事業者・上司・同僚の方へ

支援する方へ

コンテンツ一覧

[事例4-3]失業によるうつ病の事例

1 概 要

年齢・性別:32歳、男性
職業:無職(失業中)
主訴:仕事に意欲が湧かない。うつ状態が改善しない。
既往歴:特記すべき身体疾患の既往なし
その他:同胞2人の長男、本人は2歳年下の妹、両親と同居

2 経 過

  某国立大学理学部を6年かかって卒業しました。学生時代から友人が少なく、学業、サークル活動ともに熱心ではありませんでした。一人でコンピュータ遊びやビデオを観て過ごすことが多かったとのことです。

  卒業後、あまり考えずに大手広告代理店を受験したところ、思いがけず合格しました。入社後は、女性の上司の支援のもとで、4年間は広告づくりの業務を数人のチームで何とか行っていましたが、同僚とのチームワークは苦手でした。その後、その上司が結婚し、休職したため、29歳時に新しい体育会系の厳しい男性上司の元で仕事をするようになりました。仕事量が多く、内容が分からず、ある時上司に質問すると、「入社して何年になるのか?このようなことも知らないのか」と罵倒されたため、質問もできなくなりました。数か月後から仕事への意欲は低下し、眠れない日が続きました。次第に頻回に会社を休むようになり、倦怠感、頭痛、めまいなどの訴えが多くなったため、自ら総合病院を受診しました。身体的な検査では異常が認められず、内科より精神科に紹介されました。

  精神科での診断は、うつ病でした。休職し、抗うつ薬が投与されましたが、数か月経っても改善せず、半年の休職後、医師に相談せずに会社を辞めてしまいました。会社を辞めればうつ状態は改善すると考えた上での行動でしたが、不安発作も起こり、外出できなくなり、うつ状態は悪化しました。数種の抗うつ薬が投与されましたが、うつ状態は遷延し、一向に良くならないため入院し、無けいれん性電気けいれん療法でうつ状態はやや改善しました。しかし、親に相談せずに会社を辞めてしまって、今なお経済的な不安に悩まされています。

3 解 説

  もともと本人の仕事に対する動機づけが不十分で、対人関係を築くことも苦手である人がうつ状態を呈した事例です。仕事の意味などを考える十分な治療の時間が必要であったと思われます。米国精神医学会の診断基準(DSM-IV)では、1軸は抑うつ気分を伴う適応障害とされる事例です。最近話題のディスチミア(気分変調症)親和型うつ病に近い病態とも考えられます。失職すれば経済的な不安が増強するのは当然であり、うつ状態は遷延します。基本的な対応としては、うつ状態の時には重要な決定を先延ばしするのが原則です。本人の回避的なパーソナリティーにも問題があった可能性もあります。