本人が話したくなったときにいつでも話せる体制をつくっている。
  • ④“自分だけが”という気持ちにさせないよう、出張時には報告することをルール化し、いつもと違う様子のときは声をかける環境をつくっている。

【取材協力】株式会社タック
(2021年11月掲載)