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沖電気工業株式会社(東京都港区)

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沖電気工業株式会社
(東京都港区)

 沖電気工業株式会社は、電子通信・情報処理・ソフトウェアの製造・販売、およびこれらに関するシステムの構築・ソリューションの提供、工事・保守等を幅広く行っている。1881年(明治14年)に創業、日本初の電話機の製作と歴史は古い。本社は東京の虎ノ門だが、東京の芝浦が営業の中心となっている。その他の大きな拠点としては、埼玉県の蕨にソフトウェア中心のビジネスセンターがある。また、埼玉、群馬、静岡等に工場を持つと共に、海外にも駐在員の事務所がある。
 従業員数は3,888名(2014年9月末現在)、グループ会社まで含めると21,121名である。
 今回は、職場のメンタルヘルス対策、職場復帰支援に関する労働組合の活動を沖電気工業労働組合、中央執行委員長の渡健志さんと中央執行委員の木村雄一郎さんのお二人にお話を伺った。

労使一体となって職場のメンタルヘルス対策を考えるワーキンググループ(WG)を設置

最初に沖電気工業労働組合についてお話を伺った。

「沖電気工業労働組合(OKI UNION)は、1946年に結成しました。その後、グループ会社まで含めた沖労働組合連合会(現:OKIグループ労働組合連合会)を1970年に結成。現在の組合員数は、OKI UNIONで約2,900名 (平均年齢は39.8歳)。OKIグループ労働組合連合会全体では、18組合あり、約8,300名 となります。」

「OKI UNIONは、『安心して仕事に集中できる環境を創る』、『組合員一人ひとりの幸せ創りを支援する』をミッションとして活動してきており、メンタルヘルス対策もミッションを達成するための重要な取り組みのひとつであると位置づけており、会社と一体となって、積極的に取り組みをしてきています。」

次に、沖電気工業労働組合におけるメンタルヘルス対策に関するこれまでの取り組みについてお話を伺った。

「2005年以前は、人事総務部門、並びに産業医が主体となり、会社としてメンタルヘルス対策を実施していましたが、2005年にOKI UNIONは、組合員の心身の健康、安心して働ける職場環境などの観点からメンタルヘルス予防に向けた職場への対応強化や組合員が気軽にカウンセリングを受けることができる仕組み作りなどについて会社に申入れ、協議の結果、労使でメンタルヘルスケアに関する協議をする場として”こころの健康づくりワーキンググループ(WG)”を立ち上げました。以降、OKI UNIONとしてもメンタルヘルス対策について積極的に加わり、労使によるメンタルヘルスケアに関する取り組みを始めました。」

「”こころの健康づくりWG”は、”中央安全衛生委員会”の専門委員会として設置されており、こころの健康づくり施策の立案および推進を行なっています。”中央安全衛生委員会”の傘下には、事業場ごとに”事業場安全衛生委員会”が設置されていますので、”こころの健康づくりWG”にて決定したことを各事業場で展開する体制が整っています。推進委員長を人事部長が務め、ワーキンググループメンバーには、人事総務部門、OKI UNION、健康保険組合のメンバーが関わっています。発足時には、”こころの健康づくりHP”を開設し、経営トップのメッセージやメンタルヘルス情報を掲載、また、4つのケアの具体的な取り組みなどを展開してきました。」

「なお、職場復帰支援に関しては、2001年に職場復帰を円滑に実現することを目的に”職場復帰に関する委員会”を設置しました。これは、厚生労働省の”職場復帰支援の手引き”が公表される2004年以前からの活動です。」

中央安全衛生委員会の専門委員会として設置されたWGの意見を、メンタルヘルス対策に反映させている。職場のメンタルヘルス対策は、労使一体となって考え、職場に展開していくことが大切だと思われる。

さまざまな相談窓口を用意し広く周知するとともに、それぞれの窓口が連携する

次に、「こころの健康づくりワーキンググループ」を中心とした取り組みについて、話を伺った。

「”こころの健康づくりWG”の活動方針は大きく分けて3つあります。『①社員のセルフケアを推進、支援する』では、自らストレスに気づき、早期に対処するよう動機づけを行うために、イントラネット上の”こころの健康づくりHP”にセルフチェックツールを掲載しています。このセルフチェックツールは社内での利用のみならず、自宅PCからのアクセスも可能であり、ご家族も含め利用することができます。」

「『②ライン(幹部社員)によるケアを補強、支援する』では、管理監督者の負荷を軽減すると共に、効果的な予防、そして職場復帰支援を円滑に行うために、管理監督者に対する研修なども外部講師に依頼して実施しています。」

「『③4つのケアで社員をサポートする姿勢を、社員に対して広く周知する』では、会社が中心となり、全従業員がメンタルヘルスに関する教育を受けることができるよう、事業場毎に就業時間内に実施しています。また、OKI UNIONでも新任の役員に対して、常勤の産業医に依頼し研修を実施しています。産業医は職場状況を把握しているため、メンタルへルスの取り組みや職場環境改善など現状に沿った講演ができます。その他、社内専門家、社外専門機関との連携を強化して、社員の安心感へとつながる活動を展開していきます。」

「OKI UNIONでは、組合員に対して毎年、”心身の健康に関する調査”を実施しています。長時間労働や年休取得に関して組合員のみなさんがどのように考えているのか、アンケートを取っています。事業場ごとや年齢層ごと等、様々な視点から分析し、対策を立てています。以前の結果では、『心身が健康だと思いますか』という質問に対して、『そう思わない』、『どちらかといえばそう思わない』という回答が27%いました。心身の健康に関して不安を感じている人数としては非常に多いと感じています。また、『ストレスを感じているにも関わらず医師等に相談できていない』労働者は80%程いました。このような意識調査結果のデータを使いながら、会社とOKI UNIONとでいろいろと話しあっています。これらをもとに、会社側では、”全地区での研修”、”カウンセリングに対する抵抗感軽減”、”労働者本人だけではなくお互いに不調時に気づきアラームをあげられる環境づくり”、”安心・安定・安全をキーワードに労働時間の適正化や年休取得推進”に取り組んでいます。」

