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領域3 仕事の裁量性

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1 「職場の快適さ」と「仕事の裁量性」の関係

(1)概説

担当する仕事において、自らの考えや思い、アイディアなどを反映でき、自分の主体性、独自性を発揮できること、あるいは自分の判断で進められることは、自らの存在感や存在意義を感じることができ、自己効力感にも繋がるもので快適さや仕事の満足度に大いに影響すると思われる。裁量性は、「任せられる度合」と言い換えることができるだろうが、これは組織におけるワークモチベーションを支える極めて基本的な要素である。

職種によっては、ルールや指示、マニュアル通りに実施することが求められ、裁量の余地が少ない仕事もあるだろうが、それでも自らの考えによる地道な改善や工夫は可能と思われる。どのような仕事であっても、やはり「主体性」「独自性」「創造性」の発揮が、働きやすさや働きがいを高めることにつながる重要な要素と言えるだろう。

(2)検討における重要視点

ア 権限委譲の方針明確化と現場の裁量拡大
仕事の裁量性を高めることは、任せる度合を増やすことであり、さらに言えば、権限の委譲範囲を拡大することでもある。権限委譲は、それぞれの管理者のマネジメントのあり方、マネジメントスタイルとして行われる面もあるが、本来は個々の管理者の独自性に任せるのではなく、全社としてのマネジメント方針、あるいは顧客視点重視の経営のあり方の中で、位置づけを徹底すべきものである。これにより、現場最前線で顧客接点を持つ従業員が、顧客の声を反映した判断や提案、改善などを行う余地が大きくなるとともに、顧客第一(CustomerFirst)の発想による柔軟な現場対応が行いやすくなる。また、任せられ責任を持つことによるやりがいや自らの存在価値などもより感じられるようになり、快適さも高まるものと思われる。なお、現場に権限を与える際には、十分な経営情報の提供、セルフコントロールの意識喚起、権限行使状況の見える化とチェック体制整備、教育や訓練の機会提供などを併せて行う必要がある。

イ 主体性、独自性を活かし、引き出すマネジメント、任せるマネジメントの実践
組織は本来、所属メンバーそれぞれの強みを活かし、協働による力の総和によって、共通の目標を達成していくことに、その意味がある。よって、マネジメントは、各人の個性を把握し、できるだけ強みを発揮させる業務分配や力を引き出すかかわりが求められる。近年は、サーバントリーダーシップ(職場やプロジェクトのメンバーを支援して目標達成に導く奉仕型のリーダーシップ)という支援のかかわりを主としたリーダーのあり方も提唱されているが、仕事を通じて、自らの主体性や独自性を発揮することは、職場における快適さ、働きがいを大きく左右することに繋がることから、これらを引き出すマネジメントは極めて重要である。そして、それらを引き出すことに最も有効な方法は、「信頼して任せる」ことである。

ウ 個人の意見や考えを活かす制度、仕組み
組織における「個の尊重」や「一人ひとりと向き合い、大切にする姿勢」が重要であることに、異論を唱える人は多くないと思うが、各論としての制度や施策、その実際の運用となると必ずしも十分な対応がなされている状況とはいえないだろう。個を活かす観点からは、マネジメントのあり方とともに、それを支える制度や施策、さまざまな仕掛けも必要である。どれだけ優れた制度であっても、適正な運用がなされなければ意味をなさないことを前提に、「現場が使える」「現場にとって嬉しい」制度や仕組みを、現場の声を取り入れながら策定していく必要があるだろう。

エ 管理階層の簡素化、中間管理層の少ないフラットな組織づくり
現場の裁量性を高める最もシンプルな方法は、中間の管理階層を少なくし、できるかぎり、現場と経営トップを近づけることである。これは、顧客と接する現場最前線の従業員の裁量を高めるとともに、その声を経営に直結させることを通じて、顧客に軸足を置いたスピーディで柔軟な経営を行うことでもある。顧客の声に基づき、自らの視点による提案をし、それが経営に反映されることは、従業員にとっての大きな喜びであり、仕事のやりがい、満足感、快適さに大きな影響を与えるものと思われる。組織改革を通じて、構造的に従業員の裁量性を高める形態とすることで、快適さや働きがいを高める対応方法である。

2施策、対応策事例

従業員の投票による管理職の選任、若手中心に従来業務の改廃を行う改革推進チームや委員会の設置による権限委譲を推進した事例。

分業制を辞めて、一人ひとりに、始めから終わりまで担当する方式に変更して責任を持たせ、アイディア、創意工夫を引き出す事例。

就業時間の一定比率を業務に直接関係しない調査や興味のあるプロジェクトを使ってよいとする制度を導入し、個人の創造性や主体性に基づく能力やアイディアを引き出す事例。

管理職の資格要件として社外教育でコーチングのトレーニングを受け、社内資格認定を必須とする事例。これにより、部下に自ら考えさせ、主体性を引き出し、能力を発揮させるマネジメントを徹底し、それらを組織の風土やカルチャーにする。

事業提案、業務改善提案制度の実施。できるだけ多くの従業員からの提案を募るために、イベント的なプロモーションの実施や全ての提案の評価フィードバックの実施などの工夫を行っている事例。ボトムアップで会社を動かすことができる、経営に参画できるなどの実感を持たせることにより、個々の能力を引き出す風土を作る。

[出典元]
平成22年度職場の心理的・制度的側面の改善方法に関する調査研究委員会報告書(厚生労働省・中央労働災害防止協会)