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第10回 メンタルヘルス不調で休職中の社員が退職する場合雇用保険はもらえるの?

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5

多くの企業で抱えていると思われるメンタルヘルス関連の事案に対し、社会保険労務士の2人がリレー方式で答えていきます。

※これらの内容は、あくまでも1つの事例である旨、ご了承ください。

【Q】質問

メンタルヘルス不調で休職中の社員が、病気が回復せずに退職することになりました。社員は雇用保険をもらえるのでしょうか?雇用保険の仕組みを教えてください。

ポイント

  • 失業給付を受けるためには3つの要件をすべて満たしていることが必要である
  • 病気等で働けない場合、 受給期間の延長の手続きをすることで、病気が回復し働けるようになってから失業給付を受給することができる

【A】回答

雇用保険の失業給付(基本手当)は、雇用保険の被保険者が倒産、定年、自己都合等により離職し、働く意思と能力がありながら就職できない場合に支給されます。失業給付を受けるためには次の3つの要件をすべて満たしていることが必要です。

1.離職の日からさかのぼった一定期間に次の①、②の被保険者期間があること
①定年・自己都合・懲戒解雇等により離職した場合
 離職の日以前2年間に、離職日からさかのぼって1か月ごとに区切った期間に賃金の支払の基礎となった日数が11日以上ある月が12か月以上あること。
②倒産、解雇等により離職を余儀なくされた場合
 離職の日以前1年間に、離職日からさかのぼって1か月ごとに区切った期間に賃金の支払の基礎となった日数が11日以上ある月が6か月以上あること。

2.失業の状態にあること
失業とは被保険者が離職し、労働の意思及び能力を有するにもかかわらず、職業に就くことができない状態にあることをいいます。

3.ハローワークに求職の申込みをしていること

ご質問の場合、休職中の社員が退職されるとのことですが、休職中は賃金の支払いがないことがあり、1の要件を満たすことができないケースが発生します。そのように疾病、負傷その他の理由により引き続き30日以上賃金の支払いがなかった場合は、離職の日以前2年間(②の場合は1年間)にその日数を加算した期間に、賃金の支払いの基礎日数が12か月以上(②の場合は6か月以上)あれば、1の条件を満たすことができるようになっています。会社が離職票を作成する際には備考欄に「○年○月○日〜○年○月○日まで○○日間私傷病により賃金の支払いなし」と記載します。

ただし、1の条件を満たすことができても、病気が回復しないで退職をする場合はすぐには働けない状態なのが通常だと思います。病気で働けない状況は2の「労働の能力」がないことになり、雇用保険の「失業」に該当せず、失業給付(基本手当)は受給することができなくなります。しかし、受給期間の延長の手続きをすることで、病気が回復し働けるようになってから受給することができます。

雇用保険の受給期間は原則として離職した日の翌日から1年間ですが、病気やけがなどの理由により引き続き30日以上働くことができなくなったときは、その働くことのできなかった日数だけ、受給期間を延長することができます。延長できる期間は最大限3年間となっていますので、その期間に病気が回復し働ける状態になっていれば、失業給付(基本手当)を受給することができます。

なお、受給期間延長のハローワークへの申請は、病気やけがなどの理由により引き続き30日以上職業に就くことができなくなった日の翌日から延長後の受給期間の最後の日までの間に行うことが可能です。ただし、申請期間内であっても、申請の時期が遅く、受給期間の残りが短くなってしまった場合は、基本手当の所定給付日数の全てを受給できない可能性がありますので注意が必要です。

◎疾病等を理由とした受給期間の延長制度

延長できる理由 ①妊娠 ②出産 ③育児(3歳未満) ④本人の病気、けが ⑤親族等の看護(6親等以内の血族、配偶者及び3親等以内の姻族)⑥事業主の命により海外勤務する配偶者に同行⑦青年海外協力隊など公的機関が行う海外技術指導による海外派遣 等
手続窓口 住所地を管轄するハローワーク
必要書類 ・離職票
・延長理由を確認できる書類
・受給期間延長申請書
・印鑑
申請期間 働くことができない期間が30日経過した日(離職理由と延長理由が同一の場合は、離職日の翌日以後30日を経過した日)から延長後の受給期間の最後の日まで。
提出者 本人(代理人または郵送による申請も可。代理人の場合は委任状が必要)
根岸純子(ねぎし じゅんこ)

根岸純子(ねぎし じゅんこ)
根岸人事労務事務所
特定社会保険労務士、シニア産業カウンセラー、キャリア・コンサルタント
大学卒業後、都内金融機関に勤務。平成10年社会保険労務士試験合格。その後、社会保険労務士事務所勤務を経て、平成11年に独立開業する。開業後、産業カウンセリングに出会い、勉強を始め、現在は労使のトラブル防止にカウンセリングやコミュニケーションスキルを活かした相談を心掛けている。

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