次に、メンタルヘルス関連の相談窓口について、話を伺った。

「労働者が相談する際の選択肢としては、”①健康保険組合が契約している外部の相談窓口”、”②OKI UNIONの上部団体(電機連合)が実施している相談窓口(ハートフルセンター)”、”③各事業場健康推進室の産業医”、そして”④OKI UNIONへの相談”の4か所を準備しています。」

「”①健康保険組合が契約している社外相談窓口”では、心身に関する相談について、電話、ウェブ、対面で相談が受けられます。自宅のパソコンでも相談できるので、家族も含めて利用できます。利用状況については健康保険組合が把握し、OKI UNIONへも共有可能な情報は報告されています。利用状況としては電話による相談が一番多く、労働者本人よりも家族の利用が非常に多くなっています。詳細な内容については守秘義務があり、こちらでは把握していません。」

「”②OKI UNIONの上部団体(電機連合)が実施している社外相談窓口(ハートフルセンター)”については、パンフレットを組合員全員に毎年配布しています。」

「”③各事業場健康推進室の産業医”に関しては、面談可能日をオープンにして、相談対応しています。事前にメールや電話で面談予約ができますが、予約なしでも産業医が空いていれば直接立寄ることもできます。また、1年に1回は健康診断時に必ず産業医の問診を実施しています。看護職が配置されている場合でも、看護職が話を聴いた上で、場合によって、産業医面談に繋げることもあります。」

「”④OKI UNIONへの相談”では、組合に直接相談に来る労働者もいます。まずは話を聞き、メンタルヘルス不調の可能性がある場合は、医療機関を紹介したり産業医へ繋げたりします。OKI UNIONは相談対応のプロではないので難しい面は当然ありますが、経験を積むことで、だんだんと橋渡しの役割がつくられていると思います。」

労働組合によるアンケートを毎年実施し、その結果を会社側と話し合うことで、現場状況に合わせた対策が講じられるものと思われる。また、4つの相談窓口を設置し、労働組合も関わりながら、健康面に関する相談は、適切に産業医に繋げる仕組みをつくっている。

職場復帰に関する委員会を設置し、労働時間や業務内容等について皆で検討する

次に、職場復帰支援の取り組みについて話を伺った。

「休職時の手続き関連の窓口は”総務部門”となります。健康面の相談や復帰希望の受付けについての窓口は”健康推進室”が担っています。休職者本人の状況を見ながら、健康推進室では、休職者との面談も行っています。」

「職場復帰に関しては、休職者本人が希望した場合、若しくは休職期間満了(最長3年)の1ヶ月程前から”職場復帰に関する委員会”を開催します。そこで、”産業医の意見”、”これまでの経過”や”主治医からの意見”を踏まえて職場復帰の可否について、また、よりよい職場復帰支援策について話し合いをします。”職場復帰に関する委員会”制度は2001年からはじまりました。各地区の総務部門を事務局として、人事部長、産業医、職場の上司等が委員として加わります。OKI UNIONは委員に入っていません。職場復帰が可能となれば、復帰後3ヶ月は経過観察期間として月1回定期的に”職場復帰に関する委員会”を開催し、労働時間や業務内容等について検討していきます。ルール上、”職場復帰に関する委員会”はOKI UNIONの意見を聞くことになっていますので、開催後、会社からOKI UNIONに状況報告する流れになっています。報告を受けた後は、OKI UNIONとしての助言や意見交換をします。基本的には休職者本人の意思を尊重し、柔軟に対応できるようにしています。」

「正式な職場復帰の前に、ラッシュ時の懸念もあるので”通勤のみ”、次に”会社に立ち寄りすぐに帰宅”等の訓練を設けるところもあります。また、復帰時に短時間勤務制度を設ける場合がほとんどですが、個人の状況により復帰時からフルタイムで出社となることもあります。その場合でも、復帰直後は残業無しから始めて、少しずつ残業可能時間を延ばしていくように心掛けています。」

「このような取り組みにより、メンタルヘルス不調による休職者のほとんどは復職できています。OKI UNIONにおいても、メンタルヘルス不調を理由として休職し、休職期間満了に伴う退職という例は最近聞かないですね。また、早めにメンタルヘルス不調者に気づくことで、休職になる前に状況を改善するケースも出てきました。産業医による面談や研修などのメンタルヘルス対策の成果もあるかとは思います。」

「職場復帰に関する委員会」では、産業医による専門的見解を踏まえ検討し、労働組合にも意見を聞くなど、職場復帰に関して、労働者にとって安心できる工夫がされている。労使一体となったさまざまな対策が、メンタルヘルス不調者を減らし、結果的にスムーズな職場復帰にもつながっているものと考えられる。

【ポイント】

  • ①安全衛生委員会の専門委員会として「こころの健康づくりワーキンググループ」を設置し、労使一体となって職場のメンタルヘルス対策について話し合い、取り組みを進める。
  • ②複数の相談窓口として労働組合も関わりながら、健康面に関する相談は産業医につなげる仕組みがある。
  • ③「職場復帰に関する委員会」では産業医による専門的見地を踏まえ検討し、労働組合にも意見を聞くことで、職場復帰に対する労働者の安心感に繋げる。

【取材協力】沖電気工業株式会社
(2015年8月掲載)